株式投資を始めると、まず悩みやすいのが「成行注文」と「指値注文」の違いです。
どちらも基本的な注文方法ですが、約定のされ方やメリット・リスクの特徴は大きく異なります。
本記事では、成行注文と指値注文の仕組みを整理しつつ、板や出来高といった判断材料も交えながら、使い分けの考え方をわかりやすく解説します。
成行(なりゆき)注文とは?
成行注文は、値段を指定せずに注文する方法です。
株式投資の原則として指値注文よりも優先して約定(=取引成立)するため、より早く売買を完了させたい方に向けた注文方法といえます。
大きな特徴は、投資家本人が価格指定をしない注文方法という点です。成行(なりゆき)という言葉通り、注文を入れた時の価格に合わせて約定します。
例えば以下の場合ですと、自分が成行の買い注文を出している場合、最も低い売り注文の101円で約定します。また、成行の売り注文を出している場合は、最も高い買い注文99円で約定します。
- 最も低い売り注文=101円
- 株価=100円
- 最も高い買い注文=99円
もう1つの特徴は、価格指定できない代わりに、指値注文よりも優先的に約定できる仕組みになっていることです。
成行注文のメリット

成行注文のメリットは、下記の2点があります。
- 指値注文よりも優先的に約定できる
- 利益の取りこぼしを防ぐことができる
指値注文より優先的に約定できる
株式投資の原則によって指値注文よりも優先的に約定できる点です。
また、価格指定が不要なため、現在のマーケットの状況に合わせて自動で価格設定と約定が決まります。
例えば、マーケットが下落気味に変わった際に、保有している株式を即座に売りたいとした場合などは成行注文が役立ちます。
指値注文よりも優先的に約定する原則がありますから、悪材料が出た際に指値注文が殺到しても先に約定するように決められています。
ただし、成行注文同士の場合は、その中で先に注文を入れた方が、約定成立するため注意が必要です。
利益の取りこぼしを防ぐことができる
株価が上昇トレンドだとしても、一時的に下がるケースがあります。
そのようなケースでは、指値注文の場合は自動的に約定されてしまい、本来取れるべきだった利益を取りこぼしてしまうこともあります。
成行注文であれば、一時的な下落などの判断を自分で行うことができるため、株価を見る目を養っていけば、利益の最大化をした上で、約定することができるでしょう。
株価が安定していて出来高が多い銘柄で売買を行う場合は、成行注文で約定を行う方が、優先的に約定も行うことができるので、メリットが大きいでしょう。
成行注文のリスク
成行注文のリスクは、予想していなかった高値で買ってしまうケースがある点です
たとえば、現在の株価が100円で110円まで売りの注文が入っていなかったとしましょう。
そうすると、最低価格で売りが入っている110円で約定されることになります。
このようなリスクは、おもに出来高が少ない銘柄でトレードをした際に発生するリスクです。
なぜなら、買い注文をした際に売りのニーズがない株だと、成行注文をした際に予想以上の高値になることがあるからです。
出来高が多い銘柄であれば、売りと買いのニーズが大きく食い違うというケースはあまりないでしょう。
リスク回避のためには、出来高が多い銘柄でトレードをすることにしましょう。
指値注文とは

指値注文は、希望の買い・売りの価格を指定する注文方法です。
成行注文との違いは、価格指定と約定成立の仕組みです。
まず価格指定についてですが、買い注文の場合は現在株価よりも低い価格でのみ注文できます。
また、売り注文の場合は、反対に現在株価よりも高い価格でのみ注文できる仕組みになっています。
さらに、約定成立するためには、指値注文を入れた価格まで株価が下がらなければいけません(売りの場合は上がる)。
例えば以下の場合、買い注文を99円で入れて約定させるためには、現在の株価が99円まで下がらなければ成立しません。
- 指値の売り注文=101円
- 現在の株価=100円
- 指値の買い注文=99円
また、指値注文には、約定成立について順番が決められています。
買い注文の場合は上から約定していきます。
- 買い注文の価格が最も高い
- 買い注文の価格が真ん中や安い位置だが、他の注文よりも早く注文した
- 買い注文の価格が真ん中や安い位置だが、他の注文よりも遅く注文した
しかし、この順番は必ずしも守られる訳ではありません。その日の始まり値と終値となる取引の場合は、板寄せ方式といって別のルールが採用されます。
指値注文のメリット
指値注文のメリットは、希望価格で注文を指すことができる点でしょう。
成行注文の場合は、一瞬で株価が変動して予想外の価格で売買してしまうことがあります。
特に、株価が安定していない銘柄で取引きをする場合は、指値注文の方が安心だといえるでしょう。
指値注文のリスク
指値注文のリスクは、買い・売り約定されるまでに時間がかかりやすい点です。
また、希望価格で注文できるのは、買い注文では株価よりも下の価格帯、売り注文では株価よりも上の価格帯と決められています。
例えば値動き幅が少ない状況で買い注文を入れたとして、その後上昇傾向へと切り替わったと仮定します。
買い注文の原則は、現在株価よりも下の価格でしか注文・約定できないということです。
つまり株価が下がった場合にのみ約定可能なため、現在株価から一旦下がらず上昇してしまうと約定できないことになります。
反対に売り注文の場合も、現在株価を基準として最も安い価格で注文したとしても、その後下落してしまった場合は約定できません。
こうした売買成立の仕組みが、指値注文に伴うリスクといえます。
成行注文と指値注文をどう使い分けるか
成行注文と指値注文は、どちらか一方が常に優れているというよりも、「何を優先したいか」「今の相場環境がどうなっているか」によって選び方が変わる性質があります。
ここでは、値動きの大きさや出来高、取引の目的といった観点から、一般的にどのような考え方で使い分けが行われているかを整理し、注文方法に迷ったときのチェックポイントをまとめます。
場面別に見る成行・指値の使い分けの考え方
注文方法を考える際の一つの軸が、「どれくらい価格が動いているか」です。
決算発表直後や重要なニュースが出た直後など、価格が素早く動きやすい場面では、「今のポジションを早めに手仕舞いしたい」「新たなポジションを一度にまとめたい」と考えるケースもあります。このようなときは、約定を優先しやすい成行注文が用いられることがあります。
一方、値動きが比較的落ち着いている時間帯や、日中の中で徐々に注文を執行していきたい場合には、あらかじめ価格を決めておける指値注文が用いられることもあります。
もう一つの軸が「流動性(出来高)と板の厚さ」です。
出来高が多く、板に十分な売り・買いの注文が並んでいる銘柄では、成行注文を出しても現在値に近い価格で約定しやすい傾向があります。
反対に、出来高が少なく板が薄い銘柄では、成行注文を出した際に、注文が板の離れた価格帯まで一気に約定してしまう場合もあるため、価格のブレが大きくなりやすいと言われます。そのような銘柄では、許容できる範囲の価格を意識して指値を使う考え方もあります。
このように、「価格をどこまで優先するのか」「どれくらい早く取引を成立させたいか」「対象銘柄の出来高は十分か」といった観点から、成行と指値の特徴を踏まえて選択していくことが多くなります。
状況ごとの一般的な傾向を知っておくと、自分の中で判断材料を整理しやすくなります。
注文方法で迷ったときのチェックポイント
実際に注文画面で迷ったときには、いくつかのチェックポイントを確認してみると、自分にとってどちらの注文方法が適しているか考えやすくなります。
例えば、「今回の取引では、どれくらい急いで売買を成立させたいか」「今回の取引で、価格のブレをどこまで許容できるか」といった点です。
約定のスピードを重視するのか、価格の条件を優先したいのかによって、選びやすい注文方法は変わってきます。
また、「銘柄の出来高や板の厚さはどうか」を確認することも役に立ちます。
板を見たときに、現在値の近くに多くの注文が並んでいるか、それとも価格が飛び飛びになっているかによって、成行注文を出したときの価格のブレやすさをイメージしやすくなります。
さらに、「一度にすべて約定する必要があるのか」「複数回に分けても良いのか」といった、自分の取引方針も考慮に入れると、判断が整理しやすくなります。
最終的には、「今回の目的と、許容できるリスクの範囲」を自分なりに言葉にしてみることが、注文方法を選ぶ際の軸になります。
成行と指値のどちらかに固定するのではなく、その都度チェックポイントを確認しながら、状況や目的に合わせて選択していくイメージを持っておくと、注文ボタンを押す際の不安を和らげやすくなります。
【よくある質問】株の注文方法で迷ったときのQ&A
Q1. 初心者は成行注文と指値注文、どちらから始めるべきですか?
A. 初めは成行注文に慣れておくのがおすすめです。
理由は、取引成立がスムーズで実際の相場の動きを体感できるからです。
指値注文は有利な価格で売買できますが、約定しないことも多く、売買の経験が積みにくい点があります。
Q2. 成行注文で高値づかみするのを防ぐにはどうすればいいですか?
A. 出来高の多い銘柄を選ぶことが大切です。
出来高が少ないと、注文が薄くて思わぬ高値で約定する可能性があります。
安定銘柄かつ流動性のある銘柄で取引することで、予想外の価格での売買リスクを抑えられます。
まとめ
成行注文と指値注文は、どちらも株式売買における基本的な注文方法ですが、その性質は大きく異なります。
成行注文は約定のしやすさを重視し、価格は市場の状況にゆだねる仕組みであり、指値注文は価格条件を優先し、その条件を満たした場合のみ取引が成立する仕組みです。
それぞれのメリットとリスクを、板や出来高、値動きの大きさといった要素とあわせて理解することで、自分にとって納得感のある選択がしやすくなります。
ぜひ、本記事を参考に、成行注文と指値注文それぞれの特徴を確認し、ご自身の目的や状況に合った注文方法を選んでみてください。
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著者プロフィール
根本 卓(株塾・インテク運営責任者)
1年間勉強・練習後に2013年から株式投資を運用資金30万円から開始。
地道に続け、7年後に月500万円の利益を出せるように。
その経験を活かし、株塾サービスに反映・インテク記事を書いています。







