残念なことに、実際にもらえる年金はさらに少なくなる可能性があります。
それは人口構成の変化などの社会情勢に応じて、年金の給付水準を自動的に調整する「マクロ経済スライド」という仕組みがあるからです。
「将来の年金が減るかもしれないって聞いたけど、どうして?」
「ワイドショーでマクロ経済スライドって言葉を聞いたんだけど、どういうこと?」
「マクロ経済スライドっていう名前からして難しそう・・・」
マクロ経済スライドという言葉をニュースや新聞で目にしたことがあっても、正しく説明できる人は多くないでしょう。
マクロ経済スライドに対する理解を深めることで、将来年金が減ることを見越して、適切な行動を取ることにつなげることができるはずです。
今回は、マクロ経済スライドについて詳しく解説します。
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(1)マクロ経済スライドとは何か
マクロ経済スライドとは「現役人口の減少」や「平均余命の伸び」といったその時々の社会情勢に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みのことです。
マクロ経済スライドは、2004年の制度改正で導入されました。
少子高齢化が急速に進み、保険料が増えたことで高まった「いったいどこまで保険料が値上がりするの!?」という不安を解消するために導入されたものです。
もともと年金額は、賃金や物価が上昇すると増えていきます。
例えば賃金や物価が2%上昇すれば、年金額も2%上昇します。
しかし少子高齢化によって保険料を負担する現役世代の割合が減ってしまうと、年金の財源が足りなくなり、年金制度が破綻してしまうかもしれません。
そこで「スライド調整率」というものが適用されます。
スライド調整率とは、「保険料を支払う現役世代の人口の減少割合」と「平均余命の伸び率」から年金を調整するものです。
たとえば2015年には「保険料を支払う現役世代の人口の減少割合」が0.6%、「平均余命の伸び率」が0.3%で、0.9%の調整率になりました。
賃金・物価の上昇が2%だったとしても、スライド調整率が1%なら、年金の上昇率は
2%(賃金・物価の上昇率)-1%(スライド調整率)=1%(年金の上昇率)
となるのです。
つまりマクロ経済スライドとは、年金の上昇率を抑えて給付を減らそうとする仕組みなのです。
(2) マクロ経済スライドはいつ発動する?
2004年に導入されたマクロ経済スライドですが、これまで実際に発動したのは2015年、2019年、2020年の3回です。
2015年まで一度も発動しなかったのは、日本で長くデフレが続き、賃金・物価上昇があまり生じなかったことが背景にあります。
2020年は2019年に対して0.2%年金額が増加します。
賃金・物価の上昇率は+0.3%だったものの、スライド調整率に-0.1%が採用され、結果的に+0.2%の上昇にとどまったのです。
「年金が増える!」と喜びたくなってしまう人もいると思いますが、物価が上昇しているため実質の価値としては目減りしていることを忘れないようにしましょう。
まとめ
マクロ経済スライドは、人口構成などの社会情勢の変化に応じて、年金額を自動的に調整する仕組みです。
少子高齢化が進んでも年金制度を維持できるように、給付される年金額を減らそうとするもので、将来の年金がさらに目減りする可能性があるのです。
マクロ経済スライドという非常に小難しいネーミングということもあり、その仕組みをきちんと理解している人は少ないでしょう。
このため将来もらえる年金が目減りするかもしれないということを、きちんと理解できている人も多くないでしょう。
しかし年金制度の理解がよく分からないままに老後を迎え、「思っていたよりも年金が少なかった!」とがっかりすることは避けたいものです。
急速に少子高齢化が進む日本では、将来マクロ経済スライドの発動によって年金額がさらに目減りする可能性は十分に考えられます。
より安心の老後を送るためには、マクロ経済スライドによって、将来もらえる年金が目減りする可能性があることをきちんと理解し、今からできる対策を講じることが重要です。
老後の資産を確保するため、自ら長期的に資産形成を行っていくことが欠かせません。
著者プロフィール
根本 卓(株塾・インテク運営責任者)
1年間勉強・練習後に2013年から株式投資を運用資金30万円から開始。
地道に続け、7年後に月500万円の利益を出せるように。
その経験を活かし、株塾サービスに反映・インテク記事を書いています。