江戸時代の商人・本間宗久が残した相場格言「年の内、三度より商い場なし」は、古くから投資家に読み継がれてきました。
この言葉は、単に「年に3回のチャンスがある」という意味ではなく、売買のタイミングを慎重に選ぶ姿勢の大切さを示しています。
本記事では、格言の出典や背景、意味、そして現代の相場環境においてどのように理解すべきかをわかりやすく解説します。
焦らず投資と向き合うためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
格言の出典
「年の内、三度より商い場なし」は、本間宗久が著した『相場三昧伝』に記された相場格言です。
本間宗久は江戸時代の米相場で活躍し、人間心理と需給の動きを読む力で知られました。
この章では、格言が生まれた背景と、なぜ現代の投資家にも学ぶ価値があるのかを解説します。
江戸時代の相場と本間宗久の投資観
江戸時代の米市場は、現在の株式市場に相当する重要な経済の場でした。当時の米相場では、需給や景気、地域の気候によって価格が大きく動き、本間宗久はその変動を観察することで独自の売買哲学を築いていきました。
彼は「相場の本質は人の心理にある」と捉え、情勢に振り回されず冷静に機会を狙う姿勢を重視しました。
こうした視点が「年の内三度」という言葉に凝縮されています。
つまり、相場の波に常に乗ろうとするのではなく、落ち着いて状況を見極めることが重要であるという教えです。
なぜ現代でも引用されるのか
現代の株式市場は、インターネット取引の普及によって売買の回数が増えやすく、短期的な価格変動に翻弄される場面も少なくありません。
しかし、相場の根底には今も「需給」と「人間心理」が存在します。本間宗久の格言が今日でも引用されるのは、売買タイミングを慎重に選ぶ姿勢が普遍的な価値を持つためです。
この格言は「むやみに売買を繰り返すより、状況が整った場面に集中する」という考え方の象徴として理解されており、投資判断の基準を整理するうえでも役立ちます。
格言の意味とその教訓
この格言が示すのは、単純に「年に3回チャンスがある」という事実ではありません。
むしろ、頻繁に売買を行うより、状況が整ったタイミングを見極める重要性を伝えている点に価値があります。
ここでは格言の本質的な意味を、現代の投資行動に落とし込みながら解説します。
格言が示す投資姿勢
格言の核心は「焦って値動きに追随するのではなく、待つ姿勢を持つこと」にあります。
相場では日々さまざまな価格変動が起こりますが、そのすべてに乗る必要はありません。
むしろ、情報が出そろい、需給の流れが一方向に向かう場面を慎重に選ぶことで、判断がしやすくなります。
売買の質を高めるためには“選ぶ・厳選する・待つ”という姿勢が有効です。
この格言は、相場格言のなかでも特に「長期的な視点」や「冷静な判断」を促すものとして現代でも支持されています。
なぜ“年に数回”と表現されたのか
「年に三度」という表現は、文字どおりの回数ではなく、むやみに売買せず厳選すべきという比喩的意味合いが強いと考えられています。
江戸時代の相場でも、価格が大きく動く局面はそれほど多くありませんでした。
現代の市場においても、決算発表や資金流入イベントのように、参加者の思惑が集まりやすいタイミングは限られています。
こうした「相場が動きやすい条件がそろう場面」が、当時の感覚では“年に三度ほど”と表現されたと捉えると理解しやすいでしょう。
格言を生かすべきシチュエーション
では、実際にこの相場格言を生かすべきシチュエーションを紹介します。
具体的には、1年のうち買いの大きなチャンスとなる月を3つ挙げていきます。
実は株価変動は1年をとおして見るとパターン化できる部分もあるので、それぞれ見ていきましょう。
- 3月
3月は、機関投資家にとっての決算時期です。
そのため利益確定のための売りが出やすく株価下落が予想されるかと思いきや、一方でドレッシング買い(保有株を自分で大量に買って株価を吊り上げること)をして運用成績をよく見せようとする動きが顕著となります。
そのため、3月は株価上昇が十分に考えられる月です。
- 4月
4月といえば、新年度が始まる節目のタイミングですよね。
機関投資家が運用をスタートすることや海外ファンドが第2四半期に入ることから、新しい投資資金がたくさん流入するため株価は上昇する傾向にあります。
さらに4月(春頃)は学会がおこなわれる時期でもあるため、バイオ(遺伝子組み換え・再生医療・遺伝子治療など)企業の株価が上昇しやすい月でもあります。
また、4月の下旬に入ると3月期決算の企業が決算発表を続々とおこなっていきます。
そのため成長が期待できる企業には大きな注目が集まると考えられますので、要チェックです。
- 6月
6月はボーナスが支給されることが多いことや配当金・株主優待の権利取得が必要であること、7月初め頃におこなわれるETF決算の分配金目的の買いが増加することから、株価が上昇しやすい月といわれています。
また、月末には気象庁による夏予報(3カ月先までの予報)が発表されます。
予想される猛暑の度合いによっては、サマーストック(猛暑関連銘柄:ビール・エアコン・製氷機・冷凍庫など)をあらかじめ手に入れておくと、利益をあげることができるかもしれません。
しかし、実際に株価購入をする前は、株価チャートを分析しておく必要があります。
希望的観測のみでトレードをするのは危険なので、根拠のあるエントリーができるように、株式投資の勉強をしていきましょう。
株の勉強は絶対にやるべき!オススメ勉強ステップや失敗しないためのコツ
本間宗久「年の内三度」理解を深めるQ&A
Q1. 「年に三度」というのは本当に3回のチャンスがあるという意味ですか?
「年に三度」は、実際の回数を示したものではなく、“頻繁に売買せず厳選するべき”という姿勢を表す比喩的な表現だと考えられています。
相場は常に大きく動くわけではなく、参加者の心理や需給がまとまりやすい局面は限られています。
本間宗久はそうした背景から、「機会を選び抜くこと」の重要性を強調しました。
つまり、数そのものよりも“焦らず待つ姿勢”を学ぶための言葉として受け止めるのが自然です。
Q2. 現代の株式市場でも「年三度」の考え方は役立ちますか?
現在の市場は情報量が多く、値動きも短期的に大きくなりがちですが、参加者の心理や需給が相場を動かす点は昔と変わりません。
そのため、「すべての値動きに反応しようとせず、状況が整った場面に集中する」という考え方は十分応用できます。
特に決算期や資金流入のタイミングなど、投資家が動きやすいイベントがまとまる時期は、相場環境を理解するうえで参考になります。
Q3. この格言は投資初心者にとってどう役立ちますか?
投資初心者は、値動きに不安を感じて頻繁に売買してしまうことがあります。
格言「年の内三度」は、そうした“焦りによる売買”を避け、時間をかけて相場を観察する姿勢の重要性を教えてくれます。
また、買いや売りを考えるときに「今は本当に自分にとって整ったタイミングなのか」を立ち止まって考えるきっかけにもなります。
行動を急がず、じっくり判断する習慣づくりに役立つ格言です。
まとめ
「年の内、三度より商い場なし」という格言は、大きなチャンスが限られているという意味ではなく、売買のタイミングを慎重に選ぶべきという姿勢を示しています。
歴史的な背景を踏まえると、相場に向き合う際に焦らず、状況が整うまで待つ大切さが伝わります。
現代の市場でも、需給が動きやすい時期やイベントを把握することで、落ち着いた判断がしやすくなります。
格言を参考に、自分なりの投資判断の基準を整え、無理のない範囲で相場と向き合ってみてください。

著者プロフィール
根本 卓(株塾・インテク運営責任者)
1年間勉強・練習後に2013年から株式投資を運用資金30万円から開始。
地道に続け、7年後に月500万円の利益を出せるように。
その経験を活かし、株塾サービスに反映・インテク記事を書いています。







