信用取引や先物取引では、利益を得て損失を抑えるために、建玉を正確に把握することが重要です。
建玉がわからないまま取引をしていると、「たくさんの利益を出したい」「資産を形成したい」と考えていても、上手くいきません。
今回は、建玉とは何か、どのような点に注意すればよいかを解説します。
建玉とは
まずは、建玉について解説します。
買建玉と売建玉
信用取引では、証券会社から資金を借りて株を買い付けたり、株を借りて売却したりします。
これらの取引は、反対売買で決済されるまで、常に「建玉」として保有されている状態です。
あくまで信用取で使われる言葉であり、引現物株を保有しても建玉を持っているとは言いません。
一般的にはポジションと呼ばれることが多く、ポジションを決済することは「ポジションを外す」または「ポジションを解消する」と表現されます。
また、建玉には買建玉と売建玉の2種類があります。
新規建と決済の流れ
まず、投資家はこれから株価が上がる銘柄を予測し、証券会社から資金を借りて株式を買い付けます。
買い建てた株式を売却すると、建玉が解消するという流れです。
買付価格より高く売れれば利益が出て、安く売れれば損失が生まれます。
もしくは、投資家はこれから株価が下がる銘柄を予測し、証券会社から株券を借りて売却します。
売り建てた株式を購入すると、建玉が解消するという流れです。
売却価格より安く買い戻せれば利益が出て、高く買い戻せば損失が生まれます。
いずれのケースでも、決済が完了すれば建玉は消滅し、利益・損失が確定します。
信用取引や先物取引には決済期限があり、期限に間に合わなければ強制決済となるため注意しましょう。
なお、新規建てには証拠金が必要です。
建玉を保有している間は証拠金が担保となり、建玉の評価損が大きくなると追証を求められるリスクが高まります。
建玉数量・建玉金額の確認方法
建玉状況を把握していなければ、現在の含み益を把握できず、次の決済タイミングなど戦略を立てることができません。
また、証拠金維持率を確認することで、追証のリスクを低減できます。
確認方法は証券会社にもよりますが、一般的には「資産状況」「口座管理」「建玉一覧」「ポジション照会」といったところから閲覧できるでしょう。
確認画面からは、以下のような情報を得られます。
建玉と他要素の関係性
建玉と様々な要素との関係性について解説します。
建玉と証拠金維持率の関係
証拠金維持率とは、必要証拠金に対して実際にどのくらいの証拠金を差し入れているかを表す比率です。
以下の計算式で算出されます。
建玉を増やすと、必要証拠金が増えて証拠金維持率は低下します。
含み益が出ると証拠金維持率は上昇し、含み損が出ると証拠金維持率は低下します。
レバレッジをかけすぎると、わずかな値動きで証拠金維持率が急低下するので注意しましょう。
証拠金維持率が一定の水準を下回ると、追証が発生し強制ロスカットが行われます。
建玉整理とロスカットルールの関係
建玉整理とは、保有している建玉を計画的に縮小することです。
具体的には、含み益が出ている分は利確し、含み損が出ている分は損切します。
リスクが大きくなりすぎるとロスカットされる可能性が高まるため、一定ラインで建玉を減らすことが重要です。
市場の状況や自身のメンタルにあわせて、多少の損失を出すことで致命的な損失を避けましょう。
また、感情に揺さぶられて損切りできないケースも珍しくないため、事前に建玉整理とロスカットのルールを決めておくことがおすすめです。
建玉残高と需給分析の関係
建玉残高とは、未決済の建玉がどの程度あるかを表す数値です。
信用取引残高などが代表例で、先物・オプション市場では未決済建玉と呼ばれます。
特定の銘柄の建玉残高が急増している時、その銘柄が投資家の関心を集めていることを示します。
また、買い建てた建玉が増加している「買い残」と、売り建てた建玉が増加している「売り残」のバランスを見ることで、その銘柄の需給が買い方優位か売り方優位かを見極めることが可能です。
過去の株価と建玉残高の推移を比較し、株価の転換点やトレンドを見つけることもできます。
しかし、建玉残高だけでは必ずしも正確に判断できないため、出来高やテクニカル指標などを併用して多角的に分析しましょう。
建玉比率とマーケットセンチメントの関係
建玉比率とは、信用取引において買い方と売り方のバランスを示す指標です。
先物・オプション市場では、買い建玉と売り建玉の比率を表します。
買い残が多い場合は、投資家は楽観的に市場を見ており、将来の値上がりを期待する買い方が多数を占めています。
過熱すると、潜在的な売り圧力が高まり株価反落のリスクが生まれるでしょう。
売り残が多い場合は、投資家は悲観的に市場を見ており、将来の値下がりを期待する売り方が多数を占めています。
過熱すると、将来の買い戻しによって株価が上昇する可能性が生まれるでしょう。
また、信用評価損益率は、信用取引の買い方が現在どの程度の含み損を抱えているかを示す指標です。
この数値が大きくマイナスになっている場合、買い方の投げ売りが一段落し、間もなく株価が底打ちする可能性があります。
建玉にまつわる資産形成のコツ
建玉を用いてどのように資産形成すればよいか、コツを解説します。
日計り・両建てと建玉管理について理解する
日計り取引とはいわゆるデイトレードのことで、売買を当日中に完結させる取引手法です。
日計り取引では建玉を翌日に持ち越さないため、金利や貸株料などの建玉保有コストが発生しません。
市場が開いていないタイミングでの災害や経済指標発表などによる、株価変動リスクも回避できます。
ただし、取引中は市場を監視し、迅速に判断する集中力とスキルが必要となります。
両建てとは、同じ銘柄で買い建玉と売り建玉を同時に保有することです。
相場の方向性が見えない場合、両建てすることで含み益を確保しつつ損失を限定できます。
ただし、手数料や金利などのコストは2倍かかります。
建玉期間による金利・貸株料コストを抑える
建玉を保有する期間が長いほど、コストが発生し利益を圧迫します。
コストを抑えるには、無暗に建玉を保有せず、数量を最適化することが大切です。
資金力やリスク許容度にあわせて、適度な建玉数量を維持しましょう。
建玉報告書を読む
建玉報告書とは、証券会社が提供する建玉に関する報告書です。
いわば成績表のようなもので、管理画面やメールなどから確認できます。
建玉報告書には様々な項目がありますが、以下のポイントを確認しましょう。
建玉報告書を読むことで、含み損が拡大している建玉や、証拠金維持率が低下している状況を早期に発見し、損切や追加資金投入などの対策を打てます。
また、金利や貸株料などのコストを正確に把握でき、成績の良い銘柄を特定して今後の取引に活かせるといったメリットもあります。
建玉に関するよくある質問
建玉に関するよくある質問について回答します。
建玉とは何ですか
建玉とは、信用取引や先物取引において、まだ決済されていない未確定の売買契約です。
一般的にはポジションと呼ばれており、買建玉と売建玉の2種類があります。
建玉の数量や金額は、証券会社のウェブページやアプリにある、「資産状況」「口座管理」「建玉一覧」「ポジション照会」などから閲覧可能です。
投資において建玉をどう活かせばいいですか
建玉を保有する期間が長いほど、コストが発生し利益を圧迫します。
コストを抑えるには、短期決済で建玉の保有期間を短くすること、買方金利や貸株料の低い証券会社を選ぶことなどが重要です。
また、建玉報告書は必ず読んでください。含み損が拡大している建玉や、証拠金維持率が低下している状況など、早急に対策を打つべき事項を見つけることができます。
まとめ
今回は、建玉について解説しました。
建玉とは未決済のポジションのことで、新規建てで発生し、決済で解消されます。
市場全体の建玉残高を確認し、需給関係や投資家心理を把握しましょう。
また、建玉報告書を読み、現在の状況を正確に理解することを心がけてください。
こういった工夫を重ねることで、収益を伸ばしていくことができます。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。