証券会社ディーラーとしてバブル崩壊を経験し、インターネット投資顧問の先駆けとして活躍してきた大岩川源太さん。
独自の「源太カレンダー」はプロ投資家からも愛用され、ラジオや執筆活動でも長年投資家を導いてきました。
本記事では、投資を“心理戦”と捉える大岩川さんが、初心者が学ぶべき基礎から、相場で勝ち続けるための思考法までを語ります。
大岩川源太氏
プロフィール
1981年、大阪の老舗今川證券(現リテラ・クレア証券)入社。個人営業、株式ディーラー、事業法人・金融法人部門等を経験。1997年、今川證券を退社。
1998年、ウェブサイト「ファイナンシャルスクウェア」を立ち上げると同時に、株式会社アセットレボリューションを設立。インターネットの投資顧問として先駆け的存在になる。その後、BS放送の「源太の即効投資戦略」(2004年10月~2006年2月放送)のレギュラー司会を担当。「週刊オリラジ経済白書」などメディアに出演。独特の分析と口調は、日経マネーデジタル「大岩川源太の『株・1WEEK』」、日本証券新聞兜町ネット「大岩川源太の朝の一言」の連載などネットを中心に浸透。毎年制作している「源太カレンダー」は、プロ投資家の間で人気アイテムになっている。ラジオ日経のレギュラー番組は多数あり、「源太緑星株教室」(2022年1月放送終了)に出演のほか、その他の番組でもコメンテーターとして活躍していた。
他人の動きを考え、半歩先に動く
−まずは簡単に自己紹介をお願いします。
大岩川 大学を卒業して、ゼミの先生の紹介で証券会社に入りました。証券論を専門にしている先生だったんです。当時は就職難でしたから、そのままこの世界にずっといることになりました。個人営業、株式ディーラー、事業法人・金融法人部門などを経験し、退社後はインターネットの投資顧問として先駆的だったと思います。その後、新聞社の投資部門と一緒に業界誌「証券新報社」の副社長を務めました。
−投資の世界にずっといて、面白さと大変さのどちらを感じることが多いですか。
大岩川 飽きたことはないので、面白いんじゃないですか。訳がわからないことは多いですよ。現在の市場だって何故上がっているか、判り難い部分がありますよね。どう考えたって真面目に考えたら上がるわけないんだけど、それでも上がっている。難しいし、疲れるんだけれど、でも面白いですね。
−今までで、一番難しかったタイミングはいつでしたか。
大岩川 バブル崩壊の時ですね。ディーラーをしていて、どう考えても売りだろうと思って売っているのになかなか相場が下がらないと思ったら、上司が買っていて、大喧嘩になりました。株というのは心理戦という一面が強いと思うし、間違っていたら謝らなくちゃいけないゲームだと思います。自分が正しいと思わず、他人がどう思っているかを考える。よく自分が考えた通りに下がると思っている人が多いのですが、自分が何を思うかはどうでも良いんです。他人がどう思うか、どう動くかを想像し、人より半歩先に動くことが投資の鉄則だと思います。
−他人の思いや動きをどう予測したら良いのでしょうか。
大岩川 例えば人間は1日の行動というのがありますし、株の運用者は1年の間で必ず株を止める日があります。それは決算の日です。だからその日に向かって、どう動くかを考えるんです。例えばリバランスが30日に来るなら、29日に売った方が良いかとか、1週間前から少しずつ売るのが良いとか、いろいろ考えますよね。
明日暴落すると聞いて、今日売らずに明日売る人はいないと思います。そうやって人の気持ちを読むというのは、その人たちの行動を考えるということです。市場関係者が何時ぐらいに、どういう会議をして、何時ぐらいに終了という一日の動きもそうですし、決算月に向けての動きや、お盆・年末年始といった休みの期間は売る人が減るとか、そういうスケジュールを知っておくと、便利になることが多いです。
−それが毎年制作されている「源太カレンダー」ですね。
大岩川 あれは自分がディーラーをしている時に、細かいメモや計画をカレンダーに書き込んでいたところから始まったんです。何時に注文を出したら儲かった・損したという記録も書き込んでいました。自分の癖を知っておくためです。よく「幾ら下がったら売りますか」と質問されるのですが、それはその人によって違うと思います。1割取る力があるなら、1割損するまで持っているし、それ以上になったら売る。それはその人の癖や能力によって違います。他人の動きを覚えるためには自分の癖を覚えるのが一番です。
分からないことではなく、分かることを考える
−投資初心者が最初にやるべきことは何でしょうか。
大岩川 その商品がどういうものか、どういう風にお金が移動していくのかを覚えるということです。自分が株を買ったらそのお金は証券会社に行って、そこからどこに行くのか。そして、何時ぐらいに外国人の注文が流れるのか、日本の法人の注文は何時に流れるのか、ということは、何時に相場が変わりやすいのか。相場というのはどういうものかを知るべきだと思います。
人には気持ちが揺れる瞬間というのがあって、例えばポイントが10倍だと言われるとポイントのためにいらない商品を買ってしまったりします。そういうことが株の世界でもあって、バイアスや焦りが影響してしまうんです。いかに平常心で動けるか、これが行動ファイナンス理論です。お金のことをちゃんと覚えて、株式市場というのはどういうものかを覚えると、上手く行く確率が高くなると思います。一番の敵は自分です。
−投資が上手くなる人の特徴はありますか。
大岩川 コミュニティを活用して勉強した人は上手くなります。自分が書くためには知らないといけないから、勉強するんです。先生に聞くだけでなく、自分で調べて勉強し、自分の言葉で書けるようになってくると投資が上手くなりますね。
−資産を増やせる人と失敗が続く人の差は何だと思われますか。
大岩川 運と、結果論で長期目線になることです。まぐれで上がったものをすぐ売ろうと思わないで、何でこれ上がったんだろうと考える人は幅を取ることができます。また、買う時期を丁寧に考えながらリズムを作っていくと相場の中の流れが見えてきます。そこに運が重なると、資産が一気に増えます。アベノミクスなどですね。
−今はトランプ政権の動きが見えず、良いタイミングを計りにくいと感じている人も多いかと思いますが、どのように見ていくべきでしょうか。
大岩川 分からないものを考えてもしょうがないと思います。だったら内需でいいじゃないですか。世間では生成AIがどうのと言われているんだから、それを活かす技術を持っている会社が安ければ買う。分からんところを想像してもダメなんですよ。分からないことじゃなくて、分かってることを一生懸命考える方が、上手くなると思います。
−銘柄の選び方のコツはありますか。
大岩川 自分がその会社に就職すると思ったら良いと思います。就職するなら、一生懸命調べますよね。その時に、長く勤めたいのか、短期的に給料が良い会社が良いのか、20年で伸びていく会社が良いのか、それは人によって違います。どういう会社に就職したいのかを考えるのは、どういう将来を送りたいのかを考えるということです。40歳で仕事を辞めたいのか、子どもが大学を卒業する時期に退職したいのか、そういう将来設計をしながら運用をしていくと銘柄が見えてくるし、株の運用も上手になると思います。
−分かった気になっていて失敗する、というパターンもあるかと思います。そういう失敗をなくすため、分かる・分からないの境界線をどう見極めれば良いでしょうか。
大岩川 購入してから覚えたいと思うのであれば、判らない状態でも買っても構わないですよ。株というのは本人が売買を決めるものであり、それは止められないし、株式というのはすべての材料を個人が知ったぐらいが大概天井なんです。みんながノート型パソコンを持つようになったら、もうパソコンの会社の株は上がりきっています。だから、分かるために入って勉強するという局面もあります。ただ1日くらい遅れても大丈夫なのでまずは1回アナリストのレポートを見て、自分が変な勘違いをしていないかどうかは見ておかないといけないと思います。
−SNSの不確かな情報に惑わされないためにはどうしたら良いでしょうか。
大岩川 タダで見れるのに、親切に教えてくれる人なんていないと思った方が良いです。株が下がると書いている人は、すでにその株を売っているか、持っていないかのどちらかです。株が上がると書くのは、持っているから。その人たちの意見を聞いても仕方がないじゃないですか。なぜ相手がそういうことを言っているのか、その行動心理を知るということがプラスになると思います。
−メンタルコントロールの仕方についてはいかがですか。
大岩川 迷っていることと、分からないことをごっちゃにしてしまっているんだと思います。分からないことをやってしまうから、メンタルがブレてしまう。分からなかったら全部売る、そうしたら不安になることはないと思います。
長期的な目線で買い、短期的に売る。まずは一勝を
−ご自身が投資をやる上でやらないようにしていることはありますか。
大岩川 何も決めていないですが、体調が悪かったり、自分がゆっくり落ち着いて考えられない時はやらないです。また現在の市場は不透明感もあり、長期投資できるほど信頼できる相場ではありません。長期投資が良いかどうかは買う位置で決まるので、もっと上がっていくという流れが見える時に買うのが良いと思います。売るのを忘れるぐらいの株がいいですね。じっと見ていたら、株も恥ずかしがって動きません。好業績の株式を、狙っている株式が、何らかの問題が起こり、企業業績に問題が無い時にしっかり買うということですね。
−他に初心者へのアドバイスはありますか。
大岩川 初心者の頃は、長期の目線で銘柄を選択して、上がったら短期で売る。まずはとにかく一勝を作るということが大事だと思います。そして、自分で自分の資産の利回り計算をする癖をつけましょう。自分の資産を毎日見ること。これは絶対にやらなくちゃダメです。自分のお金がいくらあるか分からないというのはダメです。
−今後のご自身の目標は何でしょうか。
大岩川 自分の考えや知識をどう残そうかというのを考えています。自分の知ってる知識は映像に残したり、本に書いたりして、残していくようにしています。また講演にも積極的に赴いて、みんながお金を出して講演を聞きにいくということに抵抗感がないような文化を作っていきたいですね。
−個人投資家へのメッセージをお願いします。
大岩川 とにかく諦めないで欲しいです。なぜなら、自分で勉強せずに諦める人が多いからです。ちゃんと勉強して、ちゃんとやれば絶対勝てます。一生で全てのお金を取り戻すことができるのも、株式投資です。だから諦めずに頑張ってください。応援しています。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。