2024年9月30日の急落をきっかけに、「暴落した株の買い時を知りたい」「暴落時に買えば必ず得をするのでは?」といった声が増えました。
確かに、大きく値下がりした株は一見「お買い得」に見えます。
しかし結論から言うと、「ここが暴落株の買い時だ」と断定できるポイントはありません。
株価は需要と供給で動き、どこまで下がるかは誰にも分からないからです。
また、下がっている株をあえて買いにいく逆張りは、難易度の高い投資行動でもあります。
そこで本記事では、
-
なぜ「暴落株の買い時」を決め打ちできないのか
-
暴落局面でも活用しやすいバリュー株投資の考え方
-
暴落株に近づく前に押さえておきたい基礎知識
について解説していきます。
【新NISA】日経平均暴落時やってはいけない3つのことを解説
暴落株の「絶対の買い時」は存在しない
結論として、暴落株の買い時というものはありません。
株が安くなっていたとしても、株価は需要と供給で動いている以上どこまで下がるかわからないからです。
そのため、暴落している株の買い時というのは一概にはありません。
また個別株の投資で下げている株を買って利益をだすことは、逆張りといって難易度が高いです。
ですが、理にかなった投資手法を元に作戦を立てて取引をすると暴落株で利益をだすことも可能です。
本記事では暴落株を買う方法として、下落している時にも買えるバリュー株投資をおすすめしています。
次章では、バリュー株投資について解説します。
株価が暴落するとどうなる?その後の投資戦略と回復に向けた対策を徹底解説
暴落株を買うならバリュー株投資がおすすめ
バリュー株投資とは、なんらかの理由により割安で放置されている株に投資して利益を得る投資手法です。
バリュー株に関しては、暴落時に買ったとしても問題ありません。
ここでは、バリュー株投資について以下の観点から詳しく解説していきます。
- バリュー株投資とは割安株に投資して利益を得ること
- 具体的にはどんな特徴があるの?
- 大きく下げたバリュー株はどのくらいで戻ってきたのか
それぞれ解説します。
バリュー株投資とは割安株に投資して利益を得ること
バリュー株とは、実際の企業価値より割安に放置された株のことです。
個別株は、株価指数につられる性質があります。
そのため個別株に問題があるわけではないのに、株価指数が下げたためつられて割安になっている場合があります。
バリュー株投資とは、そのような株に投資して、利益を得る手法です。
またバリュー株投資は、5年以上の長期的な目線で配当金をもらいながらお金を増やします。
基本的に、個別株に投資する時は株価が下がっている株に投資しません。
ですがバリュー株は過去に何度も暴落に耐えて、株価を戻してきた実績があるためバリュー株に関しては暴落時に買うことがいいとされています。
具体的にはどんな株?
バリュー株とは割安に放置されている株と説明しましたが、ここでは具体的にはどんな株なのかについて解説します。
バリュー株を選ぶ時、これらの特徴を押さえた銘柄に投資すると暴落時に買ったとしても元の株価に戻す可能性が比較的高いです。
バリュー株の具体的な特徴は以下の通りです。
- 時価総額が大きい会社
- 配当金を出している
- PERが低い
それぞれ解説します。
時価総額が大きい会社
バリュー株はこれまで小型株から大型株へと長い年月をかけて、相場の荒波を乗り越えながら大きく成長してきた株です。
歴史があり経営基盤もしっかりしているので、暴落が起こっても元の株価まで戻ってきやすい傾向にあります。
対して時価総額が小さい小型株は、比較的値動きが激しく経営基盤が弱い会社も多いため時価総額大きい会社と比べると暴落から返ってくる可能性が低いです。
このことから、時価総額が大きい会社から選ぶのがおすすめです。
目安としては、5,000億円以上の会社が好ましいと言えます。
配当金を出している
バリュー株投資は長期間保有し続けながら、配当金を受け取ることも目的としています。
そのため、これまで長期間配当金をだしてきた会社を選ぶようにしましょう。
配当金を見る基準として、配当金利回りを確認します。
配当金利回りとは、投資金額に対して何%の配当金を還元してくれるのかということを確認できる指標です。
たとえば、配当金利回りが5%なら100万円を投資したら、1年で5万円の配当金を受け取れるということがわかります。
配当金利回りの目安としては3%以上が好ましいです。
PERが低い
PERとは、株価の割安度合いを見るための指標です。
PERの計算方法は以下の通りです。
PER(倍)=株価÷一株当たり当期純利益
たとえば、株価が1,500円で一株当たり当期純利益が150円だった場合PERは10倍だということがわかります。
また株価が1,500円で一株当たり当期純利益が300円だった場合、PERは5倍です。
この例で見ると、株を買った時点で一株当たり当期純利益が150円だった場合1,500円の株を買うと回収するのに10年かかります。
ですが、一株当たり当期純利益が300円だった方は5年で回収できます。
このようにPERは、低い方が割安です。
PERは、15%以下だと割安であるという見方が一般的です。
大きく下げたバリュー株はどのくらいで戻ってきたのか
ここでは過去に大きく暴落したバリュー株が、どのくらいの期間で戻ってきたのかをみていきましょう。
ここで紹介するのは、コロナショックで50%以上下げた暴落株です。
- 【1605】INPEX
- 【7272】ヤマハ発動機
- 【9104】商船三井
それぞれみていきましょう。
【1605】INPEX

| 時価総額 | 配当金利回り | PER |
|---|---|---|
| 2兆4,712億円 | 3.19% | 10.3倍 |
※2024年11月25日
INPEXは、資源開発を行っている会社です。
石油や天然ガスなどのエネルギーを採掘し、世界中に供給しています。
コロナショックでは59.8%株価を下げましたが、2年1ヵ月で元の株価まで回復しました。
【7272】ヤマハ発動機

| 時価総額 | 配当金利回り | PER |
|---|---|---|
| 1兆3,676億円 | 3.75% | 8.1倍 |
※2024年11月25日
ヤマハ発動機は、オートバイやマリン製品の製造販売を行っている会社です。
他にも、産業用ロボットなども製造していて個人から企業に向けて様々な製品を供給しています。
またこれらの製品は日本だけにとどまらず、世界中で販売されています。
コロナショックでは52.4%株価を下落させましたが、1年3ヵ月で元の株価に戻りました。
【9104】商船三井

| 時価総額 | 配当金利回り | PER |
|---|---|---|
| 1兆9,687億円 | 5.52% | 5.6% |
※2024年11月25日
商船三井は、様々な資源を輸送している大手の海運企業です。
いろいろな種類の船舶で、ガスや海上石油の採掘も行っています。
コロナショックでは52.9%下落しましたが、1年2ヵ月で元の株価に戻りました。
株価暴落はなぜ起こる?暴落の背景と逆境をチャンスに変えるための方法を解説
暴落株を買うならドルコスト平均法がおすすめ

暴落しているバリュー株は、ドルコスト平均法で買うのがおすすめです。
ドルコスト平均法とは、決まった金額を等間隔で購入する方法です。
ドルコスト平均法で購入すると、株価が高い時には少ない量を、株価が安い時には多くの量を購入できます。
そのため、購入単価を安定させることが可能です。
また高い時に買いすぎてしまったという後悔も減るため、ドルコスト平均法で株を購入するとメンタルも安定します。
また、過去の暴落の下落期間は以下の通りです。
| 高値 | 日付 | 安値 | 日付 | 下落率 | 下落期間 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ITバブル | 20,833 | 2000/4/12 | 7,603 | 2003/4/28 | 64% | 1111日 |
| リーマンショック | 14,601 | 2008/6/6 | 6,994 | 2008/10/31 | 52% | 147日 |
| チャイナショック | 20,952 | 2015/6/24 | 14,864 | 2016/6/24 | 29% | 366日 |
| コロナショック | 24,115 | 2020/1/17 | 16,358 | 2020/3/19 | 32% | 62日 |
この例を見ると、下落期間が長いもので、3年以上下げ続けた期間があります。
そのため暴落株を買う場合は、暴落が起こってから3~4年かけてコツコツ買っていく計画を立てるのがおすすめです。
暴落時こそ買いたい日本株10選!初心者でも安心な銘柄を厳選紹介
暴落株に投資する前に知っておきたい株式投資で勝つための基礎知識
暴落株に手を出す前に、基礎知識を身につけて取引をはじめるようにしましょう。
暴落株は値動きが激しいため、基礎を身につけておかないと儲けることは難しいです。
ここで紹介する3つのことを意識して暴落株を取引すると、勝てる可能性がかなり上がります。
- 戦略を立てる
- 資金管理をする
- メンタルコントロールをする
それぞれ解説していきます。
戦略を立てる
暴落株に手を出そうと思うなら、事前に戦略を立てておきましょう。
戦略とは、投資手法に基づいて立てます。
主な投資手法は、バリュー株投資法や成長株投資法が王道です。
どんな投資手法がいいのか悩む人もいると思いますが、理にかなった投資方法なら基本的には何でも問題ありません。
ただ投資で儲けるためには一番理解しておきたいところなので、手法について熟知するため時間をかける必要があります。
おすすめの勉強方法は、体系的に学べる本やセミナーがおすすめです。
また自分が決めた手法で暴落株を買う場合、基礎知識を学んだ上で安全に買えるタイミングがわかるようになって購入するのがいいでしょう。
資金管理で「期待値」を意識する
個別株に投資をするなら、必ず資金管理をする必要があります。
資金管理では期待値をプラスにすることを目的としています。
期待値とは、1回の取引でリスクを取るたびに平均して期待しているリターンのことです。
期待値は以下の式で求められます。
期待値=(勝率×平均利益率)-(敗率×平均損失率)
この式を以下の例に当てはめてみましょう。
お金が増えたときのトレードの平均リターンは10%、損失をだしてしまったときの取引は-4%、勝率は50%だったとします。
この例を式に当てはめると(50%×10%)-(50%×4%)=3%となり、1回当たりトレードでは投資額に対して平均3%増えることが導き出せます。
仮に期待値がマイナスだった場合、取引すればするほどお金が減っていくことになるため注意が必要です。
このように、暴落株に手を出す前にシミュレーションしておくのがいいです。
暴落株のように下げる株は、どこまで下落するのか分かりません。
そのため、個別株に投資するなら平均損失を限定するためにも損切りが必要な場合が多くあることを理解しておきましょう。
メンタルコントロールを意識する
メンタルコントロールとは、立てた戦略をきちんと遂行するために意識しておきたいことです。
お金とは感情的なもので、増えると嬉しくなったり、減ると怖くなったりします。
そのため、きちんと勉強して戦略を立てたとしても恐怖心がでてくると、事前に決めた売買ルールを遂行できなくなってしまうことが多いです。
基本的に1つの銘柄に対して投資資金が多い場合がほとんどなので、その辺も踏まえて投資金額を調節しながらメンタルコントロールをするのがおすすめです。
暴落株は値動きが激しいため、メンタルコントロールは特に大事だと言えます。
株の勉強はなぜ必要?初心者におすすめのステップと失敗しないためのコツ
よくある質問(Q&A)
Q1. 暴落した株は、とりあえず少しだけ買っておけば得をしますか?
A. 暴落直後の株価が「本当に割安なのか」「企業価値が損なわれていないか」はケースごとに違うため、下がったからといって機械的に買えば良いわけではありません。
業績・財務・配当の継続性などを確認し、自分で「なぜその株を買うのか」「どこまで下がったら撤退するのか」を説明できる状態になってから、投資の是非を判断することが大切です。
Q2. バリュー株投資をするなら、暴落するまで待った方がいいですか?
A. バリュー株投資は「割安状態の企業に長期で投資する」考え方であり、必ずしも暴落を待つ必要はありません。
暴落は割安度がより高まるきっかけになることもありますが、そもそも平常時から割安に放置されている銘柄もあります。
暴落を「狙う」のではなく、日頃から候補銘柄を研究し、想定範囲内の水準に来たら計画どおりに買えるよう準備しておくイメージが近いです。
Q3. ドルコスト平均法で買っていれば、暴落しても安心してよいのでしょうか?
A. ドルコスト平均法は購入単価のブレをならすのに役立ちますが、「損失が出ない」ことを保証するものではありません。
企業の業績悪化や事業環境の変化が続けば、長期的に株価が戻らないケースもあります。
あくまで一つの購入手法として活用しつつ、「どの銘柄を選ぶか」「どのくらいの期間・金額で続けるか」といった設計を合わせて考えることが重要です。
まとめ
暴落株には「ここが絶対の買い時」という明確なタイミングはありません。株価は需要と供給で動き、どこまで下がるかを完璧に予測することは不可能だからです。
ただし、暴落を“危険な場面”として避けるのではなく、“企業価値に対して株価が割安になる局面”として活かすことはできます。
特に、時価総額が大きく財務が安定し、長期的に配当を出し続けているバリュー株は、長い時間をかけて元の水準へ回復してきた実績が多く見られます。
また暴落株の投資では「買い方」も非常に重要です。
ドルコスト平均法で時間分散をしたり、3〜4年かけて少しずつ買い進めたりすることで、下落のブレを抑えながらリスクを管理できます。
さらに、投資手法の理解、資金管理、そしてメンタルコントロールといった基礎知識がそろってこそ、暴落局面でも冷静に判断できるようになります。
暴落株で利益を狙うには、「どの株を買うか」だけでなく、「どう買うか」「どれだけの資金で挑むか」「どんな戦略で継続するか」という総合的な設計が欠かせません。
今回の内容を参考にしつつ、自分に合った投資スタイルを固めながら、無理のない範囲で市場と向き合っていきましょう。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。







