「金はインフレに強い」「金は安全資産」などと聞いて、金に投資したいと考えている方もいるのではないでしょうか。
「でも実物の金を買って保管するのはハードルが高いし……」と思ったときに便利なのが金ETFです。
少額から手軽に金価格に連動した投資ができる金ETFは、初心者にも人気の選択肢です。
この記事では、金ETFの基本から代表的な銘柄、選び方のポイントまでを解説します。
金ETFとは?現物の金より手軽に投資できる仕組み
まずは、金ETFとはどのようなものか、金の現物投資との違いについて解説します。
金ETFとは?
金ETFとは、金の価格に連動して値動きする上場投資信託のことです。
ETFとは株式のように証券取引所で売買できる投資信託の一種で、金ETFはその中でも金価格に連動するタイプのETFです。
実際の金を購入して保管する代わりに、ETFを通じて間接的に金に投資できる仕組みになっているのが特徴です。
「金に投資したいけど、現物は保管や購入が面倒」という方にとって、金ETFはとても便利でしょう。
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金現物との違いとETFのメリット
金現物への投資と金ETFの大きな違いは、手軽さと流動性です。
現物の金を購入する場合、金地金やコインを金販売業者で買い、保管や盗難対策を自分で行わなければなりません。
保管料や買い取り時の手数料も意外と負担になります。
一方、金ETFであれば、証券口座を通じて株式と同じように取引できるため、売買のタイミングを見ながら柔軟に運用できます。
また、1口あたり数千円〜数万円程度で購入できる商品が多く、少額から始められるのも魅力です。
ただし、金ETFはあくまで金価格に連動する金融商品であり、実際に金そのものを保有しているわけではありません。
また、ETFである以上、信託報酬が発生することや為替の影響も受ける点は理解しておきましょう。
金ETFの代表的な種類(国内・海外)
ここでは、実際に投資できる代表的な金ETFについて、日本国内と海外に分けて紹介します。
日本国内で買える代表的な金ETF
日本国内で購入できる金ETFには、東京証券取引所に上場しているものがあります。
これらはすべて円建てで取引されるため、為替の影響を受けにくいのが特徴です。
代表的な「金価格連動型上場投信(1328)」は、純粋に金の価格に連動するタイプのETFです。
ほかにも「純金上場信託(1540)」は、金のグラム・円単位の理論価格との連動を目指しており、一定の条件で貴金属現物に交換できる点が特徴です。
これらのETFは、楽天証券やSBI証券など主要なネット証券で取り扱われており、証券口座があればすぐに購入できます。
海外の有名な金ETF
海外ETFの中で世界的に有名なのが、アメリカ市場に上場している「SPDRゴールド・シェア(GLD)」です。
これは世界最大級の金ETFで、金価格の動きを忠実に反映することで知られています。
また、「iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)」も人気があり、GLDよりも信託報酬が低いことが特徴です。
ただし、これらのETFは米ドル建てであるため、円建てのETFと比べて為替リスクがある点には注意が必要です。
金価格が上がっていても、円高が進むと日本円での評価額が下がる可能性があります。
金ETFを選ぶ際にチェックしたい4つのポイント
ここでは、数ある金ETFの中から自分に合った商品を選ぶ際に確認しておきたい、4つの重要な比較ポイントについて解説します。
①為替ヘッジの有無
まず最初に注目したいのが、為替ヘッジの有無です。
国内の金ETFは基本的に円建てで取引されますが、海外ETFは米ドル建てです。
そのため、ドル円相場の影響を受けることになります。
金価格が上昇していても、円高が進むと日本円での評価額が下がる可能性があります。
逆に、円安になると金価格以上に評価額が増えるケースもあります。
為替の影響をなるべく避けたい方は、為替ヘッジがある商品や、国内ETFを選ぶと安心です。
一方、「通貨分散も含めて運用したい」「ドル資産を増やしたい」という方は、あえて為替の影響を受ける商品を選ぶという考え方もあります。
②信託報酬(コスト)
次に大切なのが、「信託報酬」と呼ばれる保有コストです。
金ETFを保有している間は、信託報酬が年率で発生します。
これは商品によって差があり、長期保有すればするほどコストの差が結果に大きく影響します。
たとえば、国内ETFである「純金上場信託(1328)」の信託報酬は年0.5%程度。
一方、米国ETFの中でも人気の「SPDRゴールド・シェア(GLD)」は約0.4%、より低コストな「iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)」は0.25%程度です。
数値がわずかに見えても、10年保有する場合にはかなりの差になりますので、できるだけ信託報酬が低いETFを選ぶことが、長期保有には有利です。
③現物保有型か価格連動型か
金ETFには「実際に金を保有しているタイプ」と「金価格に連動するだけのタイプ」があります。
現物保有型のETFでは、ファンドが金の現物を信託財産として保有しており、金の裏付け資産としての信頼性が高いとされています。
日本の「純金上場信託(1328)」や、米国の「SPDRゴールド・シェア(GLD)」などがこのタイプに該当します。
一方、価格連動型はあくまで金価格に合わせて価格が動く仕組みですが、必ずしも金現物を保有しているわけではありません。
コスト面や流動性にメリットがある一方、裏付け資産がないことに不安を感じる人もいます。
どちらが良いかは一概に言えませんが、現物資産を間接的に保有したい方には、現物保有型が向いているでしょう。
④流動性と取引のしやすさ
最後に見ておきたいのが、売買のしやすさです。
取引量が少ないETFは、希望するタイミングで売買できなかったり、買値と売値の差が大きくなってしまうことがあります。
国内ETFでは「金価格連動型上場投信(1328)」のように、日中も活発に取引されている銘柄であれば、比較的スムーズに売買できます。
海外ETFの場合も「SPDRゴールド・シェア(GLD)」や「iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)」といったメジャーな銘柄であれば、世界中で流動性が高いため安心です。
投資目的に応じて金ETFを使い分けよう
この章では、金ETFを「長期保有」か「短期売買」かの視点で使い分ける考え方を解説します。
「守りの資産」にする長期保有スタイル
まずは、長期保有のスタイルについてご紹介します。
金はインフレ対策や有事の備えとして、世界中で安定資産と見なされてきました。
株式や債券と異なり、金は通貨の価値が下がるような局面でも一定の価値を保ちやすいと言われています。
こうした特性から、資産全体の一部として金ETFを保有しておくことはリスク分散につながります。
このような長期保有スタイルに適しているのは、信託報酬が低く、現物を裏付けにしているタイプのETFです。
また、毎月一定額を積み立てていくスタイルであれば、価格の上下にとらわれず淡々と買い続けられるため、精神的にも安定して続けられますよ。
ボラティリティを活かす短期売買スタイル
金の値動きを利用して短期間で利益を狙いたい方には、ボラティリティのある局面を活かす短期売買スタイルもあります。
たとえば、金価格が急騰しそうな材料が出たときや、株式市場が大きく崩れたタイミングなどでは、一時的に金価格が注目されることがあります。
そうした局面では、価格の動きに対して素早く反応しやすいETFを選ぶことで、タイミング投資の武器として活用することも可能です。
ただし、短期投資にはリスクもつきものです。
金価格は思わぬ材料で変動することもあり、思惑と反対に動くことも珍しくありません。
価格だけに一喜一憂せず、しっかりと戦略を立てて運用することが大切です。
金ETFを購入する前に知っておきたい注意点
ここでは、金ETFを買う前にぜひ知っておいていただきたい注意点を3つご紹介します。
金ETFの価格=金価格ではない
金ETFは金の値動きに連動するから、金価格が上がればETFの価格も上がると思われがちですが、実は完全に一致するとは限りません。
その理由は、金ETFの価格が為替や投資家の需給、信託報酬などに影響されるためです。
特に海外ETFの場合は米ドル建てであるため、為替相場の変動が大きく影響します。
そのため、金価格だけを見て投資判断をするのではなく、ETFという金融商品の仕組みを踏まえた上で考えることが大切です。
信託報酬など保有コストが年単位でかかる
金ETFは保有しているだけで信託報酬と呼ばれる管理手数料がかかります。
これは年率0.2%〜0.5%ほどが一般的で、保有期間が長くなればなるほど、その分のコストが資産から差し引かれていくことになります。
また、商品によっては金の保管コストや監査費用などが含まれているケースもあります。
こうしたコストは価格に含まれる形で反映されるため、表面上は分かりづらいのが注意点です。
長く保有するなら、信託報酬が低いETFを選んだ方が有利と覚えておくと、コストを抑えた運用がしやすくなりますよ。
売買時にスプレッドがあるため、タイミングも重要
ETFは市場で株式のように取引されるため、買値と売値の間に差(スプレッド)があります。
この差が大きいと、売買を繰り返すたびにコストがかさんでしまいます。
特に取引量の少ないETFや、相場が急変しているタイミングではスプレッドが広がりやすい傾向があります。
初心者の方は、できるだけ流動性が高く、取引量が多いETFを選ぶようにすると、売買のストレスが減りますよ。
金ETFに関するよくある質問
最後に、金ETFに興味を持つ初心者の方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q1. 金ETFと金先物は何が違うのですか?
金ETFは、金価格に連動する仕組みで運用されている投資信託であり、比較的価格が安定していて、長期保有にも向いています。
一方、金先物は将来の価格を予測して取引する金融商品で、満期日や証拠金制度があるなど、短期的な取引や投機目的で使われることが多いです。
初心者の方には、シンプルでわかりやすく、少額から始められる金ETFのほうが取り組みやすいでしょう。
Q2. 新NISAで金ETFを買うことはできますか?
はい、一部の国内上場の金ETFは新NISAで購入することが可能です。
ただし、米国上場の金ETFは、新NISAの対象外となることがあるため注意が必要です。
証券会社の取扱商品リストで対象商品として明記されているかを事前に確認しておくと安心です。
Q3. 金ETFはいつ買うのがいいですか?
金価格は日々変動しているため、今が買い時かどうかを判断するのはとても難しいです。
特に初心者の方は、タイミングを狙って一括購入するよりも、少額ずつ定期的に積み立てるスタイルが安心です。
積立であれば、価格の高低に関係なく毎月一定額を購入するため、リスクを分散しながらコツコツと資産を増やすことができます。
まとめ
金ETFは、金の現物を持たずに少額から投資できる手軽な金融商品です。
インフレ対策や資産の分散手段として注目されており、長期保有にも短期売買にも対応できるのが魅力です。
ただし、金ETFがそのまま金価格とは限らず、為替や信託報酬の影響を受ける点には注意が必要です。
この記事で紹介した比較ポイントや代表的な銘柄を参考にしながら、ご自身の投資目的に合ったETFをじっくり選んでいきましょう。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。