「相場の流れをうまくつかめない」「上がると思って買ったのに、すぐ下がってしまう」そんな経験はありませんか?
実は、チャートの中には「今は上がりやすい相場か、下がりやすい相場か」を客観的に判断できる指標があります。
それが、DMI(ディー・エム・アイ)=方向性指数と呼ばれるテクニカル指標です。
一見難しそうな名前ですが、DMIを使えばトレンドの方向と勢いを同時に把握できるため、デイトレードの判断を格段にシンプルにできます。
本記事では、初心者の方にもわかるようにDMIの基本的な仕組み、DMIを使ったデイトレードの具体的な方法、そして注意すべき落とし穴を順を追ってやさしく解説します。
最後まで読むと、チャートのどこで「買う・売る」を判断すればいいのかが自然と見えてくるはずです。
DMIを使いこなす!+DI・−DI・ADXの違いと活用法を解説
DMIとは
本章ではDMIの概要について解説します。
- DMIとは
- DMIの計算式
- ADXを計算
それぞれみていきましょう。
DMIとは
DMI(Directional Movement Index)は「方向性指数」と呼ばれるテクニカル指標で、相場のトレンドの方向性と強さを同時に分析できる優れたツールです。
RSIやパラボリックなどを開発したJ・ウェルズ・ワイルダーという著名なテクニカルアナリストによって考案されました。
DMIは、以下の3つの線から構成されています。
- +DI(プラスDI):相場の上昇力の強さを示す指標
- -DI(マイナスDI):相場の下降力の強さを表す指標
- ADX(平均方向性指数):トレンドの強さを数値化した指標

これら3本線の動きを総合的に判断して、相場の状況を客観的に把握します。
DMIの計算式
DMIを構成している3本線の内の+DIと-DIを求める計算式は、以下のとおりです。
- +DI=(N日間の+DMの合計 ÷ N日間のTRの合計) ×100
- -DI=(N日間の-DMの合計 ÷ N日間のTRの合計)×100
※一般的にNは、14日間という期間が使われる場合が多いです。
DMIでは、「買いの勢い」と「売りの勢い」を数値で表すために、まずは価格がどのくらい上に動いたか・下に動いたかを計算します。
これを基にして、+DI(プラスDI)=上昇の強さ、−DI(マイナスDI)=下落の強さを出すのが目的です。
「難しい計算式が出てきた…」と思うかもしれませんが、実際のチャートツールがすべて自動で計算してくれるので、仕組みの流れだけを理解すれば十分です。
STEP1. DM(Directional Movement=方向の動き)を求める
まずは「前日と比べてどれだけ上がったか、または下がったか」を見ます。
+DM(プラスDM)=上昇分
- 当日の高値 − 前日の高値
−DM(マイナスDM)=下落分
- 前日の安値 − 当日の安値
これで、上方向と下方向の動きを数値化します。
ただし、実際の計算では次のようなルールでより正確に判断します。
- +DMが0以下のときは+DMを0とする
- -DMが0以下のときは-DMを0とする
- +DMが-DMより大きいときは-DMを0とする
- -DMが+DMより大きいとき+DMを0とする
これらのルールにより、相場の方向性をより正確に捉えられるようになります。
STEP2. TRの計算
次に「1日の値動きの大きさ(変動の幅)」を出します。
TRは、単純な「高値−安値」だけでなく、前日とのつながりも考慮します。
以下の3つを比べて、一番大きい値がTR(真の値幅)です。
- 本日の高値 – 本日の安値
- 本日の高値 – 前日の終値
- 前日の終値 – 当日の安値
この方法により、価格の実質的な変動幅を漏れなく捉えられるようになります。
ADX(平均方向性指数)の計算と意味
DMIの3本目、ADXは「トレンドの勢い」を測るための線で、上昇か下落かは判断せずどれだけ強いトレンドかを数値化します。
計算の流れは、次のとおりです。
①まず、+DIと−DIの差と合計を使って「方向の明確さ」を出します。
- DX = |+DI − −DI| ÷ (+DI + −DI) × 100
②そして、このDXを一定期間(一般的には14日間)平均化して「滑らかにした」ものがADXです。
※平均化には「ワイルダー平滑(Wilder’s smoothing)」という方法を使います。
単純平均よりも滑らかに変化するので、トレンドの強弱がわかりやすくなります。
ADXとは?トレンドの強さを見抜く使い方、DMIとの併用方法を解説
DMIの見方
DMIを効果的に活用するためには、各構成要素の意味と役割を正確に理解するのが重要です。
本章では+DI、-DI、ADXという3つの指標について詳しく解説します。
+DI
+DIは価格上昇圧力の強さを示す指標で、数値が高いほど買い圧力が強いことを表します。

+DIの数値による相場判断は、以下の基準で行います。
- +DIが40以上:強い上昇トレンド
- +DIが20以下:弱い上昇トレンド
なお、価格が上昇しているときは+DIも一緒に上昇します。
-DI
-DIは下方への圧力の大きさを示す指標で、高い数値ほど売り勢力が優勢であることを表しています。

-DIを数値で判断する際の基準は、以下のとおりです。
- -DIが40以上:強い下降トレンド
- -DIが20以下:弱い下降トレンド
ちなみに、+DIと逆で価格が下落しているときに-DIは上昇します。
ADX
ADXはトレンドの強さを示す指標で、上昇・下降の方向性に関係なく相場の勢いを数値化します。

ADXの判断基準は、以下のとおりです。
- ADXが40以上:トレンドは強い
- ADXが25以上:トレンド発生
- ADXが25未満:レンジ相場
なお、本章で紹介した数値は絶対的なものではなく、あくまでも目安である点は理解しておきましょう。
テクニカル分析は本当に意味ない?意味がある理由と根拠を徹底解説
DMIの使い方
本章では、DMIを活用する方法を4つ紹介します。
- トレンドを判断する
- トレンドの転換点を見極める
- トレンドの強さを見極める
- ダイバージェンスをみる
それぞれ解説します。
トレンドを判断する
DMIによるトレンドの見極めは、+DIと-DIの位置関係を確認して判断することが可能です。
まずは、トレンドを判断するために全体の流れをみて、チャートで+DIと−DIの位置関係を確認します。
- +DIが−DIより上 → 買いが優勢 → 上昇トレンドの可能性
- −DIが+DIより上 → 売りが優勢 → 下降トレンドの可能性

このように、DMIで+DIと-DIの位置をみると手軽にトレンドを把握できます。
ちなみに、この段階ではまだ「方向性」を見ているだけです。
次に、ADXを見て「勢いがあるか」を確認しましょう。
- ADXが25以上 → トレンドが発生中
- ADXが25未満 → もみ合い中なので見送り
このように、ADXと併用してトレンドを確認することが重要です。
トレンドの転換点を見極める
トレンド転換を見つけるには、+DIと−DIのクロス(交差)に注目します。
- +DIが−DIを上抜け → 上昇トレンドに変わるサイン
- +DIが−DIを下抜け → 下降トレンドに変わるサイン

ただし、クロスが出た直後にすぐエントリーすると「だまし(誤シグナル)」になることもあります。
そのため、ADXが上向きになっているかどうかも同時に確認しましょう。
トレンドの強さを見極める
DMIでトレンドの強さをみるには、+DIと-DIを比較してトレンドを見極め、さらにADXでトレンドの強さを確認するのが効果的です。
ADXを使うと、今のトレンドがどのくらい強いのかを判断できます。
- ADXが25〜40 → トレンドが発生している
- ADXが40以上 → 強いトレンドが継続中
- ADXが下がりはじめたら → 勢いが弱まってきたサイン

なお、トレードを行うときは、ADXが上向きのときだけに絞ることでトレンドに乗りやすくなります。
ダイバージェンスをみる
ダイバージェンスとは、価格とDMI指標の動きが逆行する現象で、トレンドの勢いが弱まっているサインとして捉えられます。
たとえば、価格が高値を更新しているにもかかわらず+DIが低下している場合は、上昇トレンドの勢いが弱まり近い将来に相場が転換するかもしれないと判断できます。

このようにダイバージェンスをみると、多くの投資家が気づく前にトレンド転換の兆候を察知でき、有利な投資ポジションを取れる可能性が高まります。
ただし、ダイバージェンスは必ずしも即座にトレンド転換を意味するわけではないため、ほかの指標と組み合わせた総合的な判断が重要です。
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デイトレードでDMIを活用する方法
DMIは、デイトレードにおいても有効なテクニカル指標として活用できます。
本章では、デイトレードの基本概念とDMIを使った具体的な取引手法について解説します。
デイトレードとは
デイトレードとは、1日以内にポジションを決済する短期売買手法です。
日をまたがないというルールにより、夜間に発生する予期せぬニュースによる翌日の価格変動リスクを完全に回避できるのが利点です。
ただし、頻繁な取引により手数料負担が増加しやすく、短期的な値動きに翻弄される心理的なプレッシャーも大きいというデメリットもあります。
そのため、初心者には少し難易度が高い手法であることは理解しておきましょう。
DMIを使ってデイトレードをする方法
DMIを活用したデイトレード戦略では、一般的には5分足から15分足程度の短期チャートを使用します。
エントリー戦略は、以下のとおりです。
- ADXが25以上になったらトレンド発生を確認
- +DIと−DIのクロスで方向を判断
- 上位時間足(1時間足など)と同じ方向のみでエントリー
- 損切りはATR(値動き幅)や直近の安値・高値を基準に設定。
- ADXが横ばいになったらポジションを手仕舞い

この条件により、勢いのあるトレンドの転換点でのみ投資を行えるため、成功確率の向上が期待できます。
なお、DMIはトレンドの方向と勢いを教えてくれるだけなので、実際に取引する際は移動平均線やローソク足の形と組み合わせて判断するとより精度が上がります。
DMIでデイトレードをするときの注意点
本章で紹介するDMIでデイトレードをするときの注意点は、以下のとおりです。
- 損切りを徹底する
- 必ず資金を分散させる
- トレンド相場で取引する
- ほかの指標と併用する
それぞれ解説します。
損切りを徹底する
DMIを活用したデイトレードでは、損切りを徹底しましょう。
DMIは優秀な指標ですが、相場の急変や予期しない材料により誤ったシグナルが発生する場合があるからです。
したがって、エントリー時点で「投資金額の1%逆行したら売却」など損切りをするラインを明確に設定し、損切りラインに達したら感情を排除して即座に決済するのが重要です。
もし、損切りルールを確立できていないと、コツコツ積み上げた利益を一度の取引で失ってしまうリスクがあります。
そのため、デイトレードで生き残るためには、どんな状況でも損切りルールを徹底するのが重要です。
必ず資金を分散させる
DMIを使ったデイトレードでは、1回の取引で全資金を投資しないのが重要です。
急激な相場変動により予想が外れた場合、全財産を投入していると資産の大部分を失いかねないからです。
そのため、DMIを使ってデイトレードをするなら必ず資金を分散させましょう。
たとえば、資金100万円の内10万円〜20万円程度(全体の10〜20%)のみを1回の取引に使うようにすれば、資産全体への影響を小さくできます。
仮に1つのトレードが損失に終わったとしても、残りの資金で次のチャンスを待つことができるため、長期的に安定した運用が可能になります。
トレンド相場で取引する
DMIを使ったデイトレードでは、トレンド相場でのみエントリーし、レンジ相場での取引は避けるのが重要です。
なぜなら、レンジ相場ではDMIの+DIと-DIが頻繁に交差し、偽のシグナルが多くなりやすいからです。
相場が横ばいの状況で取引を行うと、エントリーと損切りを繰り返すことになり、資金を減らしてしまう可能性が高くなります。
そのため、ADXをみてトレンドの強さを確認した上でトレードをするのか決めるようにしましょう。
ほかの指標と併用する
DMIをデイトレードで使用する際は、単独での判断は避け他の指標との併用が重要です。
複数の指標が同じ方向を示した時に、より確度の高いエントリーポイントを見つけることができ、ダマシのリスクを軽減できるからです。
ほかの指標との組み合わせとして、以下の例が挙げられます。
- 移動平均線:大きな流れを確認
- ボリンジャーバンド:エントリーポイントを絞り込み
- RSI:過熱感を確認してタイミング調整
このようにほかの指標と組み合わせると、多角的な判断が可能になります。
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DMIでデイトレードしたい人によくある質問
DMIでデイトレードをしたい人によくある質問は、以下のとおりです。
- DMIでデイトレードするときはほかのツールと併用した方がいい?
- DMIは使えないといわれているけど本当?
それぞれ解説します。
DMIでデイトレードするときはほかのツールと併用した方がいい?
DMIは単体で使用するよりも、別のテクニカル指標と組み合わせて活用した方が取引精度の向上が期待できるため、ほかツールと併用した方が好ましいです。
効果的な組み合わせ例として、DMIと移動平均線を併用する手法があります。
移動平均線で大局的なトレンドを確認した上で、DMIでトレンドの転換点を予測するとダマシを効果的に避けられるようになります。

このように、複数のテクニカル指標を組み合わせると、より確実性の高いトレード戦略を構築でき継続的な利益獲得の可能性が高まります。
DMIは使えないといわれているけど本当?
DMIは「使えない」といわれることもあります。
なぜなら、DMIは確実に未来を当てられるツールではないからです。
しかし、どのテクニカル分析ツールにもいえますが、100%予想を的中させられるツールはありません。
したがって、DMIがほかの指標に比べて劣っているわけではないといえます。
実際には、DMIは万能な指標ではないだけで、トレンドの強さと方向性を把握する補助指標としては十分に有効性があります。
そのため、DMIを「使えない」と判断する前に、適切な使用環境と組み合わせ手法を習得するのが重要です。
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まとめ
今回は、DMIの概要からデイトレードのやり方まで解説しました。
DMIは+DI、-DI、ADXの3つの指標でトレンドの方向性と強さを同時に分析できる優れたテクニカル指標です。
デイトレードでDMIを活用する際は、損切りルールの徹底と資金分散、そして明確なトレンド相場での取引が成功のために重要です。
ぜひ本記事を参考に、リスクを抑えながらDMIを活用してデイトレードに挑戦してみてください。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。




 
       
			 
			 
			 
			 
			 
			 
			 
			


