PERとPBRは株価の割安度を測れる指標ですが、数字が低いからといってすぐに飛びつくのは危険です。
業種や国、市況によって目安は異なるため、正しい知識を身につけないと損をしてしまうかもしれません。
本記事では、PERとPBRの目安の幅と注意点を整理し、自分でトレードタイミングを判断をするための方法を解説します。
PER(株価収益率)の定義を解説
まずは、そもそもPERとは何か?を基礎からしっかりチェックしていきましょう。
PERとは?
PERは「株価収益率」と訳され、株価がその会社の1株あたり利益(EPS)と比べてどれくらいの水準にあるかを示す指標です。
たとえばPERが20倍であれば、「今の利益水準が続けば、およそ20年で株価分の利益を回収できる」という目安になります。
企業の今の稼ぐ力に対して、どれくらいの値段がついているかを確認できる指標です。
PERから分かること
PERの数値が高いか低いかを見れば、その銘柄に対する市場の期待度をある程度読み取ることが可能です。
PERが高い企業は、一般的に「将来もっと利益を上げてくれるだろう」という期待が大きく、逆にPERが低い場合は、「今後の成長はあまり見込めない」あるいは「業績に不安がある」と考えられている可能性があります。
たとえば、急成長中のハイテク企業は利益が小さくても、将来の成長を織り込んで株価が先行して上がるため、PERが一時的に高くなることがあります。
一方で、業績不振や赤字が予想される企業では、株価が下がるためPERが低くなったりします。
しかし、これを「割安だ」と勘違いして飛びついてしまうと、割安なまま値上がりしないバリュートラップにハマってしまうこともあるので要注意です。
「PERが低い=お買い得」と決め付けず、その背景にある企業の成長性や財務状況をしっかりチェックしましょう。
PERの計算式
PERの計算式は「株価 ÷ EPS(1株あたり利益)」で求められます。
EPSは企業の純利益を発行済み株式数で割って算出します。
たとえば、株価が2,000円で、EPSが100円であれば、PERは20倍です。
決算発表ごとにEPSが更新されるため、PERもそれに合わせて頻繁に変動します。
また、最近では「予想PER」という、将来の予想利益をもとにした数値もよく使われます。
予想PERはアナリストが企業の業績予想をもとに算出するもので、将来性を重視する成長株投資では特に参考にされます。
PERの目安は業界等によって異なる
PERには「この数字を超えていたら割高」「この数字以下なら割安」といった明確な基準は存在しません。
なぜなら、業種や国によって水準が大きく異なるからです。
たとえば、ハイテク業界やバイオテクノロジーのような将来性のある業種では、PERが30倍や40倍を超えることも珍しくありません。
これに対して、銀行や商社のような安定業種では、PERが10倍前後でもやや割高と見なされることがあります。
そのため、PERの目安を考える際には、「業種別の平均値」「国ごとの市場水準」「その企業の成長性」といった複数の視点を持つようにしましょう。
単純に「PER15倍なら買い」と考えるのではなく、その業種の平均が何倍か?直近5年の平均と比べてどうか?など、相場全体の空気感をとらえる意識が重要です。
PBR(株価純資産倍率)の定義を解説
ここでは、企業の資産面の割安度を測るPBRについて詳しく見ていきます。
PBRとは?
PBRは「株価純資産倍率」と訳され、株価が1株あたりの純資産(BPS)と比べて何倍になっているかを示す指標です。
「もし会社を清算して純資産をそっくり株主に配分したら、現時点の株価は回収できるのか」をざっくり示す目安になります。
PER・PBRを簡単に理解!初心者でも迷わない株式投資指標の覚え方
PBRから分かること
PBRが1倍を下回るということは、会社を解散して資産を売却した場合の理論価値よりも株価が低い状態を意味します。
そのため、「PBR1倍割れ=割安」と語られがちですが、実際には資産が有効活用されていなかったり、構造的に低収益になりやすかったりという、ネガティブサインが隠れている場合も多くあります。
日本では多くの上場企業でPBR1倍割れが起きていることもあり、2023年には、東京証券取引所が「PBR1倍割れの企業に改善を促す」と発表しました。
その背景には、日本企業が資産効率の悪さを長年放置してきたことに対する問題意識があります。
そのことからも、「安いから買い!」と考えるのではなく、なぜ低いまま放置されているのか?を確認する必要があると言えます。
PBRの計算式
PBRは株価をBPSで割って求めます。
BPSは純資産を発行済み株式数で割った値です。
たとえば、株価1,000円でBPSが1,200円ならPBRは0.83倍になります。
この数値は企業の決算発表のたびに変動します。
自己株買いで株数が減ればBPSが上がり、のれんの減損や繰延税金資産の取り崩しがあればBPSは下がるため、同じ株価でもPBRはタイミングによって変わるのです。
PBRの目安は1倍
一般的にPBRは1倍が目安と言われています。
ただし金融セクターや鉄鋼、造船などの製造業のように、構造的にPBRが低くなりやすい業種では0.6倍前後が当たり前というケースもあります。
反対に、SaaSや半導体といった無形資産で稼ぐ業種の場合、将来キャッシュフローへの期待が大きく、PBRが3倍を超えていることも珍しくありません。
日本株を見ても、同じ1倍割れでも地方銀行と成長企業では意味合いがまったく違います。
地方銀行では人口減少や企業数の縮小などで先細りが見込まれているため1倍割れでも妥当といえますが、成長企業の場合は一時的な業績悪化や資産評価の誤りで正当に評価されていない可能性があるからです。
そのため、「1倍かどうか」ではなく「業種やビジネスモデルに照らして妥当かどうか」を判断材料とするようにしましょう。
ROEとあわせてチェックしよう
PERとPBRをチェックするなら、合わせて確認しておきたいのがROEという指標です。
ここでは、PERとPBRをより立体的に読むためのROEについて解説します。
ROE(自己資本利益率)とは?
ROEは「Return on Equity」の略で、株主資本をどれだけ効率良く利益に変えているかを示す指標です。
計算式は「当期純利益÷自己資本」で、その数字が高いほど会社は株主のお金をうまく回していると評価されます。
ROEの基準は業界によって異なる
ROEは国際比較でも業種比較でも水準が大きく変わります。
たとえば、米国のIT大手が20%や30%台に達している一方で、日本の商社は10%前後、銀行は5%台が平均です。
そのため、一概に「ROE8%以上なら優良」などとは言えません。
その業種でトップクラスか?過去平均を上回っているか?という相対的な見方でチェックするようにしましょう。
ROEが高くなるとPBRも高くなる傾向がある
ROEが高い企業は資本効率が良い分、市場からの評価も高まりやすく、PBRが一倍を大きく超える傾向があります。
逆にROEが低いままでは、どれほど資産を抱えていてもPBRが一倍を切ったまま放置されやすいのです。
PERやPBRだけでなくROEをセットで見ることで、市場からの評価や期待をより客観的に見極めることができます。
PERとPBRの目安に関するQ&A
ここでは、よくある疑問に答える形で、指標を読む際の注意点を紹介します。
Q. PERを見る際に注意すべきことは?
PERは「株価 ÷ EPS」で算出され、企業の利益に対して株価が何倍になっているかを示します。
ただし、使われるEPSが実績なのか予想なのかで意味が大きく変わります。
たとえば、景気が良い時期の高利益に基づいたPERは割安に見えても、実は業績がピークを過ぎている場合もあります。
その一方で、赤字企業ではEPSがマイナスとなり、PER自体が算出できません。
こうした場合は、将来の利益予想に基づいた「予想PER」を参考にすると、より実態に近い判断ができます。
ただし、予想にもブレがあるため、複数の期間や成長率とあわせて見ることが大切です。
Q. PBRを見る際に注意すべきことは?
PBRは「株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)」で計算されますが、純資産の中身に注目することが重要です。
純資産に使われていない不動産や、将来減損リスクのある「のれん」などが多く含まれていると、帳簿上の価値と実際の価値がズレていることがあります。
また、自己株買いを積極的に行っている企業では、PBRが一時的に高く見えることもあります。
さらに、PBRが1倍未満でも企業のROEが低ければ、評価されていない理由が何かあるかもしれません。
まとめ
PERとPBRは株価が利益・資産と釣り合うかを測る便利な指標。
ただ「低い=割安」「高い=割高」と短絡的に判断するのは危険です。
業種平均や国ごとの慣行、さらにROEや成長率も合わせてチェックして、なぜその水準になっているのかを探るようにしましょう。
本記事で学んだように、背景を読み解く視点を持てば、見かけの数字に惑わされず、自信を持って銘柄を選べるようになりますよ。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。