少子高齢化など社会の変化によって、日本の社会保障制度は大きな課題に直面している現代。
歳出を税収だけでまかなえない日本の借金は、うなぎのぼりに増え続けています。
日本の将来に対して、漠然とした不安を感じる人も少なくないでしょう。
しかしやみくもに不安にとらわれるのではなく、自分が取るべき対応を見極めるためには、日本の財政赤字の状況についてしっかりと理解しておくことが重要です。
そこで今回は日本の財政赤字について詳しく解説します。
日本の財政赤字
国の政策や事業のなかには、国の経済状況や国民の生活を守るため、たとえ歳入が足りなくてもタイミングよく行わなくてはならないものがあります。
そこで足りない歳入をおぎなうために、国は「国債」を発行し「公債金」収入を得ています。
これはつまり「借金」です。
日本では国の歳入のうち、税収でまかなえているのは5割程度にとどまっており、4割強は国債でまかなわれている状況です。
日本では令和3年度に、約44兆円もの国債が発行されました。
公債残高はうなぎのぼりに増え続けており、令和3年度末には約990兆円にものぼることが見込まれています。
この約990兆円とは、一般会計税収の約17年分にも相当し、国民ひとり当たり約793万円、4人家族で約3,172万円にあたります。
国民が抱えている借金がこれほどまでにものぼるとは、想像していなかったという人もいるかもしれません。
また国債は借金なので、当然、元本を返済し利子を払わなくてはなりません。
この支出を「国債費」といい、国債費は国の歳出のうち約2割をも占めています。
これを家計に当てはめれば、毎月の支出の2割を借金の返済に充てているようなものです。
毎日頑張って稼いでも、いつまでも借金を返しきれない家庭を想像すると、その深刻さを実感できるのではないでしょうか。
バブル崩壊で倍増した日本の借金
日本の悲惨な財政状況を目の当たりにして、「日本はいったい、いつからこんな借金大国になってしまったの!?」と嘆く人も少なくないでしょう。
日本の借金は1990年代に入り、一気に右肩あがりに増えていき、この20年で2倍以上にもふくらんでいます。
1990年代初頭といえば、日本では何が起きたでしょうか?
そう、「バブル崩壊」です。
(※バブル崩壊についてはこちらの記事にて詳しく解説しています)
日本は1980年代に円高不況におちいり、日本銀行は銀行へ貸し出す利息である「公定歩合」を引き下げました。
企業が銀行からお金を借りやすくなったことで景気が回復し、借りたお金で土地や株へ投資する「投資ブーム」が巻き起こりました。
加熱したブームはバブル景気を巻き起こしましたが、やがて土地や株の価格は下落してバブルは崩壊しました。
その後不況は長引き、1997年~98年にかけては銀行や証券会社が相次いで破綻する金融不安が勃発します。
バブル時代に土地や株を担保にして企業に資金を貸し出していた銀行は、バブル崩壊に伴う土地や株の価格低下により借金が回収できなくなり、多額の「不良債権」を抱えてしまったのです。
不況が始まって以来、日本政府はほぼ毎年、景気対策で20兆円以上もの国債発行を続けています。
まとめ
今回は日本の財政赤字について解説し、日本が借金大国である理由に迫りました。
日本では必要な費用を税収だけでまかなえず、国債発行を重ねてまかなうという、借金に依存する状況が続いています。
これは将来世代への負担の先送りにほかならず、このままでは子供たちや孫世代に、過重な借金を背負わせてしまうことになるでしょう。
2015年には、格付け会社スタンダード・プアーズ(S&P)が日本国債の格付けを「AA-」から「A+」へと格下げしました。
格付けは債権返済の信用度を示すもので、最高評価「AAA」から最低の「D」まで22段階で評価されます。
1990年代初頭には最高評価のAAAを誇っていた日本国債は、格下げが続いている状況なのです。
経済大国として世界に名をはせる日本ですが、日本国債が格下げトレンドにあることは見逃せません。
いっぽう海外では、積極的な財政改革で信用を高めている国が少なくありません。
例えばドイツでは失業保険や健康保険の見直しなどによって財政再建に成功し、2015年には46年ぶりとなる新規国債発行ゼロを達成しました。
日本は海外の成功例も参考にしながら、抜本的な改革を進めていく必要があるでしょう。