投資を始めたものの「銘柄選びが難しい」「情報が多すぎて混乱する」と悩む初心者は多いはず。
そんな中、前畑うしろさんが行き着いたのは、日経平均株価連動のETF(上場投資信託)でした。
銘柄は日経レバレッジ(ETF1570)と、反対の動きをする日経ダブルインバース(ETF1357)のたった2種類、シンプルな投資です。
リーマン・ショックでの大失敗から学び、「欲張りは最大の敵」をモットーに掲げる前畑さん。
現在はコンビニアルバイト店員として働きながら、ETF投資の魅力を発信しています。
初心者でも安心して始められるETF投資の魅力と、失敗を避けるための心得を伺いました。
前畑うしろ氏
プロフィール
元信用組合職員で、現コンビニのアルバイトが、たったの2 種類のETF投資(日経225オプションではない)を武器に稼いでいる。銀行マン時代の“プロの眼”とコンビニ店員の“アマチュアの眼”、欲張りは最大の敵をモットーに売買している。一騎駆けのような気ぜわしい投資よりもじっくりゆっくり増やしていく方法を得意としている。著書に『ポケットマネーではじめる月1500円のETF投資』『スマホさくさくポイント投資、少額投資』、『ETFで始める、かんたんゆる投資』(ぱる出版)がある。
退場寸前で奮起し、ETF投資に集中
−まずは簡単に自己紹介をお願いします。
前畑 コンビニ店員兼ETFの投資家です。日経平均連動型の2種類のETFのみを専門としておりまして、これまでETFに関する書籍を3冊出版させていただきました。またSNSでの発信や、有料のメルマガ記事の配信を行っています。
−コンビニで働かれているのはなぜでしょうか。
前畑 早起きが得意で、有効に時間を使えればと思い、市場が開く前の早朝3時間、コンビニで働いています。最新トレンド情報がリアルに分かり、投資にも活かされると思っているのと、「コンビニで働いた後、投資や家事をする」という生活リズムが出来ているため、現在も続けています。
−投資を始めたきっかけは何でしたか。
前畑 35歳くらいの時に、図書館で投資の本を読んだのがきっかけです。「月に100万円稼ぐ」というようなタイトルを見て、自分にもできるんじゃないかという安易な気持ちで始めました。始めた当初は知識もないのにキャピタルゲインを狙って、値動きの激しい個別銘柄を購入していました。
−それは利益に繋がりましたか。
前畑 失敗だらけでした。その失敗を糧に勉強すれば良かったのですが、何でも我流で始めたくなる性分なので、専門知識がないまま投資を続けてしまいました。そこでリーマン・ショックを経験し、それほど大した資産もなかったんですけれども多くを失ってしまい、投資の世界から退場するかどうか迷いました。その後、真剣に勉強してもう一回残りの資金で始めようと思い、図書館で見つけたETF投資の本を読んで本格的に始めた結果、時間はかかりましたが少しずつ利益を上げられるようになりました。
−ETF投資のメリットを教えてください。
前畑 私は日経平均に連動して上昇するETF1570と、日経平均とは反対の動きをするダブルインバースというETF1357の2種類を専門にしています。日経平均の上下で利益を上げられるので、個別株と違って各企業の業績を調べる必要もなく、日経平均のことだけを考えておけば良いので比較的簡単に取引をすることができます。1株単位でリアルタイムに売買ができるのもメリットです。時間がない方や、資金が少ない方でも始められるので、ETFは初心者の方にもおすすめです。
−ご自身の投資のルールを教えてください。
前畑 自分にいつも言い聞かせているのは、「欲張りは最大の敵」ということです。調子が良く、利益が出ている時はまだまだ儲かるんじゃないかと思ってしまいがちですが、早めの利確と損切りを心がけています。そもそもこのETFは、変動率が2倍あるということで長期投資には不向きなので、半年や1年など、あまり長く持ち続けないようには注意しています。
−今までの投資の中で記憶に残っている成功体験はありますか。
前畑 去年の8月と今年の4月に暴落がありましたが、リーマン・ショックでの日経平均は結局元に戻るという経験から、暴落はチャンスと捉え、一気に買いました。その時は上手くいったなと思います。
−反対に、一番の失敗談も教えてください。
前畑 個別銘柄をやっていた時は、一発大儲け狙いだったので失敗。また、買ったものが下がった時になかなか損切りできず、ナンピン買い(買い増し)を繰り返していました。さらに信用取引にも手を出したので、底なし沼と言いますか、どんどん損失も膨らみました。ただそこでの失敗があったからこそ、このままではいけないと思い、ETFに切り替え、オリジナルの手法を編み出すことができました。
日経平均4万円を切るまでは何もするな?!
−投資初心者に向けて、最初にアドバイスすることは何でしょうか。初心者が投資でやりがちな失敗はありますか。
前畑 少額から始めることです。私もそうだったのですが、今が安値だと思うと一気に買いたくなってしまうというのはよくある失敗だと思います。十分高値なのに、まだまだ上がるんじゃないかと思ってしまうんですね。株式投資には「買いは遅かれ、売りは早かれ」という格言があります。最初のうちは、買うのは1株から、利益が出たらすぐに売って良いと思います。私自身も、安値と判断して一気に買いたくなることもありますが、そこは自分で決めた買いのルールを基本に、まずは一旦ぐっと我慢してから判断するよう心がけています。
−トランプ政権の関税関連や、ウクライナ・中東情勢の行方、日本では人口減少など政治・経済情勢が相場に与える影響を案じる人も多いと思います。どのように捉えれば良いでしょうか。
前畑 最近でも日経平均が史上最高値を更新し、不景気なのに相場が上がるという不思議な状況になっていますよね。外国人投資家が日本の株式市場をコントロールしているので、外国人投資家の売買動向も気にしておかなければいけないと思います。また、世界情勢で言えば地政学リスクもありますし、トランプ政権の動きもあるので、冷静に見極めていかなければいけません。こういったわかりにくい相場の時は、様子を見て、初心者は下手に手を出さないのも一つですが、今後も世界的なインフレは進み、株価は乱高下を繰り返しながらも右肩上がりに上昇し続けそうなので、少しずつ投資の経験を積むことも必要です。
−前畑さんが今のタイミングで手持ち10万円の資金で投資を始めるとしたら、何をしますか。
前畑 今は上昇相場で今後も株価は上がってくるとは思うんですけれども、ただちょっと過熱しすぎじゃないのかというのが私の個人的な考え方なので、ETF1570は、今のタイミングであれば様子を見て何もしないですね。もちろん日経平均が4万円を切れば迷うことなく買います。一方で日経平均の下落を狙ってETF1357を買うことも検討するでしょう。
−前畑さんは何を見て情報収集をされていますか。
前畑 日経新聞を必ず読んでいるのと、投資関連のYouTubeや、市場の動きをリアルタイムで解説してくれるSTOCKVOICE社の番組などを見ています。
−SNSで不確かな情報に惑わされないコツはありますでしょうか。
前畑 極端なことを言う人は疑った方が良いかなと思います。もちろん豊富な知識を持って発言されていらっしゃると思いますが、参考にはしつつも、丸々信用しない方が良いと思います。
−投資結果を振り返る重要性についても教えてください。
前畑 人というのは勝った時には言いたがるのですが、負けた時には言わず、反省もなかなかできません。でも負けた時になぜ負けたのかを振り返るのが重要だと思います。また様々な情報を仕入れるだけでなく、何事も自分で考えることが大事です。自分で考えなければ、成長しませんから。
−投資で成果を出せる人と、迷子になってしまう人の違いは何だと思われますか。
前畑 最初のうちは、色々なものに手を出す人はなかなか成果に繋がらないと思います。極端な話、個別銘柄なら一つの銘柄に絞ってその銘柄をずっと追い続けるとか、まずは集中して1つのことに取り組む必要があるのと、同時に日々の勉強も必要ではないでしょうか。例えば私と同じETF投資であれば、日経平均のチャートは毎日少しの時間でも見ておいた方が良いと思います。売買はしなくても、関わる時間を持つということが大事です。
−前畑さんが他に習慣化していることは何でしょうか。
前畑 日経平均と2つのETF株価の前日比、騰落レシオ(市場の過熱感を見る指標)を、エクセルに記録を毎日残し、ブログやSNSで発信しています。データも蓄積され続けることに意味があるので、個別銘柄の売買をされる方であれば、気になる銘柄の株価だけでも毎日記録し、データ管理しておくと良いと思います。
−メンタルコントロールについてはいかがでしょうか。
前畑 私も信用取引をやっていた時は、眠れない夜がありました。証券会社から電話がかかってきたらどうしようとビクビクしていた時もあります。その経験を考えると、やはり資金を全部使うというのはやめた方が良いと思います。また利益確定を早くするというのもメンタルを安定させる1つの方法だと思います。私の場合は、メンタルを整えるためにウォーキングや瞑想を取り入れています。
100%勝てる投資を目指して
−今注目されている手法や銘柄はありますか。
前畑 アメリカではビットコインのETFが承認されたと聞いたので、日本でも承認されて売買できるようになれば、やってみたいなという気持ちはあります。ビットコインや暗号資産は、ここ最近では特に注目されていますし、新しい商品は、最初の段階では過熱感があって利益も上げやすく面白いので、興味はあります。
−発信活動の中でやりがいに感じることはありますか。
前畑 メルマガを始めた当初は1人2人しか読者がいなかったのですが、少しずつ増えて、今では200回以上の配信をすることができました。もっと有益な情報を発信できるよう、日々の勉強は欠かさずにアウトプットすることでさらに購読者が増え、SNSで声をかけてくれたりする方がいるとやりがいに感じます。
−今後の目標について教えてください。
前畑 100%勝てる投資術を見つけることです。100%勝てる投資なんて存在しませんが、それでも色々な手法を考えている中で、今の所一定期間で100%の勝率で利益を上げている手法もあります。今後もさらに追求して新しい手法を生み出すことで、最終的には100%勝てる投資に辿り着くことが目標です。また私は色々なことを考えるのが好きなので、最終的には投資で築いた資産でアイデア商品などを作り、社会に貢献したいです。
−個人投資家へのメッセージをお願いします。
前畑 私もそうですが、投資家は自分の投資が正しいと思いがちです。でも同じ株価を見ていても、この先上がるという人もいれば下がるという人もいる。常に自分の意見が正解ではないと意識し、自分と正反対の意見を聞くことをおすすめします。
どんな投資でも、人任せではなく自分で考えなければ実力はつきません。実力をつけて負けない投資ができるようになれば、さらに面白くなり自然と投資力も養われます。まずは投資を楽しみましょう。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。