新型コロナウイルスの影響もあり、株式市場が不安定な状態が続いています。
そんな中よくニュースで耳にした「サーキットブレーカー」という言葉を聞いた方も多いのではないでしょうか?
あまり馴染みがない方もいらっしゃるかと思いますので、この機会にサーキットブレーカーとはどのようなものなのか、市場にどのような役割を果たしているのか、一緒に見ていきましょう。
この記事でわかること
- サーキットブレーカーとは何か
- サーキットブレーカー制度が生まれた理由
- 各国のサーキットブレーカー導入基準
サーキットブレーカーとは?
サーキットブレーカーとは、株式市場においてマーケットが異常なほどに過熱して、株価が短期的に大きく変動してしまった際に、トレーダーの頭を冷やす目的で株式取引をストップする制度のことです。
1度取引を停止させることで、その間にトレーダーたちの正確な判断能力を取り戻し、株式市場を正常に戻す取り組みをおこなっています。
サーキットブレーカーという制度が生まれた理由
では、サーキットブレーカーという制度はどのようなきっかけで生まれたのでしょうか?
それは、1987年にアメリカで起きた「ブラックマンデー」という出来事にあります。
ブラックマンデーとは1987年10月19日、その名のとおり月曜日のことで、ニューヨーク株式市場が大暴落した日です。具体的にはダウ工業株30種平均(NYダウ)が1日の間に、なんと508ドル(22.6%)も下落しました。これは過去最大の下落幅でした。
ちなみに、今回新型コロナウイルスの影響によって発動した1回目のサーキットブレーカーは、S&P500が取引開始から7%下落したことによるものです。ブラックマンデーでは、この3倍以上も株価指数が下落したということですね。
ブラックマンデーは、当時アメリカが財政赤字と貿易赤字という「双子の赤字」を抱えていて、ドル安によるインフレが懸念されたことが大きな原因だと考えられています。
また、失業率が高かったことも一因とされています。
合わせて、ルールや条件に則って自動的に売買をおこなう「プログラム売買」が大暴落を加速させたともいわれているようです。もちろんこのニューヨーク株式市場の大暴落は世界中に波及して、日本を含む多くの国が株安に陥っています。
アメリカがこれ以上のドル安に陥ることに危機感を抱いた各国は1987年2月22日にG7を開催し、ドル下落をストップさせて為替レートを安定させる目的で、協調政策をとることが決定されました。これがルーブル合意です。
しかしルーブル合意は、G7参加国の1つである西ドイツのインフレが懸念されていたため、あまり順調には進みませんでした。そして同年9月にはアメリカの反対を押し切り、西ドイツはインフレ対策として、金利を引き上げる運びとなりました。
この動きは各国に対して「ルーブル合意はうまくいっていないのではないか」と思わせる出来事となり、同年10月19日、西ドイツが金利を引き上げた1カ月後にブラックマンデーが起こったということになります。
このようにブラックマンデーは、さまざまな出来事が複雑に絡み合っておこった出来事だといえます。
これをきっかけに、株式市場がパニックに陥ったときに過剰な売買を抑制する必要があるということから、ニューヨーク証券取引所ではサーキットブレーカーが導入され、1994年には東京証券取引所の先物市場でも導入されました。
サーキットブレーカーの発動基準
次に、サーキットブレーカーがどのような基準で発動されるのかについて、ニューヨーク証券取引所を例として見ていきます。
厳密には、サーキットブレーカーはレベル1~3の3段階で発動されます。
- レベル1…NYダウが前日から10%下落→最大で1時間売買停止
- レベル2…レベル1の取引再開後も下落が止まらず、さらに10%下落→最大で2時間売買停止
- レベル3…レベル2の取引再開後の下落が止まらず、合計で30%下落→その日の売買が打ち切られる
市場の混乱から1度離れてトレーダーの頭を冷やし、市場を正常に戻そうとする目的でおこなわれるサーキットブレーカーですが、原因が消滅もしくは解消されない限りは取引再開後何度でも下落し続ける可能性があります。
売る要因が残っている以上効果が十分には得られない状態なので、制度を変革するべきだという声もあるようです。
アメリカ以外のサーキットブレーカー
サーキットブレーカーという制度はアメリカが発端ですが、現在では日本・中国・韓国などで同制度が導入されています。下記で解説していきましょう。
日本
日本では、1994年に先物市場を対象に導入されました。
具体的には、先物価格が一定数値を超えて大幅に変動した場合に、売買が10分間停止となります。
2001年9月のアメリカ同時多発テロ、2008年9月のリーマンショック、2011年の東日本大震災などの際に発動されました。
中国
中国では、2016年に導入されました。
具体的には、中国の代表的な株価指数であるCSI300が前日比5%を超えて変動すると、すべての株式取引と先物取引が15分間停止となります。
さらに7%を超えて変動すると、その日の売買がすべて停止となります。
上記で見たように日本では先物市場のみが対象となっていますが、中国では現物市場も対象となっているというのが大きな違いです。
なんと制度が導入された初日に発動されるという異例の事態も起きています。
韓国
2001年に導入されました。総合株価指数であるKOSPIおよびKOSDAQ指数の先物価格が、基準価格から5%以上、1分間以上にかけて乖離した場合に売買が5分間停止となります。
まとめ
- サーキットブレーカーとは、株式市場が大きく変動し過熱してきたときに、市場の混乱を抑えるため売買を一時的に停止する制度のこと
- NYダウが22%も下落したブラックマンデーを機に導入された
- アメリカ以外に、日本・中国・韓国でも導入されている
いかがでしたでしょうか?
本記事ではタイムリーな話題として「サーキットブレーカー」について解説してきました。
株式市場に関するニュースがたくさん飛び交っているここ数日ですが、これを機に、サーキットブレーカーについて知ることができたかと思います。
人体への影響だけかと思われた新型コロナウイルスですが、気付けば株式市場にも大きな影響を与える存在となっています。
株価チャートを冷静に分析することができれば、こうしたマーケット状況でも利益を上げることが可能です。
サーキットブレーカーという制度が導入されていますが、それ以上に自分も冷静になることを意識して、株式市場を客観的に見ることができるように努めていきましょう。
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著者プロフィール
根本 卓(株塾・インテク運営責任者)
1年間勉強・練習後に2013年から株式投資を運用資金30万円から開始。
地道に続け、7年後に月500万円の利益を出せるように。
その経験を活かし、株塾サービスに反映・インテク記事を書いています。