相場格言「もうはまだなり、まだはもうなり」とは?投資判断を迷った時のヒント

もうはまだなり、まだはもうなり

株式投資をしている方は、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析を重ねたうえで、マーケットの強さや今後の値動きを予想すると思います。

ですが、株価が予想と反した動きをすることも多々あるのではないでしょうか。

本記事で紹介する「もうはまだなり、まだはもうなり」は、「株式市場は分析どおりには動かないものなので、行動を起こす前に正反対の視点を持って見直してみることの大切さ」を説いた相場格言です。

では、この相場格言にはどのような意味合いやシチュエーションがあるのか、詳しく見ていきましょう。

この記事でわかること

  • 「もうはまだなり、まだはもうなり」の出典
  • 格言の意味と教訓
  • 格言を生かすシチュエーション
目次

「もうはまだなり、まだはもうなり」の出典

相場格言「もうはまだなり、まだはもうなり」は、江戸時代に書かれた2つの書物から生まれた言葉で、「人の行く裏に道あり花の山」という相場格言と並んでよく口にされる言葉です。

相場格言「人の行く裏に道あり花の山」については、相場格言「人の行く裏に道あり花の山」とはの記事をご覧ください。

江戸時代に書かれた2つの書物のうちの1つめの書物は猛虎軒(もうこけん)氏による「八木虎之巻(はちぼくとらのまき)」です。

元となった原文は

「もうはまだなり、まだはもうなりといふ事あり。此の心は、たとへばもう底にて上るべきとすすみ候時は、まだなりといふ心を今一応ひかへ見るべし。また底ならず下るべきと思ふ時、もうの心を考ふべし。必ずまだの心ある時より上るものなり。」

というものです。

現代語訳すると

「株価がもう下がりきって底をついていると思ったときは、まだ下がるのではないかと考えなさい。まだ底をついておらずさらに下がると思ったときは、もう底をついているから上がるのではないかと考えなさい。」

という意味になります。

2つめの書物は本間宗久(ほんまそうきゅう)氏による「宗久翁秘録(そうきゅうおうひろく)」です。

元となった原文は

「もうはまだなり、まだはもうなりということあり。ただし、数日もはや時分と思い取りかかりたるに、見計い悪しければ間違いになるなり。まだまだと見合わせ居るうちに遅るることあり。」

というものです。

現代語訳すると

「もういいかと思って仕掛けると損をすることがある。まだまだと待っていると仕掛けが遅れてしまう。」

という意味になります。

どちらも、「“もう”~するだろう」と思ったときは「“まだ”~しないのではないか」と、「“まだ”~するだろう」と思ったときは「“もう”~しないのではないか」と一度立ち止まって考察することが大切だということを説いています。

マーケットの動きには「絶対」というものがないので、「もう」と「まだ」を使って自分自身に問いかけて冷静に検討することの必要性を説いているのですね。

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格言の意味とその教訓

「もうはまだなり、まだはもうなり」とは、「もう下がらない(底をついた)だろうと思ったときほどさらに下がってしまったり、まだ上がる(天井をついていない)だろうと思ったときほどすぐに下がってしまう」といった予想と反することが起きた状況を意味しています。

株価の底や天井を判断することはそう簡単ではなく、微妙なマーケットの変化に対して自分の突発的な判断で行動をとることは非常に危険です。

微妙な変化に対応することはもちろん大切ですが、そのサインがもし一時的なものだったら大変なことになりますよね。

「もう」と「まだ」といったトレーダーの期待や慎重さというのはあくまでも人の気持ちであり、マーケットの動きに絶対はないので考えていたこととの行き違いが生じてしまうことがあります。

期待が大きくなってしまったときは、1度深呼吸をして自分の考えと正反対の考えも考慮して冷静にマーケットを見直すことが必要です。

気持ちのままに売買をおこなってしまったときほど、考えと株価の動きには行き違いが多く起こってしまうということを言い当てた相場格言なので、覚えておくとかなり価値があるでしょう。

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格言を活かすべきシチュエーション

では、実際にこの相場格言を活かすべきシチュエーションを紹介します。

  • 約9カ月間のもみ合いを上抜けたとき

2018年10月に、日経平均株価が27年ぶりに2万4,270円という高値をつけたのを覚えていますか?

それまでの日経平均株価は2018年1月に2万4,124円という高値をつけたあと、アメリカの長期金利上昇によって3月にかけて株価が急落しました。

ただしそのあと、アメリカの長期金利が安定してくるとニューヨーク株式市場が大きく高値を更新し、それに伴って10月には日経平均株価も27年ぶりに高値を更新しました。

ここまで約9カ月間もみ合いが続いていたのを大幅に上抜けたので、多くのトレーダーは「“まだ”日経平均株価は上がるだろう」と考えるでしょう。

買い注文が大量に出され、株価は一気に上昇へと傾きます。

しかし、この時点では日経平均株価は「“もう”天井を抜けていた」のですぐに株価は急落した…ということがありました。

ここで「もうはまだなり、まだはもうなり」という相場格言を知っていたらどうでしょうか?

日経平均株価がもみ合いを抜けてやっと上に抜けたわけですが、多くのトレーダーが「“まだ”上がる!」と予想し買い注文を大量に出しているなかで、「“もう”相場は上がりきっているのではないか?」と考えることもできます。

人は儲かっているときこそ気が大きくなり「“まだ”上がる!“まだ”儲けられる!」という強気で前向きな心理が働きやすい生き物です。

同様に、損が出ているときは「“もう”下げ止まるはず!」と考えてしまいがちです。

そのようなときに「もうはまだなり、まだはもうなり」を思い出せば、1度冷静になれるのではないでしょうか。

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まとめ

  • 「もうはまだなり、まだはもうなり」という相場格言は、猛虎軒氏と本間宗久氏によって唱えられた
  • もう底をついただろうと思ったときこそまだ下がるかもしれなくて、まだ上がりそうと思ったときこそもう上がりきっているかもしれない、という意味
  • 自信をもって「もう~だろう」「まだ~だろう」と思ったときこそ、深呼吸をしてチャートを見直す必要がある

株式投資では、自分の判断どおりに必ず株価が動くというわけではないので過度な自信を持つことは控えて、自分の判断と正反対の動きをするかもしれない可能性というのを常に探っておくことが必要です。

よって、自分が「もう下がりきっているはずだけど、まだ下がるとしたらどのようなポジションをとっておくべきか」ということを考えながら投資判断をすることが求められます。

トレードをするときは「もうはまだなり、まだはもうなり」という相場格言を思い出して、自分の判断を見直す癖を身につけましょう。

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この記事の監修者

監修者プロフィール

トレード歴40年の株職人。“株匠” を目指している。
20歳で株の売買を始めてから20年間、
「日本郵船」1銘柄のみの「売り」「買い」に集中、大きな利益を重ねる。
その後、宮本武蔵が洞窟に籠もるかの如く、チャートと建玉の研究に没頭する。

現在も、チャートと建玉の操作のトレード手法をさらに極めるべく精進を重ねており、
日本株、米国株、イタリア指数、イギリス指数、ユーロ指数、金、原油、コーン、FXなど、
どの市場でも大きな利益を生み出している。

ラジオNIKKEI「相場師朗の株は技術だ!」でキャスターを務める。
東京証券取引所北浜投資塾講師、日本経済新聞社お金の学校講師。

この記事を書いた人

著者プロフィール
根本 卓(株塾・インテク運営責任者)
1年間勉強・練習後に2013年から株式投資を運用資金30万円から開始。

地道に続け、7年後に月500万円の利益を出せるように。

その経験を活かし、株塾サービスに反映・インテク記事を書いています。

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