USDT(テザー)とは?初心者でもわかる仕組み・特徴・注意点をやさしく解説

USDT(テザー)は、米ドルに価値を連動させた「ステーブルコイン」と呼ばれる暗号資産(以下:仮想通貨)の一種です。

1USDT=約1ドルに保たれるよう設計されており、価格変動が大きいビットコインなどと異なって、安定した価値をもっています。

USDTは価格が大きく変動しにくいため、資金保全や海外送金、取引所間での資金移動など、幅広い場面で活用されています。

この記事ではUSDTの仕組みや特徴、利用時の注意点を初心者にもわかりやすく解説します。

   
目次

USDTとは「米ドルに連動するステーブルコイン」

USDTは、アメリカドルの価格に連動するよう設計された仮想通貨です。

1USDT=約1ドルの価値を保つ設計のため、変動の大きい市場でも比較的安定した通貨として扱われています。

ブロックチェーン上で発行・送金が行われるため、銀行を介さずに世界中へ迅速に送金できる点も特徴です。

ステーブルコインの中でもUSDTは最も取引量が多く、取引所間での資金移動や他通貨との交換に欠かせない存在となっています。

USDTは「1USDT≒1ドル」になるよう設計された仮想通貨

USDTは「テザー社(Tether Limited)」によって発行されており、常に1USDT≒1ドルの価値を保つことを目的に運用されています。

つまり、1USDTを保有することは「1ドルに相当する価値をデジタル上で持っている」のと同じです。

価格の安定は、発行量とテザー社が保有する資産を連動させることで維持されています。

新たにUSDTが発行される際には、同等の価値をもつ現金や国債などの資産が準備されるため、発行体の信用リスクは残るものの、裏付けのない発行は行われません。

価格変動の大きいビットコインなどと異なり、価値が安定している

ビットコインやイーサリアムは需要と供給で価格が決まり、短期間で数%〜数十%変動することもあります。

一方、USDTは米ドルと連動しているため、相場が大きく変動しても価格はほぼ一定です。

値動きが小さい特性をもつことから、USDTは「仮想通貨市場の中での安定資産」として利用されています。

投資家は価格変動のリスクを避けたいときに、資金を一時的にUSDTへ移すことで価値を守れます。

取引・送金・資産保全など幅広い用途で使われている

USDTは、主に次の3つの用途で利用されています。

  • 取引の中間資産:他の仮想通貨を売買する際の一時的な保管先として活用
  • 海外送金:ブロックチェーンを通じて、銀行を介さずに低コストかつ迅速に資金を移動
  • 資産保全:相場が不安定なときに、ドル連動によって価値を維持

USDTは「安定した価値」「取引のしやすさ」「送金スピード」という3つの強みを兼ね備えています。

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USDTが1ドルの価値を保てる仕組み|発行・償還・裏付け資産

USDTが1ドル前後の価値を維持できるのは、発行量とそれに対応する保有資産が連動しているためです。

テザー社は発行したUSDTの総量に見合う資産(現金や短期国債など)を保有し、その資産を担保として運営しています。

ユーザーがUSDTをドルに交換(償還)する際には、発行量が減少することで市場の需給が調整され、価格が1ドルに近づくように設計されているのです。

裏付け資産・発行管理・償還メカニズムの3つの仕組みが連動することで、USDTは価格の安定性を保っています。

Tether社が発行量に見合う資産を保有している

USDTを発行するテザー社は、発行残高と同等の価値を持つ資産を保有しています。

そのため、理論上すべてのUSDTが1ドル分の資産で裏付けられる構造になっているわけです。

保有資産の内訳は四半期ごとに監査報告書として公開されており、主に現金、短期国債、レポ取引などの安全性の高い資産で構成されています。

こうした仕組みにより、投資家は発行量に対して十分な裏付け資産が存在しているかを確認できます。

発行と償還の仕組みで価格を1ドル前後に保っている

USDTの価格が1ドルより上がった場合、テザー社は新たなUSDTを発行して供給を増やします。

逆に1ドルより下がった場合は、保有者がUSDTをテザー社に返却してドルを受け取る「償還」が行われ、流通量が減少します。

発行と償還の仕組みによって市場の需給バランスが自動的に調整され、価格が1ドル前後に安定するわけです。

裏付け資産には現金以外に短期国債なども含まれている

テザー社の裏付け資産は、すべてが現金というわけではありません。

主な構成は、以下のとおりです。

  • 米国短期国債:信用度が高く、安定した価値を保つ資産
  • 担保付きレポ取引:短期的な資金運用を目的とした安全性の高い取引
  • 現金および銀行預金:即時換金が可能な高流動性資産
  • 金やビットコインなど:全体の数%を占める補完的な資産

いずれも安全性と流動性を重視して運用されています。

ただし、現金比率が100%ではないため、市場環境の変化や信用不安が生じた際には、短期間だけ価格が1ドルから乖離する可能性があります。

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USDTが仮想通貨取引でよく使われる3つの理由

USDTは、仮想通貨市場で最も利用されているステーブルコインです。

安定性と利便性を兼ね備えており、多くの投資家が基軸通貨として活用しています。

USDTが仮想通貨取引でよく使われる理由は、次の3つです。

  • ドルと連動していて価値が安定している
  • 多くの通貨ペアが組まれていて交換しやすい
  • 利用者や取引量が多く市場での信頼性が高い

それぞれについて解説していきます。

ドルと連動していて価値が安定している

USDTが広く使われる最大の理由は、米ドルと連動して安定しているためです。

価格変動の大きい通貨を扱う際でも、USDTを介することでドルと同等の価値を保ちながら安全に資金を移動できます。

たとえば、ビットコインを売却してUSDTに換えることで、相場下落時でも資産価値を維持することが可能です。

法定通貨へ戻す手間をかけずにドル建てのデジタル資産として保有できる点は、スピードと柔軟性の両面で優れています。

多くの通貨ペアが組まれていて交換しやすい

USDTは、取引のしやすさでも高い評価を受けています。

主要な通貨ペア(BTC/USDT、ETH/USDT、SOL/USDTなど)が豊富に用意されており、ほとんどの仮想通貨と直接交換できます。

日本円やユーロなどの法定通貨と比べると取引手数料やスプレッドが小さく、価格差を抑えたまま取引を行えるのが特徴です。

通貨ペアの多さと取引コストの低さにより、投資家は市場の流動性を活かして効率的に売買を行えます。

利用者や取引量が多く市場での信頼性が高い

USDTはステーブルコインの中で取引量が最も多く、1日の取引高がビットコインを上回ることもあります。

利用者が多いほど流動性が高まり、いつでも取引できる環境が整うわけです。

さらに、主要取引所やDeFi(分散型金融)サービスにも広く採用されており、世界中で受け入れられている点が信頼性を裏付けています。

この普及度と実績の積み重ねにより、USDTは仮想通貨市場全体を支える重要なインフラとなっています。

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USDTと他の仮想通貨との違い

USDTと他の仮想通貨の大きな違いは、価格の安定性と用途の目的にあります。

ビットコインやイーサリアムのような通貨は価格変動を伴う資産であるのに対し、USDTは安定した価値を保つように設計されています。

そのため投資の対象というよりも、資金の保全や送金手段として利用されるケースが多いです。

両者の主な違いをまとめたものが、以下の図表1です。

図表1

比較項目 USDT(ステーブルコイン) 他の仮想通貨(BTC・ETHなど)
価格変動 ほぼ一定(1USDT=約1ドル) 市場の需給で大きく変動
主な目的 資金の保全・送金・取引用の中間資産 投資・運用・ネットワーク利用
発行主体 テザー社などの企業 分散型ネットワーク
裏付け資産 米ドル・国債などの実物資産 裏付け資産なし(市場価値によって変動)
利用場面 相場回避・海外送金・取引ペア 資産形成・手数料支払い・NFTなどの利用

 

同じ仮想通貨であっても、役割が大きく異なります。

価格変動|USDTは安定・他の仮想通貨は値動きが大きい

USDTは米ドルに連動しているため、価格がほぼ一定に保たれます。

一方、ビットコインやイーサリアムは需給によって価格が決まり、市場のニュースや投資家心理によって短期間でも数%から数十%変動することがあります。

よって、USDTは価格変動リスクを避けたい人の資金置き場として使われるのに対し、他の仮想通貨は値上がり益を狙う運用対象として扱われるわけです。

用途や目的が異なるため、投資家は目的に応じて両者を使い分ける必要があります。

用途|USDTは交換・他の仮想通貨は運用

USDTは主に取引や送金の中間資産として利用されます。

相場が下落している局面では資産を一時的に避難させる目的で使用され、異なる通貨間での交換をスムーズに行う際にも活用されます。

一方で、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨は、ブロックチェーン上のアプリケーション利用や資産運用の目的で保有されるケースが一般的です。

同じ仮想通貨という分類に属していても、両者には以下のような役割の違いがあります。

  • USDT:流通や交換を担う安定資産
  • 他の通貨:価格変動を伴う運用資産

それぞれの違いを把握し、役割に適した活用をすることが重要です。

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USDTのメリット3選

USDTは価格の安定性に加え、利便性の高さから多くのユーザーに利用されています。

特に以下の3つのメリットが、仮想通貨市場でUSDTの需要を高めている要因です。

  • 相場下落時に資産を守れる
  • 送金や決済がスムーズにできる
  • ドル建てで分散投資できる

USDTは、安定性を保ちながら柔軟な運用を実現できる通貨といえます。

相場下落時に資産を守れる

USDTは、価格の安定性を活かして下落相場でも資産価値を維持しやすい通貨です。

米ドルとほぼ同じ価値を保つため、価格変動の影響を受けにくく、相場が急落しても資産の目減りを防げます。

たとえば、ビットコインの下落が予想される局面で保有分をUSDTに交換しておけば、損失を最小限に抑えられるわけです。

変動の激しい仮想通貨市場において、USDTの安定性は大きな強みです。

送金や決済がスムーズにできる

USDTは、銀行を介さずに短時間で送金や決済を行える点が大きな特徴です。

ブロックチェーン上で発行されているため、取引の透明性が高く、国境を越えた送金でも手数料を抑えられます。

特に国際送金では、従来の銀行システムを利用するよりもコストを削減でき、送金時間も大幅に短縮できます。

個人間の少額送金から企業間の決済まで幅広く利用できる利便性が、USDTの魅力の一つです。

ドル建てで分散投資できる

USDTを保有することで、実質的にドル建ての資産を持つことができます。

日本円のみで資産を保有する場合と比べて、為替変動リスクを分散できる点がUSDTの大きな利点です。

たとえば、円安が進行した場合でも、USDTを保有していればドル資産として価値を維持できます。

ドル建てで資産を分散できる仕組みは、長期的な安定を重視する投資家にとって魅力的な特徴といえます。

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USDTの知っておきたい3つのリスク

USDTは便利で安定した通貨として広く利用されていますが、完全にリスクがないわけではありません。

特に、次の3つの点は事前に理解しておく必要があります。

  • USDTの裏付け資産に不透明な点がある
  • 規制強化によって取引や利用が制限される恐れがある
  • ドルの価値が下がるとUSDTの価値も連動して下がる

リスクを把握したうえで活用することが、USDTを安全に利用するための第一歩です。

USDTの裏付け資産に不透明な点がある

USDTの安定性は、テザー社が保有する資産によって支えられています。

しかし過去には、保有資産の一部内容が不明確だった時期があり、監査体制の透明性について指摘を受けたこともあります。

現在は四半期ごとに保有資産の内訳が公開されるようになりましたが、すべてが外部監査機関による完全な監査報告ではありません。

そのため、一部の投資家からは「裏付け資産が本当に全額存在しているのか」という懸念が残っています。

信頼性は改善傾向にあるものの、今後も報告体制の透明性を注視する姿勢が求められます。

規制強化によって取引や利用が制限される恐れがある

USDTは、国や地域の法改正によって利用が制限されるリスクがあります。

世界的にステーブルコインの普及が進む中で、各国では法整備や監督の強化が進められている状況です。

特にアメリカでは不正な資金の流れを防ぐ目的から、発行や取引に関するルールを厳しくしようとする動きが見られます。

方針の変化によってUSDTが一部地域で使いにくくなったり、取引所が一時的に取扱いを停止したりする可能性もあります。

利用環境の変化を踏まえて信頼できる取引所を選び、最新の情報を確認しておくことが重要です。

ドルの価値が下がるとUSDTの価値も連動して下がる

USDTは米ドルの価値と連動しているため、ドル自体の価値が下がるとUSDTの購買力も低下します。

これは「為替リスク」にあたるもので、USDTを長期間保有する場合には注意が必要です。

たとえば、円高が進行すると、USDTを日本円に戻す際に受け取れる金額が減少します。

ドルの信頼性が揺らぐ局面では、USDTも影響を受ける可能性があります。

安定して見えるUSDTでも、法定通貨に依存する構造的リスクを理解しておくことが重要です。

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まとめ

USDT(テザー)は米ドルと連動して価値を保つステーブルコインとして、仮想通貨市場で広く利用されています。

価格が1ドル前後で安定しているため、相場が不安定なときの資産退避先や取引・送金の中間資産として重要な役割を果たしています。

一方で、テザー社の資産管理の透明性や各国の規制強化、ドル価値の変動といったリスクも存在します。

問題点を理解したうえで適切に使えば、USDTの利便性を保ちながら安全に運用できます。

USDTは「安定性」と「流動性」が両立した通貨であり、ビットコインやイーサリアムと並んで、仮想通貨の基盤を支える存在になっています。

市場の整備と透明性が進めば、より安心して利用できるデジタル通貨としての地位を確立していくでしょう。

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この記事の監修者

監修者プロフィール

トレード歴40年の株職人。“株匠” を目指している。
20歳で株の売買を始めてから20年間、
「日本郵船」1銘柄のみの「売り」「買い」に集中、大きな利益を重ねる。
その後、宮本武蔵が洞窟に籠もるかの如く、チャートと建玉の研究に没頭する。

現在も、チャートと建玉の操作のトレード手法をさらに極めるべく精進を重ねており、
日本株、米国株、イタリア指数、イギリス指数、ユーロ指数、金、原油、コーン、FXなど、
どの市場でも大きな利益を生み出している。

ラジオNIKKEI「相場師朗の株は技術だ!」でキャスターを務める。
東京証券取引所北浜投資塾講師、日本経済新聞社お金の学校講師。

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この記事を書いた人

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。

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