TOB発表後に買うのはアリ?仕組み・株価の動き・判断基準を解説

TOB発表後に買うのはアリ?仕組み・株価の動き・判断基準を解説

TOBが発表された銘柄は、ニュースやSNSでも話題になりますよね。

「今から買っても利益が出るの?」「そもそもTOBって何?」と、初心者の方にはわからないことだらけかもしれません。

この記事では、TOBの仕組みや株価の動き、買うかどうかの判断基準までを解説します。

目次

TOB(株式公開買付け)とは?

まずは、TOB(株式公開買付け)という言葉の意味や、どのような場面で使われるのかを確認していきましょう。

TOBの定義と仕組み

TOBとは「Take Over Bid(テイク・オーバー・ビッド)」の略で、日本語では「株式公開買付け」と訳されます。

これは、企業が株主に対して、一定の期間と価格を提示して株式を買い取ると発表し、証券取引所を通さずに直接買付けを行う手法のことです。

買付けの対象になるのは、ある特定の上場企業の株式で、買付け期間や価格、目標株数などは事前に明示されます。

一般の株主がTOBに応募する場合、証券会社を通じて所定の手続きを行い、決められた価格で株式を売却することになります。

市場価格とは関係なく、あらかじめ提示された「公開買付価格」で売却できる点が特徴です。

TOBとは?保有する株がTOBされたらやるべき手順を解説!

TOB(株式公開買い付け)とは?その仕組みと株価への影響をわかりやすく解説

なぜTOBが行われるのか?

TOBは、単に株を買い集めるための手段ではなく、企業が何らかの戦略目的を持って実施するものです。

たとえば、親会社が子会社の株式をすべて買い取り、完全子会社化することでグループ経営の効率を上げたい場合。

あるいは、別の企業を買収して、自社の事業を拡大したい場合などです。

このようなM&A戦略の一環として、TOBはよく使われます。

また、すでに一定の持ち株比率を持つ株主が、その比率をさらに高めたいという場合にも使われます。

持株比率が一定水準を超えることで、経営権に影響を与えることができるためです。

経営への影響を与える株主総会の議決権を得るため、3分の1(33.4%)、過半数(50%)、特別決議を可能にする3分の2(66.7%)の取得が目安とされることがあります。

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TOB発表で株価はどう動く?

ここでは、TOBが発表された直後に株価がどのように動くのかを解説します。

公開買付価格と「プレミアム」の関係

TOBが発表されると、まず注目されるのが「公開買付価格」です。

これは、買付けを行う企業が「この価格で株を買いたい」と表明する金額であり、通常は発表直前の株価よりも高めに設定されます。

たとえば、ある企業の株価が1,000円だったとします。

その企業に対して「1株あたり1,300円でTOBを行います」と発表があった場合、300円の上乗せがあります。

この300円が「プレミアム」と呼ばれるものです。

このプレミアムは、既存の株主にとってより高く売れるチャンスとなるため、発表と同時に投資家の注目が集まります。

急騰する理由と「アービトラージ」とは?

TOBが発表されると、株価が急上昇することがよくあります。

これは「アービトラージ」と呼ばれる動きが関係しています。

アービトラージとは、同じ価値を持つ金融商品の価格差を利用して利益を得る取引のことをいいます。

たとえば、ある株式が異なる取引所で異なる価格で取引されている場合、安い市場で買って高い市場で売ることで、その差額分の利益を得ることができます。

TOBの場合は、市場価格とTOB価格の間に価格差が存在することになります。

たとえば、TOB価格が1,300円であるにもかかわらず、市場価格がまだ1,250円であれば、その差額50円の利益を狙って株を買う投資家が現れます。

これが「アービトラージ(裁定取引)」であり、投資家による買い注文が集中することで、市場価格がTOB価格に近づいていくという動きが生まれるのです。

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市場で買うべき?TOBに応募するべき?メリットを比較

TOB発表後に市場で買うべきか、それともTOBに応募するべきか、それぞれの特徴とメリット・デメリットを比較します。

市場買付の特徴

市場で株を買うというのは、通常の株式売買と同じ方法です。

TOB発表後は、株価がTOB価格に近づいていることが多いため、今すぐ売れば利益が出ると感じて売却する投資家もいます。

市場での売買は、スピード感があり、売買成立後すぐに現金化できるのが大きな特徴です。

ただし、売却時の価格はそのときの市場価格に左右されるため、TOB価格よりも下がってしまうこともあります。

また、売買手数料やスプレッドなどのコストが発生する点も押さえておきましょう。

TOB応募の特徴

TOBに応募する場合は、証券会社を通じて正式な手続きを行い、企業が提示した買付価格で売却します。

市場の価格変動に関係なく、あらかじめ決まった価格で売れるのがメリットです。

ただし、買付期間が終わるまで株を保有し続ける必要があり、決済・入金までは2〜3週間かかることが一般的です。

この間、他の銘柄への投資に資金を回せないという資金拘束のデメリットがあります。

さらに、部分買付の場合は、応募しても一部しか買い取ってもらえず、残りの株は市場で売却する必要が出てくることもあります。

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TOBの流れとスケジュール

TOB発表後に買うのはアリ?仕組み・株価の動き・判断基準を解説
ここでは、TOBが発表されてから実際に株式が買い取られるまでの流れについて解説します。

まず最初に行われるのがTOBの実施公表です。

企業が「○月○日から○月○日まで、○○円で株を買い取ります」と、TOBの条件を公表します。

次に、数日から1週間程度の準備期間を経て、買付開始日を迎えます。

この日から、株主はTOBへの応募手続きを始めることができます。

応募期間は通常20〜30営業日程度とされており、この間に証券会社を通じて必要な書類の提出などを行います。

そして、応募締切日が到来します。

締切直前になると応募が集中する傾向があり、証券会社のシステムが混雑することもあるため、早めの手続きをおすすめします。

最後に、決済日・代金交付日を迎えます。

TOBが成立していれば、買付けを行った企業から証券会社を通じて現金が入金され、取引が完了します。

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TOBに関するリスクと注意点

TOBは魅力的な投資機会に見える反面、注意すべきリスクもいくつか存在します。

最低株数に届かず成立しない可能性がある

TOBには「発行済株式数の50%以上を取得できなければ中止」というように、最低応募株数が定められていることが多いです。

不成立となると、市場で株を保有し続けることになり、TOB発表前の水準まで株価が急落するケースもあります。

とくに経営陣による買収や敵対的買収の場面では、成立の可否が読みにくく、リスクが高まりやすい点に注意が必要です。

市場価格が買付価格を上回る可能性がある

TOBの発表後、思惑的な買いが殺到し、市場価格が買付価格を一時的に上回るケースもあります。

これは、TOB価格が引き上げられるのではないか、あるいは対抗TOBが出るのではないかという期待によるものです。

しかし、実際には価格が据え置かれたり、TOBが不成立になる場合もあり、その場合は市場価格が一気に下落して損失が出ることになります。

決済まで資金が拘束される

TOBに応募した株式は、決済が完了するまで売却できません。

この間、証券口座では応募中の状態となり、他の銘柄への乗り換えや資金移動ができなくなります。

一般的に決済までは2〜3週間程度かかるため、資金を流動的に使いたい方にとってはデメリットとなるでしょう。

公開買付者と既存株主の間で情報格差がある可能性がある

TOBは法律に基づいて公正な条件で行われますが、それでも買付けを行う側と株主の間に情報格差が生じることはあります。

たとえば、企業側が将来的な経営戦略やシナジー効果についてより詳細な情報を持っている一方で、投資家には十分に開示されない場合もあります。

そのため、「TOBに応じたほうが得かどうか」の判断を短期的な株価や噂だけで決めてしまうのは危険です。

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判断のためのチェックリスト

ここでは、買うかどうかを冷静に判断するために確認しておきたい4つの視点をご紹介します。

買付者の資金力や目的

まず確認したいのが、TOBを仕掛けている買付者がどんな目的で株を買い集めようとしているかという点です。

たとえば、「完全子会社化によるグループ再編」や「敵対的買収による乗っ取り防止」など、目的によってリスクの度合いや今後の企業方針が異なります。

加えて、買付者がどれくらいの資金力を持っていて、実際にTOBを完了させる余力があるのかも大切な視点です。

 プレミアムの水準

公開買付価格が直前の株価と比べてどれくらい高く設定されているか、つまりプレミアムの水準も重要です。

過去の国内TOBでは、プレミアムの平均は20〜40%ほどとされています。

それよりも大幅に低い場合は疑問を持つことが大切ですし、逆に高すぎる場合も「成立するかどうか」の観点で慎重になる必要があります。

業界平均や類似事例を参考にしながら、プレミアムの妥当性を見極めましょう。

応募条件

TOBには、最低応募株数や上限株数といった応募条件が設けられている場合があります。

・最低株数に満たないと不成立
・上限を超える応募があった場合は比例配分になる
といった条件があるかどうかを事前に確認しておくことが大切です。

今後の配当・優待の継続性

TOB成立後、会社の方針が大きく変わる可能性があることにも注意しましょう。

とくに気になるのが、配当金や株主優待が今後どうなるかという点です。

たとえば、非上場化が予定されている場合、その企業の株を持ち続けること自体ができなくなり、配当や優待も終了するケースがあります。

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ネット証券でTOB応募をする流れ

TOBに応募するには、まず対象銘柄を保有していることが前提です。

ネット証券を使う場合、ログイン後に表示される「公開買付のお知らせ」や専用ページから、応募の意思表示を行います。

続いて、応募画面で株数を入力し、必要書類への電子署名や本人確認を済ませます。

この手続きは証券会社ごとに異なりますが、多くはオンライン完結で行えます。

応募が完了した株式は、応募中の状態となり売却できなくなります。

締切日まで保有し続けることが条件なので、うっかり途中で売ってしまわないように注意しましょう。

TOBが成立すれば、決済日に証券口座に代金が入金されます。

この入金時期や手続き完了の通知は、証券会社からのメールやマイページで確認できますよ。

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税金と損益計算の注意点

TOBに応募して株を売却し、利益が出た場合は、通常の株の売却益と同じように課税対象となります。

税率は20.315%で、特定口座(源泉徴収あり)を使っていれば、証券会社が自動で計算・納税してくれるので安心です。

ただし、注意したいのが課税のタイミングです。

TOBに応募した日ではなく、実際にお金が入金された日が属する年の所得として扱われます。

たとえば12月に応募しても、決済が翌年なら翌年分の課税対象になります。

また、NISA口座で保有していた場合は非課税になるケースもありますが、証券会社によってはTOB応募ができないこともあります。

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初心者が誤解しやすいポイント

ここでは、特に投資初心者が陥りがちな3つの誤解を取り上げて、注意点をわかりやすくお伝えします。

「プレミアムがある=必ず儲かる」は誤解

TOBでは、買付価格が市場価格より高く設定されるプレミアムがあります。

これを見ると「今買っておけば必ず得できる」と思ってしまうかもしれません。

しかし、実際にはTOBが成立しない可能性や、部分買付で全株が買い取られないケースもあります。

さらに、すでに市場価格がTOB価格付近まで上昇していた場合、それ以上の値上がりは見込みづらく、利益は限定的です。

プレミアムは「理論上の上限価格」として理解しておきましょう。

部分買付の「落選分」が暴落するケースも

TOBには上限株数が設けられていることがあり、応募が上限を超えると応募者全員に比例配分されます。

つまり、すべての株が買い取られるわけではなく、一部だけが売却され、残りは市場に戻されるということです。

このとき、残った株を売ろうとする人が多くなると、需給が崩れて株価が急落するリスクがあるため要注意です。

MBO後は情報開示が制限され、売買しづらくなることも

MBOとは、会社の経営陣が自社の株式を買い取り、非上場化する目的で行うTOBのことです。

この場合、TOBが成功すれば上場廃止となり、株式市場での売買ができなくなります。

加えて、情報開示の機会が大幅に減少するため、今後の業績や経営方針を知ることが難しくなります。

MBOが目的のTOBに応募しなかった株主は、未上場株を保有し続けるリスクを背負うことになるため、慎重な判断が必要です。

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TOBのよくある質問

最後に、TOB発表後によくある疑問を2つ取り上げて解説します。

Q1. 決済までどのくらい時間がかかる?

TOBに応募した場合、株式の売却が成立してから実際に現金が証券口座に振り込まれるまでには、通常2〜3週間ほどかかります。

この期間は、TOBの応募締切日から数えて決済日が設定されており、証券会社を通じて一括で入金されます。

資金が一時的に拘束されるため、「すぐに現金化したい」「他の銘柄に乗り換えたい」と考えている方は、市場で売却する選択肢も検討したほうがよいでしょう。

 Q2. プレミアムは高いほど良いの?

プレミアムが高いとお得そうに感じるかもしれませんが、高ければ良いとは限りません。

プレミアムが高すぎると投資家から「本当に成立するの?」と疑念を抱かれやすくなり、TOB不成立のリスクが高まることがあるからです。

また、発表直後に株価がTOB価格付近まで急騰している場合は、追加の値上がり余地が小さいため、プレミアムの恩恵を受けづらいケースもあります。

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まとめ

TOBは、うまく活用すれば利益を得られるチャンスがある一方で、成立リスクや資金拘束などの注意点もあります。

「発表後に買って間に合うのか?」と迷ったときこそ、仕組みや目的、株価の動き、応募条件を正しく理解し、自分に合った判断をすることが大切です。

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この記事の監修者

監修者プロフィール

トレード歴40年の株職人。“株匠” を目指している。
20歳で株の売買を始めてから20年間、
「日本郵船」1銘柄のみの「売り」「買い」に集中、大きな利益を重ねる。
その後、宮本武蔵が洞窟に籠もるかの如く、チャートと建玉の研究に没頭する。

現在も、チャートと建玉の操作のトレード手法をさらに極めるべく精進を重ねており、
日本株、米国株、イタリア指数、イギリス指数、ユーロ指数、金、原油、コーン、FXなど、
どの市場でも大きな利益を生み出している。

ラジオNIKKEI「相場師朗の株は技術だ!」でキャスターを務める。
東京証券取引所北浜投資塾講師、日本経済新聞社お金の学校講師。

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この記事を書いた人

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。

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