「積立NISAをしていれば安心」「初心者は長期投資しかできない」
――そう思っていませんか?
しかし今の時代、長期投資はむしろ“環境依存でギャンブル化”していると指摘するのは、投資スクール「投資の学校プレミアム」を運営する高橋慶行さん。
未経験の人でも無理なく始められる短期トレード手法や、短期投資のメリット、長期投資のみでは危険な理由など、お話を伺いました。
高橋慶行氏
プロフィール
宮城県仙台市生まれ。
成蹊大学経済学部卒業。投資の学校グループ代表。世界基準の本物の投資教育と最高の学びの環境を提供することをビジョンとし、投資教育に関するプロジェクトを複数主催する株式会社ファイナンシャルインテリジェンス代表取締役。
教師一家に生まれ、日本人にとって必要な教育事業を作ることを目標にして、学生時代を過ごしながら、学生起業を経験。
社会人となり、リクルート関連会社で新卒採用に関する営業を経験し、トップセールスマンとして表彰をされ、その後独立。
人生を豊かにするために必要でありながら、学校ではわからない総合的な教養を提供するうえで、自らも起業経験が必要と感じ、2008年、起業。
2013年10月、投資教育の必要性を強く感じ、株式会社ファイナンシャルインテリジェンスを設立し、2014年「投資の学校」を開校。
2019年時点、正しく投資教育の学習環境を用意し、累計12万人以上の一般投資家に対して、株式、FX、信用取引、オプション取引日経225先物、米国株などの授業を提供している。
1日3分でできる、「波動」をとらえる短期トレード
−まずは簡単に自己紹介をお願いします。
高橋 20歳の時に学生起業し、会計事務所や税理士事務所を紹介するフリーペーパーを制作する過程で、様々な税理士さんと知り合い、税金や税務について詳しく知るようになりました。その後、リクルート社にて経験を積み、2008年に独立。自営業をする中で税金の高さを実感し、分離課税で済む投資という収入源に興味を持つようになりました。ちょうど2013年にアベノミクスが始まったこともあり、今後日本で投資ブームが来ると考え、仲間と共に投資教育に関するスクール「投資の学校プレミアム」を創業しました。現在は累計15万人以上が学ぶ学校に成長しています。また自分自身も現役の投資家として投資を行い、SNSを中心に情報発信を行っています。
−投資は何から始められましたか。
高橋 日本株とFXから、100株ずつ始めました。当時はアベノミクスで株が稼ぎやすかったので、徐々に利益が積み上がっていきました。「投資の学校」では様々な投資のプロに講師として参加してもらっているので、自分もプロの投資手法を学びながら試していき、自分なりの手法を確立していきました。
−投資で成功できた理由は何だと思われますか。
高橋 トレードルールを自分で持ったこと、自分のライフスタイルに合った投資スタイルを確立したことです。経営者としての本業が忙しい中で、その傍らでも利益が得られる投資スタイルを見つけられたのが大きかったと思います。
−高橋さんの投資手法を教えてください。
高橋 トレンドより短期的な「波動」単位で利益を取っていくという短期トレード手法で、1日3分あればできます。トレンドは明確な転換シグナルが出るまで続くというダウ理論の法則を元に、上昇トレンドの中にある上げ波動・下げ波動を見極めます。僕自身が編み出したルールがあり、インジケーターを使うと生徒さんも同じような取引をできるようになります。始めて1〜2ヶ月で10〜150万円稼ぐ人もいるほど、再現性が高い手法です。50〜60歳から初めて投資をやるという人でも結果を出せています。僕の成績もSNSで公開しているのですが、1日単位で株だと50〜100万円、FXでも10〜50万円の利益を出しています。
アメリカ経済の暴落リスクにどう備えるべき?
−投資ですぐに成果が出る人と、なかなか出ない人の違いは何だと思われますか。
高橋 素直に、言われた通りに売り買いができる人はすぐに成果が出ます。どんなに教えても、自分なりの方法で買ってしまうとやはり結果が出ないですね。そういう人は、なぜ注文したのかを聞くと「上がりそうだと思った」と答えます。なぜ上がりそうだと思ったのかを問うと、「何となく」と言うんですよね。感覚的に「上がりそう」だと判断するのではなく、明確なルールに基づいてロジカルに判断できるかどうかが成功の鍵を握ると思います。
−トランプ政権の動向や、アメリカ経済の今後についてはどう捉えていますか。
高橋 アメリカ政府の債務はもう回復できないくらいまで拡大しています。今は自国でその債務上限を引き上げながらなんとかしていますが、いつまでも延命はできません。その限界が来ると、究極の暴落が来る可能性があるため、動向を慎重にチェックしていかなければいけないと思います。また世界的には戦争の動きも加速しており、戦争の影響によって株式市場が混乱する可能性もあると思います。
−長期で米国株を保有している人はどう対応するのが良いでしょうか。
高橋 短期トレードに寄せて行った方が良いと思います。株はポジションの保有時間が長ければ長いほど、うまくいくかどうかは環境に依存します。先が読めなくなってきている以上、長期投資はギャンブルに近くなっていきます。一方で短期投資は自分のスキル次第なので、自分で管理ができる短期トレードに投資スタイルをシフトしていくべきだと思います。
−インド株など国を変える方法も良いでしょうか。
高橋 インドは2040年から2050年くらいまで人口が伸び、経済が成長し、インフラが充実していくと言われています。その分、企業の業績は上がり、株価が上がっていくと思います。とは言えまだ大きな利益を得られるまでには時間がかかるので、インドに投資をしていれば安心ということでもないと思います。
インドにどのくらい投資するべきかは、その人の人生プランによっても変わっていきます。何年後に定年退職するのか、今いくら持っていていくら増やしたいのか、東京に住んでいるのか、地方に住んでいるのか。それぞれの現状とプランに合わせて、1人1人が戦略を作っていく必要があると思います。
−未来が見えにくい今、投資で大事な考え方は何だと思われますか。
高橋 僕が教えているのは、月収を稼ごうという考え方です。受講生たちは投資資金として用意した分の10〜40%は毎月安定して利益が出ているので、100万円ぐらい用意できると、月20万から30万ぐらい稼げています。毎月20万から30万稼げていると、生活に対する安心感が変わりますよね。10年後20年後にどんな未来になるか分からないからこそ、月々稼ぐスキルを優先した方が良いんじゃないかというお話をしています。
−積み立てNISAをしていれば安心、という時代ではないということでしょうか。
高橋 例えばこれまでのアメリカでいうと、人口が増えて経済が成長し、政府が市場にマネーを投下する戦略をとったことで数十年株が上がり続けてきました。今はコロナ禍の影響で過剰にマネーがあるため、その条件が外れた今でも上がっていますが、これはバブルでありいつか崩壊すると思います。
トランプ政権の政策の1つに移民の排除というものがあり、実際に移民の人口は減少しています。これが続くと他の先進国と同様に少子高齢化になるので、企業の業績も下方修正になる可能性があります。業績の下方修正によって、株価が急落するリスクも高まります。
世界恐慌時は、上昇に転じるまで20年もの月日がかかりました。もし10年下落相場が続いたら、どんなに積み立てNISAをしていても2000万円満額をもらえる保証はありません。5年後に定年退職を迎える人が、10年の下落に耐えられるでしょうか。そういうことも含めて、皆が自分の人生と向き合わなくちゃいけない時期が来ているのだと思います。
損切りラインを決めれば短期投資は怖くない
−短期投資はプロが強く、初心者は手を出さない方が良いと思っている人も多いかと思います。
高橋 それはやり方を知らないだけだと思います。プロと同じレベルまで投資を知る必要はなくて、トレンド全体を狙わずに上げ波動・下げ波動という細かい単位で狙っていくのであれば、早くて1ヶ月から数十万円稼げる事例が出ています。
−短期投資はメンタルコントロールが難しいという印象もあるかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
高橋 短期の方が損失を管理しやすいという点では、メンタルもコントロールしやすいと思います。
例えば、宝くじは当たるかどうかのギャンブルですが、年末ジャンボを1万円買うと決めて、買うのが怖いと思う人はあまりいないと思います。なぜなら、1万円という金額を決めてやっているからです。
もし宝くじ自体は無料でも、氏名・電話番号・住所・免許証のコピーを求められ、最大1億円のハズレもあるとしたらどうでしょうか。一気に怖くなりますよね。
トレードにおいても、どんどん負けていくというイメージがあるから怖いのだと思うのですが、短期投資であれば損切りラインを決めることができます。1万円に設定すれば、1万円以上損することはありません。長期投資に損切りラインはないので、逆に短期投資の方がメンタルコントロールもしやすいと思います。
−自分のライフスタイルに合うやり方はどのように見つけていけば良いでしょうか。
高橋 僕は日足というローソク足の単位で取引するのをおすすめしていて、1日1回はローソク足をチェックしてほしいと思います。1日に1分でも2分でも良いので、日足をチェックして、持ってて良いか、手放すかどうかを判断します。その時間を確保できるのであれば、僕が教えている短期投資の株をやれば良いと思います。
一方で、日給が欲しいという人は1日1時間から2時間、パソコンに張り付いて、FXとかでデイトレードをやるのが良いと思います。
−高橋さんの手法ではどのくらいの期間、株を保有することになりますか。
高橋 3日から10日ぐらいで1波動が大体終わっていくので、3日から10日間の保有になります。投資のリスクというのはポジションを保有している時だけなので、本当に心配性でリスクを負いたくない人はより短いデイトレードになるかなと思います。
インフレ時代に注目すべき「ゴールド」の価値
−ご自身が投資をする上で大切にしていることは何でしょうか。
高橋 トレードルールを守るということ。買うタイミング、損切りするタイミングを、ルール通りやるということです。また二日酔いなど判断軸がブレないときにやることですね(笑)
−失敗談はありますか。
高橋 7年くらい前、健康診断に行っている間に500万くらい損失を負ったことがあります。前日までに1000万円の含み益のある銘柄があったのですが、朝起きた時に100万円くらい損失があり、健康診断の会場で身長を測ったら50万円損失が増え、視力を測ったら50万円損失が増え、問診を終えたら全部で500万円の損失になっていました。健康診断どころではなかったです(笑)。ただ余裕資金の中で行っていて、破産するような勝負はしていないので、大きく落ち込むことはありませんでした。
−今注目しているものは何でしょうか。
高橋 ゴールドは良いと思います。世界の歴史はインフレの歴史なので、インフレは今後も加速していくと思います。そういう時に伸びる銘柄の一つがゴールドです。株は5年10年20年単位で落ちることがありますが、ゴールドはインフレと共に緩やかに上がり続けると思うので、保有しておくと良いと思います。
−どのくらいの割合で持っておくと良いと思われますか。
高橋 月収には繋がらないので、資産形成の預貯金に置いておく部分の一部、半分でも良いですし、生活費で2年ぐらいの生活費を現金で保有しておいたら、それ以外はゴールドでもいいかもしれません。そこは人によって判断が異なると思います。
−今後やっていきたい活動や目標について教えてください。
高橋 ここ6年ほど、毎年1冊の本を出版しているので、それは続けていきたいなと思います。また、専門家同士でのコラボを増やして、正しい投資教育を広めていく活動をしたいです。
最近は投資詐欺が増えていて、それに騙されるぐらい、リテラシーが伴っていない人もすごく多いです。それぞれの形で発信するだけでなく、専門家同士が協力していくことで、発信を強めていく必要があると考えています。
また、時代のトレンドとして物価高や消費税など、手取りが減る方向に世の中が傾いているので、手取りが増えるような活動をしなくちゃいけないと思います。起業や副業は簡単ではありません。一方で投資は、しっかりと方法を学べば、自分1人で完結する収入源であり、時間も場所も自由です。投資スキルを多くの日本人が身につけられるように活動をしていきたいです。
−最後に、個人投資家へのメッセージをお願いします。
高橋 これからの時代は、政府にも勤め先にも、ある意味では家族にも頼らず、本当に自立した収入源とそれに準じたスキル・知識を身につけておくべきだと思います。プロのように詳しくなる必要はありませんが、戦争や政治など含めて、世界で何が起こってるのかという教養を知っておき、自分の判断で自分の道を歩めるようにしておかなければいけません。それをしっかりと身につけられそうな環境を騙されずに見極め、教えてくれる人の元で一定期間努力して頑張る必要があると思います。ぜひ一緒にスキルを身につけていきましょう。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。