SNSやYouTubeなどで「オルカン」という言葉を耳にしたことはありませんか?
「eMAXIS Slim 全世界株式(通称オルカン)」は、投資初心者に人気のある投資信託ですが、「おすすめしない」という声も一定数見られます。
この記事では、オルカンにまつわるリスクや注意点、過去の値動き、他商品との比較まで、投資初心者の方に向けて解説していきます。
オルカンとは?まず基本をおさらい
まずはオルカンの概要と、なぜ人気を集めているのかを整理しておきましょう。
eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)の概要
オルカンは、三菱UFJアセットマネジメントが提供している投資信託で、正式名称は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」です。
先進国はもちろん、新興国も含めた約50か国以上の株式を対象にしており、ひとつの商品で全世界の株式に投資できることが最大の特徴です。
オルカンのベンチマークは「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(日本を含む)」で、米国、日本、中国、インドなど約50カ国の株式市場を対象にしています。
この指数に基づいて、米国、日本、中国などの主要市場から、インドやブラジルなどの新興国市場まで、幅広くカバーしているのです。
運用コストも非常に低く、信託報酬は年率0.05775%(2025年7月時点)と業界でも最安水準を誇っています。
長期で積み立てる人にとって、コストが低いのは大きな魅力ですよね。
なぜ多くの投資家に選ばれているのか
オルカンがここまで人気を集めている理由は、これ一本で世界中に分散投資できる手軽さにあります。
個別に複数の国や企業に投資するのは大変ですが、オルカンならそれを一つの商品で実現できるのです。
さらに、長期投資・積立投資との相性がよい点も大きなメリットです。
オルカンは時価総額加重型で構成されているため、成長している国や企業の比率が自然に増え、世界経済の変化に自動的に対応できる点も魅力です。
加えて、オルカンは「eMAXIS Slim」シリーズの中でも人気が高く、2025年7月時点では純資産総額が67,434億円を超えるなど、多くの投資家から支持を集めています。
オルカンがおすすめできないと言われる理由
この章では、オルカンが持ついくつかのリスクについて解説していきます。
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2-1. 実は米国株が6割超で偏っている
「全世界株式」と聞くと、バランスよく世界中に分散されているイメージを持つかもしれません。
しかし、実際のところオルカンの構成比率は米国株が全体の60%以上を占めており、実質的には米国中心の投資となっているのです。
これは、ベンチマークにしているMSCI ACWI自体が世界の時価総額比に連動しているためです。
米国企業が圧倒的なシェアを持っている現在では、どうしても米国偏重になってしまいます。
そのため、アメリカ経済が好調であれば恩恵を受けられますが、逆に低迷したときの影響も大きくなります。
為替リスクの影響が大きい
オルカンは、日本円で購入できますが、実際の投資先は外国株式が中心です。
そのため、為替の変動によって基準価額が大きく動くことがあります。
たとえば、米国株が10%上昇しても、同時に円高が進行していると、円換算でのリターンは目減りしてしまうことがあります。
逆に、米国株が横ばいでも円安が進めば、含み益が出るケースもあるのです。
為替は経済政策や地政学リスク、インフレ率など多くの要因に左右され、初心者がコントロールできるものではありません。
長期保有すれば為替変動の影響は平均化されると言われますが、気になる方にとってはストレスの種になるかもしれません。
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ボラティリティの高い新興国も含まれている
オルカンの投資対象には、先進国だけでなく新興国も含まれています。
インド、ブラジル、南アフリカといった国々の成長性は魅力的ですが、その一方で価格の変動が激しく、いわゆるボラティリティが高い傾向にあります。
新興国では、政治の不安定さやインフラの未整備、外資規制などによって、株価が急落することもしばしばあります。
また、流動性の低さから売りたいときに売れないリスクも抱えています。
こうしたリスクも分散投資の一部と考えれば悪いことばかりではありませんが、値動きに敏感な初心者にとっては不安材料になりがちです。
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暴落時にどうなった?実際の値動きをチェック
ここでは、オルカンが実際にどれほど値下がりした経験があるのかを具体的に見ていきましょう。
2020年コロナショックでの下落率
2020年の新型コロナウイルスの感染拡大は、世界の金融市場にも大きな影響を与えました。
実際に、オルカンは2020年2月から3月の約1か月間で、基準価額が約31%下落しました。
長期的に見ればその後持ち直しましたが、このような大幅な下落は初心者にとって非常にショッキングな出来事かもしれません。
「損をしたのが怖くて売ってしまった」という方も当時はよく見られましたが、オルカンのようなインデックス投資は長期保有でコツコツ続けることが大前提です。
一時的な下落に焦ることなく、保有しつづける覚悟を持つ必要があります。
オルカンを選ぶ前に知っておきたい注意点
この章では、オルカンを選ぶ際に特に注意しておきたいポイントを2つお伝えします。
4-1. オルカンに元本保証はない
オルカンは投資信託ですので、当然ながら元本保証はありません。
「長期で持てば必ず増える」といったイメージを持たれがちですが、それはあくまでも過去の傾向であって、将来のリターンが約束されているわけではありません。
これから投資を始める方にとっては、「マイナスになることもある」と正しく理解しておくことが、精神的な安定にもつながるでしょう。
大切なのは「元本割れを避けること」ではなく、「下落時にどう対応するか」を事前にイメージしておくことです。
S&P500の方がパフォーマンスが良かったケースもある
オルカンとよく比較されるのが「S&P500」に連動する投資信託です。
これはアメリカの主要企業500社に投資するインデックスで、米国の成長力に集中投資するスタイルです。
過去の実績を見ると、特に2010年代のアメリカ経済が好調だったこともあり、S&P500の方がオルカンよりも高いリターンを記録している時期が多くありました。
将来も同じ結果になるとは限りませんが、「分散しているからリターンが安定する」というオルカンの特徴は、裏を返せば「爆発的な成長はしにくい」とも言えます。
特に短期的な利益を重視したい方や、米国の将来性を強く信じている方にとっては、S&P500の方が自分に合っていると感じるかもしれません。
自身の価値観や目的に応じて、他の商品としっかり比較してみましょう。
オルカンだけに頼らない!リスクを抑える投資の考え方
オルカンは優れた商品ですが、それだけに頼るのではなく、リスクを抑えるための工夫を取り入れることで、より安定した資産形成が目指せます。
ここでは、オルカンと他の資産をどう組み合わせるかについて考えてみましょう。
債券や金など「株式以外」の資産を組み合わせる
資産運用の基本のひとつに「アセットアロケーション」という考え方があります。
これは、株式・債券・金など異なる値動きをする資産をバランスよく組み合わせることで、リスクを分散する方法です。
たとえば、オルカンのような株式ファンドはリターンが高い反面、値動きも大きくなります。
一方、債券や金などはリターンこそ控えめですが、株式と逆に動く場合も多く、相関が低いため、組み合わせることでリスク分散に役立ちます。
リスクを抑えた投資をしたい場合は、こうした株式以外の資産を組み合わせてポートフォリオを組んでみましょう。
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全世界株の銘柄はオルカン一本に絞る
同じような商品を複数持つことは、分散投資になりません。
たとえば、オルカンと他の全世界株式ファンドを同時に持っていたとしても、中身がほぼ重複しているため、リスクの分散にはならないのです。
むしろ、信託報酬や管理の手間が増えるだけで、効率が悪くなってしまう可能性もあります。
そのため、全世界株式を中心に据えるのであれば、主力はオルカンひとつに絞り、そのほかに債券・REIT・金など性質の異なる資産を加えるのがよいでしょう。
オルカンに関するよくある質問
最後に、初心者の方が特に気になりやすいポイントを3つピックアップしてお答えします。
6-1. Q1. 為替リスクって何が怖いの?
為替リスクとは、円と外国通貨の交換レートの変動によって、投資結果に影響が出るリスクのことです。
たとえば、米国株が順調に上がっていたとしても、同時に円高が進行すれば、円に換算したときのリターンは目減りしてしまいます。
つまり、オルカンのような海外資産に投資する商品は、株価と為替という二重の変動を受けるということです。
短期で結果を求める方には不安材料に感じられるかもしれませんが、長期投資であれば為替の影響は平均化されやすいため、焦らず積立を続けることが大切です。
Q2. オルカンを積み立てるベストなタイミングは?
オルカンのようなインデックスファンドにおいては、タイミングを見計らうよりも、継続して積み立てることの方が成果につながりやすいとされています。
一括で買うと、暴落直前だった場合に一気に損失を被るリスクがあります。
一方、毎月コツコツ積み立てれば、価格が高いときは少なめに、安いときは多めに買うことができ、リスクを分散できます。
ベストなタイミングを探すのではなく、自分にとって無理なく続けられる金額を、毎月決まった日に積み立てるというスタンスが、結果的に一番安心です。
Q3. コロナ級の暴落が来たらどうなる?
2020年のコロナショックでは、オルカンも一時的に約31%の下落を記録しました。
将来も同じような急落が起こる可能性はゼロではありません。
そのとき大切なのは、慌てて売らないことです。
市場が大きく下がったときに売ってしまうと、安値で手放すことになり、損失が確定してしまいます。
過去のデータを見れば、暴落しても時間をかけて元に戻る可能性が高いのです。
長期投資を前提にして、あらかじめ「こういうこともある」と知っておくことで、冷静な対応がしやすくなります。
まとめ
オルカンは、世界中の株式に分散投資できる手軽さや低コストが魅力で、多くの投資家に支持されています。
しかし「全世界」と言いつつ米国偏重だったり、為替や新興国のリスクがあることも事実です。
さらに、コロナショックのような急落局面では大きく値を下げる可能性もあります。
そのため、オルカンだけに頼るのではなく、債券や金といった異なる資産を組み合わせたり、自分の投資目的と照らし合わせて選ぶことが大切です。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。