株式投資では、「安く買って高く売る」のが基本だと思っていませんか?
実はそれだけではなく、「高く売って安く買い戻す」という逆のパターンでも利益を出すことができます。
その代表的な手法が「戻り売り」です。
この記事では、「戻り売りってなに?」という初心者の方に向けて、基本的な意味から、使うタイミングの見分け方、注意点まで解説します。
「戻り売り」とは?言葉の意味を解説
「戻り売り(もどりうり)」とは、株価が下がり続けている途中で、いったん上がったタイミングを見計らって「売る」ことで利益を狙う手法です。
この「いったん上がる」ことを「戻り」と呼び、そこで「売る」ことから「戻り売り」と言われています。
たとえば、株価が1,000円から800円まで下がっていたとします。
そのあと、一時的に900円まで戻ったときに売る。
そしてまた株価が800円以下まで下がったときに買い戻せば、差額が利益になります。
この手法では、「空売り(からうり)」という売り方を使うことが一般的です。
空売りとは、証券会社から株を借りて先に売り、あとで買い戻すことで利益を得る方法です。
初心者のうちは少し難しく感じるかもしれませんが、仕組みを知れば理解できるようになりますよ。
なぜ戻り売りが有効なの?
戻り売りが有効とされる理由は、トレンドに逆らわない売買ができるからです。
株価は、上がり続けたり下がり続けたりするトレンドを持つことがあります。
下降トレンド中の一時的な上昇」は、再び下がる前兆であることが多く、そこで売っておくと、その後の下落で利益を得やすいのです。
また、下降トレンド中は投資家の心理も「売り」に傾いているため、一時的な戻りがあっても、買いが長く続きにくい傾向があります。
「押し目買い」との違い
「戻り売り」の逆にあたるのが「押し目買い(おしめがい)」です。
押し目買いは「上昇トレンド中にいったん下がったところで買う手法」で、戻り売りは「下降トレンド中にいったん上がったところで売る手法」です。
どちらも「トレンドに従う」という点では同じですが、トレンドの方向が逆です。
また、押し目買いでは株価が下がっても下限がありますが、戻り売りでは上昇に上限がありません。
つまり、天井がどこになるのかを慎重に見極めないと、予想以上に株価が上がり続けてしまい、大きな損失につながる可能性があるという点も、戻り売りのリスクです。
そのため、戻り売りを使うときは「どこが天井になるか?」をしっかり見極めることがとても重要になります。
戻り売りが成功する前提条件は?
戻り売りは、やみくもに行ってもうまくいきません。
きちんと「戻り売りが機能しやすい相場状況」であることを見極めることが大切です。
ここでは、戻り売りを成功させるために知っておきたい、2つの基本的な前提条件について解説します。
下降トレンドであること
まず大前提として、株価が下降トレンドであることが必要です。
上昇トレンド中に戻り売りをしてしまうと、そのまま株価が上がり続けてしまい、大きな損失につながるおそれがあります。
たとえば、「経済ニュースを受けて全体的に買いが集まっている状況」や「取引が活発になり、株価とともに出来高も増えている状態」などは、すでに上昇トレンドに転じている可能性があります。
このような状況では、戻り売りは不向きで、むしろ買い目線で相場を見る必要があります。
下降トレンドとは、株価が時間とともにじわじわ下がっていく流れのことです。
たとえば、高値と安値の両方が徐々に切り下がっているチャートは、下降トレンドのサインです。
下降トレンドの特徴
下降トレンドの主な特徴は以下の3つです。
・高値と安値の両方が切り下がっている
・中期・長期の移動平均線が下向き
・戻りの場面では、売買の量が少ない
移動平均線とは、一定期間の株価の平均を線でつないだグラフで、トレンドを視覚的に見るための指標です。
たとえば「25日移動平均線」は、過去25日間の終値の平均を線にしたものです。
戻り売りをするべき?判断のポイント3つ
では、実際に「戻り売りをするかどうか」をどう判断すればいいのでしょうか?
初心者の方でもチェックしやすい、3つのポイントをご紹介します。
下降トレンドの確認(中期・長期の移動平均線から判断)
戻り売りを判断するうえで、まず確認したいのが「今の相場が本当に下降トレンドにあるのか?」という点です。
その判断材料として、よく使われるのが移動平均線です。
特に中期(25日)・長期(75日)の移動平均線の向きや位置関係を見ることで、相場の流れをつかむことができます。
移動平均線が下向きで、株価がそれらの線より下にある状態は、下降トレンドのサインです。
加えて、両方の線が並行して下向きになっていると、下落の勢いが安定して続いていることを示しており、戻り売りを検討する価値のある場面といえます。
移動平均線の「ものわかれ」
移動平均線の「ものわかれ」とは、複数の移動平均線がそれぞれの方向に広がっている状態を指します。
特に、短期・中期・長期の線がすべて下向きで、なおかつ線同士の間隔が広がっている場合、下降トレンドが強く意識されているサインです。
このような局面では、短期的に株価が戻る動きがあっても、再び下落する可能性が高く、戻り売りを狙うチャンスとなりやすいのです。
トレンドの強さと方向性がはっきりしているため、初心者にも判断しやすいポイントといえるでしょう。
前の安値を割り込むか?で勢いを判定する
戻り売りを成功させるためには、株価が前の安値を割り込むかどうかを確認することが重要です。
安値とは、株価が過去のある時点で一時的に止まった最も低い価格のこと。
前の安値を下回れば、下降トレンドが継続していると判断でき、戻り売りのチャンスと考えられます。
反対に、安値を割り込めずに反発した場合は、下落の勢いが弱まっている可能性があり、無理に売り続けるのは危険です。
安値のラインが「次の下落の勢い」を測る目安になりますので、慎重に判断しましょう。
戻り売りで失敗しないための注意点
戻り売りは有効な戦略ですが、誤ったタイミングで行うと損失につながるリスクもあります。
ここでは、初心者の方が陥りやすい失敗を避けるために、特に気をつけたい3つの注意点をご紹介します。
「ダマシ」に注意する
「ダマシ」とは、売りシグナルが出たように見えても、すぐに逆方向へ動いてしまうケースのことです。
たとえば、「戻り売りのタイミングだ!」と思って売ったら、その後グイグイ上昇してしまった……というのが「ダマシ」です。
こういった場面では、しっかりとトレンドの確認をすること、そしてエントリー後の損切りラインを決めておくことが大切です。
たとえば「直近の高値から2%以上を損切りラインとして設定しておく」などです。
数値に基づいた目安を持っておくと、冷静に判断しやすくなります。
トレンド転換を見極める
戻り売りを継続するかどうかの判断で見落とせないのが、「トレンドがすでに転換していないかどうか」です。
下降トレンドだと思って売りエントリーしても、実はすでに上昇トレンドへ切り替わっていた……という状況では、大きな損失を招く可能性があります。
特に注意したいのが、価格が徐々に安値・高値を切り上げてきている場面です。
この動きは、売りの勢いが弱まり、買いが優勢になってきている兆しです。
また、出来高が増えながら株価が上がっている場合や、移動平均線が横ばいから上向きに変わりつつあるときも、トレンド転換のサインとして注目されます。
こうしたサインを見逃さず、「戻り売りのつもりが逆行してしまった」というリスクを減らすようにしましょう。
リスク管理を徹底する
戻り売りはチャンスが多い反面、下げ止まりの見極めが難しいというデメリットもあります。
そのため、事前に「ここまで上がったら損切りする」というラインを決めておくことがとても大切です。
たとえば、直近の高値より少し上を損切りラインに設定する、などです。
また、1回の取引で資金を大きくかけすぎないこともリスク管理のポイントです。
まとめ
戻り売りとは、下降トレンドの途中で一時的に株価が上昇した場面で売ることによって、再度の下落による利益を狙う手法のこと。
特にチャート全体が下降トレンドを示しているときに有効です。
「ものわかれ」や前の安値の割り込みなどのサインを見ながら、慎重にエントリーすることで、成功の可能性を高めることができます。
ただし、トレンドがすでに転換していたり、ダマシに引っかかってしまったりするケースもあるため、損切りラインの設定やトレンドの見極めが欠かせません。
リスクもある手法ですので、初心者の方はまず、小さな資金でチャレンジしながら、少しずつ経験を積んでいくことをおすすめします。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。