「のれんってどんな意味なんだろう?」と疑問に思っていませんか?
M&Aのニュースでのれんという言葉をみかけたものの、具体的にどのような意味なのかわからないから知りたいという方が多いようです。
そこで今回は、のれんの概要について解説します。
また、投資家がのれんで気をつけなければいけないこともご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
【初心者向け】決算短信の見方を解説!決算短信に出てくる用語も紹介
のれんとは
本章では、のれんの概要について理解するために、以下の内容を解説します。
- のれんとは
- 負ののれんとは
それぞれみていきましょう。
のれんとは
のれんとは、M&Aで支払った買収価額が、相手企業の純資産(時価)を上回った場合に生じる差額を指します。
純資産とは、会社が持つ資産から負債を差し引いて残る、正味の財産を意味する会計用語です。
買収価額には、ブランド力・技術力・顧客基盤・優秀な人材といった、帳簿に載らない無形の価値が上乗せされます。
たとえば、時価純資産5億円の会社を8億円で買収した場合、差額の3億円が、買収前の相手の帳簿には載っていなかった、潜在的な価値であるのれんです。
なお、のれんは貸借対照表(会社の財産状況をまとめた決算書類)で、「無形固定資産」として記載されます。
負ののれんとは
負ののれんとは、買収価額が相手企業の純資産(時価)を下回った場合に生じる差額のことを指します。
たとえば、時価純資産5億円の会社を4億円で買収した場合、差額の1億円が負ののれんです。
負ののれんの発生原因としては、帳簿に載らない簿外債務(隠れた借金)や、訴訟リスクを抱えているケースなどが挙げられます。
なお、日本の会計基準では、負ののれんを貸借対照表に計上せず、発生した年度に損益計算書の特別利益として処理します。
のれん・負ののれんの計算例
のれん・負ののれんは「買収価額−相手企業の純資産(時価)」というシンプルな引き算で計算できます。
計算結果がプラスならのれん、マイナスなら負ののれんに区分される、とてもわかりやすい仕組みです。
具体的には、以下のようになります。
| 項目 | のれんの例 | 負ののれんの例 |
| 買収価額 | 8億円 | 4億円 |
| 相手企業の純資産 | 5億円 | |
| 差額 | +3億円=のれん | ▲1億円=負ののれん |
買収価額と純資産を見比べるだけで計算できるため、M&Aのニュースに触れる際も、ぜひ意識してみてください。
有価証券とは?株・債券との違いや決算書での意味までわかりやすく解説
会計基準ごとののれんの取り扱い
のれんの会計処理は、企業がどの会計基準を採用しているかによって大きく変わります。
本章では、以下3つの会計基準の取り扱いを解説します。
- 日本会計基準
- IFRS(国際財務報告基準)
- 米国会計基準
それぞれみていきましょう。
日本会計基準
日本会計基準では、のれんを20年以内の「効果の及ぶ期間」にわたって規則的に償却します。
のれんが表す超過収益力は永遠に続くものではなく、時間とともに価値が薄れていくと考えられています。
たとえば、3億円ののれんを10年で償却する場合、毎年3,000万円が「のれん償却費」となります。
業績悪化など価値下落のサインがみられる場合には、償却とは別に減損処理も求められます。
償却費の分だけ毎期の利益が押し下げられる点は、日本基準の企業を分析するうえで重要なポイントです。
決算書を読む際は、営業利益がのれん償却費でどれだけ削られているかにも注目してみましょう。
IFRS(国際財務報告基準)
IFRSとは、世界共通の会計ルールを目指して作られた、国際的な会計基準のことです。
IFRSでは、のれんの規則的な償却を行わない「非償却」というルールが採用されています。
償却しない代わりに、最低でも年1回の減損テスト(価値の下落を調べる検査)が義務付けられています。
テストの結果、価値の下落が確認された場合には、減損損失を計上しなければなりません。
償却費が発生しない分、日本基準の企業と比べて買収後の利益は大きく見えやすいです。
一方で業績が悪化すると、一度に巨額の減損損失が発生するリスクを抱えている点には注意しましょう。
米国会計基準
米国会計基準(US GAAP)でも、公開企業についてはIFRSと同じく、のれんの規則的な償却は行いません。
原則として年1回の減損テストが必要ですが、定性的評価によって詳細なテストを省略できる場合もあります。
定性的評価とは、数値の計算ではなく事業環境などの状況から判断する、簡易的なチェック方法のことです。
細かな手順に違いはあるものの、大枠はIFRSと同じ「非償却・減損テスト型」に分類されます。
決算発表が株価に与えるインパクトとは?トレード成功のために押さえるべきポイント
のれんの償却とは
本章では、のれんの償却について、投資初心者がまず押さえておきたい3つのポイントを解説します。
- のれんの償却とは
- のれんの償却期間
- のれんの償却方法
なお、前章でも解説したとおり、IFRS(国際財務報告基準)や米国会計基準の公開企業は、のれんの償却はありません。
そのため、本章の内容は日本会計基準の内容となります。
のれんの償却とは
のれんの償却とは、資産計上したのれんを一定期間にわたり、規則的に費用として配分していく会計処理です。
たとえば、3億円ののれんを10年で償却する場合、毎年3,000万円ずつ費用化して帳簿価額を減らします。
のれん償却費は、損益計算書の「販売費及び一般管理費」に含めて計上する決まりです。
損益計算書とは、一定期間にいくら稼ぎ、いくら使い、その結果どのくらいの利益(または損失)が出たかを示す、会社の成績表のような書類です。
費用が増える分、本業のもうけを表す「営業利益」が押し下げられる点も覚えておきましょう。
のれんの償却は、買収にかけたコストを、長い期間に分けて利益に反映させる仕組みといえます。
のれんの償却期間
日本会計基準におけるのれんの償却期間は「20年以内の効果が及ぶ期間」と定められています。
のれんの効果が続く期間は買収案件ごとに異なるため、各企業が合理的に見積もって設定する決まりです。
実務では、投資額を回収できるまでの期間などを目安に、5〜10年程度で設定されるケースが目立ちます。
一度決めた償却期間は、合理的な理由がない限り途中で変更できないルールですが、償却期間の長さは毎年の費用額を左右するため、企業には慎重な判断が求められます。
投資家の立場でも、気になる企業がどれほどの期間で償却しているかを確認しておくと安心です。
のれんの償却方法
のれんの償却方法として、実務では毎年同じ金額を費用にする「定額法」が広く用いられています。
たとえば、3億円ののれんを10年で定額償却する場合、仕訳は「(借方)のれん償却費3,000万円/(貸方)のれん3,000万円」です。
なお、負ののれんは償却の対象外で、発生した年度に特別利益として一括で計上します。
のれんの減損とは
本章では、のれんの減損について、以下2つの内容を解説します。
- のれんの減損とは
- のれんの減損の仕訳例
それぞれみていきましょう。
のれんの減損とは
のれんの減損とは、買収した事業の収益性が下がり、帳簿上の価値が実態を上回っている場合に、帳簿価額を回収可能価額まで減額する処理を指します。
回収可能価額とは、資産の「使用価値(将来キャッシュ・フローの現在価値)」と「正味売却価額(時価から処分費用見込額を控除した金額)」のいずれか高いほうの金額です。
買収時に見込んだ超過収益力が失われたままのれんを残すと、決算書が実態とかけ離れてしまうため、減損処理を行います。
減損した金額は「減損損失」として特別損失に計上され(日本基準では特別損失、IFRSでは営業費用)、当期純利益を大きく押し下げるため注意が必要です。
一度の減損で赤字へ転落する企業もあり、株価下落の引き金にもなり得るため警戒しておきましょう。
のれんの減損の仕訳例
のれんの減損では、「減損損失」を費用計上するとともに、同じ金額だけのれんの帳簿価額を直接減らします。
たとえば、帳簿価額3億円ののれんに2億円の減損が必要となった場合、仕訳は「(借方)減損損失2億円/(貸方)のれん2億円」です。
つまり、仕訳を行った結果、のれんの帳簿価額は3億円から1億円まで一気に減少することになります。
決算発表で減損の文字をみかけたら、金額の大きさと発生した理由を必ず確認する習慣をつけましょう。
【初心者向け】ファンダメンタルズ分析とは?テクニカルとの違いと基本の使い方をわかりやすく解説
株でのれんをみる際の注意点
のれんがある会社に投資する際、気をつけたいポイントは「償却負担」と「減損リスク」の2つです。
たとえば、日本基準の企業では、多額ののれんを計上すると、償却費が毎年の利益をじわじわと圧迫し続けます。
IFRSの企業では償却がない分、業績悪化のタイミングで巨額の減損損失が一気に発生するおそれがあります。
のれんを計上している企業へ投資する場合は、投資先の会計基準を確認し、のれんの規模と償却・減損の影響を事前に見極めることが重要です。
テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の違いは?初心者に向けた使いどころと実践手順
よくある質問
のれん代の金額はどうやって決まるのですか?
M&Aにおけるのれん代は、「買収価格 − 時価純資産」で算出します。
ただし、前提となる買収価格の決め方には絶対的なルールがなく、売り手と買い手の交渉によって決定されます。
なお、買収価格が時価純資産を上回る要因としては、買い手がブランド力・技術力・人材といった、帳簿に表れない無形の価値などを、どれだけ高く評価するかが影響します。
IFRSを採用している企業はどこで確認できますか?
IFRSの採用企業は、日本取引所グループ(JPX)の公式サイトで確認できます。
JPXが「IFRS適用済・適用決定会社一覧」のページを公表しており、誰でも簡単に閲覧可能です。
また、各企業の有価証券報告書や決算短信にも、採用している会計基準が記載されています。
まとめ
今回は、のれんの概要や会計基準ごとの取り扱いなどについて解説しました。
のれんはM&Aで生じる差額であり、会計基準によって償却の有無や減損テストの扱いが異なります。
特に注意したいのは、「償却負担」と「減損リスク」が買収後の業績へ長期間影響を与える点です。
本記事を参考に、のれんの仕組みを理解したうえで企業分析に役立ててみてください。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。





