資産2億円、サイドFIREを達成しているブロガーの「夢見る父さん」。
リーマン・ショックで資産が4分の1に減った苦い経験や、FXでの失敗も経て、たどり着いたのは“仕組み化”と“インデックス投資”でした。
堅実な積み重ねこそが資産形成の近道。
今回は、投資の失敗談から成功の秘訣、さらに今注目する国策テーマまでを語っていただきました。
夢見る父さん氏
プロフィール
1969年、東京都生まれ。1991年、筑波大学卒業。同年、メディア企業に入社。2020年、同社を退職。ブログ「夢見る父さんのコツコツ投資日記」を運営する。
コロナ・ショックをチャンスに変え、資産2億円を達成
−まずは簡単に自己紹介をお願いします。
夢見る父さん ブロガーの「夢見る父さん」と申します。2025年1月に『投資で2億稼いだ社畜のぼくが15歳の娘に伝えたい29の真実』を出版しました。資産は2億円を超えていて、サイドFIREを達成しています。高校1年生の娘と妻と暮らしています。
−投資を始めたきっかけは何でしたか。
夢見る父さん 投資を始めたのは、1998年のことです。当時は政府が金融システムの規制緩和や自由化を目指した政策「金融ビッグバン」を行っており、雑誌やテレビのニュースでも投資についてよく取り上げられていました。私は社会人生活7年間で300万円ほどの貯金があったので、そのお金で株を購入しました。最初に買ったのは、フジテレビ社の株です。ドラマ『踊る大捜査線』の大ファンで、フジテレビを応援したいという気持ちと、これだけ高視聴率の番組があるから良いだろうという理由で購入しました。また、ヨーロッパの投資信託も合わせて購入しました。
−その後の投資歴についても教えてください。
夢見る父さん 一時期ITバブル崩壊がありましたが、21世紀に入ってから日本株は基本的に右肩上がりだったので順調に資産が増えていきました。毎年少しずつ給与から天引きして投資に回していたこともあり、2000万円まで資産が増えました。ところが2007年に、FXで4億円稼いだ主婦の方が脱税で捕まったニュースを見て、FXはそんなに儲かるのかと思ってFXに手を出したんです。そしたら1週間で700万円近く損をしてしまいました。更に2008年にはリーマン・ショックが到来し、2000万円あった資産は500万円にまで減ってしまいました。そこで投資に対してショックを受けてしまい、3年ほどは口座を全く見ず、ほったらかしにしていました。
−投資を再開したのはなぜですか?
夢見る父さん 2011年に父が亡くなり、数百万円の株を相続しました。無駄遣いしてしまっては親に申し訳ないと思い、リスクの少ないインデックス投資をメインに投資を再開しました。アベノミクスが始まった頃だったので、非常に運が良かったと思います。
アクティブ投資も行ったことで資産を増やし、2020年に7000万円に到達しました。ちょうどその頃、勤めていた企業が業績不振で早期退職を募ることになり、退職金もあればFIREできるんじゃないかと思い、退職金を受け取って早期退職しました。コロナ禍だったので、FIRE後はずっと自宅で過ごしていたのですが、当時小学6年生の娘が学校の作文で「お父さんみたいなニートになって、ずっとゴロゴロしていたい」と書いたんです。これはまずいと思い、仕事を見つけてサイドFIREに切り替えました。
−資産2億円に到達されたのはいつ頃でしょうか。
夢見る父さん コロナ・ショックの頃に退職金をS&P500などアメリカの投資信託に投資したので、3〜4倍に資産が増え、2024年に2億円に到達しました。
−現在のポートフォリオを教えてください。
夢見る父さん 投資信託が1億円、株式がETFを含めて5000万ほど、個人向け債券が2000万ほどになります。それから、iDeCoが1500万円、学資保険や生命保険が500万円、残りが預貯金やMRFです。
投資元本を作るコツは「義理欠く・見栄欠く・恥欠く」
−投資初心者が最初にやるべきことは何でしょうか。
夢見る父さん 仕組み化することと、投資の元本を作ることです。特にビジネスパーソンなど、毎月お金が入ってくる人は、その内の一定割合を天引きで投資に回しておけば、日々の値動きを気にせずとも、時間が経てば成果が出ると思います。
本多静六という投資家は、 東京帝国大学農科大学教授となり、月給の4分の1を天引きすることで投資の元本を増やし、資産を増やしました。私もそれに近い形で給料のかなりの部分とボーナスを天引きして投資に回してきました。天引きであれば確実に元本を増やせますし、心理的にも負担が少ないです。初心者の方は国際分散されたインデックス投資から始めるのが良いかと思います。
−インデックス投資をおすすめされるのはなぜですか。
夢見る父さん 個別株や暗号資産に比べるとリスクが少なく、特に中長期で見た場合に、リターンが得られる確率が非常に高いからです。またインデックス投資は再現性があります。
例えば日本株は、世界中から買うことができます。それはつまり、ハーバード大学やオックスフォード大学を最優秀で卒業する天才が、最新コンピュータの超高速取引をしている人も日本株を買うということです。それに勝つには、相応の才能や努力が要ります。
投資マニアになりたい人は自分で勉強して色々なところに手を出しても良いと思うのですが、それでも最初のうちは7割〜8割はインデックス投資にしておくのが良いのではと思います。
−トランプ政権の動きや戦争など、世界情勢によって株価が下がるのではないかと危惧する人もいるかと思います。世界情勢をどのように捉えると良いでしょうか。
夢見る父さん 過去も第一次・第二次世界大戦など大きな戦争がありましたが、一時的に下がることはあっても、世界の株式全体を10年20年のスパンで見ると伸び続けています。外部環境の変化についてあまり気にしすぎなくても良いと思います。
私がコロナ・ショックで大きく資産を増やしたように、「⚪︎⚪︎ショック」と言われるタイミングは買いのチャンスだと思います。例えばソフトバンクグループはリーマン・ショック当時、週刊誌などでは借金経営で危ないと書かれていましたが、いち早くスマートフォンを販売し、大きく業績を伸ばしました。今や50倍にも株価が跳ね上がっています。
コロナ・ショックでは、運動不足の人々が1人でできるマラソン・ジョギングがブームとなり、マラソンシューズのアシックスが株価を大きく伸ばしました。
このように、暴落が起こった時にチャンスを活かせる企業に投資できれば、大きく資産を増やすことができます。
−資産1億円を達成するためには何をするべきだと思われますか。
夢見る父さん 日本人の平均年収は400万円ほどですが、しっかり倹約し、仕組み化して投資元本を作れれば、20〜30年で高い確率で1億円を達成できます。最近では共働きが増えてますから、さらにその確率が上がっていると思います。1億円と聞くと大きい金額に思えるかもしれませんが、時間さえかければ多くの人は手が届く金額だと思います。
−初心者がやりがちな失敗は何だと思われますか。
夢見る父さん 少し株価が下がると怖くなって売ってしまう、いわゆる「狼狽売り」はよくある失敗だと思います。インデックス投資であれば20年30年経てば成果を得られると期待して、慌てないことが大切です。
−投資の勉強におすすめの媒体はありますか。
夢見る父さん まずは投資の基本的な書籍を読んで勉強し、インデックス投資について理解するべきだと思います。バートン・マルキールさんの『ウォール街のランダム・ウォーカー』やチャールズ・エリスさん、橘 玲さん、山崎元さんなどの名著を読んで、なぜインデックス投資を長期的に行うと資産が増えるか、というのを知ってください。
またソフトバンクやアシックスのように、身の回りの生活で伸びていく企業を見つけることも重要です。アメリカの伝説的な投資家であるピーター・リンチさんは、行きつけのドーナツ屋がもの凄く美味しいのにまだ流行っていないことに気づき、株を購入したところ何倍にもなったと著書『株で勝つ』で語っています。日常生活や、町を歩く中にもヒントは転がっていると思います。
−今の生活に一杯一杯で、投資に割くお金がないという人はどうしたら良いでしょうか。
夢見る父さん 江戸時代からの言葉で「3欠」というのがあります。「義理欠く・見栄欠く・恥欠く」の3つの「欠」です。「義理欠く」というのは、例えば上司に飲みに誘われて断れなかったり、後輩と飲みに行ったら奢ってあげたりと、義理で使ってしまうお金を省くということ。「見栄欠く」というのは、良い車に乗ったり、ブランド品を持ったりするお金ですね。私は高級車を買うこともできますが、親の遺した軽自動車に乗っています。「恥欠く」というのは、それらを恥ずかしいと思わないこと。この「3欠」ができれば、無駄なお金を削って生み出したお金で投資をすることができると思います。また副業や懸賞サイト、ポイントサイトなどを活用するのも良いですね。
防衛事業やアニメ産業など国策に沿った企業に注目
−今注目している業界はありますか。
夢見る父さん 私はこれ以上資産を増やそうと思っていないので、新たな投資はしていないのですが、もし今投資を増やすとしたら、世界の政策や国策に沿った形で投資をすると思います。例えばソフトバンクグループの孫正義氏はいち早くトランプ氏と会見しており、アメリカ政府からも日本政府からも重要視されている企業だと思います。防衛費が増えている観点からは、三菱重工業や川崎重工業、IHIなどが注目できます。さらに、日本政府はアニメやゲームといったコンテンツ産業に力を入れています。日本のアニメは世界でも人気で、サウジアラビアでは『ドラゴンボール』のテーマパーク建設が進んでいますよね。こういった産業に関わる企業は注目できると思います。
−今後の目標について教えてください。
夢見る父さん ビル・パーキンスさんの著書『DIE WITH ZERO』に共感していて、徐々に資産を減らしていくことを考えています。今住んでいる家の建て替えで数千万円かかるので、2億円は切る予定です。今56歳なので、80代半ばくらいまでには2000万円ほどまで減らしていきたいです。また資産を使って娘が希望する大学に行けるようにしてあげたいと思います。奨学金は社会人になってから大変だと聞くので、娘が負担することなく、大学費用を出してあげたいです。
−書籍『投資で2億稼いだ社畜のぼくが15歳の娘に伝えたい29の真実』についても教えてください。
夢見る父さん 10年以上ブログを書き続けてきて、それらをまとめて書籍化しました。娘が高校生ということもあって、今高校では金融教育も本格的に始まっているので、娘の世代にも通じるような初心者向けの本を書こうと思いました。また成功談だけでなく、失敗談もあると読者の方も読みやすいと考え、FXでの失敗なども赤裸々に綴っています。
−個人投資家へのメッセージをお願いします。
夢見る父さん 平均的な資産を持っていれば、1億円というのはそんなに難しい目標ではありません。これを達成するためには、投資元本を作りながら仕組み化をして、長期でインデックス投資を続けてください。投資マニアになりたいという人は、自分で勉強して頑張ってください。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。