「先物取引」という言葉を聞いたことはあっても、実際にはどんな仕組みかよくわからない投資初心者の方も多いのではないでしょうか。
株式投資に慣れてくると、「もっと効率よく利益を出したい」「相場が下がっているときにも利益を得たい」と考えることもありますよね。
この記事では、株の先物取引について、仕組みや特徴、他の投資との違い、注意点までを解説します。
株の先物取引とは?
まずは、株の先物取引とはそもそもどんな仕組みなのかについて解説します。
先物取引の具体例
先物取引とは、ある商品を、将来の決められた日に、あらかじめ決められた価格で売買する契約を行う投資方法です。
たとえば、現在の日経平均株価が30,000円だとして、1か月後に31,000円で売る契約を先に結んでおくことで、そのときに値上がりしていれば差額の利益を得られます。
現物の株と違って、実際に株券などのモノを手にすることなく、売買の差額だけで損益が確定するのが大きな特徴。
将来の価格を予想して、今のうちに売買を約束しておくというのが、先物取引の基本イメージです。
先物取引と信用取引の違い
先物取引とよく混同されるのが「信用取引」です。
信用取引は、証券会社からお金や株を借りて、実際の株を売買する仕組みです。一方で、先物取引では、あくまで将来の取引の契約を売買しており、現物の株は登場しません。
また、信用取引は個別株で行われることが多いのに対して、先物取引は日経平均やTOPIXなど、指数全体を対象にしたものが中心です。
さらに、信用取引には金利がかかるのに対して、先物取引では金利がかからないという違いもあります。
先物取引とCFDの違い
CFDとは、原資産を保有せずに、売買価格の差額だけを現金でやり取りする金融取引のことです。
CFDも、先物と同じように売買の差額だけをやり取りしますが、いくつか異なる点があります。
大きな違いは、取引期限です。
先物取引には「満期日」があり、それまでに決済を行う必要がありますが、CFDは基本的に期限がなく、長期保有も可能です。
また、CFDの方が商品数が豊富で、株価指数だけでなく、個別株、原油、金、為替など多彩な資産に投資できます。
そのぶん、手数料体系が複雑であることや、業者によって売値と買値の差が異なるなどの注意点もあります。
先物取引とETFの違い
ETFは、株のように市場で売買できる投資信託で、日経平均などの指数に連動するように設計されています。
先物取引と違って、現物の裏付けがある点が特徴です。
ETFは取引期限がなく、長期保有にも適していますが、先物ほどのレバレッジはかけられません。
また、ETFは価格変動が比較的マイルドなので、短期間で大きな利益を狙いたい人にはやや不向きかもしれません。
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先物取引の種類
ここでは、先物取引の大まかな分類について解説します。
先物とひと口に言っても、対象となる資産によって種類が分かれています。
商品先物
商品先物とは、金・原油・トウモロコシなど、実物の商品を対象にした先物取引です。
もともとは、農産物や資源の価格変動から身を守るために誕生した制度で、今では投資商品としても多くの個人投資家に利用されています。
たとえば、金先物なら、将来の金価格が上がると予想して先に買っておき、実際に価格が上がったタイミングで売ることで、その差額が利益になります。
ただし、商品先物は金融先物よりも価格変動が大きい傾向があり、初心者にはやや難易度が高い側面もあります。
特に原油や天然ガスなどは、地政学リスクや需給バランスの影響を受けやすいため、相場の読みが外れると損失も大きくなりやすいです。
金融先物
金融先物とは、株価指数・通貨・債券などの金融商品を対象にした先物取引です。
個人投資家にとって最も身近なのが「株価指数先物」です。
とくに有名なのは、日経225先物やTOPIX先物でしょう。
たとえば、日経平均株価が今後上がると予想するなら、日経225先物を買っておき、実際に上がったら売って差益を得ます。
また、下がると予想すれば、売りから入ることで利益を狙うこともできます。
為替や債券の先物もありますが、こちらはやや専門性が高く、まずは株価指数先物からスタートするのが安心です。
金融先物は、価格の透明性が高く、取引量も多いため、初心者にも比較的なじみやすいジャンルと言えます。
先物取引の特徴
ここでは、先物取引ならではの基本的な特徴を3つご紹介します。
売買の差額で決済をする
先物取引では、実際に現物の株や商品を受け渡すことはありません。
売買契約を結んだ後、満期日または任意のタイミングで決済を行い、その差額だけをやり取りする仕組みになっています。
たとえば、日経225先物を30,000円で買い、31,000円で売れば、その差額1,000円が利益となります。
この仕組みは差金決済と呼ばれ、現物株のように実際に株式を保有するわけではありません。
そのため、資金効率が高く、短期間で利益を狙うトレードスタイルにも向いていますが、逆に価格が下がれば差損が出ることにも注意が必要です。
取引できる期限がある
先物取引には期限があります。
つまり、いつまでに決済する必要があるかがあらかじめ決められており、現物株のようにずっと保有することはできません。
たとえば、日経225先物なら「3月限」「6月限」などといった具合に、年4回の満期が設定されています。
この期限までに買い戻しか売却をしてポジションを解消しないと、自動的に決済が行われます。
取引期限があることで、戦略的なポジション調整が求められるため、常に期限を意識した投資判断が必要となります。
証拠金が必要
先物取引では、全額の資金を準備する必要はなく、証拠金と呼ばれる一定額の資金を預け入れることで取引ができます。
この仕組みによって、比較的少ない資金でも大きな金額の取引が可能になります。
たとえば、日経225先物1枚(約300万円分)を取引するのに、必要な証拠金はおよそ10〜15%(約30万〜45万円程度)で済みます。
このように預けた証拠金よりも大きな金額の取引ができる仕組みのことを、レバレッジといいます。
このレバレッジ効果は大きな魅力ですが、反対に損失が膨らみやすいという側面もあります。
また、相場が大きく動いた場合には追加証拠金(追証)が求められることもあるため、資金管理には注意が必要です。
先物取引のメリット
ここでは、株の先物取引が持つ主なメリットを3つ紹介します。
レバレッジ効果で資金効率が高い
先物取引の最大の特徴は、やはりレバレッジを効かせられる点です。
証拠金を預けるだけで、実際の取引額の何倍もの資金を動かせます。
たとえば、証拠金30万円で300万円相当の取引を行った場合、実質的には10倍の資金効率です。
これにより、値動きが少ない相場でも、わずかな変動を利益に変えることができます。
ただし、当然ながら損失も同じ倍率で増えるということは、忘れてはいけません。
銘柄選びが不要
現物株ではどの会社の株を買うかが重要になりますが、先物取引では、日経平均やTOPIXなど市場全体の指数を対象にすることが多いため、銘柄選びに悩む必要がありません。
特に投資初心者にとっては、業績を調べたり、チャートを読み解いたりするのが難しいもの。
そうした方でも、先物であれば、全体の経済ニュースや指数の動きに注目すれば良く、シンプルな判断軸で取引ができます。
また、個別企業の不祥事などに左右されづらいため、読めない下落に巻き込まれるリスクも比較的低いといえます。
少額から取引できる
「先物取引って、大きな資金が必要なんじゃないの?」と不安に感じる方も多いですが、実はミニ取引やマイクロ先物といった少額商品も存在します。
たとえば日経225miniなら、通常の10分の1の取引単位で売買できるため、必要な証拠金も数万円程度に抑えることが可能です。
最近では、楽天証券やSBI証券などでも、初心者向けにマイクロサイズの先物商品が提供されています。
このように、まずは小さく始めることができるのも、先物取引の魅力のひとつです。
慣れないうちは、ミニ商品でトレード経験を積んでみるのがおすすめですよ。
先物取引のリスクと注意点
ここでは、先物取引を始めるうえで知っておきたいリスクや注意点について解説します。
追加で証拠金が必要になる場合がある
先物取引では、最初に預けた証拠金以上に相場が大きく動いた場合、追加で証拠金が必要になることがあります。
いわゆる「追証」であり、これは、保有しているポジションの含み損が大きくなり、証拠金維持率が証券会社の基準を下回った場合に発生する仕組みです。
たとえば、30万円の証拠金でポジションを持っていた場合、相場が急落して含み損が15万円以上になると、追加で数万円〜十数万円の入金を求められるケースがあります。
追証を入金できなければ、強制的にポジションが決済されて損失が確定するため、資金管理と損切りルールの徹底がとても大切です。
元本割れのリスクがある
現物株の場合は、購入した株が値下がりしても売らなければ損失は確定しないと考える方も多いかもしれません。
しかし、先物取引では、期限があるうえ、レバレッジをかけているため、相場の変動に対するダメージが大きくなります。
たとえば、わずか2%の値下がりでも、10倍のレバレッジをかけていた場合は20%の損失になります。
これが続けば、元本が大きく目減りするリスクもあるということです。
特に初心者のうちは、「過度なレバレッジをかけない」「損切りラインを明確に決めておく」など、自分を守るルール作りが重要です。
期日までに決済する必要がある
先物取引には期日があるため、長期保有ができない点にも注意が必要です。
現物株やETFとは異なり、ずっと保有して値上がりを待つというスタイルは基本的にできません。
期日までに決済しなければ、自動で反対売買が行われることになりますが、そのときの価格によっては思わぬ損失が確定する場合もあります。
特に「仕事が忙しくて相場を見られなかった」「決済期限を勘違いしていた」といったミスには要注意です。
日々の値動きと期限の管理が必要になる点は、初心者にとって少しハードルに感じるかもしれません。
まとめ
株の先物取引は、仕組みを正しく理解すれば、相場の上下にかかわらず利益を狙える魅力的な手段です。
現物株にはない特徴やリスクがあるため、なんとなく始めるのではなく、自分に合った活用法を見つけることが大切です。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。