貸借取引とは?仕組みや信用取引との違いと特徴をわかりやすく解説

貸借取引とは?信用取引との違いとその特徴を解説

貸借取引は、投資家が使う信用取引を“裏側”で支える仕組みです。

本記事では、貸借取引の仕組みや信用取引との違いなどわかりやすく解説します。

用語の線引きと確認手順をそろえ、空売りや制度信用利用時の見落としを減らしましょう。

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目次

 貸借取引とは

貸借取引とは、証券金融会社(日本証券金融)と金融商品取引業者(証券会社)の間の資金、または株券の貸借関係(資金の融資や株券の貸付)のことを言います。

つまり、証券会社が投資家との間で制度信用取引をする際に必要となる資金や株券を、証券金融会社である日本証券金融(以下、日証金)から借りる取引のことです。

通常、証券会社のような金融商品取引業者は投資家に信用を供与(資金や株券を貸す)する際、必要な資金や有価証券は原則として金融商品取引業者自身の自己資金や手持ち株券で賄います。

しかし、それぞれの金融商品取引業者(証券会社)によって当然資金力に限度があり、資金や株券を投資家に貸し出せない場合があります。

そのような場合、証券会社は不足している資金や株券を日証金から貸してもらいます。

この証券会社と日証金の資金・株券の貸し借りを「貸借取引」と言います。

簡単に言うと、投資家が証券会社から投資のための資金や株券を借りようとしたけれど(信用取引)、証券会社側に貸し出せるだけの資金や株券がなかったため、証券会社が不足分を証券金融会社(日証金)から借りていることを言います。

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証券金融会社とは

証券金融会社とは前述のとおり、金融商品取引法に基づいて免許を受けて、証券会社などの金融商品取引業者に対して資金の融資や株券の貸付を行っています。

証券会社が貸借取引を実際に行うには貸し付けを受ける日の3営業日前までに証券金融会社に申込む必要があります。

ちなみに証券金融会社は現在、日本証券金融(日証金)の1社のみで、東証1部に上場しています。

かつては、証券金融会社として中部証券金融株式会社が名古屋証券取引所に上場していましたが、平成29年9月30日に自主廃業しました。

貸借取引のできる銘柄は信用取引より少ない

貸借取引のできる銘柄は、信用取引の制度信用銘柄とは別に指定され、信用銘柄の数よりは少なくなっています。

貸借銘柄(貸借取引のできる銘柄)の選定について、まず取引所が上場株券の中から制度信用取引に利用可能な制度信用銘柄を選定します。

さらにその中から、取引所は一定の基準を満たした銘柄を貸借銘柄として選定しています。

したがって、貸借銘柄は制度信用銘柄よりも少ないのです。

 信用取引との違い

信用取引(別名マージン)とは、投資家が金融商品取引業者から資金や株券を借りて行う取引のことを言います。

つまり信用取引は、投資家と証券会社(金融商品取引業者)の間の契約で、貸借取引は証券会社(金融商品取引業者)と証券金融会社の間の契約であるという違いがあります(ただ、委託証拠金や追加証拠金が必要な点は少し異なります)。

信用取引は、制度信用取引と一般信用取引があります。その中で、制度信用銘柄が取引所によって選定されて、そこからさらに貸借取引では貸借銘柄が選定されるのです。

一般に信用取引は負債でレバレッジを掛ける(自己資金以上に投資する)ので、儲けも大きいですが、損失もかなり大きくなるためリスクは大きいです。

貸株注意喚起銘柄とは

貸株注意喚起銘柄は、株券の調達が難しくなる恐れがある銘柄について、留意事項を示すための取り扱いです。

背景となる需給の逼迫と、現場で生じやすい影響、確認手順をセットで押さえます。

指定の背景と起こりやすい状況

空売り需要の増加や在庫の逼迫、貸株残の急増など、需給ひっ迫が見られる局面で注意喚起が行われることがあります。

なぜなら、在庫の確保が難しくなると、空売りの実行可能性やコストに影響が及ぶためです。

具体例として、短期間の急騰で空売り需要が急増し、貸株残が積み上がると、以後の在庫確保が難しくなる場合があります。

注意喚起の背景は“需給ひっ迫”であり、以降の条件やコストが変化しやすいサインとして捉えます。

よくある質問:貸借取引を理解するために

Q1. 貸借取引と信用取引、どちらが投資初心者に関係が深いの?

A. 投資家が直接関わるのは「信用取引」です。

貸借取引はその裏側で、証券会社と証券金融会社の間で行われる取引のため、個人投資家が直接操作することはありません。

ただし、信用取引で空売りを行う場合など、貸借取引の仕組みが背景にあるため「なぜ空売りできるのか」を理解するうえで非常に重要な概念です。


Q2. 貸借取引や信用取引が株価に影響を与えることはある?

A. あります。

特に空売りが増えると「貸株注意喚起銘柄」として指定され、株券の調達が難しくなったり、株価が一時的に不安定になることがあります。

貸借取引の需給バランス(貸株残高や融資残高)は、市場参加者の心理や株価トレンドを示すシグナルとして注目されています。

信用残高や貸借倍率を確認することで、市場の過熱感を把握することができます。

まとめ

  • 貸借取引とは、証券会社が証券金融会社から資金・株券を借りること
  • 信用取引は、投資家が証券会社から資金・株券を借りること
  • 思わぬコストが発生したり、空売りができなくなる可能性が高い銘柄がある

いかがでしたでしょうか。

信用取引と貸借取引の違いは、投資家・証券会社・証券金融会社の3社のうちどの部分で信用の供与(資金の融資や株券の貸付)が行われているかです。

信用取引をする際は空売りをする人も多いと思いますが、証券金融会社によって注意喚起がされていることもあります。

貸借取引を理解して、株取引で負担するコストやリスクについても把握しておきましょう。

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この記事の監修者

監修者プロフィール

トレード歴40年の株職人。“株匠” を目指している。
20歳で株の売買を始めてから20年間、
「日本郵船」1銘柄のみの「売り」「買い」に集中、大きな利益を重ねる。
その後、宮本武蔵が洞窟に籠もるかの如く、チャートと建玉の研究に没頭する。

現在も、チャートと建玉の操作のトレード手法をさらに極めるべく精進を重ねており、
日本株、米国株、イタリア指数、イギリス指数、ユーロ指数、金、原油、コーン、FXなど、
どの市場でも大きな利益を生み出している。

ラジオNIKKEI「相場師朗の株は技術だ!」でキャスターを務める。
東京証券取引所北浜投資塾講師、日本経済新聞社お金の学校講師。

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この記事を書いた人

著者プロフィール
根本 卓(株塾・インテク運営責任者)
1年間勉強・練習後に2013年から株式投資を運用資金30万円から開始。

地道に続け、7年後に月500万円の利益を出せるように。

その経験を活かし、株塾サービスに反映・インテク記事を書いています。

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