キュートなペンギンのイラストとやさしい語り口で、投資初心者に圧倒的な支持を集めるYouTubeチャンネル「BANK ACADEMY」。
運営者の小林亮平さんは、「10%下がったら資金の4分の1を投下する」という独自のマイルールを武器に、暴落時でもぶれない投資を続けてきました。
なぜ動じずに資産を積み上げられるのか?
その背景にある考え方と実践法に迫ります。
小林亮平氏
プロフィール
1989年生まれ。横浜国立大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。同行退社後、ブログやSNSでNISAやiDeCoなど資産運用の入門知識を発信。現在はYouTubeチャンネル「BANK ACADEMY」の運営に注力しており、YouTubeのチャンネル登録者数は70万人を超える。「超初心者でも理解できるよう優しく伝える」をモットーに、自作のイラストを駆使した丁寧な解説が好評を得ている。著書に『イラストと図解で丸わかり! 世界一やさしい新NISAの始め方』(KADOKAWA)がある。
元銀行員から投資YouTuberへ─「BANK ACADEMY」誕生のきっかけ
−まずは簡単に自己紹介をお願いします。
小林 三菱UFJ銀行で4年ほど法人営業を行ったのちに独立し、NISAやiDeCoなど資産運用の入門知識をブログやYouTubeなどで発信するようになりました。投資は社会人になってから始め、13年目です。現在、運営しているYouTubeチャンネル「BANK ACADEMY/バンクアカデミー」は79.5万人の方に登録いただいております。
−投資を始めた当初の頃について教えてください。
小林 投資に対して漠然と興味は持っていたのですが、当時はあまり情報がなかったので、投資指南書のような本を本屋さんで買い、元本10万円で日本株の投資信託に投資を始めました。ただ投資については本当によくわかっていないまま始めたので、下がった時にどうするかというのも考えていなかったんです。5000円くらいマイナスになった時、怖くなってしまってすぐに売ってしまいました。
−そこから少し時間を置いて再開されたわけですね。
小林 はい、3年後くらいに本格的に始めました。その時はいちから勉強しようと思って、様々な投資ブログを読み漁り、米国株をおすすめしている人が多いことがわかりました。当時は2016年くらいで、リーマン・ショックからもだいぶ回復傾向にありましたし、日本は人口減少に向かうことが分かっていたので、米国株にシフトしました。
−どのような銘柄を購入されていますか。
小林 基本的にはS&P500や高配当株のVYM(Vanguard High Dividend Yield ETF)などを中心に、個別株ではアメリカのIT企業「NVIDIA」を購入しています。
まずは収入の5〜10%から。「小さく失敗」しながら経験を積もう
−株初心者に向けておすすめの投資手法はありますか。
小林 まずは新NISAを利用していただくのが良いと思います。まずは、自分の余裕資金の範囲内で積立投資を始めましょう。余裕資金というのは、大体自分の手取りの収入の5%から10%ぐらいを指します。月20万円の手取りの人なら、月5000円から1万円ぐらいの資金で、とりあえずS&P500や全世界株式インデックスファンド(オルカン)など最近人気の投資信託に積み立てを始めていけば、そうそう大きく失敗することはないだろうと思います。
−一気に儲けようと大金をつぎ込まないというのがポイントですね。
小林 はい、大金をつぎ込んで大きな失敗をしてしまうというのは、よくある退場例です。投資は、実際に始めて経験値を積んでいくということがもの凄く大事だと思います。暴落局面に直面した時に、失敗という経験値を積むことも大切です。しかしその時に大きな失敗をしてしまうと、取り返せなくなってしまいます。だからこそ、「小さく失敗する」ということを大切に、経験値を積んでいくことが投資家のレベルアップに繋がると思います。最近は相場環境がよく、投資した分だけ高いリターンを得られるんじゃないかと錯覚してしまいますが、注意が必要です。
−米国株はトランプ政権の動きが気になる人も多いと思いますが、どう捉えていますか。
小林 自分は基本的には買ったら持ち続ける「バイ・アンド・ホールド」を徹底しているので、短期的な値動きはそんなに気にしすぎる必要はないかなと思っています。米国は今後も移民の受け入れで人口が増えていきますし、NVIDIAのようなハイテク株は今後も成長を期待できるだろうと思います。今の勢いが続かなくとも、まだ伸びていくとは思うので、あまり一喜一憂しないようにしています。実際に2025年の1月や4月にも結構下がったのですが、その時こそ追加で買うようにしていました。
−チャンスだと思われたということでしょうか。
小林 そうです。自分のマイルールとして、例えば資金が400万あるとして、10%下がったら、資金の4分の1、つまり100万を入れる。さらに10%下がったらもう4分の1、100万を入れるというルールを設けています。そうすると40%の下落までは耐えられるという計算になります。過去にもリーマン・ショックではS&P500が40〜50%下がったので、そこまで下がっても資金が底をつかずにどんどん投資していけるようにルール決めをしています。
−下がった時にどうするか、ルールを決めていらっしゃるのですね。
小林 はい、暴落局面に直面するとどこまで下がるかがわからず、かつての自分のように途中でやめてしまうというのがよくある展開だと思います。そこで感情を入れず、機械的にやっていくことが大事だと思います。
−なぜそのように思考を切り替えられたのでしょうか。
小林 過去のチャートを見た時に、暴落というのはどこかで終わりを迎えているんだなと実感したんです。大きく下がることはあっても、どこかで回復して、その度に最高値を更新し続けてきた。米国株で言えば、過去のチャートで見ても150年間もずっと上昇を続けていて、年間で平均7%ぐらいの上昇実績があるんですね。米国株に投資することは、これまでも報われてきたという実績があります。再現性が高く、今後も堅実な選択肢の一つだと考えています。
−長期運用にあたって、どの程度経済の情報収集をするべきだと思われますか。
小林 日々のヘッドラインのニュースはブルームバーグ、ロイター、CNBCなどでチェックしています。毎日朝起きたらそれらで昨日の米国のニュースをチェックして、日々の経済情報と次のイベントがいつあるのか、利下げが今のところいつになりそうかといったマクロの情報を把握するようにしています。
暴落局面での逆張りが大きなリターンを生む
−自分なりの投資ルールを作るためにはどうしたら良いでしょうか。
小林 とりあえず真似から入る形でもいいと思うんです。うまくいってる人の真似から始めて、自分なりに少しずつアレンジしていくというのが近道だと思います。
−投資で成果を出す人と、なかなか成果が出ない人の差はなんだと思われますか。
小林 投資方針がぶれるかどうかだと思います。せっかく投資のマイルールを決めても、「このまま下がっていったらうまくいかなくなるんじゃないか」と不安に思ってやり方を変えてしまうと、思うようなリターンを上げられなくなってしまいます。インデックス投資の父と呼ばれるジョン・C・ボーグル氏の言葉で「航路を守れ」という言葉があるのですが、自分が決めた航路をきちんと進んでいけるかどうかが成功への分かれ道だと思います。
−大きな成果をあげた人で印象に残っている人はいますか。
小林 米国株での長期投資を行っている人で言えば、何年かに一度訪れる暴落局面の時に、逆張り逆張りで投資をしていったのが大きなリターンを生んできているなというのは実感します。
−長期投資では長い時間軸で投資を捉える必要があると思いますが、なかなか将来を想像しにくいという人もいると思います。小林さんはどのように将来予測をするようにしていますか。
小林 僕のケースだと、人口動態をチェックするようにしています。例えばかつて人口大国だと言われていた中国は、2100年くらいまでに約14億人から半分の7億人まで下がると言われています。一方で、現在人口世界最多のインドは2060年がピークと言われ、まだまだ人口を拡大しています。株と経済成長、株価の上昇はリンクしやすいので、米国株の次にインド株に注目しています。ただ新興国であることに変わりはないので、大きな資金を入れすぎることはなく、コア・サテライト戦略におけるサテライトとして考えています。
−投資におけるメンタルコントロールで悩まれることはありますか。
小林 今は動じることはあまりないです。というのも、コロナ禍で大きな暴落を経験した時、マイルールを実践して逆張りで追加投資を行うことで、大きなリターンを得ることができたんです。その経験から、下がっても感情を入れずに買うことができれば成功できると思えるようになりました。
「かつての自分」を原点に、初心者に寄り添う情報発信を
−活動における今後の目標を教えてください。
小林 YouTubeのチャンネル登録者数100万人を目指しています。今は新NISAも始まって、学生でも3000円から始めましたという人が増えています。初心者にとってYouTubeは情報収集に最適なツールです。だからこそ、これからも「初心者に寄り添う」チャンネル作りを続けていきたいと思います。
−なぜYouTubeで初心者向けに発信しようと思われたのでしょうか。
小林 自分が投資を始めたばかりの頃、失敗しても相談できる人がいませんでした。もしわかりやすくアドバイスしてくれる人がいたら、もっと高いリターンをすぐに得られたと思います。また自分もそうだったように、初心者は下落耐性がなく、含み損を抱えたときの恐怖感は想像以上だと思います。どんなに勉強していても怖いものは怖いというのが本音だと思うので、そういう時に不安解消になる情報を発信していければという思いがあります。わかりやすいイラストを使って解説したり、コメント欄で書き込んでいただいた方には返信するなど、かつての自分のような初心者の皆さんの力になっていきたいです。
−最後に、個人投資家の皆さんにメッセージをお願いします。
小林 今、投資の世界にどっぷり浸かってみて、投資は本当に楽しいなと実感しています。お金が増えていく楽しさもあるし、投資家仲間と出会えるのも楽しいです。また日々の経済情報を見ていても、なぜ今円安なのか、なぜ日経平均株価が上がったのかといった疑問を解消していけるのも面白いところだと思います。ぜひこれからも一緒に、楽しく投資を続けていきましょう。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。