2024年からスタートした「新NISA」は、非課税枠の拡大や制度の恒久化など、国民にとって嬉しいメリットが追加されて大きな注目を集めています。
しかし、制度をよく理解せずに始めてしまうと、思わぬ失敗につながることも……。
この記事では、新NISAの基本とデメリットを解説し、初心者でも安心して活用するためのコツをご紹介します。
新NISAとは?制度の基本をおさらい
まずは、新NISA制度の基本的な仕組みを確認しましょう。
これまでのNISAとの違い
2024年1月から導入された新NISAは、これまでの一般NISAとつみたてNISAを統合し、非課税で投資できる枠が大幅に拡大された制度です。
これまでは、一般NISA(年間最大120万円・最長5年間)とつみたてNISA(年間最大40万円・最長20年間)のどちらか一方しか利用できませんでした。
一方、新NISAではつみたて投資枠(年間最大120万円)と成長投資枠(年間最大240万円)の2つの枠を併用して利用可能となりました。
つまり、年間最大360万円、通算1,800万円までの非課税投資ができるようになったのです。
また、新NISAでは商品を売却すると翌年以降に売却簿価分の非課税枠が復活できることも便利になったポイントでしょう。(ただし年間360万円枠の上乗せにはならない)。
知っておきたい新NISAのデメリット6つ
新NISAには多くのメリットがある一方で、始める前に知っておきたい注意点や制限もいくつか存在します。
ここでは、投資初心者が特に気をつけたい6つのデメリットについて解説します。
元本割れをする場合もある
新NISAはあくまで投資を非課税で行える制度であり、元本保証があるわけではありません。
購入した株式や投資信託の価格が下落すれば、元本割れするリスクは十分にあります。
「新NISAなら安全」と誤解してしまう方もいますが、値動きのある金融商品を扱う以上、「上がるだろう」と思って買った株がすぐに下落し、含み損を抱えてしまうといったケースも十分あり得ます。
元手が減る可能性は常に考慮する必要があります。
投資の基本であるリスクとリターンの関係を理解したうえで、冷静な判断をしましょう。
短期間で大きなリターンを狙うことは難しい
新NISAは長期投資を前提とした制度です。
特に、つみたて投資枠は、金融庁の基準を満たす長期・分散型の投資信託に限定されているため、短期売買による大きな利益は期待しにくい特徴があります。
また、成長投資枠を使って個別株へ投資することもできますが、値動きが激しい銘柄を選ぶとその分、リスクも大きくなります。
初心者が短期間で利益を出そうとして値動きの激しい株を買ってすぐ売ると、予想が外れて損失を出すリスクも高まります。
無理な売買を繰り返すと、かえって損をする場合もあるので要注意です。
投資商品を選ぶために知識が必要
新NISAでは、自分で投資対象を選ぶ必要があります。
証券会社が用意している商品ラインナップから選ぶ形にはなりますが、初心者にとっては「どれを選べばいいのかわからない」と感じることも多いでしょう。
銘柄や投資信託ごとの特徴、手数料、リスク水準など、最低限の知識がないと「人気そうだから」「SNSで見かけたから」といった理由で選んだ商品が、自分の目的に合っていなかった……と後悔することもあります。
信用できる情報元を参考にして、自分で調べる姿勢も大切です。
投資できる商品が限られる
新NISAでは、非課税枠を使える商品が一定の基準を満たしたものに限られています。
特につみたて投資枠では、長期・積立・分散投資に向いている投資信託に限られ、REITや高配当株、レバレッジ型ファンドなどは対象外です。
「自分がやりたい投資スタイルが新NISAではできない」という場合もあるため、制度の枠組みと自分の希望とのズレがないか確認しておくことをおすすめします。
「損益通算」や「繰越控除」ができない
新NISA口座内で発生した損失は、ほかの口座との損益通算ができません。
たとえば特定口座で出た利益とNISAでの損失を相殺することはできず、課税される利益だけが残ってしまうことになります。
また、損失を3年間繰り越す繰越控除も適用されません。
そのため、もし新NISAで損失が出た場合は節税メリットを受けられないという点にも注意しましょう。
「NISAで損したから、他の利益と相殺して節税できると思ってた…」と後から気づいても遅いのです。
5年以上の海外赴任・転勤時は継続できない
新NISAは、日本国内に住民票がある人が対象です。
そのため、5年以上の長期にわたる海外転勤や赴任が決まった場合、新NISA口座を継続できなくなる可能性があります。
一時的な海外移住であれば問題ありませんが、長期滞在が見込まれる場合は、あらかじめ資金の引き出しや別の運用方法を考えておく必要があります。
「現地からはもうNISAに追加できないなんて知らなかった…」という事態にならないよう、海外転勤の予定がある方は早めの対応が大切です。
新NISAで失敗しないために!賢い活用のコツ
ここでは、投資初心者でも新NISAを安心して活用するために意識しておきたいポイントを4つ紹介します。
事前に準備や知識を整えておくことで、無理のない形で投資をスタートできますよ。
余剰資金で投資をする
新NISAでは、元本保証がない以上、生活に必要なお金を使って投資するのはNGです。
急な出費に備える生活費や、近い将来に使う予定のある資金は投資に回さず、あくまで余剰資金で運用することが鉄則です。
たとえば、「給料から毎月の支出を差し引いて5,000円なら投資できる」「ボーナスの一部を使いたい」といった形で無理のない範囲から始めるのがおすすめです。
投資の目的を明確にする
「何のために投資するのか?」という目的を明確にしておくと、投資判断に迷いがなくなります。
老後資金、住宅購入、子どもの教育資金など、人によって目的はさまざまですよね。
目的がはっきりしていると、どれくらいの期間運用すべきか、どの程度のリターンを目指すかが見えてきます。
結果として、焦らず長期的な視点で資産を育てる意識が持てるようになります。
長期・積立・分散投資を意識する
新NISAの最大のメリットは、長期間にわたり非課税で投資できるという点です。
この仕組みを最大限に活かすには、長期・積立・分散の3つの視点が重要になります。
長期的にコツコツ積立投資をすることで、高い時に買いすぎたり、安い時に買えなかったりすることなく、購入価格も平準化できます。
さらに複数の商品に分けて分散投資をすることで、リスクも分散できるでしょう。
初心者は、まずつみたて投資枠で毎月一定額を積み立てるスタイルから始めるのが安心です。
投資の知識を身につける
新NISAを活用する上で、最低限の金融知識は持っておくことが大切です。
証券会社のサイトや金融庁の公式ガイド、YouTube、書籍など、多くの情報源があるので、まずは「投資信託とは?」「リスクとは何か?」から学習を始めてみましょう。
難しい専門用語に戸惑うこともあるかもしれませんが、少しずつ理解を深めていけば、商品選びや運用の判断にも自信が持てるようになります。
新NISAが向いている人の特徴
ここでは、「新NISAに向いている人ってどんな人?」という疑問にお答えします。
自分が当てはまるかどうか、ぜひチェックしてみてくださいね。
長期でコツコツ積立ができる人
新NISAは、長期的にコツコツと資産を増やしていく人にとって、とても有利な制度です。
特につみたて投資枠は、少額からの積立を前提に設計されており、投資経験のない方でも始めやすいのが特徴です。
時間を味方につけることで、短期的な値動きに一喜一憂することなく、着実に資産形成を進めることができます。
一時的な価格変動に動じない人
投資商品は日々値動きがあり、時には価格が大きく下落することもあります。
そのような場面でも感情的にならず、冷静に保有し続けられる人は、新NISAを上手に活用できる可能性が高いです。
「一時的な下落も、長期で見ればリスクは平均化できる」と理解し、慌てて売却しないことが大切です。
メンタル面での安定感も、資産運用における重要なスキルのひとつといえるでしょう。
投資に関心があり、学ぶ意欲がある人
新NISAは制度がシンプルになったとはいえ、商品選びやタイミングなど、自己判断が必要な場面が多くあります。
そのため、「投資についてもっと知りたい」「自分で考えて判断したい」といった学びの姿勢がある人には、とても向いている制度です。
生活資金と完全に分けて投資できる人
新NISAでの運用は、あくまで余剰資金で行うことが原則です。
投資による値動きの影響を受けても、日々の暮らしに支障が出ない状態でなければ、安心して続けることは難しくなります。
たとえば「半年分の生活費は現金で確保し、それ以外を投資に回す」など、計画的に資金管理ができる人は、長期投資に向いています。
まとめ
新NISAは、長期的な資産形成をサポートする制度ですが、元本保証がないことや損益通算ができないことなど、事前に知っておくべきデメリットも存在します。
制度の仕組みを理解し、自分に合った使い方をすることで、失敗を避けることができます。
焦らずコツコツと、余剰資金で続ける投資なら、初心者でも安心して活用できますよ。
まずは小さな一歩から、新NISAとの付き合い方を始めてみましょう。
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株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。