手軽に分散投資ができるという理由で人気のETFですが、国内ETFについては、多くの専門家やWebサイトで「おすすめしない」と言われることが多いです。
確かに一部の国内ETFには課題もあるようです。
そこで今回は、おすすめしないと言われる理由を紹介した上で、国内ETFを選ぶ際の注意点や、他に検討できる商品の解説をしたいと思います。
ETFとは
ETFとは何か、概要と種類について解説します。
ETFの概要
ETFとはExchange Traded Fundsの略で、上場投資信託のことです。
連動する指数は様々で、国内株式型、外国株式型、債券型、REIT型、コモディティ型などがあります。
投資信託とETFが混同されることもありますが、投資信託は毎日算出される基準価額にもとづいて1日1回しか取引できない一方で、ETFは株式投資などと同様にリアルタイムで取引可能です。
その他、運用方法や購入価格などに違いがあります。
ETFの配当金を徹底解説!税金や配当金の受け取り方についても紹介
国内ETFと海外ETF
ETFには、国内ETFと海外ETFの2種類があります。
国内ETFは、日本で組成され、東京証券取引所や大阪証券取引所などに上場しているものです。
海外ETFは、海外で組成され、大部分は海外の取引所に上場しており、いくつかは国内の金融取引所でも取り扱いがあります。
国内ETFは日本時間に合わせて日本円で取引されますが、海外上場しているETFは現地時間に合わせて現地通貨で取引されます。
国内ETFと海外ETFを比べると、売買手数料は海外ETFの方が高額な傾向です。
また、海外ETFからの分配金を受け取った場合、外国源泉税が引かれるので、控除を受けるために確定申告をしましょう。
国内ETFをおすすめしないと言われる理由
一部の国内ETFには、出来高や流動性などの観点からおすすめできないものもあります。
しかし、すべての商品がおすすめできないわけではありません。
内容を精査すれば優秀な国内ETFもあり、一概に「国内ETFは避けよう」と考えるのは得策ではないでしょう。
そんな中、なぜ「国内ETFはおすすめしない」という主張する書籍やWebサイトが複数あるのか、理由について解説します。
出来高と流動性が不足している
国内ETFは海外ETFと比べると、銘柄が少なく出来高が小さいです。
これにより流動性が低く、希望する金額での売買ができないこともあるでしょう。
スプレッドが広がりやすく、自分が想定していた価格より不利な取引になるため、あまりおすすめされていません。
特に、小規模なテーマ型のETFや一つのセクターに特化したETFなどは要注意です。
信託報酬と取引コストが割高
ETFを保有する際、信託報酬が発生します。
ETFの純資産総額に対して一定の利率がかかり、基準価額に反映されます。
信託報酬は、TOPIXなどのメジャーな株価指数と連動するものであれば安く、新興国株式に投資するものやレバレッジ型のものは高くなる傾向です。
また、取引コストとしては、売買手数料が発生します。
購入時と売却時にかかり、投資家が証券会社に支払います。
指数ラインナップが限定的
国内ETFは、日経平均株価やTOPIXなど日本の主要な指数に連動しています。
そのため、海外ETFに比べるとラインナップが限定的です。
例えば、新興国の中でも特定の国や地域、クリーンエネルギーなど特定のセクターやテーマに限ったものは少なく、海外ETFの方が豊富でしょう。
高配当株やバリュー株といった特定の投資戦略を検討している方も、海外ETFの方が自分の理想としている商品が見つかるでしょう。
トラッキングエラーが大きい
トラッキングエラーとは、ETFのパフォーマンスが、基準としている指数のパフォーマンスとどのくらい乖離しているかを表す指標です。
ETFとベンチマークのリターンの差を標準偏差とし、トラッキングエラーが小さいほど差がなく、トラッキングエラーが大きいほど乖離しています。
アクティブファンドよりも、インデックスファンドの方がトラッキングエラーを小さく抑えることが重要です。
国内ETFは海外ETFよりトラッキングエラーが大きいものもあり、期待したような利益が得られないこともあるでしょう。
スプレッド拡大により実質コストがかさむ
スプレッドとは、売り気配価格と買い気配価格の差です。
スプレッドが広がると、投資家は買値を引き上げなくてはなりません。
国内ETFは海外ETFよりも流動性が低く、希望価格で売買できないこともあり、スプレッドが広いです。
特に、少額で売買を繰り返したり、出来高が少ない銘柄を売買する時には、運用成績に悪影響を与えます。
税制面で不利
海外ETFは、現地で課税された後、日本でも課税される「二重課税」が発生します。
これは、確定申告を通じて外国税額控除を申請することで、一部を取り戻せます。
一方、国内ETFは二重課税の調整が行われることもありますが、その仕組みは複雑です。
また、海外に投資する国内ETFでは、調整ができないこともあります。
情報開示やIRサポートが少ない
国内ETFの運用会社は、投資家向けの情報開示やIRサポートが不十分なことがあります。
ETFのポートフォリオ構成や運用報告書、ベンチマークとの乖離がなぜ起きているかの解説など、さまざまな面で情報不足を感じるかもしれません。
投資家が参加できる運用状況の説明会や、質疑応答のチャンスが少ない点も、国内ETFのデメリットでしょう。
特徴的な国内ETF
特徴的な国内ETFを具体的に見てみましょう。(2025年6月現在)
純資産が多く、安定性の高い国内ETF
国内ETFの中には、純資産が10兆円を超える商品もあります。
純資産を重視したい方は、以下の商品を検討してみてください。
NEXT FUNDS TOPIX 連動型上場投資信託 (1306)
純資産 | 23.8兆円 |
信託報酬 | 0.088% |
運用期間 | 23.9年 |
年率平均リターン(1年) | +3.5 |
上場インデックスファンド TOPIX (1308)
純資産 | 11.3兆円 |
信託報酬 | 0.088% |
運用期間 | 23.5年 |
年率平均リターン(1年) | +3.5 |
ダイワ上場投信-トピックス (1305)
純資産 | 10.8兆円 |
信託報酬 | 0.11% |
運用期間 | 23.9年 |
年率平均リターン(1年) | +3.5 |
対象期間で高リターンだった国内ETF
参考までに国内ETFで高リターンだったものをご紹介します。
純資産も小さく、安定性に欠けますが、時流に乗った場合には大きなリターンが出る場合もあります。
グローバルX ゲーム&アニメ -日本株式 ETF (2640)
年率平均リターン(1年) | +47.9 |
純資産 | 29億円 |
信託報酬 | 0.59% |
運用期間 | 4年 |
中国H株ブル2倍上場投信 (1572)
年率平均リターン(1年) | +47.5 |
純資産 | 27億円 |
信託報酬 | 0.85% |
運用期間 | 12.5年 |
グローバルX フィンテック -日本株式 ETF (2836)
年率平均リターン(1年) | +33.7 |
純資産 | 3.7億円 |
信託報酬 | 0.59% |
運用期間 | 3.5年 |
国内ETFに変わる金融商品とは
国内ETFには優秀なものもあれば、そうでないものもあります。
国内ETF以外の選択肢を検討する際、おすすめとなる金融商品は以下の3つです。
海外ETF
海外ETFとは、日本以外の国や地域の証券取引所で上場しているETFです。
一般的にはアメリカの証券取引所に上場しているものを指し、S&P 500と連動したVOO、全世界株式と連動したVT、米国総合債券と連動したAGGなどがあります。
国内ETFよりもラインナップが豊富で、アメリカだけではなくEUやアジア、アフリカなどにも投資できます。
ニッチなテーマの取り扱いもあることや、レバレッジ型・インバース型などを選べることがメリットです。
国内ETFよりコストを抑えやすく、流動性が高い点からもおすすめです。
投資信託
投資信託は、投資家から集めた資金を一つにまとめて専門家が株式や債券などに投資し運用する金融商品です。
運用成績は、投資額に応じて分配されます。
最大のメリットは、運用を一任できる点です。
銘柄選定や売買のタイミングなどを考える必要がないので、投資にかけられる時間が少ない方や、投資経験が浅い方にもおすすめ。
バランス型の商品を選べば、国内・海外の株式や債券、REIT、コモディティなどに投資しリスク分散できます。
また、投資信託は積立投資に対応しているため、高い時に少なく・安い時に多く購入し、購入単価を平準化しやすいです。
個別株投資
個別株投資とは、投資する銘柄を投資家が自分で選び、直接購入・売却する投資です。
購入した企業が大きく成長すれば、株価が大幅に上昇するため高いリターンが期待できます。
また、多くの企業で株主に対して配当金の支払ったり、株主優待を提供をしたりといったメリットがあります。
投資信託などに比べて自由度が高く、どの銘柄を購入するか、いつ・どのくらい購入するかをすべて自分で決定し、「AI関連企業」など特定のテーマに絞ることも可能です。
1日の取引回数制限はなく、株式市場が開いている時間に株価を確認しながらリアルタイムでの売買できます。
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国内ETFに関するよくある質問
国内ETFに関するよくある質問に回答します。
ETFとは何ですか
ETFとは、上場投資信託のことです。
Exchange Traded Fundsの略で、TOPIXなど様々な指数と連動しています。
投資信託の取引は1日1回のみで、毎日算出される基準価額にもとづきます。
国内ETFと海外ETFの2種類に分かれており、分散投資をしやすいことから、運用にチャレンジする投資家は多いです。
なぜ国内ETFはおすすめではないのですか
国内ETFは、海外ETFに比べると出来高と流動性が不足しており、スプレッドが広がりやすいです。
そのため、自分が想定していた価格より不利な取引になることもよくあります。
また、信託報酬と取引コストが割高なこと、指数ラインナップが限定的なことも「おすすめしない」と言われる理由です。
まとめ
国内ETFは、出来高が少なく流動性が低いことや、信託報酬や取引コストが割高なことなどから、「おすすめしない」と言われることがあります。
例外的なケースとして、為替変動リスクを避けるために円で取引したい方には向いていますが、基本的には別の投資方法を選ぶとよいでしょう。
海外ETFや投資信託、個別株投資など選択肢は様々あるので、自分に向いているものを探してみてください。
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株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。