代用有価証券のリスクとは?デメリット・仕組み・二階建てなどわかりやすく解説

代用有価証券とは?リスクやデメリットをわかりやすく解説

代用有価証券は、信用取引の委託保証金として現金の代わりに差し出せる有価証券の総称です。

便利に見えますが、担保である以上「評価額が変動する」「制度・規程に左右される」といった固有の弱点があります。

本記事では、デメリットや注意点などわかりやすく解説していきます。

   
目次

代用有価証券とは?

まずは「代用有価証券」が一体どのようなものなのかについて、ご説明していきます。

前提として代用有価証券は「信用取引」において扱われるもので、信用取引とは証券会社からお金もしくは株を借りて株を買ったり空売りをして、取引をしたりすることをいいます。

このときなにもなしにお金を借りたり株を借りたりできるわけではなく、「委託保証金」という本人の信用を証明するための現金などの資産を、担保として差し出す必要があります。

この委託保証金の割合(「委託保証金率」)は、法令で信用取引における約定代金の「30%以上」と定められており、その額は30万円以上である必要があります。

実はこの委託保証金は現金が原則なのですが、現金以外にも有価証券で代用することが可能です。

この委託保証金としての現金の代用のための有価証券のことを、代用有価証券といいます。

代用有価証券の種類

では、委託保証金として代用できる主な代用有価証券の種類をご紹介します。

  • 国内の証券取引所に上場している株(外国株も○)
  • 国債
  • 地方債
  • 特別な法律により法人が発行する債券
  • 国内の証券取引所に上場している社債(転換社債型新株予約権付社債券などを除きます)または国内の証券取引所にその株が上場している会社が発行する社債で、かつ外国法人以外の会社が発行するもの
  • 国内の証券取引所に上場している転換社債型新株予約権付社債券または国内の証券取引所にその株が上場している会社が発行する新株予約権付社債券で、かつ外国法人以外の会社が発行するもの
  • 国内の証券取引所に上場している外国国債
  • 国内の証券取引所に上場している外国地方債
  • 国際復興開発銀行円貨債券
  • アジア開発銀行円貨債券
  • 投資信託受益証券および投資証券(国内の証券取引所に上場しているもの、および投資信託協会が前日の時価を発表するものに限ります)

新株予約権証券・抵当証券・国内CPなどは代用有価証券とはなりませんので、ご注意ください。

また、上記に該当していても代用有価証券として不適格とされる銘柄が定められていることがあります。たとえば以下のとおりです。

  • 整理ポスト銘柄
  • 証券保管振替機構の非取扱銘柄

また、代用有価証券と信用取引において購入する有価証券が同じ場合を「二階建て取引」といいます。

代用有価証券のリスクと評価額

手元に現金がない方でも委託保証金として有価証券を代用して信用取引ができるので、非常に便利ですよね。

ただし、現金のように“代用有価証券そのものの額=委託保証金の額”となるわけではありません。

というのも代用有価証券には現金とは違って、価格が変動するリスクが存在するからです。

証券会社からすると委託保証金として受け取った代用有価証券が、価格下落によって大幅に価値がなくなってしまったら、それを担保としてお金や株を貸し続けることはできませんよね。

そのため、代用有価証券の評価額の算出方法が定められています。

代用有価証券の評価額は、前日の時価(市場があるものは終値、ないものは最終の気配値)にそれぞれ定められている現金換算率(代用掛目)をかけて得た額を超えない額です。

現金換算率(代用掛目)は証券会社によって異なることがあるのですが代表的なものは以下のとおりです。

上場している市場や銘柄などによって異なることもあれば、市場の動向によって金融商品取引所が変更することもあります。

  • 国内の証券取引所に上場している株…80%
  • 国債…95%
  • 地方債…85%

では、上記を用いて“国内の証券取引所に上場している時価50万円の株”の代用有価証券としての評価額を求めてみましょう。

答えは、40万円(=50万円×80%)です。

このようにして求めた代用有価証券の評価額は、定められている委託保証金の金額を満たす必要があるのでご注意ください。

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二階建て取引のリスク

上記でも少し触れましたが、代用有価証券と信用取引において購入する有価証券の銘柄が同じである取引のことを「二階建て取引」といいます。

これには、一般的な代用有価証券よりも大きなリスクが生じます。

というのも、信用買いによる評価額と代用有価証券による委託保証金の増減が同じ方向に動くためです。

もしその銘柄の時価が下落してしまったら、信用買いによって評価損を被るだけではなく委託保証金が減少するため、不足してしまった分の追加証拠金(追証)を支払わなければならなくなります。

代用有価証券を用いるときは、できるだけ価格変動によるリスクをヘッジできるような銘柄を選ぶことが望ましいでしょう。

評価タイミングとタイムラグの注意

株式は前日終値、投信は基準価額、外債・外株は国内上場分でも為替反映のタイミングが異なります。

すなわち「担保の評価は一歩遅れて反映」されがちです。

日中の急変で建玉の評価損が拡大しても、担保側の反映は翌営業日となるケースが多く、その時点で一気に維持率が下がり追証に接近することがあります。

とくに権利落ち・分配落ち・為替変動が同じタイミングで重なると、想定以上の落ち込みになりやすい点が要注意です。

配当・権利落ち・貸株・諸費用の影響

配当権利落ちで株価が下がると、担保評価も同時に低下します。

貸株設定中は分配金相当額の受取形態が変わることもあり、担保の評価・現金収支に小さくない影響を与えます。

信用取引では金利・貸株料・管理費用などの諸費用も発生し、維持率の計算上は見えにくい「じわじわ効く要因」となります。

配当・分配の日程、貸株の有無、費用の発生頻度を、担保計画に織り込んでおく必要があります。

外国資産・投信の固有リスク

外株・外債・外貨建てETF/投信は、原資産の値動きに加え為替の影響を受けます。

円高方向に振れると、原資産が横ばいでも円換算の担保評価は下がりえます。

さらに投信は基準価額の算出・公表が翌営業日になることが多く、相場急変と評価反映のタイムラグが拡大する傾向があります。

指数入替や組入変更、信託報酬の水準なども、長期的な担保価値の伸びに影響するため、商品特性の理解が欠かせません。

よくある質問Q&A

Q1. 代用に向き・不向きはある?

A. 一般論として、価格変動や為替感応度が高いもの、流動性の薄いものは担保価値のブレが大きくなりがちです。

代用の可否・掛目・評価方法は商品ごとに異なるため、受入一覧と規程の確認が前提となります。

Q2. 追証はどのように発生しやすい?

A. 建玉の評価損と担保評価の目減りが同時進行すると、信用維持率が急低下します。

二階建て、権利落ちと下落の重複、掛目引下げと相場安の重複など、複合要因のときに発生しやすい傾向があります。

まとめ

    代用有価証券は、保有資産を活用して信用余力を生む仕組みですが、現金担保と異なり評価が日々変動します。

    相場の値動き、掛目の見直し、受入停止、評価タイミングのラグ、権利落ち・分配・諸費用、為替や流動性など、複数の要因が同時に担保価値に影響します。

    とくに二階建てや高相関の組み合わせでは、建玉の評価損と担保評価の減少が同方向に進み、信用維持率の低下が速くなりがちです。

    代用の対象と掛目、評価方法、受入条件を事前に確認し、日程(配当・分配・指数入替)と為替、費用発生のポイントを把握しておくと、予期しない担保目減りを構造的に理解できます。

    制度・規程は各社で異なり、見直しもあり得るため、最新の受入一覧と取引ルールの確認が欠かせません。

    信用取引における「委託保証金」とは?信用取引のリスクを理解しよう

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    この記事の監修者

    監修者プロフィール

    トレード歴40年の株職人。“株匠” を目指している。
    20歳で株の売買を始めてから20年間、
    「日本郵船」1銘柄のみの「売り」「買い」に集中、大きな利益を重ねる。
    その後、宮本武蔵が洞窟に籠もるかの如く、チャートと建玉の研究に没頭する。

    現在も、チャートと建玉の操作のトレード手法をさらに極めるべく精進を重ねており、
    日本株、米国株、イタリア指数、イギリス指数、ユーロ指数、金、原油、コーン、FXなど、
    どの市場でも大きな利益を生み出している。

    ラジオNIKKEI「相場師朗の株は技術だ!」でキャスターを務める。
    東京証券取引所北浜投資塾講師、日本経済新聞社お金の学校講師。

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    この記事を書いた人

    著者プロフィール
    根本 卓(株塾・インテク運営責任者)
    1年間勉強・練習後に2013年から株式投資を運用資金30万円から開始。

    地道に続け、7年後に月500万円の利益を出せるように。

    その経験を活かし、株塾サービスに反映・インテク記事を書いています。

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