信用取引に挑戦するなら、「信用評価損益率」という指標をぜひ知っておきたいところです。
「信用評価損益率」は、信用取引をしている投資家の含み損益の平均を示す指標です。
一見むずかしそうですが、見方や活用方法を知れば、初心者でも投資判断に役立てることができます。
この記事では、信用評価損益率の意味や目安、買残・売残との関係、チェック方法までやさしく解説します。
信用評価損益率とは
まずは、「信用評価損益率」がどのような指標なのか、その基本を理解しましょう。
信用評価損益率が注目される理由
信用評価損益率とは、信用買い建玉の平均損益率を示す指標です。
たとえば、信用評価損益率が「−15%」であれば、市場にいる信用取引の投資家全体が平均で15%の含み損を抱えている、ということになります。
この指標が注目されるのは、相場の天井や底、投資家たちの心理を客観的に読み取れるからです。
特に投資家の多くが含み損を抱えるような局面では、相場の底が近づいている可能性もあります。
逆に、含み益が大きい状況では「天井が近いのでは?」と警戒されることもあります。
そのため、「逆指標として使える」という見方から、信用評価損益率に注目が集まっているのです。
信用評価損益率の計算方法
信用評価損益率は、信用取引で買い建てたポジションの含み損益をパーセンテージで表した指標です。
以下のような計算式で求められます。
証券金融会社が持つデータを基に、市場全体の建玉の損益率を平均化して算出します。
なぜ信用評価損益率はマイナスなことが多いの?
実際のデータを見ると、信用評価損益率はマイナスの状態であることが多いです。
これはなぜかというと、信用取引を行う投資家の多くが高値づかみをしやすく、損切りが遅れる傾向があるためです。
また、下落相場でも下がるたびに買い増す「ナンピン買い」をする傾向があるため、平均建値が高くなりやすく、株価が回復しても評価損が残りやすいのです。
そのため、信用評価損益率がマイナスで推移している期間が長くなることも珍しくありません。
この性質を逆手にとって、多くの投資家が含み損を抱えている、つまり底打ちの兆候と考える投資家もいます。
信用評価損益率の見方
ここでは、信用評価損益率をどのように読み取るのか、具体的な数値の目安や相場との関係を見ていきましょう。
天井と底の目安は?
信用評価損益率を投資判断に活かすには、どの水準が天井・底の目安になるのかを知っておくことが大切です。
一般的に目安とされている数値は以下のとおりです。
・−3%~−3.5%に近づくと天井圏
・−15%~−20%を下回ると底入れの可能性
とくに注目されるのは、−15%〜−20%を超えるタイミングです。
この水準まで下がると、信用買いをしていた投資家が大きな損失を抱えており、強制決済や損切りが加速している可能性があります。
ただし、数値だけで早まった判断は禁物です。
「そろそろ底かも」と思って買い増した結果、さらに下落するケースもあります。
ほかのテクニカル指標や出来高、相場のニュースなどと併せてチェックしましょう。
信用評価損益率と日経平均の推移
日経平均は日本を代表する株価指数のひとつで、全体的な相場の動きを示す目安になります。
実は信用評価損益率と日経平均は、同じような動きをする傾向があります。
たとえば、信用評価損益率が上がっているときは、投資家が信用取引で利益を出していることを意味し、
その背景には株価の上昇、つまり日経平均も上がっているケースが多いのです。
逆に、信用評価損益率が下がっているときは、含み損を抱えている投資家が多い状態。
このときは相場が下落していることが多く、日経平均も下がっている可能性が高いといえます。
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信用評価損益率は買残・売残とセットで見るべき
ここでは、信用評価損益率を見るときに合わせてチェックしておきたい信用買残・売残について解説します。
信用買残・売残とは?
まず、「信用買残」は、投資家がお金を借りて株を買っている数のこと。
「これから株価が上がるはず!」と考えて、信用取引で株を買った人たちのポジションの合計です。
一方で、「信用売残」は、投資家がお金を借りて株を売っている数のこと。
これは「株価は下がるはず!」と考えて、いったん株を売って、あとで安くなったところで買い戻そうと考えている人たちの合計です。
どちらも、将来的に売ったり買い戻したりする必要があるので、相場に影響を与える存在としてトレードの参考になります。
たとえば、信用買残がたくさん積み上がっていると、「利益を確定するために売る人が増えるかも」と考えられます。
逆に、信用売残が多いと「買い戻しによって上昇が起こるかも」と考えられるのです。
セットで見ることで得られるメリット
信用評価損益率は、投資家が今どれくらい利益や損失を抱えているかを表す指標。
でも、それだけでは相場が次にどう動くかまではわかりにくいですよね。
そこで一緒に見るべきなのが、上で紹介した信用買残と信用売残です。
これらを合わせて見ることで、「どちらにポジションが偏っているのか」「投資家がどんな行動を取っているのか」が見えてきます。
たとえば、損失を抱えた買いポジションが多いときは底打ちの兆し、利益が出ている買いが増えていれば天井が近いかもしれません。
こうした情報を組み合わせることで、相場の流れをより正確に読み解くことができますよ。
信用評価損益率の確認方法とおすすめツール
ここでは、実際に信用評価損益率をどこで確認できるのか、信頼性のある情報源やおすすめのツールをご紹介します。
初心者でもすぐにチェックできるサイトや証券会社のサービスを中心にまとめていますので、ぜひ活用してみてください。
見られる場所(サイト・証券会社)
①日本証券金融(JSF)
信用評価損益率の公式データは、日本証券金融株式会社が毎週発表しています。
Webサイトでは、信用取引評価損益率として週次で公開されており、主に東証プライム・スタンダード・グロースの各市場区分における全体平均が確認できます。
週ごとのデータが一覧で掲載されており、CSV形式でのダウンロードも可能です。
数値の推移を記録しておくことで、自分なりの分析にも役立ちます。
②各証券会社のツール
信用評価損益率そのものは証券会社の画面上で表示されないことが多いですが、信用買残・売残や信用倍率の情報は多くのネット証券で確認できます。
たとえば、SBI証券なら「株アプリ」、楽天証券なら「マーケットスピードⅡ」、松井証券なら「マーケットラボ」から確認ができます。
データの更新頻度とタイミング
信用評価損益率は、週1回、主に水曜日の取引終了時点のデータを元に、その週の金曜日前後に日本証券金融の公式サイトで更新されます。
つまり、リアルタイムの数値ではなく、先週のデータとして把握する指標であることに注意が必要です。
とはいえ、相場の流れや投資家心理は1〜2日で劇的に変わるものではありません。
そのため、週次のデータでも相場の全体傾向を把握するには十分とされています。
最新データをチェックする際は、必ず日付を確認しましょう。
まとめ
信用評価損益率は、投資家の含み損益を示す相場心理の温度計ともいえる指標です。
特にマイナスが大きくなったときは、相場の底打ちサインとして注目されます。
ただし、この数値だけで判断せず、信用買残・売残と合わせて確認することで、より正確な相場の読み解きが可能になります。
定期的にデータをチェックし、冷静な売買判断につなげていきましょう。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。