投資について勉強していると、ROIという言葉を目にすることがあるでしょう。
ROIは、投資を通じて得た利益に関するキーワードで、これから資産を形成したいと考えている方にとって理解しなくてはならない言葉です。
そこで今回は、ROIとは何か、どのように計算するのか、どう活用すればよいかなどを解説します。
ROIとは?
まずは、ROIとは何か解説します。
ROI(投資利益率)の基本情報
ROIとはReturn on Investmentの略で、日本語での意味は投資利益率です。
投資した費用に対し、どれだけの利益が得られたかを測るために使われます。
単純に利益がいくら出たかを見るだけではなく、利益を上げるためにどれだけのコストがかかったかを考慮することで、その投資が「本当に儲かったのか」「どのくらい儲かったのか」を判断するのに役立ちます。
また、投資だけでなくビジネスシーンでも頻繁に使われる用語です。
ROIの計算式と具体例
ROIは、以下の計算式で求められます。

ROIとROE・ROAとの違い
ROIは、ROEやROAと混同されることがあります。
ROEはReturn on Equityの略で、 株主が投資した自己資本に対して、どれだけの利益を生み出したかを示す指標です。
企業の経営効率を測るもので、当期純利益÷自己資本×100で求められます。
ROAはReturn on Assetsの略で、会社が持つすべての資産をどれだけ効率よく活用して利益を生み出したかを示す指標。
ROAが高いほど資産を有効に活用していることになり、当期純利益÷総資産×100で求められます。
ROIは個別の施策の効率性を測る一方、ROEやROAは企業全体の収益性を評価するという違いがあります。
ROIの活用事例
ROIをどう活用すればいいか、具体的な事例を紹介します。
ビジネスや副業でのROI活用例
ビジネスや副業において、ROIは適切な意思決定をするために有効なツールです。
企業が新しい事業を立ち上げたり、個人が副業で新しいスキルを学ぶためツールに投資したりといった時、ROIを事前に求めることでどの程度の利益を得られる可能性があるかを予測できます。
例えば、副業でエンジニアの勉強をするため、スクールに通うとします。
授業料が30万円かかる場合、自己資本から30万円を支払わなくてはなりません。
一方で、エンジニアとして将来200万円分の案件を受注すると仮定します。
経費を引いて150万円の利益を得たとすると、「150万円÷30万円×100=500%」となり費用対効果は非常に高いです。
一見すると「いきなり30万円も支払うのは怖い」と感じますが、ROIを活用することで感情に左右されず選択しやすくなります。
ただし、ROIの試算には将来の予測が含まれるため、確実な数値ではありません。
今回の事例でも、「150万円の利益が出る」ということは予測にすぎないため、実際には赤字になってしまうリスクもあることは必ず理解しておきましょう。
副業はしないほうがいい?副業をするべきか否かの見極めポイントはコレ!
広告やマーケティングでのROI
広告やマーケティングにおいては、施策の成果を測るためにROIが非常に重要です。
例えば、広告チームで持っている自己資本=予算から、50万円をリスティング広告に投資し、広告経由で300万円の売上が生まれたとします。
売上から商品の原価や広告費を差し引いて150万円の利益が生まれた場合、ROIは、150万円÷50万円×100=300%です。
このようにROIを算出することでどの広告媒体が最も費用対効果が高いかを客観的に比較し、予算配分を最適化できます。
ただし、広告の効果は売上だけでなくブランド認知度の向上など数値化しにくい側面もあるため、他の指標と組み合わせて評価することが重要です。
人材育成・設備投資でのROI
人材育成や設備投資も、ROIを活用できる場面です。
例えば、社員教育で使える自己資本のうち、300万円を投じた結果、社員の生産性が向上し、年間で1,000万円の利益増につながったとします。
この場合、1,000万円÷300万円×100=333%となり、人材育成が非常に高い効果を発揮したことがわかります。
また、新設備に2,000万円を投資し、これにより年間500万円のコスト削減と2,000万円の売上増が実現した場合、合計で生まれた利益は2,500万円です。
この投資のROIは2,500万円÷2,000万円×100=125%となり、投資をしたメリットがあったことがわかるでしょう。
ROIを活用することで、一見するとわかりにくい効果も利益として換算し、投資をすべきかどうかの判断がしやすくなります。
ただし、人材育成の効果は短期的には得られにくく、設備投資は減価償却など複雑な要素が絡むため、ROIだけでなく長期的な視点での評価が必須です。
高いROIが示すこと
ROIが高いとどのような意味があるか、具体的に解説します。
ROIが高いことのメリット
ROIが高い投資や施策は、少ない費用で大きな利益を生み出しており非常に効率的です。
特に、以下のようなメリットがあります。

数値が高ければ成功とは限らない理由
ROIを活用する際に気を付けなければならないのが、数値が高いからと言って必ずしも成功だとは言えないことです。
例えば、5,000万円の投資で1,000万円の利益がで出る場合、ROIは20%と高い数値です。
これを1年で生み出せれば成功と言えるかもしれませんが、10年かけて生み出すとなると意味合いが異なります。
また、リスクを考慮していないケースもあるでしょう。
例えば、新規事業で生み出す利益が年間4,000万円だと仮定して高いROIが算出されても、実際にはそこまで利益が伸びないといったこともありえます。
仮想通貨などハイリスク・ハイリターンの投資においては、ROIだけでなく他の指標も考慮することが必要です。
さらに、ROIは比率の指標であり、絶対的な金額の大小を考慮していません。
10万円の投資で10万円の利益が出る場合と、1億円の投資で5,000万円の利益が出る場合では、前者の方がROIは大きくなりますが、実際に手元に残る金額は後者の方が圧倒的に大きいです。
期待ROIと実績ROIの違い
ROIには、投資前に予測する期待ROIと、投資後に算出する実績ROIの2種類があります。
期待ROIは投資の事前評価に用いられるものです。
新しいプロジェクトや施策を計画する際に、過去のデータや市場予測に基づいて算出され、複数の投資案件を比較検討するための判断材料となります。
実績ROIは投資の事後評価に用いられるものです。
投資によって最終的にどの程度の利益が得られたかを算出し、期待ROIと実績ROIを比較することで予測の精度を検証し、今後の計画に活かすことができます。
2つのROIを使い分けられれば、投資の計画段階から実行、評価までを一貫して管理できます。
ROIの限界と注意点
ROIを活用するとき、どんな点に注意すればよいか解説します。
期間とリスクを反映しない
ROIの計算式は期間とリスクという重要な要素を直接的に反映しません。
例えば、ある投資に100万円を投じて、1年後に10万円の利益を得た場合、ROIは10%です。
別の投資に同じ100万円を投じて、5年後に50万円の利益を得た場合、ROIは50%になります。
しかし、この二つの投資を単純に比較することはできません。
時間的な価値を考慮するため、割引率(資本コスト)を5%**と仮定して年率換算すると、前者は年率10%ですが、後者は年率約8.5%となり、前者の方が効率が良いことがわかります。
また、ROIはその投資の危険性を測れません。
ギャンブル性の高い投資でたまたま高いリターンが出た場合も、ROIの数値上は非常に優秀に見えます。
ROIはあくまでリターンに焦点を当てた指標であり、元本割れなどのリスクについては別途評価する必要があります。
数字だけで判断する危険性
ROIは非常に便利な指標ですが、数字だけで判断すると本質を見失う危険性があります。
例えば、広告キャンペーンのROIが非常に高く出たとしても、その広告が企業のブランドイメージを損なう内容であったり、社会的な倫理に反するものであったりする可能性もあります。
また、恣意的な計算で意図的に高く見せかけることもできます。
例えば、計算に含めるコストの範囲を狭めたり、売上を誇張したりすることで、見かけ上のROIを上げることも可能です。
数値がどのように算出されたか、そしてその施策が企業全体の目標やブランドイメージにどう貢献しているかといった定性的な側面も合わせて考慮することが不可欠です。
ROIはあくまで評価のひとつの基準であるため、どう活用するか自己責任で判断してください。
ROIを正しく活かすために
ROIを正しく活かすための方法を解説します。
ROIを他の指標と組み合わせて使う
投資判断をする際、ROI単体では不十分な場合が多いです。
以下のような他の指標と組み合わせて使うことで、より多角的な評価が可能になります。

ポートフォリオ全体での評価が重要
投資の世界では、個々の投資案件だけでなく、ポートフォリオ全体でのROIを評価することが非常に重要です。
個別の投資でROIが低かったとしても、他の投資で高いROIが出ていれば、ポートフォリオ全体としては良い結果になることもあります。
また、リスクの観点からも、一つの投資に集中するのではなく、複数の投資に分散することで、ポートフォリオ全体のリスクを抑えられます。
個別のROIだけを追うのではなく全体のバランスを考慮した上で、ポートフォリオのROIを最大化する戦略を立てることが大切です。
判断は自己責任であることを忘れずに
ROIはあくまで意思決定を助けるためのツールであり、その数値が成功を保証するものではないことは常に意識しましょう。
最終的な判断は、常に投資家自身が行わなくてはなりません。
ROIの計算は、あくまで過去のデータや予測に基づいたものであり、未来を正確に予測することは不可能です。
また、前述のようにROIには様々な限界があります。
ROIの数値を参考にしつつ、市場の動向やリスクに対する洞察力を養うことが、長期的な成功には不可欠です。
ROIに関するよくある質問
ROIに関するよくある質問に回答します。
ROIとは何ですか?
ROIとはReturn on Investmentの略で、投資利益率を指しています。
投資した金額に対してどれだけの利益が得られたかを示す指標で、計算式は利益 ÷ 投資額 × 100です。
この数値を使うことで、その投資がどの程度儲かったのかを客観的に判断できます。
ROIはどうやって活用すればいいですか?
ROIは、複数の選択肢を比較検討する際のツールとして活用するのが効果的です。
新しくAとBのどちらの投資を実践するか迷ったとき、それぞれの期待ROIを試算して比較することで、より効率的な方を選ぶ判断材料となります。
また、ROIが高かった施策は継続や拡大、ROIが低かった施策は改善や撤退を検討することで、過去の施策の効果測定にも使えます。
ただし、ROIは期間やリスクを考慮しないという弱点もあるため、他の指標と組み合わせて多角的に評価することが大切です。
まとめ
今回は、ROIについて解説しました。
ROIは、これからどんな投資をすべきか、過去に行った投資はどの程度の利益があったのかなど、判断や評価に役立ちます。
ただし、ROIだけですべてを決定することは不適切です。
様々な指標を組み合わせること、ROIが高いからといって絶対に成功するとは思わず、最終的にはリスクなどを含めて自己判断をすることを徹底してください。
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株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。







