「ドレッシング買い(お化粧買い)」は、評価日近辺に意識されやすい需給要因の一つです。
本記事では、意味と起こりやすいタイミング、株価への典型的な影響、観察の手掛かり、似たイベントとの違いを、現行の市場区分に沿って整理します。
短時間で要点をつかみ、落ち着いて相場を読み解くための基礎固めにご活用ください。
ドレッシング買いって何?
期末や月末になると、ファンド評価のための基準日が近づきます。
市場ではこの時期、保有資産の時価評価に関連した動きが意識されることがあります。
ここでは、ドレッシング買いの基本的な意味と背景、そして似た需給イベントとの違いを最初に整理します。
ドレッシング買いの概要と評価日のしくみ
ドレッシング買いは、ファンドの評価基準日(月末・四半期末・半期末・年度末など)の時価評価額が算出される前後で、保有銘柄の見え方に影響し得る買いが意識される現象を指す呼称として広く用いられます。
月次リターンや期末報告の作成はカレンダーに沿って行われるため、基準日近辺は残高調整やポジション見直しが重なりやすく、結果として需給が偏る場面があります。
なお、意図や主体の特定は難しく、形式的には通常の売買フローの一部として現れます。
市場区分は現在、プライム・スタンダード・グロースに再編されているため、以降は現行区分で説明します。
ドレッシング買いと似た動きとの違い
期末近辺の上昇・出来高増は、ドレッシング買い以外の要因でも生じます。
たとえば、指数連動ファンドのリバランス(構成比調整)、MSCIやFTSEなどの指数入替、ETFの月末需給や配当再投資、決算関連ニュースなどです。
これらは目的・主体・公表タイミングが異なるため、同日の値動きでも背景は多様です。
観察時は「誰が何の目的で、いつ公表されたルールに基づき、どの銘柄でどの程度の売買を想定するのか」を切り口に区別すると整理しやすくなります。
ドレッシング買いによる株価の動き
実際に、ファンドがドレッシング買いをして運用成績を見せようと買い注文を出すと、保有銘柄の株価を上がりやすくなります。
ファンドの規模や運用資金によって株価に与える影響力は多少変動がありますが、資金力が大きいほどドレッシング買いの効果も大きくなるでしょう。
また、ファンドがドレッシング買いを行うと株価が上昇しやすいということを知っているトレーダーも多いので、株価上昇を見込んでそれに乗っかろうとするトレーダーによる買い注文が入りやすくなります。
よって、トレーダー心理がドレッシング買いによる影響を意識すればするほど、株価は大きく動きやすいということです。
しかし、このドレッシング買いはあくまでも運用成績をよく見せるための手段なので、投資判断に基づいておらず月末や決算期末が過ぎると株価は元の水準に戻ることがほとんどです。
ドレッシング買いとほかの買い注文の見分け
実務上、特定の買いがドレッシング目的かどうかを断定することは困難です。
ここでは、日々の観察に使えるチェック手順と、推測には限界があることをあらかじめ共有し、過度な決めつけを避ける視点をまとめます。
ドレッシング買いチェックリスト
-
カレンダー確認:月末・期末・指数入替日などのイベント重複を確認。
-
出来高変化:前日比・週平均比・1カ月平均比を比較。
-
終値直前の動き:引け前5〜10分の急な買い上がりがないか。
-
材料確認:ニュース・決算・ETF再投資など他要因がないか。
-
翌営業日確認:翌日の寄り付きで反落していないかを検証。
初心者が知っておきたい注意点
ブロック取引やアルゴリズム取引、場外での約定、情報の非公開性などにより、意図や主体を特定することは一般に困難です。
同じ値動きでも、実需の買い・指数連動の調整・決算関連のポジション構築など背景は多様で、単一のラベルで説明すると誤解が生じます。
また、相場操縦等を禁じる規定がある一方で、合法的なリバランスや残高調整も存在します。
したがって、観察は「可能性の比較」として扱い、判断は複数の根拠を積み上げる形で行うのが無難です。
ドレッシング買いの影響が表れやすい銘柄
どの銘柄でも起こり得ますが、価格が動きやすい条件はあります。
現行のプライム・スタンダード・グロースの区分を踏まえ、流動性と指数・テーマ性の観点から、期末近辺に注目されやすい特徴を整理します。
流動性と価格インパクト
流動性が相対的に低い銘柄では、同じ発注量でも価格への影響が大きくなりやすいとされます。
具体的には、日々の売買代金が小さい、板の厚みが薄い、スプレッドが広い、といった条件が重なると、終値付近のまとまった約定で価格が動きやすくなります。
一方、プライム市場の大型株でも、指数連動資金や決算関連のフローが重なると短時間の値動きが目立つことがあります。
観察時は、銘柄ごとの平常時の流動性を基準に比較する視点が有効です。
指数採用・テーマ
指数採用銘柄は、定期的な入替・構成比変更の影響を受ける場面があります。
また、決算発表や業界テーマのニュースが期末時期に重なると、短期資金の関心が高まり、需給が偏ることがあります。
グロース市場の一部銘柄では、保有者構成や信用需給の変化が短期の値動きに表れやすい局面も見られます。
いずれの場合も、材料の有無と期末要因の同時発生を切り分けて確認することで、値動きの解釈が落ち着きます。
よくある質問Q&A
Q1. ドレッシング買いはいつ起きやすい?
A. 主に月末・四半期末・年度末(3月・9月・12月)など、ファンドの評価基準日直前に発生しやすいです。
Q2. ドレッシング買いは違法?
A. 原則として違法ではありません。
ただし、市場操作目的で意図的に価格を釣り上げる場合は「相場操縦」と見なされる恐れがあります。
Q3. ドレッシング買いで儲けられますか?
A. タイミングを正確に捉えられれば短期利益は狙えますが、再現性が低くリスクが高いため初心者には不向きです。
まとめ
ドレッシング買いは、評価日近辺で意識されやすい需給要因の呼称であり、月末・期末のフローや他イベントと重なって観察されることがあります。
見分けは単独では難しいため、カレンダー・出来高・終値直前の売買・ニュースや指数イベントの有無を並べて確認する手順が役立ちます。
流動性や材料の重なりによって値動きは幅を持つため、単一の理由に短絡せず、前提を整えて記録しながら読み解いていく姿勢が、落ち着いた判断につながります。
月末の値動きに惑わされず、全体の流れを俯瞰する目を養いましょう。

著者プロフィール
根本 卓(株塾・インテク運営責任者)
1年間勉強・練習後に2013年から株式投資を運用資金30万円から開始。
地道に続け、7年後に月500万円の利益を出せるように。
その経験を活かし、株塾サービスに反映・インテク記事を書いています。







