ADXとは？トレンドの強さを見抜く使い方、DMIとの併用方法を解説

投資で勝つには、トレンドを見極める力が欠かせません。

ADXは、相場の勢いを数値で見える化できる便利なテクニカル指標です。

本記事では、投資初心者でも理解できるように、ADXの基本から使い方までを解説します。

トレンドの強さを測る「ADX」とは？

まずは、ADXという指標が何を示すものなのか、その役割と仕組みについて解説します。

ADX（Average Directional Index）の概要

ADXとは、「Average Directional Index（平均方向性指数）」の略で、相場のトレンドがどれだけ強いかを数値で示すテクニカル指標です。

一般的なチャート分析では、上昇しているか、もしくは下降しているかといった価格の方向に注目しがちですが、ADXが測るのはあくまでも強さです。

つまり、上昇していても下落していても、「勢いがある相場なのかどうか」が数値でわかるというわけです。

相場に方向感がないレンジ状態ではADXの値は低くなり、明確なトレンドが出ているときは高くなるのが特徴です。

このため、ADXは今トレンドがあるかどうかを判断したいときにとても役立ちます。

ADXを求める計算式

ADXは、以下の3つのステップを経て算出されます。

①DIを求める

まず、＋DI（プラスDI）、−DI（マイナスDI）という2つの数値を計算します。

これは、前日の高値・安値・終値から、買いの勢いと売りの勢いを比較して算出されます。

②DXを求める

DI＋とDI−の差をもとに、トレンドの差異を計算したものがDXです。

③DXの一定期間の平均をとる

一般的には14日間の移動平均を取ったものがADXになります。

つまり、ADXはDIの差の平均値であり、直接価格とは関係ない勢いに着目した指標なのです。

ちなみに、実際に計算式を自分で求める必要はありません。

多くの証券会社のツールやチャートソフトで自動的に表示できます。

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ADXとDMIの関係を理解しよう

ここでは、ADXがどのような構造の中で成り立っているか、DMIとの関係を中心に解説します。

ADX単体では見落としがちな相場の方向性を、DMIとセットで理解することでトレード判断の精度が高まりますよ。

DMIとは？3つのラインで構成される指標

DMIは、相場の動きに方向性があるかどうか、そしてその方向性の強さを測るためのテクニカル指標です。

このDMIは、以下の3つのラインで構成されています。

＋DI（プラスDI）：買いの力の強さを示す

−DI（マイナスDI）：売りの力の強さを示す

ADX：そのトレンドがどれくらい強いかを表す

山登りに例えると、以下のような関係です。

 

登山ギア	正式名	役割	たとえの中での位置づけ
＋DI（プラス DI）	Positive Directional Indicator	上昇圧力を数値化	赤い上り旗―「ここから上りですよ！」
−DI（マイナスDI）	Negative Directional Indicator	下降圧力を数値化	青い下り旗―「ここから下りですよ！」
DMI	Directional Movement Index	Directional Movement Index	２本の旗そのもの―登山隊の“進行方向コンパス”
ADX	Average Directional Index	＋DIと－DIの差を平均化し、トレンドの強さだけを測定	傾斜計―坂が急か緩やかかを数値化

 

＋DIと−DI：登山における旗。どちらに進んでいるかを示す

DMI：登山における旗セット。2つの旗の勝ち負けを数値化

ADX：登山における傾斜計。その進み具合は急？緩い？

 

このようにDIラインが方向性、ADXが強さを表すため、この3本をセットで見ることで相場の全体像がつかみやすくなります。

＋DIライン

＋DIラインは、買い手の勢い、つまりどれだけ価格が上昇しようとしているかの強さを示すラインです。

前日よりも高値が上がっていれば＋DIは上昇します。

＋DIが−DIよりも上にある場合、上昇トレンドの可能性が高いと判断されます。

−DIライン

−DIラインは、売り手の勢いを表す指標で、前日よりも安値が下がった場合に数値が上がります。

−DIが＋DIよりも上にあるときは、下降トレンドの可能性が高いと見なされます。

ADXライン

ADXラインは、DMIの中でトレンドの強さだけに注目したラインです。

ポイントは、ADXの数値が高いからといって、必ずしも上昇トレンドとは限らないということ。

ADXはあくまでもトレンドの勢いのみを測っており、その方向は＋DIと−DIの関係から判断する必要があります。

たとえば、

＋DI ＞ −DI ＆ ADX上昇中 → 強い上昇トレンド

−DI ＞ ＋DI ＆ ADX上昇中 → 強い下降トレンド

ADX低下中 → トレンドが弱まっている or レンジ相場に近い

このように、3つのラインを組み合わせて相場を読むと、ADXへの理解が深まるでしょう。

ADXの数値目安と見方の基本

ここでは、ADXの数値がどれくらいならトレンドが強いと判断できるのか、実際の目安と見方について解説します。

単に高い、低いだけでなく、数値の推移から相場の変化を読み解くことがポイントです。

ADX数値の目安

ADXの値は0〜100の範囲で変動します。以下は一般的に使われる数値の目安です。

例えば、ADXが15前後にとどまっているときは、相場に方向性がなく、レンジ相場の可能性が高いです。

逆に、ADXが30を超えていれば、買いか売りどちらかにしっかりとしたトレンドが出ていると判断できます。

数値が上昇しているとき、下降しているときの違い

ADXは、その数値の高さだけでなく、動き方も重要です。

たとえば、ADXが25から40へ上昇しているときは、トレンドが強まっているということ。

この場合、＋DIが上なら買い、−DIが上なら売りといった方向性をあわせて見ていくと判断しやすくなります。

一方で、ADXが40から30に落ちてきた場合は、すでにトレンドのピークを過ぎた可能性があるので、追いかけすぎずに慎重になりましょう。

また、ADXが長期間低下傾向にあるときは、相場がレンジ入りしている可能性も高いため、新たなトレンドを待つ判断も重要です。

ADXの使い方は？

ここでは、実際にADXを使ってどのように相場を判断すればよいのか、トレードでの使い方について解説します。

DIラインや他のテクニカル指標と組み合わせることで、ADXはより実践的な判断材料になりますよ。

＋DI・−DIでトレンドを判断する

ADXの使い方で最も基本となるのが、＋DI（プラスDI）と−DI（マイナスDI）のクロス（交差）を見る方法です。

＋DIが−DIを上抜ける → 上昇トレンドのサイン

−DIが＋DIを上抜ける → 下降トレンドのサイン

このクロスに加えて、ADXが25以上であれば、トレンドが発生していると判断しやすくなります。

たとえば、

＋DIが−DIを上回り、ADXが25を超えて上昇している → 買いシグナル

−DIが＋DIを上回り、ADXが25を超えて上昇している → 売りシグナル

こうした判断方法を習得すれば、エントリーポイントの精度が格段に上がります。

ダイバージェンスで判断する

ADXは、価格と指標の動きが逆行する「ダイバージェンス」の場面でも使えます。

たとえば、価格が高値を更新しているのにADXは前回より低いなら、トレンドの勢いが弱まっている可能性があります。

また、価格が安値を更新しているのにADXが上昇していないなら、下落の勢いに陰りがあると考えられるでしょう。

トレンド終了の予兆として、新規エントリーの回避や利確判断に活用できます。

他の指標（移動平均線など）と組み合わせる

ADXは単体でも強力ですが、他のテクニカル指標と組み合わせることで、さらに判断がしやすくなります。

たとえば、移動平均線とADXを組み合わせてみましょう。

移動平均線で方向性、ADXで勢いを確認する使い方が有効です。

移動平均線が右肩上がりで、かつADXが25を超えて上昇していれば、トレンドに勢いがある買い場の可能性が高いと判断できます。

ADXを活用する際の注意点

ADXはトレンドの強さを定量的に示す便利な指標ですが、使い方を誤ると判断ミスや損失の原因になってしまうこともあります。

ここでは、ADXを使うときに注意しておきたいポイントを3つに分けて解説します。

売買のタイミングを示す指標ではない

まず理解しておきたいのは、ADXはエントリーやエグジットのタイミングを直接教えてくれる指標ではないということです。

ADXが高いのは買いではなく、あくまでもトレンドが強まっていることを意味します。

たとえば、ADXが40を超えていたとしても、すでにトレンドが終盤に差しかかっていることもありますし、逆にADXが20以下でもトレンドが始まりかけている可能性もあります。

そのため、ADXは補助的な判断材料として位置づけ、他のインジケーターなどと合わせて判断するのが大切です。

反応が遅れることもある

ADXは、移動平均のように過去の値動きをもとにして数値を算出しています。

そのため、どうしても相場の変化に対してワンテンポ遅れて反応する傾向があります。

たとえば、トレンドが急に崩れたときでも、ADXがしばらく高い値を保ってしまうことがあります。

ADXが高いから大丈夫と過信してエントリーすると、逆行相場に巻き込まれるリスクもあるのです。

このような反応遅れをカバーするためにも、ローソク足の形や出来高、他の先行指標などをあわせてチェックしましょう。

短期取引には向いていない

ADXは、トレンドの強さをじっくり見るための指標なので、数分〜数時間のスキャルピングや超短期売買には不向きとされています。

反応がやや遅れるため、短期の値動きには敏感に反応できないからです。

また、ボラティリティが高い場面では一時的にADXが乱高下することもあり、誤った判断を導くケースもあります。

そのため、ADXは4時間足以上の中〜長期チャートで活用するのが効果的です。

スイングトレードやデイトレードの判断補助として取り入れると、しっかりと本領を発揮してくれます。

まとめ

ADXは、相場の強さを数値で見られる心強い指標です。

DIラインとの組み合わせにより、トレンドの方向と勢いを同時に把握できます。

ただし、ADXだけで売買判断をするのは危険です。

あくまでも補助的な判断材料として使い、他の指標やチャート形状とあわせて総合的に判断しましょう。