兼業投資家として15年間、日本株と米国株を軸に投資を続けてきた損切り抜刀斎さん。
大学時代に株主優待目当てで始めた投資は、デイトレードでの大損やSNS情報への安易な乗っかりなど、多くの失敗を経て磨かれてきました。
300冊以上の投資本を読み、トレード日誌でPDCAを回し続けた結果、FIREのFI(経済的自立)を達成。
現在はSNSやコミュニティで投資情報を発信しています。
「退場しないこと」を最優先に、成果を出せる投資法や初心者が陥りがちな落とし穴について伺いました。
損切り抜刀斎氏
プロフィール
兼業投資家で投資歴は15年(日本株・米国株メイン)。SNSの総フォロワー数は約2.5万人にのぼる。YouTubeや投資系SNSのポストプライム(グロース市場上場)で活動。ポストプライムではアワード受賞。公式MCも経験。
300冊の投資本から学んだ「期待値があるところに投資」の鉄則
−まずは簡単に自己紹介をお願いします。
損切り抜刀斎 普段は会社員として働いている30代で、兼業投資家として投資を行っています。メインは日本株の個別株と、インデックス投資です。FIREのうち、FI(経済的自立)を達成しており、SNSで株に関する情報発信を行っています。SNSの総フォロワー数は約2.5万人です。
−株を始めたきっかけは何でしたか。
損切り抜刀斎 祖母が大暴落の時のみ買うという極端なスタイルで投資を行っており、家に証券マンが来たり、儲かった時に祖母から自慢されたりして、株が身近な存在でした。関西出身なのですが、大学で関東に出て来た時、実家に帰る際に安く航空券を買える株主優待目当てで、ANAの株を購入したのが始まりです。
−そこからすぐに成功されたのでしょうか。
損切り抜刀斎 いえ、大学生の頃はお金もないですし、細々と続けていました。20代前半は、短期投資のデイトレードで典型的な負けパターンで失敗して、大損害ということもありましたし、SNSでおすすめされていた銘柄をそのまま買って損をするなど、初心者が陥りがちなミスを一通り経験しました。
そこから「このままではまずい」と思い、合計で300冊くらい、投資の本を手当たり次第読み漁って勉強しました。また自分でトレード日誌をつけ始めたのも大きかったと思います。なぜこの銘柄を買ったのか、どういう状況になったら損切りをして、どうなったら利益を確定するのか、自分の中のルールを明確化し、PDCAが回せるような環境を作ることで、段々と勝てるようになりました。
−投資本を300冊読む中で共通項は見えて来ましたか。
損切り抜刀斎 期待値があるところに投資をしろ、というのは共通していたので、チャートやファンダメンタルズ、決算書を見て、自分なりに期待値あるようなところってどこなんだろうと考えるようになりました。
−現在のポートフォリオを教えてください。
損切り抜刀斎 これは初心者の方にはおすすめしませんが、現金比率は2%で、98%を株に投資しています。そのうち、インデックス・高配当株・バリュー株の3分割でポートフォリオを組んでいます。最初は30%が株、70%が現金という状態から始めましたが、勝てるようになってからは銀行にお金を置いておくのがもったいないと感じ、徐々に現金比率が減っていきました。また年齢的に若いということや、仕事もしているということで、リスクを取れる現金比率の低いポートフォリオになっています。
−高配当株に投資されている理由は何でしょうか。
損切り抜刀斎 今の生活を良くするという意味合いで投資しています。インデックス投資は将来の自分の充実のためで、インデックス投資したからと言って今月現金が入ってくるわけじゃないですよね。高配当株は逆に現金が入ってくるので、あまり再投資はせず、家族と美味しいご飯を食べに行ったり、旅行に行ったりと、今の生活を充実させるために使っています。資産を最大限に増やしてFIREするのが目的という人は高配当株をやらなくても良いと思うのですが、僕はある程度資産が増えてきたら、今の生活を充実させる方向でも投資を行い、人生を楽しくするやり方もあるんじゃないかなと思います。
企業分析に使える意外なツールは転職サイト?!
−投資初心者に最初にアドバイスされることは何でしょうか。
損切り抜刀斎 まずは退場しないことです。とりあえず相場に生き残っていれば、いつか勝ち方を見つけられますが、退場してしまっては意味がありません。なので、まずは退場しないことを最優先に動いてください、ということをお伝えしています。
具体的に言えば、レバレッジをかけて投資をしない、損切りする基準を決めておく、といったことです。経済が成長していく限りは株価の上昇が期待できるので、まず退場しない事が最優先だよとお話しています。
−日本株・米国株・オルカン(オール・カントリー)など様々な選択肢がある中で、どれから始めるのが良いでしょうか。
損切り抜刀斎 目的によりますが、株にあまり時間が割けないということであれば、オルカンを買っておくのが無難だと思います。もう少し株を勉強したい、“億り人”を目指したいということであれば、日本株が良いと思います。
米国株より日本株をおすすめする理由としては、情報収集の優位性の観点です。株は安く買って高く売らないと儲からないものですよね。米国株の対戦相手が世界中のプレイヤーになると考えた時、対戦相手よりも上回らなければ安く買って高く売ることは出来ません。米国株の決算資料はもちろん英語です。私自身は海外駐在経験があり、英語は読めますが、それでもネイティブと比べるとやはり情報収集能力も違うなと感じます。そう思うと、情報収集の観点から優位性がある日本株の方が良いんじゃないかなと思います。
−情報収集の優位性という点でいくと、普段愛用している商品の企業が良かったり、自分が務めている会社と同じ業界の方が良かったりしますか?
損切り抜刀斎 愛用している商品の企業は、例えば悪い決算が出たり、ビジネスモデルが激変するようなことが起きたりしても、好きだからこそ損切りできないということが起こりうるので、あまりおすすめしていません。
勤めている会社の業界というのは良いと思います。自分のよく知る業界であれば、他の日本人よりも詳しいでしょうし、その製品がどのくらい儲かるかという予想の精度も他の素人の人と比べると違ってくると思います。
−業界について学ぶために使われているサイトはありますか。
損切り抜刀斎 実は、転職サイトの口コミを活用しています。転職サイトでは転職者に向けて企業の強み・弱みが記載されていますし、口コミの中には企業の裏事情や、ビジネスの現状など、ディープな情報が書かれていることが多いんです。転職したい人の声なので、ネガティブな声に寄りやすいという注意点はありますが、良い情報源として重宝しています。
−日本は今後、人口減少していくため、日本企業に成長が見込めないのではないかと懸念を持つ人もいますが、どう捉えていますか。
損切り抜刀斎 そうですね。なので銘柄や業界の選定は結構シビアにしないといけないというのはあると思います。ただ例えばガラス関連の業界とかもそうなんですけれど、廃業する企業が多いからこそ、続けているガラス企業は業界シェアが増えたり、値上げも容易にできたりして、意外に決算が良いという銘柄もあります。人口減少=日本の銘柄はダメだと考える必要はないのではないかなと思います。
−良い企業を見つける秘訣はありますか。
損切り抜刀斎 僕は好奇心が旺盛なので、何でも挑戦したり、知ろうとしたりするんです。そういう「株オタク」な側面は大事かなと思います。今はYouTubeなど情報が充実しているので、投資家のレベルもめちゃくちゃ上がっています。だから株オタクになれないと、勝てない相場になっていくのかなと思います。
「増収増益・好決算=買い」短絡的な判断に注意!
−投資初心者が陥りがちな落とし穴は何だと思われますか。
損切り抜刀斎 好決算=買い、素晴らしいビジネスモデルを持っている=買いという判断はあるあるなミスだと思います。よく“増収増益で上方修正・増配しました。この株は買いです”と言う人がいますが、好決算だったとしても、株価が上がり過ぎていたら、投資判断としては売りになるんです。好決算でも注意深く決算書を読み込み、妥当な株価水準を考慮して投資判断をする必要があるんです。好決算だからと短絡的な判断で買ってしまうというのは初心者にありがちな失敗だと思います。
−SNSの短絡的な情報に惑わされず、良い情報を見極める方法はありますか。
損切り抜刀斎 YouTubeなどは手軽で見やすいと思うのですが、残念ながら株で稼げていないからSNSで稼いでいるという人もいます。そういう情報だけを見るのではなく、ベストセラーの投資本をいくつか読んでみると、共通して正しいことが書いてあるので、そういう王道の投資本を読んで学んでいくのが良いと思います。
−トランプ政権の動きや、日本の参院選など、政治の動きを不安に思う人もいると思います。どのように株への影響を捉えたら良いでしょうか。
損切り抜刀斎 確かに新NISAで株を始めた人は、いきなりトランプ政権の関税の値動きが来て、驚いている人もいると思います。ただトランプ政権の動きに関しては、心配する必要はないと思います。なぜならトランプさんはアメリカ大統領であって、大前提としてアメリカ国民のために動いているからです。一時的にマーケットの乱高下はあると思いますが、最終的にはアメリカのためになると思いますし、間違いだったとしても4年後には大統領が代わるので、長期的に見れば心配する必要がないと思います。
参院選に関してはもっと心配する必要はなくて、僕は霞ヶ関や永田町の方とも情報交換をしているのですが、良くも悪くも日本の政治ってそんなに影響力がないです。、なので短期的に株価が下がることは合っても、中長期的には問題ないと思います。ただ自民党が過半数割れし、国策銘柄に向く予定だった予算が相対的に減ってしまう可能性もあるので、国策銘柄を多額入れている方は注意した方が良いと思います。
−投資で成果を出せる人と迷子になってしまう人の違いは何だと思われますか。
損切り抜刀斎 自責思考の人は伸びると思います。投資に限ったことではないですが、例えば損した時に、「あのYouTuberが言ったから負けた」と他責思考になってしまう人よりも、「それでも判断したのは自分で、こういう理由で買う判断をしたけれど、ここが悪かった」と分析し、PDCAを回せる人の方が成果を出せます。僕が運営しているオンラインコミュニティには投資での資産1億円を超えている人も何人もいらっしゃいますが、自責思考で、自分でPDCAを回せる人ばかりです。
−PDCAを回すためには、記録をつけていくというのも大切ですか?
損切り抜刀斎 必須だと思います。僕の知る限り資産1億円を超えている人で、記録をつけていない人はいないです。記録方法は様々で、日記のような形で手書きで書いている人もいれば、ブログでやっている人もいますし、日記の代わりにXでポストしている人もいますし、僕はExcelで管理しています。何かしらの形でアウトプットしなければ、PDCAを回せないんじゃないかなと思います。
−メンタルコントロールに関してアドバイスはありますか。
損切り抜刀斎 人によるので一概には言えないんですけれども、共通して言えるのは「とりあえず寝ろ」ということです。人間は寝るとストレスに感じていることを忘れようとしてくれますし、相場とも距離を置くことができます。僕もいまだにメンタルが崩れているなと感じたら、お昼休みにお昼寝を10〜20分して、相場に挑むようにしています。
勝てる手法もいつかは使えなくなる。日々変化・アップデートを
−投資をする上で大事にされていることは何でしょうか。
損切り抜刀斎 変化することです。特に短期投資の手法は3〜4年で変わってきています。今勝てる手法があったとしても、いつか使えなくなるかもしれないことを常に見越して変化をすることを日々心がけています。新しい手法を試してみたり、今勝てる手法は本当に継続的に勝てるのかを確かめたりするためにも、収益記録をつけておくのが大事だと思います。
−やらないようにしていることはありますか。
損切り抜刀斎 たくさんありますが、絶対にやらないのは、自分の資産以上にレバレッジをかけて投資をするということです。僕は「豆腐メンタル」だということが自分で分かっているので、自分の資産以上にはロットを張らないというのを自分の売買ルールとして決めています。
−今注目している投資手法はありますか。
損切り抜刀斎 小型バリュー株投資が熱いと思います。小型株は機関投資家が入れないので、適切な株価になっていない、割安になっていることも多いです。またバリュー株はアクティビストがどんどん入ってきて、改善要請が入ってきているので、ここ数年グロース株に比べてパフォーマンスが良くなってきています。そのため、小型バリュー株投資というのが最近は注目だと思います。僕は理論株価上で2倍ぐらいの株価の上昇が見込める銘柄を候補として選んでいます。
−ご自身の活動においての今後の目標を教えてください。
損切り抜刀斎 今運営している株のコミュニティを大きくしていきたいです。コミュニティにはたくさんの株オタクが集まっていて、日々情報交換を楽しんでいます。それが生きがいになってきているので、どんどん輪を広げていきたいです。「損切りさんのおかげでめちゃくちゃ儲かりました」と言われると、自分の利益よりも嬉しいですね。
−個人投資家に向けてのメッセージをお願いします。
損切り抜刀斎 正直、9割ぐらいの方はインデックス投資が向いていると思います。安易に個別株に手を出して失敗する人が増えないように願っていますし、株オタクになれる覚悟がない限りは個別株はやらない方がいいんじゃないかなと思っています。本気で勉強したい方は、ぜひ僕が運営しているコミュニティにも遊びに来ていただけたら嬉しいです。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。