株式投資は「企業との結婚」。「分散投資は非効率」と言い切る理由とは?

白坂慎太郎氏インタビュー

20年以上にわたり、投資信託・金・外貨・海外不動産などあらゆる投資に挑戦し、最終的に「株式投資一本」にたどり着いた人物がいます。

進学塾経営を経て、自らの強みを活かす投資術を確立した白坂慎太郎氏です。

「投資する企業に世界一詳しくなれ」「誰にでも強みと重なる企業がある」「株式投資は企業との結婚」…数々の名言から紐解く、株式投資の極意とは?

白坂慎太郎氏白坂慎太郎氏

プロフィール
1975年、鹿児島生まれ。鹿児島大学法文学部法学科卒。大手進学塾勤務後、30歳で(有)シンタを設立して独立。起業後、地域最大の1番塾へと育てる。その際、銀行員に投資信託を勧められたことから投資を始めて20年超。これまでに投資信託・金・プラチナ・外貨・国債・海外不動産など多数の投資を行うも、最終的には会社経営の延長で実践できる株式投資1本に絞る。YouTube『経済ニュースの本質』にて企業分析を公開中。著書に『ヤル気を引き出すコーチング法』(共研書房)、『お父さんから愛するキミに贈る本』(文芸社)、『少額からでも確実に増やせる! 資産を1億円にする、すごい株式投資』(フローラル出版)などがある。

目次

「言われるがままに投資」から始まった失敗の連続

−まずは簡単に自己紹介をお願いします。

白坂 九州大手進学塾で勤務後、30歳で(有)シンタを設立して独立しました。2006年に進学塾業界を卒業し、今はシンガポール法人・スターソレイユと日本法人・株式大学の2社の経営をしております。投資家としては株式投資を行っています。

銀行,投資信託

−投資を始めたきっかけは何でしたか?

白坂 30歳で起業した際に、融資してくれた銀行員から投資信託を勧められたことがきっかけでした。言われるがままという感じで、正直、投資信託とは何なのかすらよく分かっていなかったです。その後も物件を見てもいないのに海外不動産投資に手を出すなど、今思うと無茶苦茶なことをやったり、騙されたりして、どんどん資金が減っていきました。

−そこから投資についてしっかり学ばれるようになったのは何故でしょうか。

白坂 投資を目的に学び始めたというよりも、元々学習塾の講師として子どもたちに政治・経済を教えていたことと、経営者として国家試験の中小企業診断士を4年ほどかけて学んだことが株式投資にも活かせると気づいたんです。例えば中小企業診断士の勉強では財務会計について学びますが、最初は資格を取るためだけに暗記していて、何の役に立つんだろうとすら思っていました。しかし株式投資において、財務会計の知識は基礎中の基礎です。そうやって点と点とが結びつき、株式投資でも結果を出せるようになっていきました。

−様々な投資を経験した上で株式投資に絞ったのはなぜでしょうか。

白坂 自分の「強み」に合っていたからです。海外の不動産投資なども経験しましたが、不動産そのものに強い興味関心がないと難しいと感じました。そんな状態で機関投資家やプロの投資家と戦えるはずがありません。逆に株式投資は、これまでに勉強していた経済学や経営学の勉強がそのまま活かせます。自社を客観的に分析するのに必要な知識と他社を客観的に分析するのに必要な知識が共通していたのが、株式投資に絞った最大の理由です。

−現在の投資のポートフォリオと、投資をする際に軸としていることを教えてください。

白坂 現在は、日本・アメリカ・中国合わせて3社ほどに絞って株式投資を行っています。投資の軸としているのは、自分が本当に「よく分かる」投資対象に厳選して投資をすることです。他者がすすめるからという理由では、投資はしません。自分が興味・関心を持った業界や企業に関しては、極論、世界で最も詳しくなるつもりで徹底的に調査をして、企業の今後の成長に確信が持てた場合にのみ投資をしています。

ファンダバナー診断コンテンツバナー (正方形)

投資は特別な人のものだと思ってない?主婦にも会社員にも「強み」と重なる企業がある

投資

−株式投資はどのような人におすすめだと思いますか?

白坂 貯金だけでは絶対に到達できない金額の資産を築いていきたい方にはおすすめです。 貯金だけだと、お金は増えません。 であれば、一生涯で蓄えられる貯金は計算しようと思えば計算できます。 もし、貯金だけで蓄えられる金額で自分自身が満足できるのであれば、無理に株式投資をする必要はないと思います。 逆に、1億円・2億円といった、貯金では到底蓄えられない金額を目指すのであれば、株式投資は夢を実現する大きなチャンスになると思います。

−初心者が株式投資を始めるにあたって、最初にやるべきことは何でしょうか。

白坂 自身の「現状の把握」と「目標の設定」です。 現状の把握とは、資産・負債・純資産の把握です。私が経営する株式大学ではまず始めに皆さんに家計簿を付けて頂きますが、「妻に任せきりでした」と家計簿を付けたことがない人もかなり多いです。年商何億と稼ぐ経営者でも税理士に全てを任せきりで、貸借対照表を読めない人が大半なんです。でもそれって車で言えば、バックミラーなしで運転しているのと同じなんですよね。自分の資産や、自社の現状を把握せずに資金を運用するというのはかなり危険です。
目標の設定とは、純資産をいくらにしていきたいのか?どれくらい時間がかかっても良いと考えているのか?ということです。今年中に大きなお金を稼ぎたいのか、10年20年かかっても良いのかでは全く取る手法が変わります。世界には投資手法という手段は無限にありますから、その中で最適な手法を選ぶには目標が設定されていなければ迷うのは必然だと思います。

−投資する企業はどのように選ぶべきでしょうか。

白坂 自分の強みと重なる業界や企業から選ぶことが大切です。例えば医療業界に経歴がある方は、製薬業株に詳しくなることに優位性がありますし、半導体業界に経歴がある方は、半導体株に詳しくなることに優位性があります。 主婦の方は「消費」について誰よりも詳しいはず。どこのスーパーマーケットで何が売っているか、なぜ別のスーパーでは値段が違うのかというのは、投資家よりも詳しいと思うんです。

実際にスーパーの「ヤオコー」は日本で一番利益を上げ、増収増益を続けている企業です。ヤオコーに行ったことがない人からすれば、他のスーパーとの違いが分かりませんが、毎日行っている人にとっては「お惣菜が凄い」と簡単に分かります。母親・父親である人は「子育て」のプロとして、例えば赤ちゃん用品について詳しいのではないでしょうか。そうやって自分の強みがある業界から選べば、誰よりもその企業を深掘りできるはずです。

−投資で成功するためにはどの程度、企業について詳しくなる必要がありますか?

白坂 最低でも日本で一番、できれば世界で一番その企業について詳しくなるべきだと思います。その企業は誰に対してどういう商品・サービスを、どういう方法で売ってるのか、その商品はどれぐらい需要があるのか、今後伸びるのか。これらが書かれているのは、有価証券報告書や決算短信です。決算書の損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書は絶対に読めるようにならなければいけないと思います。企業は投資判断に必要な情報は全て開示する義務があるので、資料に全て書かれています。

−株価暴落のニュースが気になってしまう、という人も多いと思います。

白坂 ニュースには株価が下がった理由がそれらしく書かれていますが、それは記者が取材をして、その人の解釈で記事にしているわけですよね。しかも、その人はその企業に勤めているわけではなく、株を売り買いしているとも限りません。同時期に起こった事柄を関連付けているだけ、という場合が多く、実際の株価との因果関係は定かではありません。
企業について誰よりも詳しくなっておけば、そういう情報に振り回されることはなくなると思います。株価についても同様で、株の下落に惑わされるのは、企業ではなく、市場を信じているから。しかし市場がいつも正しいとは限りません。企業に対しての価値判断がしっかりとできていれば、株価が下がっていても逆に安く買えてチャンスだと思えるはずです。

−有価証券報告書や決算短信以外に、株式投資において判断基準となるものは何でしょうか。

白坂 数字を読み解く力は必要不可欠ですが、それだけで成功できるのであれば、AIによる自動売買で誰もが成功しているはずです。そうではないのは、やはり定性情報が関わってくるからだと思います。具体的には、企業のトップである社長の人柄や哲学、会社の理念などです。
例えばトヨタ自動車であれば、なぜトヨタ生産方式を大切にしているのか、それがどういった競合優位性に繋がっているのか、という情報は数字からではなく、社長の言葉やトヨタが発信する「トヨタイムズ」などのコンテンツから得る必要があります。定量と定性の両方から総合的に判断するからこそ、投資はAIではなく人間が行うべきものだと考えています。

ファンダバナー診断コンテンツバナー (正方形)

広く浅くより、狭く深く。結婚と投資の共通点

−投資で成果を出す人と迷子になる人での違いはありますか。

白坂 知的好奇心の高い人が投資で成果を出す人だと思います。60代の方で、会社をリタイアしてから株式投資にハマる人が多いのですが、それはこれまでのキャリアで身につけた業界知識を活かし、楽しみながら知識を深めていけるからだと思います。
迷子になる人は、自身の「現状」と「目標」を把握していない方です。 世間で出回っている投資の成功手法の99%以上は、その時代・その人だから成功したという情報です。 「〇〇さんは、こういう方法で成功した!」という情報をどれだけかき集めても、そもそも「現状」と「目標」が違えば成功には繋がりません。

投資信託

−世界一詳しいと言えるくらい企業について調べるのは大変・時間がないと感じる人もいるかもしれません。

白坂 そういう人は長期積立分散だけに投資するのが無難だと思います。でも結果的に効率が良いのは一社に絞ることだと思います。100万円の余裕資金を10社に分散する場合、1社あたり10万円しか投資できませんが、1社に絞れば100万円投資できます。その会社の利益が目論見通り上がれば、その分投資で儲けることができます。だからこそ、情報は広くではなく、狭く深く掘れる人が向いていると思います。
例えば、恋愛と結婚を考えた時、恋愛であればなんとなく感覚的に良いなと思う人とデートをすると思うのですが、結婚となると何十年とパートナーでい続けるわけですから、相手のことをより深く知りたいと思うのではないでしょうか。どんな結婚生活を理想としていて、子どもは何人くらい欲しいのか、将来はどんな場所に住みたいのか、ということまで知ろうとしますよね。よく知らないのに結婚するのは「ギャンブル」だと思うはずです。
株式投資も同じで、自分の大切なお金を何十年に渡ってかけるわけですから、その企業について知りたいことは全部知りたいというのが普通だと思います。株式投資は、企業と結婚するのと同じ。そういった気概で向き合えないのであれば、株式投資は向いていないと思います。

ファンダバナー診断コンテンツバナー (正方形)

子どもたちに「明るい未来」を

子供

−今注目されている業界や、今後の目標を教えてください。

白坂 地理的にはアジア・中東、産業としてはAIです。日本が人口減少している現状がある中、もちろん日本企業を応援したい気持ちはあるものの、株式投資という観点で言えば伸びている地域・産業で勝負するのが原理原則だと思います。
会社としての目標は「子どもたちに明るい未来を」。どうしても日本の将来を思うと不安に思う人も多いと思いますが、日本も商品・サービスを市場が伸びているアジアに売っていくと考えれば、希望が持てると思います。例えば日本のアニメや音楽、ゲームは中国・台湾・香港などで絶大に支持されています。日本国内だけを見て悲観的になるのではなく、アジアという広い視野を見て、子どもたちに明るい未来を見てもらいたいです。子どもたちは今、私たちの世代では考えられなかったような進化を遂げています。13歳の娘はグリーンエネルギーについて調べていて、8歳の息子はChatGPTを日常的に活用しています。人間の進化の歴史を見れば、子どもたちが親よりも高い能力を身につけ、より良い未来を実現していくのは当たり前のこと。そう気づいてもらえるきっかけとなる存在になっていきたいと考えています。

−最後に、投資初心者に向けてメッセージをお願いします。

白坂 投資の世界というのは、初心者がうまくいっていて、中級者が苦戦していて、プロがうまくいっているという現実があります。初心者がうまくいくのは、初心者ゆえに、基礎・基本に忠実に実行しやすいからです。 投資は、世間一般で言われているほど、 ギャンブル性が高いものでもなければ、 複雑怪奇なものでもありません。自分がよく分からないものには投資をしない・自分が本当によく分かるものにだけ投資をするなど、 極めてシンプルないくつかの基礎・基本を忠実に実践し続けるだけで上手くいきます。
なぜなら、経済は成長する方が当たり前で、企業は成長する方が当たり前で、株価は上がる方が当たり前だから。 なので、初心者であることは弱みではなく強みです。 初心者だからこそ、原理・原則を忠実に実践することで 投資を上手くいかせることは、実は簡単です。
貯金だけでは決して到達しないであろう純資産1億円以上を目指して、今、まさに投資の世界に足を踏み出そうとしているあなたの夢実現を、心から祈っています。

Youtubeチャンネル「経済ニュースの本質」はコチラ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次