株式やFXなどのトレードにおいて、「どのくらい値動きがあるか」を把握することは、リスク管理の基本です。
その判断材料として役立つのが ATRインジケーター(Average True Range) です。
ATRは、相場の「ボラティリティ(価格変動の大きさ)」を数値化した指標で、利確(利益確定)や損切りの目安を立てる際に活用されます。
トレンドの勢いを測ったり、相場の熱量を判断したりする際にも用いられるため、値動きの「呼吸」を読み取るツールといえるでしょう。
本記事では、ATRインジケーターの基本から見方、計算方法、実践的な使い方までをわかりやすく解説します。
ATRインジケーターとは?

ATRとは Average True Range(平均的な真の値幅) の略で、過去一定期間における価格変動の「平均的な幅」を示すテクニカル指標です。
トレーダーのJ・W・ワイルダーが1978年に提唱したもので、値動きの強弱を判断する際に広く利用されています。
たとえば、「1日の平均的な値動きが100円」とわかれば、その日のトレードでどの程度のリスクを想定すべきかを具体的に把握できます。
ATRは価格の上下方向を問わず、ボラティリティの大きさそのもの を測る点が特徴です。
上図は、楽天証券の「MARKET SPEEDⅡ」でのチャートです。
上半分が通常のローソク足と移動平均線、下半分がATRとなっています。
相場の価格変動率を表すテクニカル指標

ATRインジケーターは、相場の価格変動率を表すテクニカル指標です。
期間を設定すると、その期間の価格変動の平均値をつないだグラフが表示されます。
上図はTradingViewのチャートです。
期間は14で設定しているため、14日間の価格変動の平均値が左上に表示されています。
グラフは、その平均値をつないでいるものであり、上昇すればするほど、直近の変動が大きいことを示します。
つまり上図は、かなり変動幅が大きくなってきていることがわかります。
買われすぎ・売られすぎがわかる

ATRインジケーターからわかるのは、相場の過熱感です。
「買われすぎ・売られすぎ」を判断するのに役立つため、ATRインジケーターでトレンドのタイミングを掴めます。
上図は任天堂(7974)のチャートですが、ATRの数値がピークに達成するのと同時に上昇トレンドが終わり、レンジ相場に切り替わっていることがわかります。
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利確・損切りラインを決められない人にオススメ
ATRインジケーターは、利確・損切りラインを決められない人にオススメです。
利益確定・損切のタイミングで困っているなら、ATRインジケーターを活用してみましょう。
それ以外の目的であれば、必ず使うべきテクニカル指標というわけではありません。
ATRインジケーターさえあれば勝てるようになるわけではありませんし、利用する投資家が特に多いというわけでもないのです。
あくまでも、数あるテクニカル指標の中の一つとして、「ほかの視点からも分析したい」ときにオススメ。
ATRインジケーターにこだわりすぎないようにしましょう。
計算式は複雑なので覚えなくてもOK
ATRインジケーターの計算式は、複雑ですから無理に覚える必要はありません。
チャート上に表示される数値やグラフを読み取れればOKです。
ちなみに機関が14日の場合のATRインジケーター計算式は以下の通り。
ATR=(14日前の値幅+13日前の値幅+………1日前の値幅+当日の値幅)÷14
移動平均線の計算式にも似ており、ATRの中でも単純平均・指数平滑移動平均など平均の出し方は変えることができます。
とはいえ、実際に計算するのは自分ではなくチャート・ツールなので、無理に計算式を覚える必要はありません。
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ATRインジケーターの活用方法
ATRインジケーターの活用方法をまとめました。
トレンドを掴む・値動きの幅を予測する際に役立つ指標です。
ATR上昇=トレンド発生(ボラティリティ拡大)
ATRインジケーターが上昇しているということは、それだけ値動きが激しくなっているということです。
上昇トレンド・下降トレンドが発生している可能性が高いため、チャートと照らし合わせてみましょう。

どちらにしても、ATRインジケーターの数値も上昇していることがわかります。
ATRインジケーターの数値が上昇していれば、トレンドが発生しているため順張りをすれば利益を狙える可能性があります。
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ATR下降=トレンド終了・転換
ATRインジケーターが下降しているときは、トレンド終了・転換のタイミングが近いと考えられます。
相場の盛り上がりが収まり始めている状況ですから、手仕舞いのタイミングを考えるようにしましょう。

上図はドル円のチャートです。
上昇トレンドが終わるタイミングで、ATRインジケーターが下降していることがわかります。
その後ATRインジケーターは急上昇、下降トレンドへと切り替わっているわけです。
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値動きの幅をATRから予測
値動きの幅を、ATRインジケーターから予測できます。
これまでの平均値幅がわかるわけですから、その日どれくらいの値動きがありそうかを分析できるのです。

例えば、上図は日経225のある日のチャートです。
とある日のATRが565だった場合、翌日の値幅が565円程度だと予想できます。
実際、翌日の値幅は535円でした。
値幅が予測できれば、トレードにもさまざまな活かし方ができます。
ATRの1~5倍を利益確定・損切りラインにする
ATRの1~5倍を、利益確定・損切りラインとして活用できます。
倍率は、自分が背負えるリスクの大きさに合わせて変えましょう。

上図は、メルカリのチャートです。
「移動平均線がすべて上向きだし上がりそう」と考え3,000円で株を購入したとして、その日のATRが136.7だったとしましょう。
ATRの3倍を利益確定・損切りラインとした場合、3,410円を利益確定・2,590円を損切りラインと決められます。
実際のその後の値動きは以下の通りでした。

その後、予測通り株価は上昇していき、利益確定ラインに到達したため手仕舞います。
上昇した分が、利益として得られたわけです。
このように、ATRインジケーターを活用すれば、決済のタイミングを掴むことができます。
ATRのオススメ設定は14
ATRでは期間を設定することで数値が変わってきます。
オススメの設定期間は14です。
デフォルトで14になっていることが多いので、利用している投資家も多い数値だといえます。
短期や長期で利用する場合は、時間足を変えることで使い分けられます。
14本分のローソク足でATRが算出されるため、5分足でみるか週足でみるかによって、数値は全く変わります。
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ATRと他のテクニカル指標の組み合わせ
ATR単独では「相場の方向性」は判断できません。
そのため、トレンド系指標と併用することで精度が高まります。
代表的な組み合わせは以下の通りです。
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移動平均線(MA):トレンドの方向と強さを確認
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RSIやストキャスティクス:過熱感を補足
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ボリンジャーバンド:ボラティリティの広がりと収束を比較
たとえば、「移動平均線が上向きかつATRが上昇中」であれば、市場が勢いを持って動いていると判断しやすくなります。
ATRインジケーターを使う際の注意点
ATRは方向を示さない
ATRはあくまで「変動の大きさ」を表す指標であり、上昇か下降かは判断できません。
他の指標やチャートパターンと組み合わせて使う必要があります。
過去データに依存している
ATRは過去の値動きから計算されるため、突発的なニュースや外部要因には反応できません。
リアルタイムの材料にも注意を払うことが大切です。
相場ごとの特徴を理解する
ボラティリティの大きさは銘柄や市場によって異なります。
同じATR値でも、為替市場と株式市場では意味合いが異なる点に注意が必要です。
ATRインジケーターに関するよくある質問 Q&A
Q1. ATRインジケーターは初心者でも使えますか?
A. 使えます。
ATRはチャート下部にグラフとして表示されるため、上昇・下降の傾向を見るだけでも相場の活発さを把握できます。
複雑な計算を行う必要はなく、視覚的に理解しやすい指標です。
Q2. ATRが高いときは買い時ですか?
A. ATRが高いことは「値動きが大きい」という意味であり、買いシグナルを示すものではありません。
方向性を判断するには、移動平均線やトレンドラインなど他のテクニカル指標と合わせて分析する必要があります。
Q3. ATRが低下しているときは取引しない方がいいですか?
A. ATRが低いときは値動きが小さく、方向感のないレンジ相場であることが多いです。
短期トレードではチャンスが少ない場合もありますが、ブレイク直前の静かな局面である可能性もあります。
状況に応じた判断が求められます。
まとめ
ATRインジケーターは、値動きの幅=ボラティリティ を可視化するテクニカル指標です。
方向性を示すものではありませんが、相場の「勢い」や「落ち着き」を把握するうえで非常に有効です。
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ATRが上昇 → 相場が活発に動いている
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ATRが下降 → 値動きが小さく、トレンド転換の可能性
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損切り・利確ラインの設定にも活用できる
他のテクニカル指標と組み合わせて使うことで、より精度の高い判断が可能になります。
ATRは「値動きの温度計」として、トレードの判断を支える重要な基礎指標の一つといえるでしょう。
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これまで10以上のメディア運営に従事。現在は自身も株塾で学びつつ、毎日コンテンツ作成をし続ける。
あらゆるジャンルで編集者として活動してきた経験を活かし、初心者から上級者まで役立つ記事を作成。







