こんにちは、インテク事務局です。
今回の特集記事では、全9回にわたって「資産運用」について解説します。
【資産運用のキホン①】「お金の3大機能」とは?資産運用のキホン
【資産運用のキホン②】「預金」と「貯金」の違いって?知らないと損する預貯金の歴史
【資産運用のキホン③】トマ・ピケティ著「21世紀の資本」の本はなぜ売れた?資産運用の重要性
【資産運用のキホン⑤】「時間と投資」の関係とは?「ドルコスト平均法」も解説
【資産運用のキホン⑥】資産運用にライフプランとPDCAサイクルが重要な理由とは
【資産運用のキホン⑦】今日の100万円は将来いくらになる?お金の時間的価値とは
【資産運用のキホン⑧】日本の証券取引所はなぜ誕生した?日本の発展にも影響
【資産運用のキホン⑨】投資信託はなぜ世界に広まったのか?その歴史と仕組み
世界各地、そして日本でも、社会における格差の問題は深刻なものとなっています。
「いくら働いても、ジリ貧から抜け出せない…どうして!?」
「格差はどうして無くならないの?」
このようなことを考えたことはありませんか?
フランスの経済学者トマ・ピケティが発表した著書「21世紀の資本」では、そのような疑問に対する答えが示されています。
ピケティが示す資本主義社会における問題を理解すると、資産運用の重要性が浮き彫りとなってきます。
今回はピケティの「21世紀の資本」の内容について、分かりやすく解説します。
トマ・ピケティ「21世紀の資本」とは
トマ・ピケティは、1971年生まれのフランスの経済学者です。
2013年に発表された著書「21世紀の資本」は、世界的に大きな注目を集め、日本でも13万部を突破するベストセラーになりました。
5,000円以上もする分厚い専門書でありながら、ベストセラーとなった理由はなぜなのか、詳しく見ていきましょう。
世界で深刻化する格差問題
「21世紀の資本」では、膨大な統計データをもとに、格差と再分配の問題が考察されています。
世界各地で、国の状況や経済政策などさまざまな要因によって格差が広がっていることは、よくご存じのことだと思います。
米欧諸国では一部の富裕層と一般階層の所得格差が拡大し続けており、経済成長が著しい中国やインドでも格差は深刻な問題となっています。
バブル崩壊後に長く不景気が続いている日本でも、非正規社員が増え低所得の労働者が増加するなど所得格差が問題となっているのです。
拡大する所得格差によって、母子世帯の貧困や、都市と地方の経済格差、低所得の子供が十分な教育を受けられない教育格差など、格差は広がる一方です。
「R(資本収益率)>G(経済成長率)」
このような格差問題は一般的に、資本主義社会における経済成長によって解決すると考えられてきました。
「お金持ちがさらにお金持ちになれば、そのお金がしたたり落ちるように貧しい人にも届く」という「トリクルダウン」の考え方は、第2次安倍内閣で掲げられた経済政策「アベノミクス」を支えていました。
しかしピケティは著書において、実は「資本主義社会において、経済格差は広がる一方だ」ということを示しました。
それが「R(資本収益率)>G(経済成長率)」という不等式です。
これは「資本主義社会において、資本収益率は経済成長率よりも常に大きい」ということです。
少し難しいですが、どういうことかというと、「資本(資産)によって得られる富は、労働によって得られる富よりも早く成長する」ということです。
つまり、もともとお金があり資産運用によってお金を増やす人のほうが、労働によってお金を増やそうとする人よりも裕福になるということですね。
ピケティは18世紀までさかのぼってデータを分析した結果、「R(資本収益率)」が年5%程度だったのに対して、「G(経済成長率)」は1~2%程度しかなかったと主張しています。
「累進課税型の富裕税」の導入を提案
ピケティはこのままでは格差が拡大し続け、いずれは中産階級が消滅してしまうだろうと指摘します。
今後の対策としてピケティは、累進課税型の財産税や所得税を世界的に導入し、資産を再分配することを提案しています。
つまり政府が富裕層への税金対策を見直すことで、一部のお金持ちがお金を独占しすぎないようにして、貧しい人たちをサポートしましょうということですね。
まとめ
トマ・ピケティ著「21世紀の資本」は、資本主義社会における格差と再分配の問題に切り込み、大きな注目を集めました。
普段は経済の専門書を読まないような一般の人にも読まれ、ベストセラーとなった理由は、格差社会に疑問を感じる人の興味を惹く内容であったからでしょう。
「経済成長すれば、みんなが豊かになれる」と信じていたのに、生活が改善していると実感できていない人が世界中にいるのです。
日本でも、世界有数の経済大国へと成長したのに、なぜこんなに生活が苦しいのか…と感じている人も多いでしょう。
ピケティは、累進課税型の富裕税など政府の政策による解決を提案しています。
政府にも期待する一方で、個人としてより多くの資産を築くために、労働だけでなく資産運用の重要性にも注目する必要があるでしょう。
次回は資産運用におけるポートフォリオの重要性について解説します。