株価はなぜ上がったり下がったりするのでしょうか?
「会社の人が決めているのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、実際には投資家同士の“やり取り”の中で自然に決まるものです。
株式市場では、買いたい人と売りたい人の希望価格がぶつかり合い、需給のバランスによって価格が変動していきます。
つまり、株価は常に投資家たちの期待や不安、判断が映し出された“市場の心理”ともいえるのです。
本記事では、株価がどのように決まるのかを、初心者の方にもわかりやすく解説します。
株式投資の仕組みを理解する第一歩として、株価の決まり方をしっかり押さえておきましょう。
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株価は需要と供給のバランスで決まる
株価は、投資家たちの需要と供給のバランスで決まります。
なぜなら、株価はモノの値段と同じように決まっているからです。
そもそも買う人も売る人もいなければ、そこに値段はつきません。
○○円で買いたい、○○円なら売ろう、といって初めて値段が付くわけです。
株価は、買いたい人と売りたい人によって決められていくのです。
買いたい人が多ければ株価は上がる

株を買いたい人が多ければ多いほど、株価は上がっていきます。
オークションをイメージしてみてください。
100円のものが一つあるとして、それをどうしても買いたい人がたくさんいるとします。
そうなると「100円で買います」「それなら私は101円で買います」「私は103円で買う」と価格はどんどん上がっていきます。
需要が高いため、株価もそれだけ上がっていくのです。
売りたい人が多ければ株価は下がる

株を売りたい人が多ければ多いほど、株価は下がっていきます。
100円のものが100個あるのに対して買い手が一人しかいない場合、買ってもらうために「うちは98円で売るよ」と低い価格で売ろうとするからです。
供給が多すぎて株価が下がっていくわけです。
もちろん需要が低いために株価が下がるケースもあります。
100円のものがあっても誰も買わない場合、買ってくれる値段まで売り手は下げていきます。
「99円でも誰も買わない」「98円でも誰も買わない」「97円でようやく買ってもらえた」と価格は下がっていくのです。
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株価に影響を及ぼす情報はさまざま
株価に影響を及ぼす情報はさまざまです。
投資家たちが「買いたい」「売りたい」という思ったきっかけは、そのまますべて株価に影響があるからです。
皆買っているから買いたい、ということもあれば、業績悪化のニュースを見て売りたいと思うこともあります。
株価に影響を及ぼす主な情報は以下の通り。
- 業績
- 人気
- これまでの値動き
- 政治
- 国際情勢
- 外国為替
- 自然災害や天候
それぞれ詳しく実例付きで解説していきます。
業績
企業の業績は、株価に影響を及ぼします。
業績が好調であれば、「この株の価値はこの先どんどん上がっていくかも」と期待が集まり株価も上がっていきます。
逆に業績が悪化していれば、「この先価値は下がっていきそう」と売ろうとする人が多くなり株価は下がります。
実際に業績が出る前に、株価に影響があるときもあります。
例えば企業から新商品が発表され話題になった時などは、「この新商品はたくさん売れる!業績も良くなるはず!」と買いたい人が殺到し、株価が急上昇することがあるのです。
株価が上がった例

コロナによる業績上昇を見込んで、株価が急上昇した例です。
自宅で過ごす時間が増えたことにより、出前需要が高まることを予想する投資家が多く、出前館の株価が上昇していきました。
株価が下がった例

ヤマハの例を見てみましょう。
2023年の4~6月期連結決算を発表した翌日に、株価が下落しました。
8月2日の終値が5,457円、その後決算が発表され、8月3日は始値4,906円からスタート、そのまま終値4,662円となっています。
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人気
銘柄の人気度合いは、株価に影響を及ぼします。
皆が買っているから買う、という動きをする投資家がいるからです。
実際に「人気ランキング」や「出来高ランキング」など、順位が高い銘柄はそれだけ注目が集まっており、取引する投資家の数も多いといえます。
取引が多ければ、それだけ株価の変動も起きやすくなるわけです。
株価が上がった例

2023年1月11日に、四季報の「厳選注目株」に掲載されたテノ.ホールディングスは株価670円でした。
しかし掲載後株価上昇を続け、最高値1,268円にまでなっています。
注目を集めた結果、株価上昇の勢いが強まったことがわかります。
株価が下がった例

2023年3月8日、マツモトのとあるSNSでの投稿が炎上しました。
同日鳥山明氏が亡くなったタイミングで、「パン信はザラキを唱えた。マツモトには効かない」と投稿。
ドラクエの呪文を使った投稿だったため、関わりの深い鳥山明氏の訃報に便乗しているのではと批判が相次ぎました。
また投稿の内容も、信用取引でいっぱいいっぱいな人(パン信)がザラキ(売り)を強めているが株価に影響はないよという煽りめいていたことも火に油を注ぐ事態となりました。
これまでの値動き
これまでの値動きによって、株価が影響を受けることもあります。
過去の値動きが影響をもたらすのは、テクニカル分析があるからです。
これまでの値動きから今後の値動きを分析するテクニカル分析では、「ここで下がったなら買い」「このパターンは売り」というテクニックが存在します。
その通りに動く投資家が多ければ多いほど、実際にそれだけ買い・売りが発生し株価に影響を及ぼしかねないのです。
株価が上がった例

ソフトバンクのチャートに、カップウィズハンドルが出現した結果、株価が上昇した例です。
カップウィズハンドルは、コーヒーカップのような形をしており、株価上昇のシグナルとされています。
もちろん他にも株価上昇の材料はあったでしょうが、「カップウィズハンドルだ!」と買いを入れた投資家も多かった可能性が高いです。
カップウィズハンドルとは?株価上昇を見極めて買いを入れる方法
株価が下がった例

ピクスタに宵の明星が出現し、株価が下落していった例です。
宵の明星は、上昇トレンドから下落トレンドに切り替わる際に出現するパターンです。
もちろん宵の明星が出た以外にも理由はあったでしょうが、投資家たちにとっては目安の一つにはなっていたと考えられます。
宵の明星をチャートから見つける方法!より精度を上げる合わせ技も紹介
政治
政治も株価に影響を与える情報の一つです。
税金が高くなったり、公共施設を建築したりすることが政府によって決められた結果、景気に影響が発生します。
そういった経済政策によって、企業にも影響が出てくるわけです。
政治家の発言によって、株価に影響が出ることもあるのです。
株価が上がった例

「食べログ」のカカクコムは、2020年コロナの影響により株価を下げていました。
しかし政府が「GoToイートキャンペーン」を同年4月に発表したタイミングで株価は上昇していきます。
外食促進を政府が進めることを発表したため、カカクコムの「食べログ」がより利用され業績は回復していくだろうと見込まれ、株価が上がったわけです。
株価が下がった例

同じく「食べログ」のカカクコムの例です。
「GoToイートキャンペーン」の発表により株価を上昇させていましたが、政府が11月13日に終了する見通しを発表したことで、株価が下落しています。
国際情勢
株価に影響を及ぼすのは、日本国内の情報だけではありません。
国際情勢も株価を動かす要因となります。
リーマン・ショックや他国の戦争など、歴史的な急落を引き起こすきっかけになるケースもあります。
株価が上がった例

ENEOSホールディングスは、石油元売りの最大手。
ロシアのウクライナ侵攻が2022年2月に発生し、その結果西側諸国の対ロシア制裁としてロシアが原油を輸出できなくなり、原油の価格が高騰しました。
その結果、ENEOSホールディングスは業績が上がり、業績発表のタイミングで株価が上昇しています。
株価が上がるデメリットはある?投資家・企業・経済全体からみるデメリットを解説
株価が下がった例

ANAホールディングスが、ウクライナ侵攻をきっかけに株価が下落していきました。
国際線の安全な運航に影響が出るのではという考えから、空運系の株を手仕舞う流れが広がっていったのです。
さらにロシアからの原油輸出が減り、燃料コストも上がるのではという懸念もあり、株価下落へとつながりました。
外国為替
外国為替も、株価に影響を与えます。
いわゆる円安・円高が株価を動かすきっかけとなるのです。
通常1ドル=100円として、1ドル=80円となれば円の価値は高くなっているので円高になっていますよね。
そうなると、海外に商品を輸出している企業はどうなるでしょうか。

100ドルの売り上げを出していた場合、通常時なら日本円で10,000円の利益です。
しかし1ドル=80円の円高だと、100ドルの売り上げが8,000円の利益となってしまいます。
つまり円高によって、もうけが少なくなってしまいます。
そうなれば業績は下がってしまい、株価も下がってしまうというわけです。
逆に海外から輸入している企業の場合、10,000円で買っていた商品を8,000円で買えるようになり、業績にはプラスとなります。
株価が上がった例

2023年7月に145円台から140円台にドル安・円高が進行しました。
円高になると、海外のものを安く買えるため輸入業種にはプラスに働きます。
結果、ニトリホールディングスの株価が、円高に合わせるような形で株価を上げていることがわかります。
株価が下がった例

一方で円高がデメリットとなる業種も存在します。
自動車や精密機器など輸出企業にとっては、海外での利益が減ることになるため、株価下落につながりかねません。
トヨタ自動車は、2023年7月のドル安・円高時に、それに合わせるような形で株価を下げています。
自然災害や天候
自然災害や天候といった環境の変化も、株価には影響を及ぼします。
例えば大地震に見舞われた企業は、通常よりも業績を落としてしまう可能性が高いです。
そうなれば株価が下がることにもつながりかねません。
また天候でいえば、猛暑が続くことでエアコンメーカーの業績が好調になるといった結果となり、株価が上がるきっかけになります。
株価が上がった例

2019年に発生した大型台風の影響で、ふた浮上防止マンホールなどを手掛けているイトーヨーギョーの株価が上昇しました。
自然災害に関連して、防災関連銘柄は上昇する傾向にあります。
台風の場合、実際に発生するよりも前の予報段階で株価が動くことはよくあるため注意が必要です。
株価が下がった例

地震によって株価が変動することもあります。
2016年4月に発生した熊本地震によって、操業停止状態となったルネサスエレクトロニクスの株価が、大きく下落しました。
板情報からみる株価の具体的な決まり方
ここからは、板情報から「株価の具体的な決まり方」を見ていきましょう。
通常、株は「ザラバ方式」で株価が決まります。
ザラバ方式とは、価格優先・時間優先で決まるオークション方式の仕組みです。
株価が決まっていくまでを、順に解説していきます。
投資家たちが出した注文は板に集まる
板では、買い注文と売り注文がどれくらい集まっているかが確認できます。
投資家たちが出した注文は、すべて板に集まっていくのです。

板は銘柄ごとにあり、売買の注文量が記載されています。
価格優先で成立していく
株の注文は、価格優先で成立していきます。
買いはより高い注文が、売りはより安い注文が優先されるのです。
例えば1,000円の買い注文があったとして、そこに1,100円の買い注文をすれば優先して取引が成立します。
逆に900円の買い注文を出しても、「1,000円で買ってくれる方に売りたい」となるので取引は後回しとなります。
「高値で買うよ」「安値で売るよ」という方が人気だから先に取引が決まっていくイメージです。
時間優先で成立していく
同じ値段の注文があった場合は、タイミングの早い方が優先されます。
後から注文した場合は、どれだけ取引したくても値段が同じ場合は後回しになるのです。
実際に株価が決まるまで
とある板を例に、実際に株価が決まるまでの流れを見てみましょう。

上図では、株価が100円の状態とします。
100円の指値で売り注文が出されている状態です。
ここで買いの成行注文が500入るとします。

すると価格優先のため、最安である100円の売り注文と取引がまず成立します。
100円の売り注文は100ですから、買いの成行注文500と成立することで、500から400となります。
続いて安い101円の売り注文と取引が成立して、買いの成行注文がすべて相殺されます。

すると100円の売り注文をすべて消費したうえで、101円の売り注文と取引が成立して終了したことになります。
ここで株価が100円から101円に変動するわけです。
「株価は需要と供給のバランスで決まる」というのは、こういう流れがあるからです。
株価の決まり方についてのQ&A
Q1. 株価は誰が決めているのですか?
A. 株価は特定の人や企業が決めているわけではありません。
市場での「需給バランス」によって自然に決まります。
買いたい人が多ければ価格は上がり、売りたい人が多ければ価格は下がります。
株式市場はオークションのような仕組みで、常に多くの投資家の思惑が反映されています。
Q2. ニュースで株価が動くのはなぜですか?
A. 投資家がニュースに反応し、「将来の業績や経済環境」を予想して売買を行うためです。
たとえば、新商品発表や好決算は「今後成長するかも」という期待から買いが集まり、株価が上がりやすくなります。
逆に、不祥事や業績悪化のニュースは売りが増え、株価を押し下げる要因になります。
Q3. 為替や国際情勢が株価に関係あるのはなぜですか?
A. 為替の変動や海外の出来事は企業の収益構造に直接影響します。
たとえば円高になると、輸出企業の利益が減り株価にマイナスに働く一方、輸入企業はコストが下がり株価にプラスとなる場合があります。
また、国際的な紛争や金融不安は市場全体の心理を冷やし、株価変動を大きくする要因にもなります。
まとめ
株価の決まり方は、需要と供給のバランスによるものです。
投資家たちが決めているといってもいいかもしれません。
どれだけその銘柄に期待しているのか、今後どのような動きをすると予測しているのか、それによって株価は決まっていきます。
株価の決まり方を把握して、「今後はこう決まっていくのではないか」と予想して、ぜひ自分のトレードに役立ててくださいね。
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著者プロフィール
根本 卓(株塾・インテク運営責任者)
1年間勉強・練習後に2013年から株式投資を運用資金30万円から開始。
地道に続け、7年後に月500万円の利益を出せるように。
その経験を活かし、株塾サービスに反映・インテク記事を書いています。







