IFRSとはなに?IFRSと日本の会計基準の違いを解説

IFRSとはなに?IFRSと日本の会計基準の違いを解説

「IFRSとはなに?」と疑問に思っていませんか?

会計や投資に関心をおもちの方で、IFRSという単語を目にしたことがあるものの具体的にどのような会計基準なのかわからないと思っている方が多いようです。

そこで今回は、IFRSの基本的な概要から日本の会計基準との違いまで詳しく解説します。

本記事を読むと、初心者の方でもIFRSとはどんな基準なのか理解できるようになります。

また、IFRSを導入するメリット・デメリットについても紹介しました。

ぜひこの記事の内容を読んで、IFRSへの理解を深めてください。

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目次

IFRS(International Financial Reporting Standards/国際財務報告基準)とは

IFRS(イファース)とは、国際会計基準審議会が策定した世界共通の会計基準のことです。

各国で異なっていた会計ルールを統一し、企業の財務情報をより透明で比較しやすくするために作られました。

現在では、世界140カ国以上で採用されています。

投資家の立場からみると、IFRSは「世界共通の企業評価の物差し」として機能します。

従来は日本企業とヨーロッパ企業を比較する際は会計基準が異なるため比較が困難でした。

ですが、IFRS採用企業同士なら同じ基準で業績を評価できるため、より正確で効率的な投資判断を行えます。

また、企業の立場からみると、グローバル市場での資金調達力の向上や経営管理の効率化が期待できます。

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IFRSと日本の会計基準との違い

IFRSを理解するためには、日本の会計基準との違いを知っておくと理解が深まります。

本章で紹介するIFRSと日本の会計基準の違いは、以下のとおりです。

  • 財務報告ルール
  • 利益算定方法と企業価値の捉え方
  • 売上計上タイミング
  • 固定資産の償却期間
  • 研究開発費の扱い方
  • のれんの扱い方

それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。

財務報告ルール

IFRSと日本会計基準の違いとして挙げられるのは「原則主義」と「細則主義」という考え方です。

IFRSは「原則主義」を採用し、基本的な原則のみを示して企業に判断の自由度を与えます。

一方「細則主義」で、取引ごとに具体的なルールや数値基準を詳細に定めているのが日本の会計基準です。

たとえば、日本基準では「20万円以上の場合はこの方法で処理する」といった明確な数値基準があらかじめ決められています。

対してIFRSでは、会計上の形式や表面的な契約内容ではなく、その取引が実際にビジネスに与える本当の影響に応じて判断します。

利益の算定方法

IFRSと日本基準では、利益の算定方法の捉え方が異なります。

IFRSは貸借対照表を重視しているため「資産負債アプローチ」を採用し、資産と負債の差額(純資産)の増減により利益を測定します。

対して「収益費用アプローチ」で収益から費用を差し引いて利益を計算し、損益計算書を重視するのが日本基準です。

どちらも企業評価に重要な情報ですが、着眼点が異なる点を理解しておくのが大切です。

売上計上タイミング

売上を認識するタイミングについて、IFRSと日本基準では違いがあります。

IFRSは、「顧客が利用可能になった時点」で売上を認識します。

一方、日本基準では商品を発送した時点や検収完了時点など、契約に基づく区切りで売上を計上するのが一般的です。

このように、同じ取引でも売上を認識する時期にズレが生じる場合があります。

ただし、日本も2021年度からIFRSと整合性の高い「収益認識基準」が導入されているため、現在はタイミングの差が小さくなっています。

固定資産の償却期間

固定資産の償却期間(耐用年数)の決定方法は、IFRSと日本基準で異なります。

日本基準では主に税法で定められた法定耐用年数を使用し、建物や機械などは「法定耐用年数表」に従って一律に決定されます。

一方、IFRSでは企業が資産ごとに、利用できる期間を独自に見積もって設定するため税法基準は存在しません。

また、管理状況や稼働状況の変化に応じて毎期その見積りの見直しが求められています。

研究開発費の扱い方

研究開発費の会計処理も、IFRSと日本基準で異なっています。

日本基準では研究費と開発費を区別せず、すべて発生時に費用として計上するシンプルなルールです。

対してIFRSでは「研究」と「開発」を区分し、研究費は費用計上ですが、開発費については6つの一定要件を満たせば資産(無形資産)として計上します。

6つの要件は、以下のとおりです。

  • 技術的に実現可能である
  • 完成させ、使用または売却する意図がある
  • 使用または売却する能力がある
  • 将来の経済的便益を創出する可能性が高い
  • 技術上、財務上、その他資源が十分である
  • 信頼性をもって支出を測定する能力がある

以上の要件を満たす場合は、開発局面のコストを無形資産として計上する必要があります。

ですが、要件を満たせなかった場合は、費用として計上します。

日本基準は研究も開発もすぐ費用化しますが、IFRSは要件を満たした開発費を資産計上可能です。

つまり、IFRSは日本基準よりも「未来の価値を資産として認めやすい」のが特徴です。

のれんの扱い方

のれんとは、企業買収時に支払った金額が買収先の純資産額を上回る部分で、ブランド価値や技術力など目にみえない価値を表します。

日本基準では、のれんを原則として20年以内の期間で定額償却し、価値減少が明らかな場合のみ減損テストを実施します。

一方、IFRSではのれんは償却せず、毎期必ず「減損テスト」を行い、価値が減少した分だけ減損損失を計上します。

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IFRSを導入するメリット

本章では、IFRSを導入するメリットを5つ紹介します。

  • 国際的な資金調達の難易度を下げられる
  • 海外拠点と財務情報を管理しやすくなる
  • 海外企業との業績比較がしやすくなる
  • 迅速な経営判断に役立つ
  • 企業の信頼性が向上する

それぞれ解説します。

国際的な資金調達の難易度を下げられる

IFRS導入により、企業の国際的な資金調達のハードルを下げられます。

IFRSは世界140カ国以上で採用されている統一会計基準であるため、海外の投資家や金融機関が企業の財務情報を理解しやすくなるからです。

たとえば、日本基準で作成された財務諸表をもつ日本企業が海外で資金調達を行う場合、投資家は日本特有の会計処理や表示方法を理解する必要があります。

しかし、IFRSを採用していれば、ヨーロッパやアジア諸国の投資家にとって馴染みのある基準で財務情報が提示されるため投資判断がスムーズです。

そのため、IFRSを採用すると国際的な資金調達の難易度を下げられる効果が期待できます。

海外拠点と財務情報を管理しやすくなる

IFRS導入は、海外拠点をもつ企業にとって財務情報の管理がしやすくなるメリットがあります。

従来は日本本社が日本基準、海外支社は各国基準など異なる会計基準を使用していたので、連結決算の際それぞれを調整作業が必要でした。

ですが、IFRS導入により各拠点で同一基準に基づく財務報告が可能になったため、調整ミスのリスクが下がり監査業務が効率化されるようになりました。

このように、IFRS導入で企業の財務管理業務は大幅に改善されます。

海外企業との業績比較がしやすくなる

IFRS導入により、海外企業との業績比較がしやすくなります。

IFRSは国際的に統一された会計基準なので、日本企業と海外企業を同じ物差しで評価できるからです。

海外企業の同業他社の収益性や財務体質を簡単に比較できるので、投資判断や銘柄選択の精度が向上します。

また、グローバルな視点でポートフォリオを構築する際でも、IFRS採用企業同士の比較により最適な投資先を選定しやすくなります。

このように、欧州やアジアなど多国籍展開している企業の財務データを、比較しやすくなるのは投資家にとっても大きなメリットです。

迅速な経営判断に役立つ

IFRS導入で企業のグループ全体の財務情報を統合すると、迅速かつ正確な経営判断を可能にします。

会計基準が統一されると、海外拠点の業績や財務状況をグループ全体で正確に把握しやすくなるからです。

先ほども解説しましたが、日本の製造業が米国とヨーロッパに子会社を持つ場合、従来は各国の会計基準で作成された財務諸表を調整する必要がありました。

ですが、IFRSにより各拠点の売上高、営業利益率などの業績指標を直接比較でき、どの地域への追加投資が最も効率的かを迅速に判断できるようになります。

IFRSを導入すると財務データの統一により情報処理時間が大幅に短縮されるため、市場変化への対応スピードが向上し、結果として企業の国際競争力強化に直結します。

企業の信頼性が向上する

IFRS導入により、企業の信頼性が向上します。

IFRSは国際的に認められた厳格な会計基準なので、透明性の高い情報を提供できるからです。

そのため、投資家や取引先、金融機関から「適切な経理体制が整備されている」「内部統制が機能している」と高く評価されやすくなります。

財務情報の比較可能性向上により、経営の実態が適切に外部へ伝わると企業のイメージアップにつながります。

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IFRSを導入するデメリット

IFRSを導入すると多くのメリットがある一方で、デメリットも少なからず存在します。

本章では、以下の2つのIFRSを導入するデメリットを紹介します。

  • 業務負担が増える
  • コストが増える

それぞれ解説します。

業務負担が増える

IFRS導入により、企業内の業務負担が増加するデメリットがあります。

IFRSは日本基準と異なる会計方針や情報開示が求められるため、従来の会計処理や運用体制を大幅に見直さなければならないからです。

たとえば、四半期ごとの減損テストの実施や英文での注記などが必要なので新たな業務が発生します。

そのため、既存の経理担当者への追加研修や新たな業務システムの構築が必要となり、導入初期は、特に現場の作業負荷が著しく高まります。

コストが増える

IFRS導入により、運用コストが増加するデメリットがあります。

IFRS特有の会計基準や手続きに対応するため、多方面にわたる投資が必要となるからです。

主なコスト要因として、会計システムの改修・導入費用、社員の教育研修コスト、外部専門家への報酬などがあります。

上記の費用は、企業規模や複雑さに応じて数千万円から数億円に及ぶ場合があります。

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IFRSについて知りたい人によくある質問

IFRSについて知りたい人によくある質問は、以下のとおりです。

  • 投資家として、IFRSを知っておくとなにか役に立つの?
  • 上場企業がIFRSを導入するとなにが変わるの?

それぞれ解説します。

投資家として、IFRSを知っておくとなにか役に立つの?

IFRSの知識を理解しておくのは、投資家にとって有用だといえます。

なぜなら、IFRSの統一された基準で比較・分析できると、グローバル企業に対しても適切な投資判断ができるからです。

たとえば、日本の自動車メーカーと欧州の自動車メーカーの収益性や資産効率を、同じ会計基準で横並び比較するとより正確に評価できます。

このようにグローバルスタンダードの会計知識を身につけると、世界中の優良企業へ適切に投資できるため投資機会を最大化できます。

上場企業がIFRSを導入するとなにが変わるの?

上場企業がIFRSを導入すると、財務報告の透明性向上により資金調達がしやすくなります。

IFRSは世界共通の会計基準であるため、国際的な投資家や金融機関との情報共有が円滑になり、グローバル企業としての信頼性が高まるからです。

たとえば、ソフトバンクグループは、IFRS導入によってグローバルでの資金調達を強化しています。

このように、上場企業がIFRSを導入すると世界中からお金を集めやすくなるといえます。

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まとめ

IFRSは世界140カ国以上で採用されている国際的な会計基準で、企業の財務情報をより透明で比較しやすくするために作られました。

日本基準との違いは、原則主義と細則主義という考え方の違いから、研究開発費やのれんの扱い方まで多岐にわたります。

IFRS導入により、国際的な資金調達が容易になったり企業の信頼性が向上したりするメリットが期待できます。

また、投資家にとってIFRSは、単なる会計基準の違いではなく企業の信頼性や比較可能性を左右する重要な視点です。

メリット・デメリットを理解し、投資先を選ぶ際の判断材料として活用してみましょう。

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この記事の監修者

監修者プロフィール

トレード歴40年の株職人。“株匠” を目指している。
20歳で株の売買を始めてから20年間、
「日本郵船」1銘柄のみの「売り」「買い」に集中、大きな利益を重ねる。
その後、宮本武蔵が洞窟に籠もるかの如く、チャートと建玉の研究に没頭する。

現在も、チャートと建玉の操作のトレード手法をさらに極めるべく精進を重ねており、
日本株、米国株、イタリア指数、イギリス指数、ユーロ指数、金、原油、コーン、FXなど、
どの市場でも大きな利益を生み出している。

ラジオNIKKEI「相場師朗の株は技術だ!」でキャスターを務める。
東京証券取引所北浜投資塾講師、日本経済新聞社お金の学校講師。

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この記事を書いた人

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。

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