株式投資やFXにおいて、「VWAP」というインジケーター(指標)があります。
しかし、実際にVWAPが何を表し、どのように活用するべきかを正しく理解している人は意外と少ないものです。
本記事では、VWAPの基本的な知識から実際のチャートでの利用法までを解説していきます。
さらに、トレードで失敗しないための注意点や、他のテクニカル指標との組み合わせ方についても触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
VWAPとは?意味と特徴
VWAPとは「出来高加重平均価格」と呼ばれ、取引された価格と出来高をもとに計算される、投資家たちが実際に売買した価格の平均価格です。
一般的には1日の取引をもとに使われることが多いですが、期間を自由に設定して使うこともできます。
移動平均線とは違い、出来高もしっかり考慮しているため、短期売買をするトレーダーたちに特に重宝されています。
VWAPをチャートに取り入れることで、売買のタイミングを見極めやすくなり、より客観的な判断ができるようになります。
VWAPの計算方法
VWAP(出来高加重平均価格)は、取引価格に取引量(出来高)を掛けたものを累積し、それを累積出来高で割って求めます。
計算方法を式で表すと次の通りです。
VWAP=1日の総売買代金÷1日の総出来高
たとえば、ある銘柄が100円で1000株取引された後、101円で500株取引された場合、VWAPは(100×1000+101×500)÷(1000+500)=100.33円となります。
このように、出来高の多い価格帯がVWAPに大きく影響を与えます。
VWAPが重要である理由
VWAPは、その日に市場で売買した人たちが「だいたいこのあたりで買った・売った」という価格の平均を表す指標です。
多くの投資家が意識する価格帯や、買い手と売り手の攻防が起こりやすいポイントを把握するのに役立ちます。
特に機関投資家は、大量の売買が市場に与える影響を最小限に抑えるために、VWAPを取引の基準とすることが一般的です。
また、個人投資家にとっても、エントリーやエグジットの客観的な基準として参考にすることで、戦略的なトレードができるようになります。
VWAPラインの読み方と基本の判断軸
VWAPラインを正しく読み解くことで、売買の優位性を見極めることができるようになります。
ここでは、チャート上に表示されたVWAPラインをどのように判断材料にすべきかを解説していきます。
VWAPはチャート上に滑らかな一本のラインとして描かれます。
そのラインは、現在の市場参加者の平均取得価格を示しており、ラインを基準にして買い手と売り手の力関係を推測することができます。
さらに、VWAPとの乖離幅にも注目しましょう。
価格がVWAPから大きく離れる場合、一時的な過熱感や売られ過ぎを意味することもあります。
VWAPの活用法
VWAPは単なる目安ではなく、具体的なトレード戦略にも組み込むことができます。
ここでは実践的な活用法を紹介します。
「買い圧力か?売り圧力か?」を判断する
VWAPより現在価格が上にある場合、市場では買い圧力が優勢と考えられます。
特に、ローソク足がVWAP上に長時間とどまっている場合は、上昇トレンドが強いといえるでしょう。
逆にVWAPより下にある場合は売り圧力が強いため、戻り売りを狙うチャンスです。
トレンドの転換点を探る際も、VWAPを基準に見ることをおすすめします。
たとえば、下落していた価格がVWAPを上抜けた場合、売り圧力から買い圧力へ転換したと考えられるでしょう。
抵抗線・支持線の判断に使う
VWAPは、多くのトレーダーが意識しているラインなので、自然と支持線(下支え)や抵抗線(上値の壁)のように働くことがあります。
実際のトレードでは、VWAPに近づいたタイミングでエントリーを考えたり、損切りの目安としてVWAPを使ったりすると、リスク管理がしやすくなりますよ。
たとえば、価格がVWAPにタッチしたあと、下ヒゲを付けて反発した場合は、「ここで支えられた」と判断できます。
逆に、VWAPをはっきり割り込んでしまったときは、サポートが崩れたサインと見て、売りに切り替える判断をすることもあります。
利確・損切りを判断する
トレードにおいて、あらかじめ「ここまで来たら利確」「ここまで来たら損切り」と決めておくことは非常に重要です。
さらにVWAPを目安にすることで、感情に左右されず、ルールに基づいて取引することができます。
例えば、エントリー後に価格がVWAPから一定距離以上離れたら利確、逆にVWAPに戻ってきたら損切り、というように具体的なルールを設けることをおすすめします。
他のテクニカル指標との併用法
VWAPだけでも十分に便利な指標ですが、他のテクニカル指標と組み合わせると、さらに精度の高い判断ができるようになります。
たとえば、RSI(相対力指数)と組み合わせれば、VWAPとの位置関係だけでなく、買われすぎ・売られすぎといった相場の勢いもあわせてチェックできるので、無理なエントリーを防ぐことができます。
また、移動平均線とVWAPのクロスを使った戦略もあります。
たとえば、VWAPが短期移動平均線を上抜けたら「買いサイン」、下抜けたら「売りサイン」と考えることができます。
VWAPの注意点
VWAPにも弱点や注意点があります。
ここでは、特に初心者が陥りやすいVWAPの使い方における注意点について解説していきます。
急騰・急落相場では機能しづらい
VWAPは、基本的に1日を通した取引全体の平均価格を示す指標です。
そのため、突然のニュースなどで相場が急騰・急落したときは、過去のデータに引っ張られてしまい、今の市場の動きをリアルタイムで反映しきれないことがあります。
急な動きが出たときは、VWAPだけを頼りにせず、ローソク足の形や出来高の変化もあわせてチェックするのが大切です。
こうした局面では、ボラティリティを測る指標(ATRなど)や、直近の高値・安値を目安にトレードするなど、柔軟な対応を心がけましょう。
トレンド相場では逆張りリスクがある
強い上昇トレンドや下降トレンドが出ているときに、VWAPを基準に逆張りを狙うのはかなりリスクが高くなってしまいます。
「VWAPにタッチしたから反転するだろう」と思ってエントリーしても、そのままトレンド方向に押し流されてしまうことがあるからです。
こんなときは、VWAPを「トレンドが続いているかどうかを確認する目安」として使うのがおすすめ。
たとえば、トレンドが強いときはVWAPを大きく割ることなく価格が進んでいくパターンも多いです。
相場の勢いをよく見ながら、無理に逆張りしない判断力を身に付けていきましょう。
まとめ
VWAPは、出来高を考慮した「市場の重心」を示す強力な指標です。
正しく使えば、売買の優位性判断やリスク管理に大いに役立ちますよ。
しかし、急変動や強いトレンド相場では万能ではないため、他の指標と併用しながら柔軟に判断することが大切です。
VWAPを上手に取り入れ、トレード力を高めていきましょう。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。