大学1年生で投資を始めて以来25年間、着実に資産を積み上げてきた兼業投資家・なのなのさん。
なのなのさんがメインで投資を行っているのは、「配当利回り4%以上の高配当株」です。
かつては値動きの激しい銘柄に投資をしていたというなのなのさんが、堅実で再現性のある「高配当株」にたどり着いた道のりについてお話を伺いました。
なのなの氏
プロフィール
投資歴20年以上の兼業投資家。基本スタイルは日本の高配当株やアメリカのインデックスを中心とした分散投資。関西の大学院を修了後、新卒でプライベートエクイティ投資の会社に入社。約9年働いた後、メーカーに転職して現在に至る。大学1年生から株式投資を開始。当初6年間は赤字であったが、投資対象を高配当株メインとしてからは成績が安定するようになる。2008年以降は17年連続で黒字。2025年8月時点の保有資産は2億1,000万円。
旅行中に売った銘柄が2日後に上場廃止―投資スタイル転換の決定打
−まずは簡単に自己紹介をお願いします。
なのなの 2000年、大学一回生の頃から株を始め、投資歴は25年です。高配当の株式投資と米国のインデックス投資をメインに行っております。新卒でプライベートエクイティ投資の会社に入社後、現在はメーカーで働いている兼業投資家です。2025年現在は2億1,000万円ほどの資産となっています。
−企業分析に興味を持ったきっかけは何でしたか。
なのなの 中学生の頃、任天堂のスーパーファミコンが主流の時期に、セガの「メガドライブ」というマイナーなゲーム機を持っていたのですが、新聞の株式欄をふと見てみると、セガの株が毎月上がっていることに気がつきました。ゲーム機の人気としては任天堂の方が高いのに、株が上がっているのはなぜだろうと関心を持ち、株に興味を持つようになりました。
たまたまセガの近くに兼松日産農林という当時の仕手株が載っていて、株価が何十倍にも跳ね上がっていく様を見ていくのも面白かったです。元々野球の打率など数字の動きを追っていくのが好きだったというのもあるかと思います。儲けようというよりも、ゲーム感覚で始めました。
−投資を始めた当初はどのような成績でしたか。
なのなの 大学・大学院に在学中の7年間はずっと赤字でした。アルバイトをして貯めたお金、約100万円を元手に株式投資をしていましたが、毎年10〜30万円は赤字でしたね。今から考えると、その程度の失敗で済んで良かったなと思います。1000万円を投資して毎年100万円の赤字になるよりは、まだ傷が浅いですから。
−赤字を脱却できたのはなぜでしょうか。
なのなの 投資基準を明確にしたことが一番大きいかと思っています。大学時代は思いつきで投資をしていて、例えばインターネットの掲示板や雑誌でおすすめされた銘柄を買っていました。深く考えず、再現性のない投資をしてたので、赤字が続いていました。しかしこのままではよくないと思い、数字で基準を持って投資をするように、具体的には配当利回りが3〜4%以上の銘柄を中心に買うようになってから成績が安定するようになりました。
−「このままではよくない」と感じた出来事があったのでしょうか。
なのなの 当時は値動きの激しい銘柄を中心に売買をしていたので、倒産しそうな会社にも投資をしていました。2004年頃、沖縄旅行に行った時にあまりにも激しい銘柄を持っていると旅行を楽しめないなと思い、空港に着いた後のモノレールで売った銘柄があったんです。そうしたら2日後にその会社が上場廃止になって、あと少しで数十万円がゼロになるところでした。それが非常に教訓になって、それ以降は値動きの激しい銘柄に投資をしなくなりました。
400銘柄に分散されたポートフォリオの中身
−様々な基準がある中で、配当利回りに着目されたのはなぜですか。
なのなの 自分にはどういう投資が向いているのかを知るために、証券口座を3つ作って、それぞれ別のやり方で投資をしてみたんです。1つは高配当株の銘柄、1つはインターネットで話題の銘柄、1つは低位割安株の銘柄です。1年くらい比較してみて、高配当株に投資した口座が一番成績が良かったので、高配当株をメインにするようになりました。
−配当利回りの他に、基準にしていることはありますか。
なのなの 過去10年の業績が右肩上がりであること、少なくとも赤字がなく業績にブレがないことです。
−現在のポートフォリオを教えてください。
なのなの 日本株が53%、米国株が32%、J-REIT(不動産投資信託)が9%、現金が3%、その他が3%です。日本株の中で、優待を含めて配当利回り3%以上のものが77%の比率となっています。日本株は約400銘柄、米国株は約70銘柄、J-REITは約40銘柄と分散投資を行っています。
−日本では景気悪化や人口減少、アメリカではトランプ政権の動きが気になる人も多いと思います。どのように情勢を捉えるべきでしょうか。
なのなの アメリカも日本も、政治経済の動きが将来どうなっていくかは分かりません。予測しても、実際にどうなるかは誰にも分からない。だからこそ、どんなことが起こっても対応できるよう資金管理をしっかりと行うことが重要だと思っています。
証券口座を使い分けて、自分に合う手法を検証しよう
−「投資を始めてみたい」という人に向けて、最初にアドバイスすることは何ですか。
なのなの まずは口座を開設しましょうということですね。時間がないと言う人も多いのですが、口座を開設してみないことには始まりません。逆に開設さえしてしまえば、後はお金を入れて買うだけ。最初は自分の好きなブランドや、近くにある家電量販店、ラーメン屋など、身の回りの企業の株を買うのがおすすめです。一度買ってみると、その企業の業績や経済についても少しずつ興味が沸くはず。そこから広げていけば良いと思います。まずは1銘柄、2〜3年くらいは持ち続けてみてください。それ以降は、短期が得意な人も、長期が得意な人もいるので、個性に合わせた買い方をしていくのが良いと思います。
−自分の個性に合うやり方を見つけるにはどうしたら良いでしょうか。
なのなの 私自身が実践した、証券会社ごとにルールを変えて銘柄を買い、比較するというのも1つのやり方です。投資はトライアンドエラーが重要なので、まず仮説を立てた上で購入し、半年から1年くらい試してみて、失敗したらまた別のやり方を試していく必要があると思います。
−投資ですぐに成果を出せる人と、迷子になってしまう人の違いは何だと思われますか。
なのなの 仮説検証ができているか、再現性のある投資をしているかというのが大きいと思います。失敗は誰もが必ずします。その失敗を次に活かすことができるかも重要です。また、投資は投資銀行で経験を積んだプロや、MBAを持っている人とも同じ土俵でやるもの。だからこそ、投資の基礎を勉強しなければ損をしてしまうと思います。それが難しいのであれば、無理せず投資信託でインデックス投資を積み立てていくのが良いのではないでしょうか。
−高配当株は減配への不安を持つ人もいると思いますが、どうリスク管理をしていけば良いでしょうか。
なのなの 買う時に業績をしっかり見ることが大切です。基本的に業績が右肩上がりであれば、減配することはほとんどありません。もし、業績が順調であるに関わらず減配されたということがあれば、二度とその銘柄には近づかないことですね。
−メンタルコントロールにおいてのアドバイスや、ご自身が心がけていることはありますか。
なのなの 自分のリスク許容度を超えた投資をしないということです。あくまで、最悪ゼロになってもいいと思えるくらいの範囲内で投資をすることが重要です。後は相場を見過ぎないということです。私は兼業投資家ですし、仕事中は見ません。見ていたところで株価が上がるわけでもないので、ある程度の距離をおくことも大切です。また、SNSでは大儲けしている人がたくさんいて影響されてしまうと思うのですが、他人とは比較せず、自分のペースでやっていくことが大事です。
−日中は仕事をされているので時間を取れないと思うのですが、いつ株価を見ているのでしょうか。
なのなの 基本的には昼休みと帰りの電車でチェックしています。また、時間があるときは、平日21時以降か、休日に銘柄分析をします。最近では勉強会の発表用に銘柄分析を行うこともあります。私にとって投資は趣味の一環であるため、余裕ある範囲内で株価のチェックや分析等を行っています。
−長期で銘柄を保有している中で、手放すタイミングというのはあるのでしょうか。
なのなの 配当利回りが2.5%を下回ったら、売ることが多いです。また、銘柄を買う時に、配当利回りや業績、PERといった「買う理由」というのがあると思うのですが、その「買う理由」が崩れたら売るというルールを決めています。そこはしっかりと記録を取るなどしてロジカルに判断していくのが鉄則だと思います。
−初心者が投資において陥りやすい落とし穴は何だと思われますか。
なのなの 一つは、投資ではなく投機をしてしまいがちになる点です。本来の会社の価値ではなく、値動きの激しい銘柄を売買する。価値ではなく確率に対して投資をしてしまうことも多いかと思います。二つ目は、すぐに売りを考えることが多い点です。少し下がったり、上がったりすると「売った方が良いですか?」と質問がくることが多いのですが、頻繁な売買はあまりお勧めしません。何となく売るのではなく、自分の投資ルールを持ち、それに基づいて売りの判断をする必要があります。一気に儲けようとせず、堅実に、積み重ねていくという意識が大事だと思います。
親子上場銘柄やアクティビストの動きに注目
−現在注目してる投資手法や会社はありますか。
なのなの 親子上場会社のTOBやアクティビストの動きに注目しています。TOBに関しては、最近東京証券取引所などが親子上場の問題を指摘しているため、親子上場を解消し、ある程度のプレミアをつけて完全子会社化する動きが増えています。アクティビストに関しても、日本企業はまだ対策が洗練されていないところがあるので、アクティビストの提言によって増配をしたり、自社株買いをしたりという動きが出やすいです。こういった動きは数年後には洗練されていくと思っています。今だからこそ利益を得られる「市場のバグ」のようなものと考え、注目をしています。
−逆にあまり積極的には投資しない業界はありますか。
なのなの 数字を伴っていない、期待値だけで上がっている銘柄は一歩引いてみています。例えば宇宙やバイオ業界です。量子コンピュータも昨年頃、テーマとしてもてはやされていましたが、実用されるのは早くて2030年頃と言われているため、今から買う必要はあまりないかなと思っています。
−注力していきたいことや、今後の目標を教えてください。
なのなの 私は趣味として投資を行っているので、楽しみながら、仲間作りにも活かしながら兼業として続けていければと思っています。ここ2年くらいで、投資の勉強会などに参加して人脈が広がるようになったのですが、仕事とは違う仲間ができ、また投資という強い共通点があるので、とても楽しみながら活動を行っています投資目標としては、いつかアクティビスト的な動きもできたら良いなと考えています。
−最後に個人投資家へのメッセージをお願いします。
なのなの まず投資を始めることが重要です。今はインフレ等の影響で物価が上がっており、投資をせずに貯金していても増えないどころか実質的には減っていくという状況です。資産のうちどのくらいを投資にまわすのがよいかというと、100から年齢を引いた数のパーセンテージが一つの基準となります。例えば30歳であれば70%は投資、30%は貯金、70歳になったら30%は投資、70%は貯金というのが目安となります。ぜひ若いうちに投資を始めて欲しいです。
また今、大都市圏であれば毎週のように投資の勉強会が行われています。そこで仲間と一緒に勉強していくこともできます。始めは怖いと思いますが、参加しているうちに知り合いも増えて、楽しみながらやっていけると思うので、トライしてみてください。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。