政府保有株とは?個人投資家が投資するメリット・デメリットを解説

政府保有株,メリット

政府が企業の株式を保有する政府保有株。

個人投資家と政府保有株は、一見関係ないように見えますが、そんなことはありません。

政府保有株の中の一部の銘柄は、個人投資家も投資をすることが可能で、安定性など、魅力的な側面があります。

一方で、政府の方針によって株価が左右するリスクもあります。

政府保有株への投資は、メリットとデメリットを理解した上で、長期的な視点を持つことが大切です。

この記事では、政府保有株の基礎知識から、個人投資家にとってのメリット・デメリットまでくわしく解説します。

政府保有銘柄の特性を理解し、資産を安定的に増やしたいという方は最後まで読んでみてください。

目次

政府保有株とは?

政府保有株とは、政府が保有している企業の株式のことを指します。

企業の経営安定化や国策推進、財源確保などを目的に政府は投資を行なっています。

個人投資家にとっては、安定的な配当が見込める一方で、株価の変動が小さいといったデメリットがあります。

高配当であることや比較的、株価が安定していることから政府保有株は、長期投資に向いています。

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政府保有株のメリット

政府保有株のメリットは下記のとおりです。

  • 配当利回りが高い傾向
  • 株価が安定しやすい

配当利回りが高い傾向

政府保有株(企業)は、安定的な経営基盤を持っており、高配当を実現している企業も少なくありません。

例えば、政府保有株の1つである日本たばこ産業は、下記のとおりです。

JTの配当利回りは4.74%(2024年9月19日大引け時点)で、比較的高い配当利回りとなっています。

政府保有株のメリット 配当利回りが高い傾向

株価が安定しやすい

政府が保有する銘柄の株価が安定しやすいのは、政府という強力なバックボーンがあることが大きな要因です。

政府は長期的な視点で企業の経営に関わり、短期的な利益よりも安定した成長を重視する傾向にあります。

そのため、市場の短期的な変動に左右されにくく、株価の急激な上下を抑制する効果が期待できます。

例えば、日本郵政の過去5年間の株価の値動きは下記のとおりです。

政府保有株のメリット 株価が安定しやすい

2020年のコロナ渦以降、大きな暴落はなく比較的株価が安定して上昇しています。

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政府保有株のデメリット

政府保有株のデメリットは、下記のとおりです。

  • 政府が売却するリスクがある
  • 成長スピードが遅い傾向

政府が株を売却するリスクがある

政府が株を売却することで株価が大きく下落する恐れがあります。

国策を推進するための財源を確保するために、政府は保有している銘柄を売却することがあります。

過去には、震災の復興支援などの財源として一部売却して利用されていました。

近年では、特に防衛力の強化が求められており、財源確保のためにNTT法(政府に3分の1以上の株式保有を義務付けた法)を廃止にしようとする動きがみられています。

過去の政府保有株の売却状況は、財務省のホームページに掲載されており、下記で確認することができます。

政府保有株のデメリット 政府が売却するリスクがある

出典:財務省「政府保有株式の概要 政府保有株式の売却状況(令和5年11月更新)」

成長スピードが遅い傾向

政府保有株の企業は、成長スピードが遅い傾向があります。

政府が経営に関する権限を一部保有しており、一般的な民間企業と比較して迅速な意思決定が難しいからです。

こちらの内容に関して、JTのQ&Aページに記載がありましたので、紹介します。

政府保有株のデメリット 成長スピードが遅い傾向

出典:JT「よくあるご質問(当社状況)」

JTは、一部、経営に関する権限を財務省が持っており、現在認可を受けている事業とは別に新規事業を立ち上げる際に財務大臣の認可を受ける必要があります。

新しい事業を立ち上げるのに時間がかかるため、企業の成長スピードも鈍化する傾向にあります。

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政府保有株の中で上場しているのは3社

政府保有株で上場しているのは、下記の3社です。

政府保有株の中で上場しているのは3社

出典:財務省「政府保有株式の概要 政府出資及び政府保有株式について(令和5年11月更新)」

下記の3社は、個人投資家も投資することができます。

政府保有銘柄で上場している企業

  • JT(日本たばこ産業)
  • 日本郵政
  • NTT

JT(日本たばこ産業)

JTは、かつて日本のたばこ事業を独占していた特殊法人が民営化された会社です。

現在は、たばこ製品の製造販売だけでなく、医薬品や食品など幅広い事業を展開しています。

過去の売却状況

政府保有のJT株は、平成6年、平成8年、平成16年、平成25年に売却されています。

過去には、政府はJTの株式を大幅に保有していましたが、民営化を進める中で段階的に売却が進められてきました。

売却によって得られた資金は、国の財政赤字の解消や、東日本大震災の復興財源など、さまざまな目的に充てられています。

具体的な売却株数は、下記のとおりです。

JT 過去の売却状況

出典:JT「政府保有株の売却状況」

JT株売却株式数

  • 第1次売出 394276株
  • 第2次売出 272390株
  • 第3次売出 289334株
  • 第4次売出 253261800株

配当利回り

JTの配当株価は4.74%(2024年9月19日大引け時点)となっており、高配当を実現しています。

配当金は、6月・12月に権利が確定し、それぞれ9月・3月頃に入金がされます。

JT 配当利回り①

配当推移は、2012年から現状維持を挟みつつ増配の傾向となっています。

現状維持を挟みつつですが、増配が続いている年もあるので今後も期待できるかもしれません。

JT 配当利回り②

2012年の年間配当が68円で、2024年の年間配当は194円の予定となっています。

株価の安定度合い

先日(2024年8月)の日銀の利上げによる下落で株価が低迷していますが、コロナ渦以降から堅調に右肩上がりを続けています。

JT 株価の安定度合い

JTは、たばこ事業のほかに加工食品や医薬品の事業も行なっており、ディフェンシブ銘柄(株価の変動が比較的少ない銘柄)の特徴である食品・医薬品セクターでもあるので、他の銘柄と比較して安心して長期保有をすることができるでしょう。

日本郵政

日本郵政は、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険といった、私たちの身近なサービスを提供している企業を傘下に持つ持株会社です。

かつては国の機関でしたが、民営化され、現在は株式市場に上場しています。

過去の売却状況

日本郵政の株は過去に3回(2015年・2017年・2021年)売却されています。

具体的な株式売却数は、下記のとおりです。

日本郵政 過去の売却状況

日本郵政株売却株式数

  • 第1次売出(2015年) 495000000株
  • 第2次売出(2017年) 990099100株
  • 第3次売出(2021年) 1027477400株

2011年11月に成立した復興財源確保法により、日本郵政の株の売却益は、東日本大震災の復興支援の財源に充てることが定められています。

配当利回り

日本郵政の配当利回りは、3.58%です。

3%台の配当利回りであるため、比較的高いといえるでしょう。

日本郵政 配当利回り①

配当推移は、2017年3月期にに増配してからそのまま現状維持の状態が続いています。

日本郵政 配当利回り②

2016年3月期で年間配当25円で2025年3月期の年間配当は、50円の予定です。

株価の安定度合い

日本郵政の株価もコロナ以降、堅調に右肩上がりを続けています。

郵便事業は、景気の変動を受けにくいためそういった安心材料が株価にも反映されているのかもしれません。

日本郵政 株価の安定度合い

NTT

NTTは、かつて日本の電信電話事業を独占していた公社が民営化され、誕生した会社です。

現在は、日本を代表する通信会社として、固定電話やインターネット接続サービス、携帯電話サービスなど、幅広い通信サービスを提供しています。

過去の売却状況

NTTは、過去に複数回、株式の売却を行なっています。

詳しくは、下記のとおりです。

NTT 過去の売却状況

出典:財務省「政府保有株式の概要 政府保有株式の売却状況(令和5年11月更新)」

NTT株売却株式数

  • 昭和2年2月  195万株
  • 昭和2年11月   195万株
  • 昭和63年10月 150万株
  • 平成10年12月 100万株
  • 平成11年7月    4.8万株
  • 平成11年11月    95.2万株
  • 平成12年11月    100万株
  • 平成14年10月 9.2万株
  • 平成15年10月  8.5万株
  • 平成16年11月  80万株
  • 平成17年9月   112.3万株
  • 平成23年7月   5,751.4万株
  • 平成24年2月  4,182.1万株
  • 平成26年3月  2,601万株
  • 平成26年11月 3,508.9万株
  • 平成26年11月  106.8万株
  • 平成28年6月   5,900万株
  • 令和元年9月  4,866.7万株
  • 令和4年9月  9,292.5万株

配当利回り

NTTの配当利回りは、3.46%(2024年9月19日大引け時点)です。

利回りは3%台なので比較的、高めの配当利回りと言えるでしょう。

NTT 配当利回り①

2003年の0.5円から14期連続で増配を続けており、2024年度の配当金は5.2円の予想となっています。

NTT 配当利回り②

出典:NTT「株主還元(配当・自己株式取得)」

14年間連続増配の実績は、投資するうえでの安心材料となるでしょう。

株価の安定度

NTTも先日(2024年8月)の日銀による利上げ発表で、株価が低迷していますが、コロナ渦以降、堅調に右肩上がりが続いています。

NTT 株価の安定度合い

通信キャリア事業を行なっており、NTTもJTと同じくディフェンシブ銘柄に該当するため比較的安心して持ち続けることができるでしょう。

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個人投資家と政府保有銘柄は密接な関係がある

個人投資家と政府保有銘柄は、一見すると異なる立場にあるように思えますが、実は密接な関係で結ばれています。

実際、政府保有銘柄の中で上場をしている3社(JT・日本郵政・NTT)は個人投資家でも投資をすることができます。

政府が保有する株式は、その企業の安定性を示す一つの指標となり、個人投資家にとっては魅力的な投資先となる可能性があります。

一方で、政府の政策決定は、直接的に企業の業績や株価に影響を与えるため、個人投資家は政府の動向を常に注視するようにしましょう。

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まとめ

政府保有株とは、政府が保有している企業の株式のことを指します。

政府という強力なバックボーンを持っており、高い配当利回りや比較的株価が安定しているという特徴があります。

一方で、国策推進のための財源確保として保有株式の一部を売却する恐れがあり、その場合株価が大きく変動する可能性があるので注意しましょう。

個人投資家でも上場している3社(JT・日本郵政・NTT)は投資をすることができるので、個人投資家と政府保有銘柄は密接な関係で結ばれています。

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この記事の監修者

監修者プロフィール

トレード歴40年の株職人。“株匠” を目指している。
20歳で株の売買を始めてから20年間、
「日本郵船」1銘柄のみの「売り」「買い」に集中、大きな利益を重ねる。
その後、宮本武蔵が洞窟に籠もるかの如く、チャートと建玉の研究に没頭する。

現在も、チャートと建玉の操作のトレード手法をさらに極めるべく精進を重ねており、
日本株、米国株、イタリア指数、イギリス指数、ユーロ指数、金、原油、コーン、FXなど、
どの市場でも大きな利益を生み出している。

ラジオNIKKEI「相場師朗の株は技術だ!」でキャスターを務める。
東京証券取引所北浜投資塾講師、日本経済新聞社お金の学校講師。

この記事を書いた人

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。

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