投資銘柄を選ぶとき株主優待の内容を考慮に入れる方や、そもそも株主優待目的で投資をしているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
株主優待は「この日に株を保有してくれた方には優待を差し上げます」というシステムになっているので、株主優待だけを目的にしているトレーダーは、期限の日ギリギリに買って株主優待の権利が確定したらそそくさと売ることが多くあります。
このように、保有銘柄が多くのトレーダーによって売られてしまっては株価の下落に巻き込まれてしまうかもしれませんね。
そんなとき、どのような対処法があるでしょうか?
今回は、そのようなケースで有効な策のひとつと考えられている「つなぎ売り」について、ご紹介していきます。
この記事でわかること
- 株主優待銘柄の株価の動き
- つなぎ売りとは何か
- つなぎ売りをするときの注意点
株主優待銘柄の株価下落に注意
株主優待目的で株式を購入して、株主優待を受け取れる権利が確定した(権利確定日)あと少し経ってから売ろうと思ったら、株価が下落してしまっていた経験はありませんか?
いわゆる、株主優待目的で買ったため本当は売りたいのに、いざ売ったら損失が確定してしまう状態です。
というのも、株主優待を出している企業の株価は、権利付き最終日(株主優待を受け取るための最終購入日)に向かって上昇し、権利落ち日(権利付き最終日の翌日)以降は株価が下落する傾向にあります。
株主優待を目的に株式を購入したのに、上記のような優待銘柄特有の株価下落に巻き込まれてしまってはお得感が少し薄れてしまいますよね。
そこでおこなう対策の1つが、つなぎ売りです。
つなぎ売りでは信用取引を活用します。
権利落ち日に売るべきではない理由!トレードで大切にしたい考え方
つなぎ売りとは?
では、「つなぎ売り」がどういう手法なのかをご説明していきます。
つなぎ売りは、現物で保有している銘柄を同じだけ信用取引で空売りをすることで、権利落ち日以降に保有している銘柄の株価が下落することによって発生する損失を抑える手法です。
ポイントは、権利付き最終日の寄り付き(午前9時)までに株主優待を受け取りたい銘柄に対して「現物取引の買い」、「信用取引の空売り」を同時かつ同じ価格で、成行注文を出すということです。
どうして同時に空売りをすることによって損失を抑えることができるのか、メカニズムを見ていきましょう。
思っていたとおり保有銘柄が売られて権利落ち日に株価が下落したとします。
現物取引単体で見ると損失が出ていますが、信用取引の方はどうでしょうか?
空売りでは、証券会社をとおして借りてきた株式を売り、株価が下落したら安く買い戻すことでその差額分の利益を得ることができます。
よってこのときのように株価が下落した場合は、信用取引では利益を出すことができています。
つまり現物取引の損失分と信用取引の利益分が相殺されるということです。
このように、株主優待銘柄の権利落ち日以降の株価下落に対しては、信用取引の空売りをおこなうことでリスクをヘッジ(回避)することが可能です。
以上が、つなぎ売りの説明になります。
つなぎ売りをするときに注意するべきこと
非常に有効なつなぎ売りですが、実際におこなう場合には注意するべきことがいくつかあります。
思いがけない事態にならないように、しっかりと理解していきましょう。
信用取引口座を開設する必要がある
信用取引をおこなうには、ふだん現物取引をおこなうときに利用している口座とは別の信用取引口座を新たに開設する必要があります。
基本的に信用取引口座を開設するときには証券会社によって審査がおこなわれます。
というのも、信用取引は持っている資金以上の大きな取引をおこなうことができるため、その分リスクが高いです。上手くいけば大きな利益を得られる可能性がある一方で、失敗したら大きな損失を被ることになります。
こういった理由で信用取引口座を開設するときは審査がおこなわれるので、現物取引の口座を持っているからといってスムーズに開設できるわけではないということを心得ておきましょう。
信用取引では売買できる銘柄が決まっている
信用取引では、証券取引所もしくは証券会社が指定した銘柄しか売買をおこなうことができません。つまり株主優待が魅力的だと思った銘柄でも、必ずしもつなぎ売りをすることができるというわけではありません。
証券取引所が指定した銘柄は「制度信用・貸借銘柄」と呼ばれ、日本取引所グループの公式ホームページで公開されています。
証券取引所が指定した銘柄については、各証券会社のホームページに掲載されているのでご覧ください。
つなぎ売りを検討しているときは、事前にその銘柄が対象となっているのか確認しておきましょう。
手数料が高くなる
ご説明してきたように、つなぎ売りは現物取引の買いと信用取引の空売りを同時におこなう取引であるため、手数料が多めにかかってしまいます。基本的には、以下のコストが発生すると考えられます。
- 売買手数料(現物取引・信用取引)
- 貸株料(信用取引)
- 逆日歩(信用取引のうち制度信用取引で発生)
- 配当金等の支払い(現物取引と信用取引の差額)
このように、通常の現物取引以上にさまざまな手数料が発生しますので、つなぎ売りをする際はこれらの出費を考慮に入れておきましょう。
これらの手数料が以上に株主優待の価値が大きい場合は、つなぎ売りをする価値があるかもしれません。
まとめ
- 株主優待銘柄の株価は、権利付き最終日に向かって上昇し、権利落ち日になると下落する傾向にある
- つなぎ売りとは現物取引で保有している銘柄の株価下落が懸念されるときに、同じ銘柄を同じ分だけ信用取引で空売りすること
- 権利落ち日以降の株価下落による損失を抑えることができる
いかがでしたでしょうか?
本記事では、株主優待を賢く受け取るテクニックとして「つなぎ売り」についてご説明してきました。
つなぎ売りをおこなうときは、権利付き最終日・権利落ち日を必ずチェックするようにしましょう。
株主優待が魅力的な銘柄を見つけたら、思わぬ損失を被ることのないように賢く取引することが大切です。
著者プロフィール
根本 卓(株塾・インテク運営責任者)
1年間勉強・練習後に2013年から株式投資を運用資金30万円から開始。
地道に続け、7年後に月500万円の利益を出せるように。
その経験を活かし、株塾サービスに反映・インテク記事を書いています。