ファイナンシャルプランナーとして20年、講演・執筆・相談を通してお金の知識を伝えてきた高山一惠さん。
株式投資での失敗から学び、投資信託の積立や高配当株など、リスクコントロールを行いながら投資を行う大切さを説いています。
女性ならではの生活者視点や趣味を活かした銘柄選びのポイント、初心者が陥りやすい落とし穴、長く続けるためのルールなど、投資を「怖い」から「楽しい」に変えるヒントを語ります。
高山一惠氏
プロフィール
ファイナンシャル・プランナー(CFP)/Money&You取締役
中央大学商学部客員講師。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後現職へ。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「マンガと図解 はじめての資産運用」(宝島社) 、「50代から考えるお金の減らし方」(成美堂出版)など書籍100冊、累計190万部超。1級FP技能士。住宅ローンアドバイザー。
お金遣いの荒かった私が、FPになった理由
−まずは簡単に自己紹介をお願いします。
高山 ファイナンシャルプランナーとして20年、活動をしており、一般の方に向けて講義・執筆・相談業務を通してお金の知識をお伝えしています。現在は株式会社Money&Youの取締役を務めています。
−ファイナンシャルプランナーという仕事を選ばれたきっかけは何でしたか。
高山 実は私は元々お金遣いが荒い方で、ある時、友人からファイナンシャルプランナーの講座を受けてお金について学ぶと良いとアドバイスされたんです。そこで講座に行ってみると、意外に面白さを感じました。実際に勉強して自分の家計管理や保険の見直し、投資などを行っていくと、お金を貯めることができて、自分にも出来るんだと驚きました。この先の人生を考えた時、お金は人生において切っても切れない関係があるなと思っていましたし、まだ世の中に一般の人に向けてのお金を伝える仕事というのは少なかったので、ファイナンシャルプランナーの仕事を選びました。
−投資を始めてから、すぐに結果は出ましたか。
高山 当時はITバブルで株式投資が話題だったので、日本株の株式投資から始めました。ただ本当に素人だったので、感覚で株を選んでいたんです。社長がイケメンだからとか(笑)、マネー雑誌で専門家がおすすめしていたからだとか。そこで軒並み失敗しました。痛い目を見ながら1年くらいかけて勉強していって、少しずつ成果が出るようになりました。
−現在のポートフォリオを教えてください。
高山 投資信託の積立投資をベースにしながら、個別株やFX、仮想通貨、ゴールド、不動産投資などを行っています。
デパ地下で行列しているお店など、身近な企業を選んでみる
−初心者におすすめの投資手法は何でしょうか。
高山 最初は投資信託でコツコツ積み立てすることをおすすめします。再現性がありますし、誰もがやりやすい方法だと思います。毎月投資する日程と金額を決めて、インデックスファンドで積み立てる。まずはここから始めてみてください。ただ投資信託積立は安定しているのですが、ほったらかしにしていていつまでも勉強しない・成長しないという人も多いです。そのため、少し慣れてきたら個別株をやって勉強をしていくと良いかなと思います。
−個別株はどんな株を買ったら良いでしょうか。
高山 最初は身近にある企業の日本株を買うのが良いと思います。例えばデパ地下で行列しているお店や、愛用しているコスメブランドなど、日常で情報をキャッチしやすい企業です。実際にお店に訪れていると、肌感覚で繁盛しているかどうかや、何で人気なのかを掴むことができますよね。この感覚は投資でも非常に役立ちます。
−短期・長期投資はどちらがおすすめですか。
高山 基本的には、初心者の方は長期投資が大事かなと思います。短期的に見ると、投資というのは暴落局面が来るものです。そこで一喜一憂していると身が持ちません。業績がよければ株価は戻るので、長期的に、年単位でゆっくり投資をするのが良いと思います。
−長期投資でも、ほったらかしにせず、定期的に見直しが必要ですよね。
高山 そうですね。個別株であれば月に1回くらいは、投資した企業の業績がどう変化しているかを見ておくと良いと思います。四半期に一度は決算が出るので、決算資料は読めるようになっておきましょう。
−分散投資をするべきか、少数の集中投資をするべきかはいかがでしょうか。
高山 リスク分散をしたいからと言って、1万円ずつ何十銘柄も買うような、あまりにも分散し過ぎちゃう人がいるんです。ただそれは分散し過ぎて逆効果だと思いますので、初心者の場合は自分が管理できる3〜5銘柄を持っておくのが良いと思います。また同じような業種、同じような値動きをする銘柄に分散をしてもあまり意味がありません。例えば飲食業界の銘柄だけをいくつも持っていて、鳥インフルエンザなどが起こると持っている銘柄全てが下がってしまいますよね。業種を変えたり、輸入銘柄・輸出銘柄を組み合わせたり、値動きが違うものでリスク分散をすると効果が高いと思います。
生活費3〜6ヶ月分は預貯金でキープ
−初心者がやりがちな投資の落とし穴は何だと思われますか。
高山 新NISAが始まって投資に関心を持つ方が増えているのですが、全く貯金がないのにいきなり投資を始めようとする人がいます。これが一番良くないと思います。というのも、投資に暴落はつきもの。コロナショック、ウクライナショック、トランプショック…株価が下がるタイミングというのはここ数年でも何度もありました。そういう時に、資金に余裕がない人は怖くて売ってしまうんです。
また預貯金がないと、お金が必要になった時に暴落タイミングが来ていたら、損している状態で売却せざるを得なくなります。そういう体験をすると、投資自体が嫌いになってしまうんです。最低でも3〜6ヶ月分くらいの生活費は預貯金でしっかりとキープして、それ以外の余裕資金で投資を始めるのが良いと思います。
−トランプ政権やウクライナ・中東情勢、日本では人口減少などが不安で、どこに投資をすれば良いか分からない、という人もいると思います。世界情勢をどう捉えれば良いでしょうか。
高山 色々なリスクはあると思いますが、長期的な目線で考えれば、世界全体での経済は成長していくと思います。日本だけを見ていると人口減少など気になると思うのですが、世界全体での人口は増えていますし、成長もしていくはずです。目の前のことにとらわれ過ぎず、長期的に捉えていくことが大事だと思います。SNSではネガティブな情報の方がバズりやすいので、それを見て恐ろしくなってしまう人はいると思うのですが、長期で考えるということを忘れないでいれば惑わされなくなると思います。
−周囲に惑わされず、自分の投資ルールを守っていくためにはどうすれば良いでしょうか。
高山 なぜ投資するのかという目的を明確にするのが大事だと思います。老後資金を貯めるために投資をしているのであれば、長期的に考えれば良いし、お小遣いが欲しいのであれば短期的な視点で投資を行うべきですよね。また個別銘柄でもなぜその銘柄を選んだのかという理由を明確にし、もし暴落がきてもその理由が継続できるのであれば、持ち続ける判断ができます。
人間は欲深いので、なかなか損切りをすることができません。しかし例えば10万円を投資して、10%値上がりして1万円儲かったら一度売却する、と先に決めておけば、コントロールしやすくなる。どのくらいお金が欲しいのかを決めておかないと、どんどんのめり込んで損失も大きくなっていってしまいます。
−投資で成果を出しやすい人の特徴はありますか。
高山 自分のメンタルコントロールができている人や、継続力がある人が成功していると感じます。失敗しやすいのは、流行りに乗っかってよく考えずに買ってしまう人や、すぐに一喜一憂してしまう人。やはりコツコツと継続できる人が投資に向いていると思います。
−コツコツが苦手な人にはどのようにアドバイスされていますか。
高山 仕組みを作るのが一番良いと思います。積立投資はその良い例ですね。インデックスファンドの積立投資は、株価が上がろうと下がろうと、安定的に運用ができます。一般の人が成果を出しやすいのは、結局地味な投資だと思います。
−高山さんご自身の投資のルールはありますか。
高山 リスクコントロールを重視しています。一度に全財産を失うような、大きな投資はしません。というのも、実はFXでレバレッジをかけ過ぎてしまい、大きな失敗をしたことがあるんです。このままだと退場することになってしまうという失敗をしてから、投資は継続性が大事だと考えるようになりました。
今の生活を豊かにする高配当株に注目
−今注目している業種や銘柄はありますか。
高山 業界でいうとやはりAIが注目だと思います。また手法で言えば、高配当銘柄に凄く注目をしています。特に新NISAが始まってから、配当金も非課税で受け取れるようになりました。
お客様を見ていても、どんなに財産がある人でも取り崩すというのは不安になるようで、思い切って使えないという人が多いんです。将来に対してお金を貯めるということも大事ですが、今の生活を楽しむというのも重要だと思います。そういう点で高配当銘柄は不労所得のような形で配当金が入ってくるので、今の生活を豊かにできる投資手法だと思います。
−高配当株はどのように選ぶのが良いでしょうか。
高山 一般的には配当利回り3%以上と言われますが、みんなが良いと言って買うと株が高くなり、配当利回りが低くなってしまう可能性もあるので、幅を持たせるために2%以上の配当利回りで検索すると良いと思います。また、高配当株で生活している方々を複数見て、どんな銘柄に投資しているのか見てみたり、投資信託の目論見書を見てプロがどんな銘柄を選んでるのかをチェックするのも勉強になると思います。今は100円から買える投資信託もあるので、1回買ってみて、目論見書や運用報告書を勉強の材料にしてみてはいかがでしょうか。
−ファイナンシャルプランナーの仕事をしていてどんな瞬間をやりがいに感じますか。
高山 お金の知識をつけたことで、人生が変わったと言ってもらえるとやっていて良かったなと思います。実際に海外旅行に行くことができて視野が広がったり、病気になった時に治療の選択肢を増やすことができたりする人もいます。
また大学で講義をしていると、投資に対してやる気の高い学生さんたちが多いなと感じます。生まれた時から日本が不景気なので、将来に対して不安があり、自分自身がなんとかしなければいけないと思っている人が多いです。でも投資で資産をしっかり築ければ、将来に対して希望を持ち、色々なことにチャレンジできるようになると思います。また若い方は複利効果も高く、投資をすることで大きく可能性が広がります。そういう若い世代への金融教育も今後注力していきたいと考えています。
−高山さんのところには、女性からの相談も多いのではないでしょうか。
高山 新NISAが始まってから、もの凄く増えています。昔に比べて少額から無理なくできますし、女性は出産や子どもの受験、親の介護など、ライフステージの変化が大きいです。働けなくなったときにお金があるかないかというのは凄く大きいので、お金を運用して増やしていきたいという意欲のある人が増えてきたと思います。
女性は情報の感度が高く、流行に詳しかったり、友達同士の口コミがあったりして、そういうところにも銘柄のヒントというのはたくさんあります。お買い物好きの人や、女性誌を見るのが好きな人は、銘柄選びが上手なことが多いです。
−自分の趣味が投資に活かせると楽しいですね。
高山 好きだからこそ、業界や企業の研究も楽しくできるという面もあると思います。また株主総会に出ると、自分の意見が企業やサービスに取り入れられることもあります。生活者視点を持つ女性の声は特に、経営者も凄く参考にしてくれます。そういうところも楽しんでいけると良いと思います。その他にも、社会貢献や、寄付を株主優待に選ぶこともできます。株を通じて企業を応援したり、社会貢献できたりするのも良いと思います。
−最後に、個人投資家へのメッセージをお願いします。
高山 投資はハイリスク・ハイリターンで怖いものというイメージを持つ方も多いと思いますが、積立投資でコツコツと資産を増やすこともできますし、企業の応援や社会貢献ができる株もあります。これからインフレの世の中になっていくことを考えると、投資スキルは必須になってくると思います。最初は少額からでも、アクションを起こすことが大事だと思います。机上の空論でずっと勉強していても上手くならないので、ぜひ無理のないところから始めてもらいたいなと思います。

株トレード歴40年のプロトレーダー相場師朗先生が監修する株式投資情報総合サイト「インテク」の編集部です。今から株式投資を始めたいと思っている投資初心者の方から、プロが実際に使っているトレード手法の解説までの幅広いコンテンツを「わかりやすく、気軽に、実用的に」をモットーに発信しています。