株式投資の勉強をしていると、単純移動平均線というものがでてきますよね。
株価チャートをみると移動平均線があるのはわかるけど「どのようにみたらいいの?」と疑問がでてくるでしょう。
そこで今回は、単純移動平均線の仕組みや見方について徹底解説します。
単純移動平均線とはなに?
ここでは、単純移動平均線とはなんなのかについて解説します。
単純移動平均線を解説する前に、前提知識として移動平均線についても紹介します。
移動平均線とは
単純移動平均線について解説する前に、移動平均線とはそもそもなんなのかについて解説します。
移動平均線とは、株価チャートに表される線グラフのようなものです。
移動平均線は、一定期間の終値の平均値を線でつないで形成されます。
移動平均線を使うとノイズとなる日々の細かな価格変動を取り除き、より明確に市場のトレンドがわかるようになります。
株価が毎日上下に動くなかで、相場の流れを見極めるのは難しいものですが、移動平均線を使うと簡単にトレンドを把握することが可能です。
また、移動平均線は市場に参加している多くの投資家たちの考えや感情が総合的に表れたものとして捉えられます。
移動平均線は単純な仕組みながら、市場が買い優勢か売り優勢かを判断する上で貴重な情報を提供してくれる、テクニカル分析における基本的かつ強力なツールです。
単純移動平均線(SMA)とは
単純移動平均線(SMA)とは、移動平均線の1種です。
移動平均線にはいくつかの種類があり、単純移動平均線はそのなかで最もオーソドックスなものとなります。
他の移動平均線の種類として、指数平滑移動平均線(EMA)や加重移動平均線(WMA)があります。
指数平滑移動平均線(EMA)や加重移動平均線(WMA)は、単純移動平均線(SMA)に比べると直近の価格を反映しやすく設定されている特殊な移動平均線です。
ですが単純移動平均線は、そのような設定がなく一定期間の終値の平均をとっただけのシンプルなものとなります。
ちなみに、単純移動平均線と移動平均線は同じ意味で使われることが多いです。
指数平滑移動平均線(EMA)や加重移動平均線(WMA)については後ほど詳しく解説します。
単純移動平均線の仕組み
単純移動平均線(SMA)は、過去一定期間における株価の終値の平均を線で表したものです。
イメージとしては、株価の平均的な動きを表す滑らかな線です。
計算方法は以下のとおりです。
- SMA = 過去n日間の終値合計 ÷ n
具体例として、5日SMAでみてみましょう。
5日目 | 500円 |
4日目 | 400円 |
3日目 | 300円 |
2日目 | 200円 |
1日目 | 100円 |
(500円 + 400円 + 300円 + 200円 + 100円) ÷ 5 = 300円
この計算を毎日更新し、得られた値をつなぐとSMAのラインが形成されます。
SMAの特長は、計算対象となる全期間の株価を均等に扱うため、株価の急激な変動に対しても緩やかに反応することです。
そのため、市場の短期的な値動きに惑わされず大局的なトレンドを把握したい投資家にとって理想的なツールとなっています。
単純移動平均線の3つの見方
単純移動平均線の3つの見方を紹介します。
ここで説明する見方は、以下のとおりです。
- 1.単純移動平均線の向きに注目
- 2.単純移動平均線の角度に注目
- 3.単純移動平均線と株価の位置に注目
それぞれ解説します。
1.単純移動平均線の向きに注目
単純移動平均線の向きに注目すると、相場のトレンドがひと目で判断できます。
上向きに傾いている単純移動平均線は、市場で買いたい人が売りたい人より多い状況で上昇トレンドを表しています。
上昇トレンドは強気相場とも呼ばれ、多くの投資家に株価上昇が期待されている状態です。
反対に、下向きに傾いている単純移動平均線は、売りたい人が買いたい人より多い状況で下降トレンドを示しています。
下降トレンドは弱気相場といわれていて、投資家は市場全体を悲観的にみています。
そして横ばいの状態は「レンジ相場」と呼ばれ、買いと売りの力が拮抗している状態です。
レンジ相場では、株価が一定の範囲内で上下動を繰り返すことが多く、明確な方向性がでるまで様子見をする投資家も少なくありません。
このように、単純移動平均線の向きに注目するだけで、現在のトレンドを簡単に把握できます。
単純移動平均線の角度に注目
単純移動平均線の角度に注目すると、トレンドの「強さ」を判断できます。
角度が急であればあるほど、そのトレンドの勢いが強いことを意味しています。
たとえば、緩やかに上を向いている単純移動平均線と比べて、急な角度で上を向いている単純移動平均線は、市場の上昇圧力がより強いです。
単純移動平均線の角度をみることで、その株の将来の値動きを予想できます。
たとえば、単純移動平均線が急角度で上昇している株は、短期間で大きな利益を得られる可能性がある一方で、急激な調整が入るかもしれないと想定できます。
逆に緩やかな角度で上昇している株は、今後もじわじわと時間をかけて上がっていくと考えられるため長期投資に適した銘柄ともとれるでしょう。
このように、単純移動平均線の角度を観察することで、トレンドの勢いやその値動きの予測までできるようになります。
単純移動平均線と株価の位置に注目
株価が単純移動平均線よりも上にあるのか下にあるのかに注目すると、相場に参加している投資家の心理がわかります。
単純移動平均線は「ある期間(n日間など)に株を買った人の平均購入価格」ともいえます。
ということは、現在の株価が単純移動平均線を上回っていればその期間(n日間)に購入した投資家の多くが利益を得ている状態だと推測することができるでしょう。
利益を出している投資家は楽観的で保有を続ける傾向があるため、相場は問題なく上昇を続けると考えられます。
反対に株価が単純移動平均線を下回ると、多くの投資家が損失を抱えます。
そのため、投資家たちはさらなる下落を恐れて売りにでやすくなり、結果として株価は下げる可能性が高いと推測できるでしょう。
このように、株価と単純移動平均線の関係をみるだけで、市場全体の心理状態と今後の動きを予測する手がかりが得られます。
【プロ直伝】移動平均線の最適な設定値とは?設定変更の方法についても解説します
単純移動平均線の期間設定
単純移動平均線を使いこなすには「多くの投資家が注目している期間」を選ぶことが最も効果的です。
なぜなら、多くの投資家が同じ期間の単純移動平均線をみていると、その線を意識した売買が行われやすくなるからです。
つまり、単純移動平均線を利用した推測が当たる可能性が上がります。
では、実際にどの期間を設定すべきなのか、具体的にみていきましょう。
日足チャートでよく使われる期間
ほとんどの投資家は短期・中期・長期の3種類の移動平均線を組み合わせて使っています。
日足チャートで多くのトレーダーが採用している期間は以下のとおりです。
設定期間 | 意味 | |
短期 | 5日、10日 | 1週間、2週間 |
中期 | 25日、50日 | 1ヵ月、2ヵ月 |
長期 | 75日、100日、200日 | 3ヵ月、4ヵ月、8ヵ月 |
これらの期間が特に重視される理由は、相場では1週間(5日間)や1ヵ月(25日)という節目が多くの投資家に意識されるからです。
また、企業の決算発表が3ヵ月(約75日)ごとにあることも、この期間が重視される大きな要因となっています。
週足・月足チャートでの期間設定
日足以外のタイムフレームでも、同様の考え方で期間設定ができます。
週間チャート
設定期間 | 週間 | 意味 |
短期 | 13週 | 3ヵ月(四半期) |
中期 | 26週 | 半年 |
長期 | 52週 | 1年 |
月足チャート
設定期間 | 月数 | 意味 |
短期 | 6ヵ月 | 半年 |
中期 | 12ヵ月 | 1年 |
長期 | 24ヵ月 | 2年 |
週間・月足チャートで多くの投資家に利用されている設定期間は表のとおりです。
応用方法の1つとしては、10日や50日など日足チャートでみていたものを、週足チャートで2週や10週などに設定して観察するのがおすすめです。
そうすることで、ノイズとなる小さな値動きを排除でき、トレンドを読みやすくなります。
このように、1つの相場を様々な角度からみて分析するとレベルアップできるので試してみてください。
自分に合った期間を見つけるコツ
単純移動平均線の日数を設定する上で重要なのは、「絶対的な正解はない」ということです。
投資スタイルや投資期間によって、最適な設定は変わってきます。
たとえば、短期トレードをメインにしているなら、5日、10日、25日といった短めの期間設定が効果的です。
反対に、長期投資を心がけている方なら、50日、100日、200日といった長めの設定が相場の大きな流れを捉えるのに役立つでしょう。
最終的には、いくつかの期間設定を試してみて、自分の取引スタイルに合ったものを見つけていくのがおすすめです。
単純移動平均線以外の移動平均線
単純移動平均線以外にも様々な移動平均線の種類があります。
ここでは指数平滑移動平均(EMA)と加重移動平均線(WMA)について解説します。
指数平滑移動線(EMA)
指数平滑移動線(EMA)は「直近の価格変動に強く反応する」という特徴を持つ移動平均線です。
単純移動平均線(SMA)が過去のすべてのデータを均等に扱うのに対し、EMAは直近のデータを重視して計算されます。
EMAの計算式は以下のとおりです。
- EMA={直近の価格×2+1つ前までのEMA×(n-1)}÷(n+1)
ここでのnは期間を表します。
式だけみると少し難しいですが、実際に計算してみると簡単です。
具体例として、5日間のEMAを計算してみましょう。
5日目 | 500円 |
4日目 | 400円 |
3日目 | 300円 |
2日目 | 200円 |
1日目 | 100円 |
5日EMA = (500+500+400+300+200+100) ÷ 6 = 333.333円
この計算からわかるように、EMAは直近の価格(500円)が2回カウントされています。
これによりEMAは、SMAよりも市場の変化に早く反応する移動平均線となっています。
ちなみにEMAは、トレンドの転換点をいち早く察知できるため短期トレードを行う投資家に人気です。
加重移動平均線(WMA)
加重移動平均線(WMA)は「最近の価格に対し比例的に重みをつける」という特徴を持つ移動平均線です。
WMAは、SMAよりも市場の変化に敏感に反応しつつも、EMAほど過敏ではないバランスのとれた指標だといえます。
WMAの計算式は、以下のとおりです。
- WMA={(Pn×n)+(Pn-1×(n-1))+…+(P2×2)+(P1×1)} ÷ n+(n-1)+…+2+1
Pnは最新の価格、P1は最も古い価格、nは期間を表します。
計算式だけみると難しいので。具体例として、5日間のWMAを計算してみましょう。
日数 | 価格 | 重み | 加重価格 |
5日目 | 500円 | 5 | 2,500円 |
4日目 | 400円 | 4 | 1,600円 |
3日目 | 300円 | 3 | 900円 |
2日目 | 200円 | 2 | 400円 |
1日目 | 100円 | 1 | 100円 |
合計 | 15 | 5,500円 |
5日WMA = 5,500円 ÷ 15 = 366.666円
WMAではこのように最新のデータほど大きな重みを与え、古いデータほど小さな重みを与えます。
つまり、最新の値動きを重視しながらも、過去のデータも適切に考慮した平均値が得られます。
短期的なトレードでEMAを利用しているけど、感度が強すぎると思う方はWMAを使ってみるのもおすすめです。
株におけるゴールデンクロスの勝率は35.71%!過去20年間のデータから徹底検証
単純移動平均線の使い方
ここでは、単純移動平均線の具体的な使い方を紹介します。
今回紹介する使い方は、以下のとおりです。
- ゴールデンクロス
- デッドクロス
- グランビルの法則
それぞれみていきましょう。
ゴールデンクロス
ゴールデンクロスは「相場が上昇トレンドに転換した可能性がある」という買いシグナルとなります。
短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上へと突き抜ける状態が、ゴールデンクロスです。
短期の移動平均線が長期の移動平均線を上抜けるということは、最近の価格動向が過去の平均を上回っていて供給よりも需要が増えている証拠です。
つまり、市場の勢いが弱気から強気へと転換する可能性を示しています。
このタイミングで買いポジションをとると、上昇トレンドの初期段階からエントリーできるチャンスを掴めます。
実際の例でみてみましょう。
このように、ゴールデンクロスがおこったタイミングで取引をすると、上昇トレンドの初期段階で参加ができます。
デッドクロス
デッドクロスは「相場が下降トレンドに転換したかもしれない」という売りシグナルです。
デッドクロスとは、短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下へと突き抜けることを指します。
実際の例をみてみましょう。
このようにデッドクロスがおこると、相場は下げています。
短期の移動平均線が長期の移動平均線を下回るということは、株を買う人より売る人の方が多くなってきていることを示しています。
そのため、デッドクロスが発生したら株を売却したり、買い増しをやめたりするのがおすすめです。
グランビルの法則
グランビルの法則は、移動平均線を活用した取引戦略の基本原則で、ジョゼフ・E・グランビルによって確立されたものです。
買いシグナルと売りシグナル、それぞれ4つずつあります。
買いのシグナルとして注目すべき4つの状況
- 株価が移動平均線を下方から上方へ突破
- 株価が一時的に移動平均線を下回った後、すぐに回復して上昇を再開
- 上昇トレンド中の株価が調整局面で下落しても移動平均線を割り込まず、その後再び上昇に転じる
- 下降トレンドの移動平均線から大きく乖離して価格が急落した後、反発上昇が予想される場合
売りのシグナルとして注目すべき4つの状況
- 株価が移動平均線を上方から下方へ突破し、下落が継続
- 下降トレンド中に株価が一時的に移動平均線を上回ったものの、すぐに下落基調に戻る
- 下降トレンド中の株価が上昇局面で移動平均線まで到達したが突破できず、再び下落に転じる
- 上昇トレンドの移動平均線から上方へ乖離して価格が急騰し、大幅な調整が見込まれる場合
グランビルの法則は、移動平均線でエントリーする際の基礎となります。
今後投資家として取引を重ねる上でグランビルの法則を応用する可能性も十分あり得るので、頭の片隅においておくのがおすすめです。
まとめ
今回は、単純移動平均線とはなんなのかについて解説しました。
単純移動平均線は株価チャート分析の基本ツールとして、市場のトレンドを把握するのに有効です。
また単純移動平均線の向き・角度・株価との位置関係から、相場の方向性や強さ、投資家心理を読みとれます。
このように単純移動平均線は、シンプルでありながら多くのシグナルを発してくれる優れたツールです。
テクニカル分析では、基本的かつ実用性が高いツールで上級者の方でも利用している人が多いので、ぜひこの記事を参考に使ってみてください。
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株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。