通貨スワップとは何か?FXスワップポイントとの違いを徹底解説

通貨スワップとは何か?FXスワップポイントとの違いを徹底解説

「通貨スワップって、FXのスワップポイントと同じなの?」

「ニュースで『日韓通貨スワップ』って聞くけど、どっちが得するの?」

「通貨を交換して返す仕組みって、何のメリットがあるの?」

こうした疑問をもつ方も多いのではないでしょうか。

通貨スワップは「異なる通貨を交換して、一定期間後に再び交換する取引」です。

一見すると難しそうに聞こえますが、仕組みを整理するとシンプルです。

通貨スワップには大きく2種類があります。

・金融機関や企業が利用する取引型の通貨スワップ
・国や中央銀行同士が結ぶ通貨スワップ協定

この記事では、通貨スワップの定義や仕組み、FXスワップポイントとの違いをわかりやすく解説します。

この記事を読むことによって、「通貨スワップの意味を説明できる」「FXのスワップポイントと違いが理解できる」ようになるので、ぜひ最後まで読み進めてください。

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目次

通貨スワップとは「異なる通貨を交換し再交換する取引」

通貨スワップとは何か?FXスワップポイントとの違いを徹底解説

通貨スワップとは「異なる通貨を一時的に交換し、あらかじめ決めた条件で再び元の通貨に交換する取引」です。

かんたんに言えば「通貨の貸し借り」のようなもので、金融市場や国際経済を安定させることにつながります。

ここでは通貨スワップの目的・流れ・種類について具体的に見ていきましょう。

通貨スワップの目的は「為替リスク回避」や「資金調達の効率化」

通貨スワップが活用される理由は、次の2つです。

  • 為替変動による損失を避けるため
  • 必要な外貨を安定的に調達するため

たとえば、日本の銀行がドルを大量に必要とする状況を考えてみましょう。

もし通常の為替市場で円をドルに替えると、取引量の大きさからドルの価格が上がり、結果的に高値でドルを買わされてしまうリスクがあります。

そこで、あらかじめ決めた条件で米国の銀行と通貨スワップを結べば、相場の変動に影響されずにドルを調達できます。

しかも、一定期間後には同じ条件で再交換するため、予想外の為替損失を避けられるのです。

通貨スワップの流れは「交換→一定期間保有→再交換」

通貨スワップの手順は次のとおりです。

  1. 契約時に、日本円と米ドルなどの通貨を交換する
  2. 交換した通貨を一定の期間保有し、必要に応じて資金として利用する
  3. 契約終了時に、あらかじめ決めておいたレートや条件で再び交換し、元の通貨に戻す

重要なのは「再交換の条件を最初に取り決めておく」点です。

これにより、たとえ契約期間中に為替レートが大きく動いても、終了時には約束した条件通りに再交換できるため、予想外の損失を避けられる仕組みになっています。

通貨スワップには「金融取引」と「国同士の協定」の2種類ある

通貨スワップには「金融取引としてのスワップ」と「国家間のスワップ協定」の2種類あります。

それぞれの特徴を比較したものが、以下の図表1です。

図表1

 

金融取引としての通貨スワップ 国家間の通貨スワップ協定
対象 銀行や企業 中央銀行同士(例:日本銀行と米FRB)
目的 ・為替リスクを避ける

・必要な外貨を安定的に調達する

金融危機や外貨不足が起きたときに市場を安定させるための「安全網」

仕組み

1. 契約時に、円とドルなどを交換する

2. 一定の期間保有し、資金調達や決済に利用する

3. 契約終了時に、取り決めた条件で再び交換して元の通貨に戻す

1. 協定を結んだ中央銀行同士が、必要に応じて自国通貨を相手に差し出し、代わりに外貨を受け取る

2. 協定期間が終わると、あらかじめ決めた条件で再び交換して元の通貨に戻す

具体例 企業がドル建て債券を発行し円資金を得る ・日米通貨スワップ協定

・日韓通貨スワップ協定

 

同じ「通貨スワップ」という言葉でも、対象が企業か国家かによって目的も役割も大きく異なります。

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外貨両替は「一度交換するだけ」通貨スワップは「将来の再交換まで取り決める」

普段、私たちが海外旅行などで現地の通貨を手に入れるときは「外貨両替」を利用します。

一方で「通貨スワップ」は同じように通貨を交換する仕組みですが、交換の流れや目的が大きく異なります。

両者の違いを押さえておくと、通貨スワップの特徴がより理解しやすくなります。

【外貨両替】取引時点の為替レートで、一度だけ交換する仕組み

・交換が済めば取引は完了となる。

・もし長期間外貨を保有していると、後のレート変動によっては思わぬ損をする可能性がある。

【通貨スワップ】契約時に交換だけでなく、将来の再交換条件まで決めておく仕組み

・最初の交換に加えて「一定期間後にどのレートで再交換するか」を取り決める。

・契約終了時にはあらかじめ決めた条件で元に戻せるため、為替変動による予想外の損失を避けられる。

外貨両替は短期的な利用に向いた手段ですが、通貨スワップは将来の再交換条件を決められるため、長期の資金調達やリスク回避に有効です。

そのため、金融機関や国は外貨両替ではなく通貨スワップを活用します。

「通貨スワップ」と「FXスワップポイント」の違いを徹底解説

「通貨スワップ」と「FXのスワップポイント」は名前が似ているため、初心者にとって混同しやすい用語です。

しかし、この2つは仕組みも使われる場面も異なります。

  • 通貨スワップ:実際に異なる通貨を交換し、一定期間後に再び戻す取引
  • FXスワップポイント:外貨を保有している間に発生する「金利差の調整金」

この違いを押さえれば、ニュースで聞く「通貨スワップ」と、FX取引で受け取る「スワップポイント」を混同せずに理解できます。

ここでは、スワップポイントの特徴や通貨スワップとの違いについて解説していきます。

FXスワップポイントとは「金利差による損益」

FX取引では、通貨を売買したときに「2つの通貨の金利差」が発生します。この差額を調整するのが「スワップポイント」です。

スワップポイントには「受け取れる場合」と「支払う場合」があり、2つの通貨の金利差によって決まります。

【受け取れるパターン】

日本円のように「金利が低い通貨」を売って、米ドルのように「金利が高い通貨」を買う場合です。

このとき、売った円の低い金利を支払い、買ったドルの高い金利を受け取ります。その結果、差額がプラスになるため、スワップポイントを受け取れるわけです。

【支払うパターン】

「金利が高い通貨」を売って「金利が低い通貨」を買うケースです。この場合は、売った通貨の高い金利を支払う一方で、買った通貨の低い金利しか受け取れません。

そのため、差額がマイナスになり、スワップポイントを支払う必要が出てきます。

つまり、FXスワップポイントは「通貨を保有している間に発生する金利差の調整金」であり、通貨そのものを交換しているわけではありません。

両者の違いは「通貨そのものを交換するか、金利差を調整するか」

通貨スワップとFXスワップポイントは、名前が似ているという理由から混同されがちです。両者の本質的な違いは「通貨そのものをやり取りするか」「金利差を調整するか」という点にあります。

  • 通貨スワップ:通貨を実際に交換し、一定期間後に再交換する取引
  • FXスワップポイント:通貨を保有している間に生じる金利差の調整金

このように似た名前ではあっても、意味は大きく異なります。また通貨スワップは金融機関や国家レベルで活用されるのに対し、FXスワップポイントは個人投資家の取引に適用される点も重要な違いです。

通貨スワップは「国レベルの取引」FXスワップポイントは「個人レベルの取引」

通貨スワップは、国や大手金融機関が資金の安定を図るために利用します。個人投資家に直接かかわる仕組みではありません。

一方、FXスワップポイントは個人が外貨を保有する際に、日々発生する金利差の調整金です。そのため、FX取引をする人にとっては身近な存在です。

つまり、ニュースで取り上げられる「通貨スワップ」は国レベル、FX口座に表示される「スワップポイント」は個人レベルの取引であり、両者は目的も対象もまったく異なります。

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通貨スワップの3つのメリット

通貨スワップは、国や金融機関が市場を安定させるために用いる仕組みです。具体的には、以下の3つのメリットがあります。

  • 為替リスクを避けられる
  • 効率よく資金を調達できる
  • 資金計画を安定させられる

ここでは、これらのメリットについて具体的に解説していきます。

メリット①:為替リスクを避けられる

通貨スワップは、あらかじめ「為替レート(通貨を交換するときの比率)」を決めておけるため、相場が変動しても損するリスクを抑えられます。

為替は毎日変動しているため、円高になったり円安になったりします。たとえば企業がドルで支払う契約を結んでいる場合、円安だと同じ1ドルでも円での支払い額が増えてしまうわけです。

そこで通貨スワップを利用し、契約時にレートを決めてドルを事前に確保しておけば、支払期日に円安が進んでいても余計な負担を抑えられます。

このように、通貨スワップは国際取引を安心して進めるためのリスク回避手段といえます。

メリット②:効率よく資金調達できる

通貨スワップを使うと、自国通貨を担保に外貨を調達できます。たとえば、円を持っている日本の銀行が米ドルを必要とするとき、米国の金融機関と通貨スワップを結べば、すぐにドルを得られます。

一方で、海外市場で直接資金を調達しようとすると、次のような課題があります。

<条件>

  • 市場の金利や為替レートの影響を強く受ける
  • 投資家の需要によって、資金調達の条件が変わる
  • 信用の格付けによって、不利な条件を提示されることがある

<時間>

  • 公募や手続きに時間がかかる
  • 市場環境が悪いと調達が遅れることもある

通貨スワップであれば、こうした条件や時間に左右されず、あらかじめ決められた契約に基づいて迅速に外貨を確保できます。

メリット③:資金計画を安定させられる

通貨スワップは「一定期間後に同じ条件で再交換する」ため、返済計画や資金繰りを安定させる効果があります。

これは、契約時点で「将来の為替レート」や「返済方法」があらかじめ決まっているからです。相場の急変に左右されず、必要な通貨を確実に返済できるため、資金計画が立てやすくなります。

また、通貨スワップ協定を結んでいると、金融危機や外貨不足が起きても「必要な外貨を確保できる」という安心感が生まれます。

その結果、国内の金融機関も資金調達に不安を感じにくくなり、市場の安定につながるわけです。

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通貨スワップの2つの留意点

通貨スワップは資金調達やリスク回避に役立つ取引ですが、利用する際には気をつけなければならないこともあります。代表的な留意点は、次の2つです。

  • 契約にかかるコストの存在
  • 相手国や金融機関の信用リスク

ここでは、それぞれ注意事項について詳しく解説していきます。

留意点①:契約時の手数料やコストを考慮する

通貨スワップは「通貨を交換する取引」ですが、その際には契約条件に基づいた手数料や利払いコストがかかります。

たとえば、日本銀行がアメリカのFRB(米連邦準備制度理事会)と通貨スワップを結び、日本側がドルを借りる場合を考えてみましょう。

このとき、日本銀行は 受け取ったドルに対して、一定の利息を支払う必要があります。期間が長くなるほど、この利息の負担は大きくなります。

つまり、通貨スワップは「無料で外貨を借りられる制度」ではなく、あくまで金融取引の一環として費用を伴うわけです。

留意点②:契約相手の信用リスクを検討する

通貨スワップは契約に基づいて行われるため、原則として満期には返済されることになっています。しかし、相手国の経済が深刻な危機に陥ると、返済に必要な外貨を確保できなくなる場合があります。

その結果、契約があっても予定どおり返済されないリスクが生じるのです。

つまり、通貨スワップは「契約だから必ず安心」というわけではなく、相手国の経済力や信用度に依存する金融取引です。

そのため、国家間のスワップ協定を結ぶ際には、相手国の経済状況や政治情勢を慎重に見極める必要があります。

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通貨スワップの代表的な事例2選

通貨スワップはイメージを湧かせづらい仕組みですが、実際の事例を見るとその役割や意義が理解しやすくなります。

ここでは、代表的な2つのケースを紹介します。

  • 日本銀行と米FRBのドル供給協定
  • 企業がドル建て債券を発行して円資金を調達するケース

具体的な事例を見ながら、理解を深めていきましょう。

日本銀行と米FRBのドル供給協定

日本銀行と米国の中央銀行(FRB)は、金融市場でドルが不足する事態に備えて通貨スワップ協定を結んでいます。

この協定により、日本の銀行は日銀を通じて必要なドルを一時的に借りることができます。その結果、輸入代金の支払いや送金に必要な資金を確保でき、海外との取引が滞るのを防げるのです。

実際にこの仕組みが役に立った場面は、以下の2つです。

  • 2008年のリーマンショック時:世界的にドルが不足した際、日本の銀行が円を担保にドルを確保できた
  • 2020年の新型コロナ危機時:金融市場が混乱する中、ドルを安定的に供給する手段として活用された

このように、国家間の通貨スワップ協定は「もしもの時に通貨を確保できる仕組み」として、市場の安定に役立っています。

企業が「ドル建て債券」を発行して円資金を調達するケース

通貨スワップは、企業の資金調達にも活用されます。たとえば、日本企業が海外投資家から資金を集めるために「ドル建て債券(ドルで返済する約束の借金)」を発行するケースがあります。

この場合、企業の手元に入るのはドルです。しかし、実際の経費や投資で必要なのは円資金であることが多いため、企業は通貨スワップを利用してドルを円に交換します。

一定期間後、契約条件に従って元の通貨に戻すことで、為替リスクを抑えながら効率的に円資金を活用できるわけです。

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通貨スワップに関するよくある質問

通貨スワップに関するよくある質問に回答します。

日韓の通貨スワップ協定は、一方が得をする援助のような仕組みなのでしょうか?

通貨スワップは「どちらか一方が得をする援助」ではありません。日韓の協定に限らず、金融危機や通貨不足の際に相手国の通貨を借りられる仕組みです。

つまり、両国が「もしもの時の備え」として結ぶ相互支援の制度といえます。

通貨スワップとはなに?仕組みをわかりやすく解説

FXのスワップポイントは業者ごとに金額が違うのはなぜですか?

スワップポイントは、各FX業者が独自に設定しているため金額が異なります。背景には「業者がどのくらい有利な条件で資金を調達できるか」や「手数料やスプレッドのバランス」が関係しています。

よって、スワップポイントだけでなく、取引コスト全体を比較して業者を選ぶことが重要です。

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まとめ

この記事では「通貨スワップとは何か」について、基本の仕組みから具体例まで解説しました。

【通貨スワップの定義】

異なる通貨を交換し、一定期間後に再交換する取引

【2種類の形態】

  1. 銀行や企業が利用する金融取引型
  2. 国や中央銀行が結ぶ協定型

【FXスワップポイントとの違い】

・通貨スワップは通貨そのものを交換

・FXスワップポイントは金利差の調整金

【メリットとデメリット】

・メリット:為替リスクの回避や資金調達の効率化ができる

・デメリット:依存リスクやコストに注意が必要

【具体的な事例】

・日米通貨スワップ協定

・企業によるドル建て債券の資金調達

通貨スワップは、普段の生活や個人投資家に直接関わるものではありませんが、経済ニュースや国際金融の基盤を理解するうえで欠かせない知識です。

FXスワップポイントと混同せず、それぞれの役割を正しく整理しておけば、経済の動きをより深く読み解けるようになるでしょう。

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この記事の監修者

監修者プロフィール

トレード歴40年の株職人。“株匠” を目指している。
20歳で株の売買を始めてから20年間、
「日本郵船」1銘柄のみの「売り」「買い」に集中、大きな利益を重ねる。
その後、宮本武蔵が洞窟に籠もるかの如く、チャートと建玉の研究に没頭する。

現在も、チャートと建玉の操作のトレード手法をさらに極めるべく精進を重ねており、
日本株、米国株、イタリア指数、イギリス指数、ユーロ指数、金、原油、コーン、FXなど、
どの市場でも大きな利益を生み出している。

ラジオNIKKEI「相場師朗の株は技術だ!」でキャスターを務める。
東京証券取引所北浜投資塾講師、日本経済新聞社お金の学校講師。

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この記事を書いた人

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。

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