目標株価はあてにならない?過去データが示す現実と正しい活用法を初心者向けに解説

目標株価,あてにならない

「目標株価を信じて買ってみようかな」と思ったことはありませんか?

証券会社やアナリストが発表する“目標株価”は一見、信頼できそうに見えますが――結論から言えば、目標株価はあてになりません。

実際のデータを見ると、目標株価どおりに株価が動くことは少なく、むしろ外れたときの損失のほうが大きいケースもあります。

本記事では、ソフトバンク(9434)の過去データをもとに「なぜ目標株価があてにならないのか」を解説し、代わりに何を基準に株を選ぶべきかまで整理します。

   
目次

目標株価とは何か

目標株価は、「アナリストが一定の前提にもとづいて“○か月後はこのくらい”と見積もった参考価格」です。

たとえば、将来の利益や金利、資本コストなどを仮定し、DCF(将来の利益を現在価値に直す方法)やPER(株価が利益の何倍かで評価する指標)といったモデルで計算します。

ここで大切なのは、①いつまでの想定か(一般的には6〜12か月など)、②前提がいつ更新されるか(決算や会社の見通し、外部要因で見直されます)、③表記の違い(ツールやレポートで呼び方や前提が少し異なることがある)の3点です。

目標株価はあてにならない!未達率は約4割

冒頭でものべましたが、結論からいって目標株価はあてになりません。

直近で証券会社が発表した、目標株価のその後について見ていきましょう。

四半期に一度決算発表があるので、目標株価発表日から3ヶ月の内にどのくらい目標株価からぶれがあったのかを見ていきます。

ソフトバンク(9434/携帯事業)の直近の目標株価を観察対象にします。

目標株価,ソフトバンク

目標株価発表日 会社名 目標株価 最大株価 最低株価
2024年5月27日 野村証券 1,900 2,105 1,854
2024年5月21日 SMBC日興証券 1,830 2,105 1,854
2024年5月10日 ドイツ証券 2,400 2,090 1,854
2024年2月26日 野村証券 1,880 2,064.5 1,791.5
2024年2月22日 岩井コスモ証券 2,300 2,064.5 1,791.5

上の表を元に乖離率をまとめました。

会社名 最大上方乖離率 最大下方乖離率
野村証券 10.8% 2.4%
SMBC日興証券 15.0%
ドイツ証券 22.8%
野村証券 9.8% 4.7%
岩井コスモ証券 22.1%

③、⑤は3ヶ月で目標株価に1度も達していません。

③、⑤の目標株価を信じて投資していたら、大変な目に遭っています。

②に関しては目標を達成した状態で、目標株価を発表しています。

このように目標に達した状態で発表されることも多々あり、信頼性に疑問がありますね。

①、④は目標に達しています。

また独自でソフトバンクの直近30回分(3年分)の目標株価到達率を計算した結果、4つのことがわかりました。

  • 目標株価未達率は約42%
  • 目標株価未達時の損失が大きすぎる
  • 5回に1回は目標株価が達成された状態で目標株価が発表される
  • 目標達成までに最大9.5%下方へ乖離

以上のことから、目標株価の信頼性や未達時の最大乖離率に対する目標到達率の悪さからあてにすることはやはりおすすめできません。

目標未達時の乖離が20%以上あるのに、約58%目標株価に到達することをポジティブにとらえることはとても危険です。

どうしても目標株価をあてに取引する場合の注意点

  • 損切りは徹底すること
  • 広く分散すること

以上のことだけは、必ず守ることをおすすめします。

【乖離率の定義】

  • 「最大上方乖離率=(期間内の最高値−目標株価)/目標株価」

  • 「最大下方乖離率=(目標株価−期間内の最安値)/目標株価」

  • 未達率=期間内に一度も目標株価≧高値を満たさない割合

目標株価があてにならない4つの理由

ここまで、目標株価をあてにして投資するのは危険だということを目標到達率を元に説明しました。

2章では、なぜ目標に到達することが難しいのかについて解説します。

目標株価があてにならない理由は主に4つあります。

アナリストは目標株価を当てようとしていない

アナリストとは、目標株価を推測しているプロの分析家です。

財務分析や経営者へのインタビューなど、様々な角度から株式価値の分析を行っています。

一見するとすごそうな人の意見で参考にできそうですが、あてにするのは危険です。

なぜなら「ミネルヴィ二の成長株投資法」にも書かれていますが、他のアナリストと大幅にずれた目標を設定したにもかかわらず、目標株価を外してしまうとクビにされる可能性があるからです。

そのためアナリスト自身の本当の考えや分析が全て反映されたものとは言えません。

株式市場は感情で動いている

株価,乖離

株式市場は論理的に動いておらず、売買する人々の感情で動いています。

たとえば普通の人は理論株価が分かっていたとしても途中で大幅に株価が乖離してしまった場合、お金が減ってしまう恐怖で目標到達までに狼狽売りをしてしまう可能性が高いからです。

お金というものは増えると嬉しくなったり、減ると怖くなったりしてしまうことからこのようなことがおこります。

長期的に見ると株価は会社の本質的な価値になりますが、その過程では感情的な問題で理論株価から大幅にずれてしまうことがほとんどです。

バンドウォークとは?順張りで利益を出せるようになる見極め方を解説

需要と供給が株価を決める

株価が決まる仕組み

株価とは需要と供給で決まります。

需要と供給の法則とは、買い手と売り手のバランスで価格が上下する法則です。

株価が需要と供給で決まる以上、実質的な価値に関係なく買い手が売り手を上回ればどこまででも上がります。

需要と供給の法則は株価を決める本質的なものであるのに対し、目標株価とは曖昧で表面的なため信頼性がないに等しいと言えます。

株価の決まり方とは?価格が変動する理由と実例も合わせて解説

証券会社は株を取引してもらいたいから

そもそも目標株価を提示する理由は、証券会社が投資家に手数料を払ってもらいたいという理由も1つあります。

目標株価を示すことで、投資家に株の売買を促す効果が期待できます。

取引が活発になると証券会社が儲かるということもあり、いちコンテンツとして目標株価を提示しています。

1章で目標が到達された状態にもかかわらず、目標株価が発表されていることについて触れました。

目標を発表することでおこるニュース性を利用して、取引を促進させる効果を期待しているようにも見えますね。

株式投資で絶対やってはいけない3つのこと

目標株価をあてにして投資できないとなったら「どうしていいかわからない」と、思っていませんか?

以降の章では、どうやったら上がる株を見つけられるようになるのかについて解説します。

まずは株を選ぶ前に、株式投資で絶対にやってはいけない3つのことに頭に入れましょう。

他人の推薦で選ばない

友人や職場の人など、他人が推していた株を売買することはやめておいた方がいいです。

株というものはどんな銘柄を買うのかも大事ですが、資金量に対してどのくらい買うかや売買するタイミングも大事だからです。

他人というと身近な人を例に挙げましたが、掲示板やX(旧Twitter)で有名な人の意見を真に受けることもおすすめできません。

なにも身に付かずお金だけを失う可能性が高いです。

知名度だけで選ばない

有名だからという理由で、トヨタやソフトバンクなどの株を根拠もなく取引することは絶対におすすめできません。

株式市場というものは、これまで築いてきたブランドや過去のことには一切の関心を示すことがないからです。

過去にものすごい業績で大きく成長してきた企業であっても、時代の変化についていけず業績を伸ばせなくなった会社はとことん売りつくされてしまいます。

株式市場は、将来のことだけを見据える場所です。

誰もが知っている有名な企業であっても、値を下げると二度と上がってこない可能性が十分あります。

ニュースや新聞などの情報で選ばない

メディアでおすすめされている株を取引することもおすすめできません。

特定の個別株が勧められている場合、すでに大口の投資家に保有されている株を個人投資家に売って利益を確定させたいという思惑があるからです。

本当に儲かる株であるならば、情報を先に仕入れたメディア関係者が全部買い占めて利益を独り占めするはずです。

株の勉強をはじめるならまずは基本的な分析から始めよう

テクニカル分析,ファンダメンタルズ分析

主な分析方法は2つあります。

それぞれ見ていきましょう。

テクニカル分析で「需給の変化」を読む

株価チャートを使って、大口投資家の動きやトレンドの転換点を見極める方法をテクニカル分析といいます。

代表的な指標は以下の3つ。

  • ローソク足:日々の値動きを視覚化する基本

  • 移動平均線:トレンドの方向を判断する

  • 出来高:買い・売りの勢いを確認する

これらを組み合わせることで、「今どこで誰が動いているか」を読み取る力が身につきます。

ファンダメンタル分析で「伸びる会社」を見抜く

決算書や業績予想などから、会社の本質的な価値を分析することをファンダメンタル分析といいます。

特に注目すべきは以下の指標です。

  • 売上・営業利益の成長率

  • 粗利率の改善傾向

  • ガイダンスの上方修正

  • サービスの競争優位性(強みの持続性)

市場予想を上回る企業は、長期的に株価が上昇する傾向があります。

テクニカル分析は意味ない?意味がある理由と根拠を徹底解説

よくある質問Q&A

Q1. 目標株価は“将来の株価を保証するもの”ですか?

A.いいえ。

目標株価は「一定の前提条件のもとで、今後このくらいになるだろう」という“予測値”です。

企業の業績見通しや金利、景気の動きなど、発表時点の仮定に基づいて計算されています。

つまり、「将来こうなる保証」ではなく、“その時点での参考意見”にすぎないという認識が大切です。

Q2. 目標株価を参考に取引するなら、どんな点に注意すべきですか?

A.次の2つを徹底してください。

  1. 損切りラインを決めること:予想が外れた場合に備え、必ず事前に損切り設定を。
  2. 銘柄を分散すること:1つの目標株価に依存せず、複数銘柄に分散投資を行う。

また、「目標株価が出た=買いサイン」とは限りません。発表直後は大口の売り抜けタイミングにもなり得る点にも注意が必要です。

メディアで紹介された「目標株価上昇」は買い時ですか?

A.必ずしもそうではありません。

メディアで大きく取り上げられた頃には、すでに大口投資家がポジションを取り終えている(=利確段階)ことも多いです。

むしろ、出来高が急増している場合は「出口の合図」であることも。

ニュースで話題になったタイミングこそ、冷静に“誰が得をする情報か”を考えることが大切です。

まとめ

  • 目標株価はあてにならない。未達率は約4割、下方乖離も大きい。

  • アナリストの事情や市場心理を理解すれば、信頼しすぎる危険性が見えてくる。

  • 本当に勝てる投資家は、“自分で考え、検証し、ルールを守る人”です。

短期的な予想に惑わされず、テクニカル×ファンダメンタルの両面から銘柄を見る習慣を身につけましょう。

それこそが「目標株価に頼らない投資力」を磨く最短ルートです。

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この記事の監修者

監修者プロフィール

トレード歴40年の株職人。“株匠” を目指している。
20歳で株の売買を始めてから20年間、
「日本郵船」1銘柄のみの「売り」「買い」に集中、大きな利益を重ねる。
その後、宮本武蔵が洞窟に籠もるかの如く、チャートと建玉の研究に没頭する。

現在も、チャートと建玉の操作のトレード手法をさらに極めるべく精進を重ねており、
日本株、米国株、イタリア指数、イギリス指数、ユーロ指数、金、原油、コーン、FXなど、
どの市場でも大きな利益を生み出している。

ラジオNIKKEI「相場師朗の株は技術だ!」でキャスターを務める。
東京証券取引所北浜投資塾講師、日本経済新聞社お金の学校講師。

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この記事を書いた人

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。

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