相場格言「二度に買うべし 二度に売るべし」という言葉をご存知でしょうか?
この相場格言は、江戸時代から伝わる株式投資におけるテクニックを示したものです。
「分散投資」、「打診買い」という投資手法を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、このように株式投資においては二度や三度に分けてリスクを分散させた方が効果的であること多いです。
打診買いについては打診買いとは?株初心者にもわかりやすく解説しますの記事をご覧ください。
今回は相場格言の「二度に買うべし 二度に売るべし」について学んでいき、普段の株式投資にどのように生かせるか、考えていきましょう。
この記事でわかること
- 「二度に買うべし 二度に売るべし」の出典
- 意味と教訓
格言の出典
相場格言「二度に買うべし 二度に売るべし」の出典は、江戸時代に大阪の米相場(世界初の先物市場)で大きな富を得た牛田権三郎氏が、60年間かけて執筆した相場の攻略本「三猿金泉秘録」です。
「三猿金泉秘録」のおもしろさは、彼が思うマーケットの真理がすべて和歌で表現されているという点です。なんと37首からなります。
ただし彼についての記録や偉業についてはほとんど残されておらず、この「三猿金泉秘録」が彼の存在を示す唯一の書物です。
ここで、相場格言「二度に買うべし 二度に売るべし」は和歌(31字)ではないということに気付かれた方もいると思います。
そのとおりで、実はこの相場格言は和歌の下の句です。つまり上の句が存在します。
和歌としていうならば「買い米を 一度に買うは無分別 二度に買うべし 二度に売るべし」です。
この下の句が、相場格言として有名になり現在まで語り継がれているということになります。
格言の意味とその教訓
次に、相場格言「二度に買うべし 二度に売るべし」の気になる意味や教訓についてご紹介していきます。
株式投資で実際にトレードをする際にはテクニカル分析やファンダメンタルズ分析といった手法はあるものの、必ず予想とおりに動くということはありません。
そのためいくら自信があり狙いを定め続けていた株式であっても、自分の投資資金をすべて投じたあとに予想と反する動きをしてしまうと、元も子もないでしょう。
そこで相場格言「二度に買うべし 二度に売るべし」は、自分の予想を信じて一度に投資資金全すべてを投じるのではなく、二度ぐらいに分けて“自分の予想が合っているか”を探るために少しずつ買い増したり売っていったりすることの大切さを教えてくれています。
簡単な例を用いてみましょう。あなたは投資資金として50万円を用意し株式投資を始めようとしていたとします。
さまざまな分析手法で予想をしたところ、株価が500円であるA社の株に投資する魅力を感じました。
このとき投資資金50万円と株価500円という数値だけを見れば、あなたは投資資金50万円をすべて投じてA社株を1,000株(=50万円÷500円)購入するという考えに至るでしょう。
ただし、もし投資資金50万円をすべて投じたのにもかかわらずA社の株価が予想を反して大暴落してしまったら、どうでしょうか?
含み損を抱える一方で、ほかに買うべき株式が見つかったとしても手元の投資資金は空っぽであるため追加的に投資をすることができなくなってしまいます。
このようなときこそ相場格言「二度に買うべし 二度に売るべし」を思い出すべきで、買いたい株を見つけたとしても一度で投資資金すべてを投じるのではなく、まずは少ない株数から購入してみましょう。
そこで、株価が想定通り上昇してきたら、追加的に残りの投資資金を使ってA社の株に投資するのがおすすめです。
もし予想が外れて株価が下落してしまったとしても、100株程度であれば投資資金50万円のうちの5万円(=500円×100)を投じただけなので、残りの投資資金45万円で賢く投資をして損を取り戻すことも十分に可能となります。
ただし、予想が的中していたときには「一度に買っておけばよかった」と後悔することがあるかもしれません。ですが予想が外れていたときのリスクを考えてみると、二度に分けて株を買うということはあながち間違いではないといえるでしょう。
プロのトレーダーでも、一度にすべての玉を建てるということはなく、株価の動きに合わせて少しずつ玉を仕込んでいくということを行っています。
当サイトの監修者である株歴37年以上のプロトレーダー「相場師朗(あいばしろう)」先生も、同様に株価の動きに合わせて建玉を操作することで、リスクを最小限に抑えながら大きな利益につなげています。
相場先生も活用している建玉の操作については【株技術】建玉の操作って何?株初心者にもわかりやすく解説しますの記事で詳しく解説しているので、ご覧になってみてください。
思いがけない損失を回避するためにも。相場格言「二度に買うべし 二度に売るべし」を教訓として手法を改めてみるのもいいかもしれません。
格言を生かすべきシチュエーション
では、実際にこの相場格言を生かすべきシチュエーションを紹介します。
買いたい株を見つけたとき
“あの株を買いたい”、そう思ったときはすべての投資資金を投じるのではなく、まず少しだけ買ってみましょう。
自分でマーケット予想をするのは大切なことですが、過信してはなりません。
まずは、冒頭でご紹介した打診買いのように、少しずつ試してみる方が確実性が高まります。
もし買ったあと株価が上昇しなかったら、そのまま様子を見るか手仕舞いするか検討しましょう。
もし株価が上昇して上げ圧力が十分だと感じたら、そのときは残りの投資資金を少しずつ追加していくようにします。
そうすることで、リスクをなるべく抑えながら利益を増やしていくことも可能になるのです。
また、厳密には二度ではなく複数回買って玉を増やしていくという戦略も有効です。このように打診買いをしながら、少しずつ利幅を増やしていくことがリスクヘッジしながら利益を増やすことにも繋がるでしょう。
持っている株を売りたいとき
相場格言「二度に買うべし 二度に売るべし」は、ここまで説明してきたような株を買うシーンだけではなく売るシーンにおいても教訓を与えてくれます。
持っている株の株価が上昇して高値圏に入ったと思ったら“また下がるかもしれないし、このへんで全部売っておこう”と、持っている全部の株を売るという方もいるかもしれません。
ただしこの場合も少しずつ株を売ってみるという選択肢もあります。
すべて売ったあとに株価が上昇したのを見ると「売るのが早すぎた、もう少し持っておけばよかった……。」と後悔してしまうこともあるかもしれません。
もちろん、チャートの状況を判断した上での検討になりますが、まだ上昇するかもしれないと判断したのであれば、玉を少し残しておくのも戦略の一つでしょう。
欲張り過ぎると利益が減る可能性もあるので、注意しながら建玉を組み立ててみましょう。
まとめ
- 相場格言「二度に買うべし 二度に売るべし」は牛田権三郎が和歌として残した相場格言の下の句である
- まずは試しに買い(売り)を入れて自分の予想が確実なものと判断できたら、二度目、三度目と残りの投資資金(保有株)を投じれば(売れば)いいという意味
- 損失を最小限に抑えるためには慎重になることが大切
本記事では相場格言「二度に買うべし 二度に売るべし」の出典や意味、生かすべきシチュエーションについて解説してきました。
残された和歌の下の句が、相場格言として現在まで語り継がれているというのは非常におもしろいですよね。
株式投資をする際は、焦らず状況を判断してから株を買ったり売ったりすることが大切です。
株式投資には、どうしてもリスクは付き物です。
好機が到来したからといって、全投資資金を投じて飛びついかりすることのないようにしましょう。
著者プロフィール
根本 卓(株塾・インテク運営責任者)
1年間勉強・練習後に2013年から株式投資を運用資金30万円から開始。
地道に続け、7年後に月500万円の利益を出せるように。
その経験を活かし、株塾サービスに反映・インテク記事を書いています。