「三空踏み上げには売り向かうべからず」という相場格言は、空売りのタイミングを考えるときによく話題になります。
ただ、実際のチャートでは上がる場合もあれば下がる場合もあり、「何をどこまで信じて良いのか」が分かりにくい場面も多いと思います。
本記事では、日本株約4,000銘柄・2か月分のデータ検証と具体的なチャート事例をもとに、三空踏み上げの特徴と限界を紹介します。
格言を絶対視するのではなく、他の指標や相場状況と合わせてどう捉えるかを考える材料としてご活用ください。
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「三空踏み上げには売り向かうべからず」とは

酒田五法の一つである三空踏み上げは、4連続で陽線が出現かつ窓開けのパターンを指します。
強い上昇相場であり、一気に反転下落する可能性があるため、「三空踏み上げ売りに向かえ」といわれています。
一方で、三空踏み上げだからといって売りに向かうのは危ないのではという意見もあるのです。
果たして一体どちらを信じればいいのでしょうか。
実際に過去のチャートで検証してみました。
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4,000銘柄2か月分のデータから三空踏み上げを徹底検証
検証に当たり、4,000銘柄2か月分のデータを徹底調査。
三空踏み上げが発生した結果、株価は上がったのか下がったのかを追いました。
結果は五分五分
三空踏み上げ後の値動きについて、調査した結果は以下の通りです。
なお、調査した2か月間で発生した三空踏み上げの数は、39回でした。
| 条件 | 上昇 | 下落 | 変化なし |
|---|---|---|---|
| 出現翌日 | 17 | 19 | 3 |
| 出現3日後 | 16 | 22 | 1 |
| 高値圏に出現翌日 | 11 | 10 | 0 |
| 高値圏に出現3日後 | 10 | 11 | 0 |
調査対象:日本株約4,000銘柄
調査期間:2024年4月1日~2024年5月31日
下落のシグナルとされる三空踏み上げですが、結果は五分五分となりました。
やや下落の数は多いですが、そこまで差はなく、シグナルとするほど信頼度は高くないといえるでしょう。
また、出現から3日後の場合、下落の割合は6割ほどにとどまり、下落する可能性が高いとはいえない結果です。
三空踏み上げが高値圏に出現しているという条件を加えても、結果は五分五分となりました。
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三空踏み上げで下がったケース
実際に三空踏み上げで下がったケースを見てみましょう。
横河電機(6841)のケース

横川電機(6841)で、三空踏み上げが発生した後に、一時的ではありますが、株価が下落しています。
その後、レンジ相場となり、下降トレンドに入る程の勢いは生まれませんでした。
とはいえ、三空踏み上げの頂点あたりで空売りを入れていれば、利益が狙えていた可能性はあります。
下げ幅が小さいため、利益を狙う難易度は高めです。
グローバルスタイル(7126)のケース

グローバルスタイル(7126)にて、三空踏み上げが発生したケースです。
4本目に大きな陽線が出現した後、陰線が連続して株価が下がっています。
とはいえ、4本目で上昇した分を戻すように下がっており、大きく下落しているわけではありません。
今回検証した結果では、このように4本目での上昇分だけ下落するパターンが多く見られました。
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三空踏み上げで上がったケース
三空踏み上げが発生したにもかかわらず、株価が上がったケースも確認していきましょう。
データセクション(3905)

上図は、三空踏み上げが発生した時点でのデータセクション(3905)のチャートです。
通常であれば、三空踏み上げですから、空売りを入れろということで売りで入りたいところですが…。
その後、株価は下記の動きとなりました。

下がるどころか、かなりの急上昇となったことがわかります。
三空踏み上げ発生時点で1,140円だった株価が、3,140円まで上がっていったのです。
空売りを入れていたらと思うと、恐ろしい動きですね。
三空踏み上げには売り向かうべからずを体現しているチャートだといえます。
トーイン(7923)

トーイン(7923)の三空踏み上げが出現したケースです。
三空踏み上げ後も、上昇の勢いが止まることなく続いていることがわかります。
三空踏み上げだからといって、空売りを入れればいいわけではないわけですね。
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格言を信じすぎずに勉強しよう
相場の格言「三空踏み上げ売りに向かえ」を、信じすぎると大きな損失を抱えてしまう可能性があります。
今目の前にあるチャートと向き合い、勉強し続けるようにしましょう。
毎日技術を磨くことが、株で利益を積み重ねていく近道となります。
相場格言を扱うときに意識したいポイント
相場格言は、過去の相場参加者が経験的に感じた傾向を、覚えやすいフレーズにしたものだと考えられます。
そのため、相場の一面をうまく切り取っていることもあれば、現在の市場環境や商品特性とは合わない部分が出てくることもあります。
格言を扱うときに大切なのは、それを「絶対的なルール」としてではなく、「特定の状況で注意を向けるきっかけ」として捉える視点です。
たとえば、「三空踏み上げには売り向かうべからず」という言葉は、強い上昇トレンドの最終局面で逆張りする際のリスクを思い出させてくれます。
同時に、「三空踏み上げ売りに向かえ」というフレーズは、急騰後の一服や調整が入りやすい可能性に目を向けさせてくれます。ど
ちらも、「今の値動きはどの局面に近いのか」「トレンドや材料はどの程度強いのか」を考える材料として活用することで、意味を持ちやすくなります。
格言をそのまま行動に結びつけるのではなく、「なぜそう言われてきたのか」「どのような条件がそろうと当てはまりやすいのか」を自分なりに考えてみることが、チャート理解の一歩になります。
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三空踏み上げを題材にした学び方の例
三空踏み上げを題材に学びを深める方法としては、今回のような検証結果だけでなく、自分自身で過去チャートを振り返るアプローチも有効です。
具体的には、一定期間のチャートから三空と見なせる局面をピックアップし、その前後で株価がどのように推移したかを記録していく方法があります。
値幅や期間、出来高の変化、ニュースの有無などを一緒にメモしておくと、後からパターンごとの特徴が見えやすくなります。
また、三空踏み上げが出現したときに、他のテクニカル指標がどのような状態だったかを確認するのも一つのやり方です。
トレンド系指標が強い上昇トレンドを示していたのか、オシレーター系指標が過熱感を示していたのかなどをチェックしておくと、「どのような組み合わせのときに、どのような結果になりやすかったか」を感覚的につかみやすくなります。
このような検証を通じて、「三空踏み上げが出たら必ずこうする」という発想から離れ、チャートの背景や条件を踏まえながら、自分なりの見方を養っていくことができます。
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まとめ
本記事では、「三空踏み上げには売り向かうべからず」という相場格言を手がかりに、三空踏み上げの基本的な形と出現局面、日本株約4,000銘柄・2か月分のデータ検証結果、そしていくつかの具体的なチャート事例を振り返りました。
検証の範囲では、三空出現後の上昇・下落はおおむね拮抗しており、単独のシグナルとして一方向に偏る傾向は確認しづらい結果でした。
また、実際のチャートでは、短期調整でとどまるケースもあれば、その後も上昇が続くケースもあり、格言どおりの展開に当てはまらない場面も多く見られます。
こうした結果から、三空踏み上げは「即座に売り/買いを決める合図」というより、強い値動きが起きている局面に印をつけるサインとして捉えるのが現実的だと考えられます。
三空を見かけたときには、トレンドの向きや出来高、全体相場、他のテクニカル指標なども合わせて確認し、状況を多面的に整理することが大切です。
格言やシグナルに振り回されるのではなく、データとチャートを手がかりに、自分なりの検証とルールづくりを進めていくことで、落ち着いて相場と向き合う土台づくりにつながります。
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これまで10以上のメディア運営に従事。現在は自身も株塾で学びつつ、毎日コンテンツ作成をし続ける。
あらゆるジャンルで編集者として活動してきた経験を活かし、初心者から上級者まで役立つ記事を作成。







